7 / 12
第7話 思い出せってか
しおりを挟む市役所で戸籍登録してからはいつも通りの日々を暮らし週末になった。
この一週間、茶羽と黒羽は毎日お手伝いをしてくれる、一昨日は庭の片づけをして草むしりをして、ネットで購入した滑り台などの遊具を設置した、本来は室内で遊ぶものみたいだったが、そこそこ大きい物だったため庭に置いて固定した。
二人は外で遊べるのが楽しいのか昨日はお手伝いと勉強をした後、暗くなるまで遊んでいた。
勉強もひらがなのあ行からさ行迄書けるようになった、読むだけならほぼすべてのひらがなを読めるようになっていた。
「覚えるの早いな、これも猫人犬人特有なのかな?、そろそろ簡単な計算とかも教えても良いかな。」
などと感心しながらも、内心では『うちの子は天才かも』と考えていた。
達也本人は気づいていなかったが傍から見たらただの親バカまっしぐらである。
今日も朝食が終わると洗濯と風呂掃除をするため洗面所や風呂場でワイワイと楽しそうにお手伝いをしている、毎日隠れて見ていたのだが、日替わりで洗濯と掃除を交代にやっているようだった。
今日は洗濯が茶羽、風呂掃除が黒羽の番みたいだ。
隠れて見ていて終わりそうなときに急いでリビングのパソコンの前に座り二人が戻ってくるのを待つ。
二人がリビングに来ると黒羽は濡れてびっしょりになっている、タオルと着替えを持ってくると、ドライヤーで黒羽の髪を乾かす、終わると茶羽が前に座る、茶羽は特に濡れていないのだが乾かすふりをしてドライヤーの風を当ててあげる、これが毎朝お手伝い後のいつもの行動になりつつある。
それが終わると洗濯が終わるまでひらがなドリルで勉強をする、茶羽と黒羽は新しい文字を覚えてそれが書けるようになるのが楽しいみたいで、お互い今日は私が早く覚えると張り切っている。
俺は二人の前に座って一文字づつ教えていく、なんか先生になった気になって楽しい。
洗濯の終わりを告げる音が聞こえると二人は洗面所に行き洗濯物を抱えて帰ってくるので各自の服をより分ける。
多少いびつだが自分の服は畳めるようになっていた。
洗濯物を片付けていると玄関でチャイムが鳴った、多分健治と香織だなと思って玄関を開ける。
「こんちわ、茶羽ちゃん黒羽ちゃん元気だったか?」
「こんにちわ、おじゃましますね。」
「さうはげんき」
「くうもげんき」
健治と香織が挨拶しながら茶羽と黒羽をなでていた、二人も尻尾をゆらゆらさせて喜んでいた。
「タイミングいいな、そろそろ昼にしようと思ってたんだ、二人ともまだだろ?」
「そうだな、ごちそうになるわ、というかそのつもりでこの時間についたんだがな。」
俺の言葉に健治はそう言うと茶羽世黒羽を抱き上げリビングに入っていく。
香織がキッチンに行こうとしてたので止めて「二人と遊んでていいですよ」とリビングに戻した。
健治の性格上一緒に昼を食べるだろうと思っていたので、下ごしらえしてあった、今日の昼はチキンステーキとサラダ、茶羽と黒羽は軽く塩を振っただけ、俺たちは塩コショウにすり下ろしたにんにくを揉み込んでいる。
茶羽と黒羽のお肉を焼いてから俺らのお肉も焼く、するとキッチンの入り口で茶羽と黒羽が覗いているのに気づいて、手招きして茶羽と黒羽のチキンステーキが乗ったお皿を渡すと、笑顔で運んでいった。
俺は残った皿とサラダの入ったボウルをリビングに持って行く。
昼飯が終わると茶羽と黒羽は絵本をもって香織に読んでとせがんでいた。
二人を香織に任せて健治とパソコンで各サイトを確認する。
「まだ人化が起こって一週間だけど色んな情報出てるんだな。」
健治は掲示板や情報サイトを見ながら情報の量に驚いていた。
