69 / 156
第8幕 収監令嬢はカエルを飼いたい
第6話 新しい仲間、クォンちゃんよ
しおりを挟む
週末になり、私はパルシアンにある黒い家に帰ってきていた。
そのバルコニーから広がる小さな庭に、森の奥からひょっこりとスコルが現れる。
『マユー、遊びに来たぞー』
「ヘレンのお菓子を食べに来たんでしょ」
『いや、マユのおっぱいを……おおっ!?』
スコルが私の胸元を見て、うげっというような顔をする。
今日は白のフリルシャツにサロペットという、ここでのいつもの姿。
少し開けた胸元には、水色カエル――クォンちゃんがへばりついていた。
『何だ、ソレ!』
「カエルのクォンちゃんだけど」
『こらー、そこのカエル! マユのおっぱいはオレのだー!』
「スコルのじゃないわよ!」
『そこを退け! しっしっ!』
スコルが歯を剥き出しにして私の胸元に向かって飛び掛かろうとしたので、右手で頭部の両耳の間をガバッと掴む。ジリジリと押し戻すと、スコルが『ンガガ』と声を上げた。
「ちょっと、乱暴はやめなさい。怯えるでしょ?」
『ズリぃー、ズリぃよぉー! カエルのくせに!』
「何にもズルくありません。ちょっと待ってて」
バルコニーのテーブルに置いていた丸い金魚鉢のような花瓶に水を張り、クォンをその中に移す。
私の水魔法で出した水の中では比較的長い時間おとなしくしてくれるので助かる。
「クォン、しばらくそこにいてね」
と言うと、『キュン』と小さく鳴いた。
なお、『クォン』という名前はアイーダ女史が付けました。飼うことになって
「さすがに名前が必要なんだけど」
と言うと
「では念のため、わたくしが名付けます」
とキリッと眼鏡の縁を上げたと思ったら、口にしたのがこの名前だった。
多分、泣き声からだと思う。離れようとすると『クォン、クォン』と切なそうに泣くのよ。涙ポロポロこぼして。
そのまんまだけど、まぁ覚えやすいしいいわよね。
それにやっぱり、ちゃんと名前を付けてよかった。
拾った当初は意思の疎通が全く取れなかったんだけど、名前を呼ぶと反応するようになったし、ぼんやりとではあるけどクォンの機嫌が分かるもの。
『変な色のカエルだな』
「そうなの。事典にも載ってなかったのよ」
『ふうん』
「自分で餌も取りに行かないしね」
草むらや水辺に昆虫を取りに行くことは無いけど、水の中に蜘蛛やミミズを入れてあげるとモグモグ食べている。貴族のカエルかお前は、とか思っちゃうんだけど。
おかげで最近はすっかり虫探しがクセになってしまった。
幸いクォンは少食らしく、一日一匹でOK。餌が無いと暴れる、というようなこともないし、大量に虫を捕まえておく必要もない。あんまり手間がかからないコだ。
『……魔界のカエルかもなあ』
「えっ!」
びっくりして並べようとしていたお皿を手から取り落としそうになる。
スコルは
『何かじぃちゃんのところで見かけた気がするんだよなぁ』
と呟き、花瓶の中を覗き込んだ。
クォンは逃げるでもなく「何ですか?」みたいな顔をしてジーッとスコルを見上げている。グワッと一瞬だけスコルが魔精力をみなぎらせたが、クォンは一瞬ビクッとしただけでそのまま水の中に鎮座していた。
『うーん、これで逃げないということは、やっぱり魔界のカエルだ。ハティに聞いた方がいいかも』
スコルが珍しく真面目にそんなことを言うので、お茶会の準備もそこそこにハティを召喚する。
花瓶を覗き込んだハティは
“あ、スクォリスティミだ”
と思念で呟いた。
「スクォリ……?」
“魔界のじぃちゃんのトコにいた、カエル”
「ハティは知り合いなの?」
“ううん。見かけただけ”
はぁ、魔界のカエル。
え、ちょっと待って。二人がじぃちゃんと言ってるのは、王獣アッシメニアのことよね?
「えーと……ひょっとして、魔物? 魔獣?」
“んー、どっちでもない。じぃちゃんの沼で、クゥクゥ鳴いてた”
『あー、アレか』
ハティの言葉に、スコルが思い出したように声を上げる。
その後、知識はあるけど言葉足らずのハティをスコルに補ってもらいつつ、二人からじっくり話を聞いた。
それによると、『スクォリスティミ』は魔王侵攻の際に魔界に紛れ込んだカエルのことで、魔界の風に吹かれ魔精力を大量に取り込んだものの歪まずに生き残った奇跡のカエル。アッシメニアのペットのような感じになっているらしい。
ひどく寂しがり屋のカエルで、泣きすぎると全身溶けてしまうという。
どうやら前にスコル達が無理矢理穴を開けた際、その『スクォリステイミ』の一匹が人間界に逃げたらしい。どこかで泣いてはいないだろうかと、じぃちゃんことアッシメニアが心配していた、とハティが説明してくれた。
「じゃあ、迷子のカエルってこと?」
『ウン』
「魔界に帰した方がいいのかしら……」
そう呟くと、花瓶の中にいたクォンがビョーンと飛び出し、ピタッと私の肩に乗ってきた。そのままいそいそと移動し、胸元にへばりつく。
「こらっ」と言って引き剥がそうとしたけど、『クォン、クォン』とポロポロ涙をこぼしていた。
「あわわわ」
泣くと溶けると聞いて慌てて手を離す。クォンは『キュン』と一声鳴くと、すりすりと私のおっぱいに頬ずりしていた。
そんな私達の様子をチラリと見ながら、スコルが不満げに鼻を鳴らしている。
『帰すならマユが自分でじぃちゃんのところに連れて行かないとな』
「む、む、無理よ!」
『だなー』
『マユの近くに、置いておけば、だいじょぶ』
「本当に? ハティ」
『ウン』
『スクォリスティミ』は魔界のカエルだけど、大量の魔精力を保有しているだけで悪さをするわけではない。水属性の魔精力に馴染みやすいだけで、魔法すら使わないのだ。
アッシメニアが心配していたのは泣いて溶けてしまっているのではないか、ということであって、こうしてマユのところで落ち着いているのなら大丈夫じゃないか、とのこと。
まぁ、クォンが私のところに来てから数日は経ってるし、何も言わないってことは暗黙の了解ってことでいいわよね。
つまり、私はアッシメニアからペットを譲り受けたことになるのか。
……あれっ、これって何か凄いことのような気がするけど。いいのかしら。
「まぁ、いいわ。クォン、人間界にいて大丈夫みたいだから、改めてよろしくね」
『キュン』
「その代わり、ちゃんと言うこと聞いてね。むやみに飛び出しちゃ駄目よ」
『キュン……』
『マユのおっぱい、最強だな!』
「言い方を考えてね、スコル」
『ハトも、好きー』
「ありがとうね、ハティ」
『なーんかタイド、違いすぎねぇ?』
* * *
その後、ヘレンがお茶とお菓子を持ってバルコニーの扉を開けたので、慌ててクォンを花瓶に戻し、遠くの床に置く。
ヘレンは幼い頃、いじめっ子にカエルを背中に入れられる悪戯をされたらしく、それ以来全くダメなんだそうだ。なので飼ってはいるもののヘレンの視界には入れないようにしている。
そしていつものように、二人と二匹の風変わりなお茶会が始まった。
「アルキス山は、あれからどう?」
『んー、ホワイトウルフは減ったな』
『ヒトも、いないー』
ムシャムシャとスコルが口元を動かしながら言い、ハティがそれに頷く。
ハティとスコルはそれぞれ昼と夜、フォンティーヌの森、およびそれに連なるアルキス山のどこかにいることが多い。ついでに変な亜種が生まれてないか、あれから密猟者がいないかなどを調べておいてほしい、とお願いしてあったのだ。
『減り過ぎて絶滅するんじゃないかと思うぐらい』
「やっぱりオール黒焦げはやり過ぎたわよねぇ……」
『あのときはマユに危害を加える可能性があったから、仕方ない』
『ウン、ウン』
「じゃあ、ホワイトウルフがいないから密猟者もいないってこと?」
『ウン。何か、調べている人間は、ちょこっと見た』
それは多分、ガンディス子爵の部隊でしょうね。身分を偽って隣のワイズ王国に潜入しているって話だし。
「本当なら、亜種を生み出す原因を作った密猟者の元締めを炙り出したいところなんだけどね」
『アルキス山はもう無理じゃねぇ?』
「そうねー」
そうなると、密猟した物を売りさばいている人間から足取りを辿った方がよさそうね。お兄様はそうしてるんでしょう、恐らく。
さすがに私がこれ以上考えてもどうしようもないかも。
『まぁ……気が向いたら、ワイズ王国側の森にも足を延ばしてみる』
「本当!? スコルったら気が利くじゃない!」
『その代わり、おっぱい揉ませて』
「……あんたって何かあったらすぐソレね」
『元気が出るんだもーん』
『ハトもー』
「……3秒なら」
『短っ! せめて1分はくれ!』
「嫌よ!」
『うー、じゃあ、30秒』
「5秒」
『……10秒!』
「……」
『えーと、7秒!』
「いいわ、それで手を打ちましょう」
『やった!』
『ワーイ!』
私たちのそんな会話を黙って聞いていたヘレンの眉間に皺が寄る。
「お願いですから、胸の形がおかしくなるような揉み方はしないでくださいね」
『任せとけ! マユのおっぱいは宝だからな!』
『ウン!』
「上から下ではなく、下から上ですよ」
『おう!』
『シタカラ、ウエ……』
ヘレン、スコル、ハティによる“マユのおっぱいを大事にし隊”の謎の会議を聞きながら、思わず溜息が漏れる。
こうして見ると、一番マトモなのは私じゃないかな、とつくづく思うわ。
こんな感じで、週末を過ごす黒い家は、今日も平和です。
そのバルコニーから広がる小さな庭に、森の奥からひょっこりとスコルが現れる。
『マユー、遊びに来たぞー』
「ヘレンのお菓子を食べに来たんでしょ」
『いや、マユのおっぱいを……おおっ!?』
スコルが私の胸元を見て、うげっというような顔をする。
今日は白のフリルシャツにサロペットという、ここでのいつもの姿。
少し開けた胸元には、水色カエル――クォンちゃんがへばりついていた。
『何だ、ソレ!』
「カエルのクォンちゃんだけど」
『こらー、そこのカエル! マユのおっぱいはオレのだー!』
「スコルのじゃないわよ!」
『そこを退け! しっしっ!』
スコルが歯を剥き出しにして私の胸元に向かって飛び掛かろうとしたので、右手で頭部の両耳の間をガバッと掴む。ジリジリと押し戻すと、スコルが『ンガガ』と声を上げた。
「ちょっと、乱暴はやめなさい。怯えるでしょ?」
『ズリぃー、ズリぃよぉー! カエルのくせに!』
「何にもズルくありません。ちょっと待ってて」
バルコニーのテーブルに置いていた丸い金魚鉢のような花瓶に水を張り、クォンをその中に移す。
私の水魔法で出した水の中では比較的長い時間おとなしくしてくれるので助かる。
「クォン、しばらくそこにいてね」
と言うと、『キュン』と小さく鳴いた。
なお、『クォン』という名前はアイーダ女史が付けました。飼うことになって
「さすがに名前が必要なんだけど」
と言うと
「では念のため、わたくしが名付けます」
とキリッと眼鏡の縁を上げたと思ったら、口にしたのがこの名前だった。
多分、泣き声からだと思う。離れようとすると『クォン、クォン』と切なそうに泣くのよ。涙ポロポロこぼして。
そのまんまだけど、まぁ覚えやすいしいいわよね。
それにやっぱり、ちゃんと名前を付けてよかった。
拾った当初は意思の疎通が全く取れなかったんだけど、名前を呼ぶと反応するようになったし、ぼんやりとではあるけどクォンの機嫌が分かるもの。
『変な色のカエルだな』
「そうなの。事典にも載ってなかったのよ」
『ふうん』
「自分で餌も取りに行かないしね」
草むらや水辺に昆虫を取りに行くことは無いけど、水の中に蜘蛛やミミズを入れてあげるとモグモグ食べている。貴族のカエルかお前は、とか思っちゃうんだけど。
おかげで最近はすっかり虫探しがクセになってしまった。
幸いクォンは少食らしく、一日一匹でOK。餌が無いと暴れる、というようなこともないし、大量に虫を捕まえておく必要もない。あんまり手間がかからないコだ。
『……魔界のカエルかもなあ』
「えっ!」
びっくりして並べようとしていたお皿を手から取り落としそうになる。
スコルは
『何かじぃちゃんのところで見かけた気がするんだよなぁ』
と呟き、花瓶の中を覗き込んだ。
クォンは逃げるでもなく「何ですか?」みたいな顔をしてジーッとスコルを見上げている。グワッと一瞬だけスコルが魔精力をみなぎらせたが、クォンは一瞬ビクッとしただけでそのまま水の中に鎮座していた。
『うーん、これで逃げないということは、やっぱり魔界のカエルだ。ハティに聞いた方がいいかも』
スコルが珍しく真面目にそんなことを言うので、お茶会の準備もそこそこにハティを召喚する。
花瓶を覗き込んだハティは
“あ、スクォリスティミだ”
と思念で呟いた。
「スクォリ……?」
“魔界のじぃちゃんのトコにいた、カエル”
「ハティは知り合いなの?」
“ううん。見かけただけ”
はぁ、魔界のカエル。
え、ちょっと待って。二人がじぃちゃんと言ってるのは、王獣アッシメニアのことよね?
「えーと……ひょっとして、魔物? 魔獣?」
“んー、どっちでもない。じぃちゃんの沼で、クゥクゥ鳴いてた”
『あー、アレか』
ハティの言葉に、スコルが思い出したように声を上げる。
その後、知識はあるけど言葉足らずのハティをスコルに補ってもらいつつ、二人からじっくり話を聞いた。
それによると、『スクォリスティミ』は魔王侵攻の際に魔界に紛れ込んだカエルのことで、魔界の風に吹かれ魔精力を大量に取り込んだものの歪まずに生き残った奇跡のカエル。アッシメニアのペットのような感じになっているらしい。
ひどく寂しがり屋のカエルで、泣きすぎると全身溶けてしまうという。
どうやら前にスコル達が無理矢理穴を開けた際、その『スクォリステイミ』の一匹が人間界に逃げたらしい。どこかで泣いてはいないだろうかと、じぃちゃんことアッシメニアが心配していた、とハティが説明してくれた。
「じゃあ、迷子のカエルってこと?」
『ウン』
「魔界に帰した方がいいのかしら……」
そう呟くと、花瓶の中にいたクォンがビョーンと飛び出し、ピタッと私の肩に乗ってきた。そのままいそいそと移動し、胸元にへばりつく。
「こらっ」と言って引き剥がそうとしたけど、『クォン、クォン』とポロポロ涙をこぼしていた。
「あわわわ」
泣くと溶けると聞いて慌てて手を離す。クォンは『キュン』と一声鳴くと、すりすりと私のおっぱいに頬ずりしていた。
そんな私達の様子をチラリと見ながら、スコルが不満げに鼻を鳴らしている。
『帰すならマユが自分でじぃちゃんのところに連れて行かないとな』
「む、む、無理よ!」
『だなー』
『マユの近くに、置いておけば、だいじょぶ』
「本当に? ハティ」
『ウン』
『スクォリスティミ』は魔界のカエルだけど、大量の魔精力を保有しているだけで悪さをするわけではない。水属性の魔精力に馴染みやすいだけで、魔法すら使わないのだ。
アッシメニアが心配していたのは泣いて溶けてしまっているのではないか、ということであって、こうしてマユのところで落ち着いているのなら大丈夫じゃないか、とのこと。
まぁ、クォンが私のところに来てから数日は経ってるし、何も言わないってことは暗黙の了解ってことでいいわよね。
つまり、私はアッシメニアからペットを譲り受けたことになるのか。
……あれっ、これって何か凄いことのような気がするけど。いいのかしら。
「まぁ、いいわ。クォン、人間界にいて大丈夫みたいだから、改めてよろしくね」
『キュン』
「その代わり、ちゃんと言うこと聞いてね。むやみに飛び出しちゃ駄目よ」
『キュン……』
『マユのおっぱい、最強だな!』
「言い方を考えてね、スコル」
『ハトも、好きー』
「ありがとうね、ハティ」
『なーんかタイド、違いすぎねぇ?』
* * *
その後、ヘレンがお茶とお菓子を持ってバルコニーの扉を開けたので、慌ててクォンを花瓶に戻し、遠くの床に置く。
ヘレンは幼い頃、いじめっ子にカエルを背中に入れられる悪戯をされたらしく、それ以来全くダメなんだそうだ。なので飼ってはいるもののヘレンの視界には入れないようにしている。
そしていつものように、二人と二匹の風変わりなお茶会が始まった。
「アルキス山は、あれからどう?」
『んー、ホワイトウルフは減ったな』
『ヒトも、いないー』
ムシャムシャとスコルが口元を動かしながら言い、ハティがそれに頷く。
ハティとスコルはそれぞれ昼と夜、フォンティーヌの森、およびそれに連なるアルキス山のどこかにいることが多い。ついでに変な亜種が生まれてないか、あれから密猟者がいないかなどを調べておいてほしい、とお願いしてあったのだ。
『減り過ぎて絶滅するんじゃないかと思うぐらい』
「やっぱりオール黒焦げはやり過ぎたわよねぇ……」
『あのときはマユに危害を加える可能性があったから、仕方ない』
『ウン、ウン』
「じゃあ、ホワイトウルフがいないから密猟者もいないってこと?」
『ウン。何か、調べている人間は、ちょこっと見た』
それは多分、ガンディス子爵の部隊でしょうね。身分を偽って隣のワイズ王国に潜入しているって話だし。
「本当なら、亜種を生み出す原因を作った密猟者の元締めを炙り出したいところなんだけどね」
『アルキス山はもう無理じゃねぇ?』
「そうねー」
そうなると、密猟した物を売りさばいている人間から足取りを辿った方がよさそうね。お兄様はそうしてるんでしょう、恐らく。
さすがに私がこれ以上考えてもどうしようもないかも。
『まぁ……気が向いたら、ワイズ王国側の森にも足を延ばしてみる』
「本当!? スコルったら気が利くじゃない!」
『その代わり、おっぱい揉ませて』
「……あんたって何かあったらすぐソレね」
『元気が出るんだもーん』
『ハトもー』
「……3秒なら」
『短っ! せめて1分はくれ!』
「嫌よ!」
『うー、じゃあ、30秒』
「5秒」
『……10秒!』
「……」
『えーと、7秒!』
「いいわ、それで手を打ちましょう」
『やった!』
『ワーイ!』
私たちのそんな会話を黙って聞いていたヘレンの眉間に皺が寄る。
「お願いですから、胸の形がおかしくなるような揉み方はしないでくださいね」
『任せとけ! マユのおっぱいは宝だからな!』
『ウン!』
「上から下ではなく、下から上ですよ」
『おう!』
『シタカラ、ウエ……』
ヘレン、スコル、ハティによる“マユのおっぱいを大事にし隊”の謎の会議を聞きながら、思わず溜息が漏れる。
こうして見ると、一番マトモなのは私じゃないかな、とつくづく思うわ。
こんな感じで、週末を過ごす黒い家は、今日も平和です。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説

〈完結〉髪を切りたいと言ったらキレられた〜裏切りの婚約破棄は滅亡の合図です〜
詩海猫
ファンタジー
タイトル通り、思いつき短編。
*最近プロットを立てて書き始めても続かないことが多くテンションが保てないためリハビリ作品、設定も思いつきのままです*
他者視点や国のその後等需要があるようだったら書きます。

ピンクの髪のオバサン異世界に行く
拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。
このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる