上 下
12 / 33

第十二話 イジワルミミックは言うほど強くなかった

しおりを挟む
「イジワル……ミミック? 何ですか、それ?」

 ミミックという宝箱に擬態した魔物は、確かにゲームとかだと定番だったりするが……何がどう「イジワル」なのか。
 そして倒された前例が無いとは、一体どういうことなのか。

 分からないことが多かったので、俺は質問してみることにした。

「イジワルミミックは、条件をクリアすれば豪華報酬が貰える……と言われている、まあなんだ、イベントミッションを課してくる魔物とでも言えばいいか。だが……その条件が曲者でな。誰一人として達成できないような、鬼畜な条件ばかり提示してくるんだよ」

「鬼畜な条件……ですか」

「ああ。そうだな、この階層で現れたイジワルミミックなら……『1時間以内に、この階層の魔物を、闇属性魔法を使わず全滅させること』みたいなのを提示してくるんじゃないか?」

 聞いてみると……先客だと思った人は、イジワルミミックの詳細を語ってくれた。


 ……確かに、そう聞くと、イジワルミミックから豪華報酬とやらを貰うのはかなり難しそうだな。
 と思いつつも……俺は同時に、挑戦してみる価値はあるんじゃないかとも感じた。

 幸いにも、俺には「階層完全探知」がある。
 そして俺はもともと闇属性魔法など使わないし、それでもって5秒以内には天使モスエルを一体討伐できるのだ。
 上手くやれば、時間内に階層内の魔物を全滅させるのも、不可能じゃないかもしれない。

 ——まあ「イジワルミミック」ってくらいだし、俺がクリアしそうになったら、リスポーン速度を急に上げてきたりするのかもしれないが。

 それでも……失うものは何もないわけだし、挑戦しないという手は無さそうだ。

「……条件って、ケースバイケースで変わるんですよね? 俺に課された条件が何かは、どうやって知ればいいんですか?」

「って……お前挑戦する気かよ!? まあ条件なら、ステータスウィンドウを開いたままイジワルミミックに触れれば表示されるが……」

 具体的な挑戦開始方法を聞くと、それも教えてくれたので……早速俺は、言われたとおりやってみることにした。

「ステータスオープン」

 詠唱し、イジワルミミックに触れる。
 すると……宝箱が開いて長い舌が出てくると同時に、ステータスウィンドウ上にこんな表示が出た。

 ────────────────────────
 >                     <
 >  イジワルミミック・イベントミッション <
 >「10分以内に、総魔力量の8割以上    <
 >       を使う魔法を1万発当てろ!」<
 >     (残り10000発)      <
 >                     <
 ────────────────────────

 そして条件を見た俺は……むしろ、肩透かしを食らった。

 ……あれ。
 これむしろ、階層内全滅より遥かに楽だぞ。

 当てる対象は舌でいいのか?
 などと考えつつ、最大魔力を注ぎ込むマナボールV4を2発当ててみる(8割にしないのは調整が面倒だからだ)。
 すると……当初10000発とあったカウントが、9998に減った。

 ……やるべきことは把握した。
 なら後は……ガトリングナックルで全力でぶっ放つだけだ。

 俺はマナボールV4を、ただひたすらにイジワルミミックの舌に当て続けた。
 最大連射速度は分速2400発なので、10分以内なら余裕で間に合う。
 案の定……5分弱が経過すると、表示が残り0発になり、同時にイジワルミミックが弾け飛んだ。

 楽勝だったな。
 イジワルミミックがいたところには、巻物みたいなものがドロップしたので……俺はそれを拾いに行った。


「うっっっっっっそおおおお!?」

 巻物を拾っていると……横から盛大な叫び声が聞こえてきた。

「イジワルミミックを撃破って……えええ!? てか何だったの、今のクソヤバいマナボールの連発……」

 どうやらさっきの人は、一部始終を見守っていたようだ。

 ……おいおい大丈夫かこの人。
 そんなに口開けて……顎外すなよ?


 などと考えていると、怒涛のごとく脳内音声が連続で鳴り響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...