毎日確認している俺からしたら特に目新しい情報はなかったが、健治には初めて知る情報などもあって、モニターに齧りついていた。
しばらくパソコンやスマホを見ていると、香織が眠ってしまった茶羽と黒羽を抱えてきた。
二階のベットに寝かせると、リビングで健治と香織に戸籍謄本と二人の住民票を見せる。
「本当に登録で来たんだな、おめでとう。」
「茶羽ちゃんと黒羽ちゃん養子になってるわね、おめでとうございます。」
「二人ともありがとう、なんか面と向かって言われると照れるな。」
そんな会話をしながらも三人は笑顔になっていた。
そして健治が真顔になってスマホの画面を見せてきた。
「実はなSNSでこんな投稿を見つけたんだ、茶羽ちゃんと黒羽ちゃんに何かあってからじゃ遅いからな、気を付けた方がいいぞ。」
見せられた画面には、
『前垢は凍結されるし、ショッピングモールではスマホで動画撮っただけで警備員に怒られるし、ちょっと抵抗したら事務所連れていきやがって、まじで許さねえ。でも俺のエンジェルはマジ天使。』
と書いてあり一緒に表示されていた画像には加工されて顔は分からなくされていたがどう見ても茶羽と黒羽が写っていた。
「なんだこれ?どうみても逆恨みじゃないか。」
「だが気を付けておいたほうがいいかもな、こういう奴はいざとなると何しでかすか分からないからな。」
「ああ、気を付けるよ。」
お互いそこまで気にしていなかった、が注意はしようと思った。
その後、庭の様子に気づいた健治が、
「ちょっとした公園みたいになってるな。」
と庭に降りて遊具などを確認していた。
「買ったはいいけど思ったより大きくてな、庭片付けて設置したんだ。」
俺の言葉に健治は呆れた顔をしていた。
しばらく庭を確認していると家の中でドタバタと音がすると縁側に茶羽と黒羽が座って靴を履こうとしていた。
香織が靴を履かせてあげると、我先にと庭に降りて二人は遊具で遊び始めた、それを見ていた健治は一緒に走り回っていた。
「二人のあの笑顔絶やさないようにしないとな。」
そうつぶやくと俺も茶羽と黒羽と健治に混ざって庭全体を使い追いかけっこを始めた。
晩飯は香織が作ってくれた焼き魚を食べてお風呂は香織が二人を入れてくれた。
俺たちも風呂に入り、二人は泊まる予定だったので、俺と健治と香織はビール片手に茶羽と黒羽はリンゴジュースを飲みながら俺たちの大学時代の事など懐かしい話で盛り上がった。
そんな中水族館の話が出て、茶羽と黒羽が興味を示し翌日みんなで行くかという事になった。
二人は水族館に行けると分かるとリビングで跳ねまわって喜んでいた。
その後も話を続けて茶羽と黒羽がウトウトしだしたころお開きにした、健治と香織を客間に案内して、俺は茶羽と黒羽が寝ているベットに潜り込んだ。
翌日目が覚めると、いつもは二人が俺の上で寝ているはずが今日は居なかった、時計を見ると7時前だった。
洗面所に行き顔を洗って一階に行くと、茶羽と黒羽は朝ご飯を作っている香織の横でお手伝いをしていた。
「おはよう、ご飯作らせて悪いな、ゆっくりしてくれてよかったのに。」
「達也さんおはようございます、せっかくだしお弁当も作ろうかと思って、そしたら茶羽ちゃんと黒羽ちゃんが起きてきて手伝ってくれてるんですよ。」
「さうはおてつだいしてるの」
「くうもおてつだい」
「そっかお手伝いしてるのか、えらいな」
二人をほめながらなでて香織にお礼を言ってリビングに戻ると、目をこすりながら健治が降りてきた。
「おはようさん、いい匂いだな。」
「おはよう、香織と茶羽と黒羽が朝ごはんと弁当作ってるぞ。」
「おっ、まじかそれは昼が楽しみだな。」
そんな会話しながら朝飯をテーブルに並べていた二人を健治がなでていた。
食事が終わると茶羽と黒羽はいつも通り朝のお手伝いを終わらせ、余所行きの服に着替えてポシェットを持ってリビングでそわそわしていた。
それを見て俺らも準備するため二階に上がっていく。
着替えて戻ってくると二人は靴を履いて玄関で待っていた、今日は健治がミニバンを持って来てくれたので、ジュニアシートを乗せ換えて茶羽と黒羽を座らせると、行きは健治が運転すると言うので俺は助手席に座る。
振り返って茶羽と黒羽と香織が乗ってるのを確認すると声をかける。
「さあいこうか。」
「はい」
「いくぞ」
「「しゅっぱーつ」」
茶羽と黒羽の掛け声に合わせて健治は車を出す。
いざ目指すは水族館。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
一人じゃないぼく達
あおい夜
キャラ文芸
ぼくの父親は黒い羽根が生えている烏天狗だ。
ぼくの父親は寂しがりやでとっても優しくてとっても美人な可愛い人?妖怪?神様?だ。
大きな山とその周辺がぼくの父親の縄張りで神様として崇められている。
父親の近くには誰も居ない。
参拝に来る人は居るが、他のモノは誰も居ない。
父親には家族の様に親しい者達も居たがある事があって、みんなを拒絶している。
ある事があって寂しがりやな父親は一人になった。
ぼくは人だったけどある事のせいで人では無くなってしまった。
ある事のせいでぼくの肉体年齢は十歳で止まってしまった。
ぼくを見る人達の目は気味の悪い化け物を見ている様にぼくを見る。
ぼくは人に拒絶されて一人ボッチだった。
ぼくがいつも通り一人で居るとその日、少し遠くの方まで散歩していた父親がぼくを見つけた。
その日、寂しがりやな父親が一人ボッチのぼくを拐っていってくれた。
ぼくはもう一人じゃない。
寂しがりやな父親にもぼくが居る。
ぼくは一人ボッチのぼくを家族にしてくれて温もりをくれた父親に恩返しする為、父親の家族みたいな者達と父親の仲を戻してあげようと思うんだ。
アヤカシ達の力や解釈はオリジナルですのでご了承下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
アラフォーOLとJDが出会う話。
悠生ゆう
恋愛
創作百合。
涼音はいきなり「おばさん」と呼び止められた。相手はコンビニでバイトをしてる女子大生。出会いの印象は最悪だったのだけれど、なぜだか突き放すことができなくて……。
※若干性的なものをにおわせる感じの表現があります。
※男性も登場します。苦手な方はご注意ください。
片翼の天狗は陽だまりを知らない
道草家守
キャラ文芸
静真は天狗と人の半妖だ。味方などおらず、ただ自分の翼だけを信じて孤独に生きてきた。しかし、お役目をしくじり不時着したベランダで人の娘、陽毬に助けられてしまう。
朗らかな彼女は、静真を手当をするとこう言った。
「天狗さん、ご飯食べて行きませんか」と。
いらだち戸惑いながらも、怪我の手当ての礼に彼女と食事を共にすることになった静真は、彼女と過ごす内に少しずつ変わっていくのだった。
これは心を凍らせていた半妖の青年が安らいで気づいて拒絶してあきらめて、自分の居場所を決めるお話。
※カクヨム、なろうにも投稿しています。
※イラストはルンベルさんにいただきました。
error (男1:女2)声劇台本
あいすりぅ
キャラ文芸
〖 時間〗
10分程度
〖配役〗
•ウイルス:(女)年齢不詳。正体不明。14才ぐらいの幼い容姿。
•アキト:(男)16才。ヒカリの幼馴染。
•ヒカリ:(女)16才。アキトの幼馴染。
ーーーーーー
楽しく演じてくださったら嬉しいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる