【完結】魔法少女お助け係に任命される 〜力隠してクラスの事件を解決します〜

野々 さくら

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17話 魔法少女と恋の魔法

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 自作自演を疑われて二週間後の夏休み前。
 あいつのおかげか、私が魔法を使っていると騒がれることはなかった。


 しかし最近変だ。私が。
 あいつのことを考えると、やたらソワソワしてしまうようになった。
 最近の私は変だ。
 あいつのことを考えると、心臓がうるさいぐらいドクンドクンと鳴る。
 最近の私は変だ。
 あいつのことを考えると、体全てが熱くて仕方がない。

 今までは普通だったのに、どうしてしまったのだろう?


 昼休み。私は変わらず寝ている。
 礼美ちゃんたちと友だちになった時、始めはムリして起きていた。
 でも私が昼寝しないと疲れてしまう体質のことを理解してくれて、そっとしてくれている。

 それに気づいてくれたのも礼美ちゃん。
 少なくても、そのころからきっと気づいていただろう。
 私が魔法を……。


「えー! 翼くん、すごーい!」
 女子の声が聞こえてきて、私は机につっ伏していた頭を上げる。

 あいつと一緒にいる伊藤さんたちだ。
 いつもの光景。しかし私はあいつばかりを見てしまう。
 ソワソワして寝られないのだ。

 私はあいつをチラッと見ては、目をそらす。
 最近、そんなことばかりを繰り返してしまっている。
 絶対変だよね。
 頭では分かっているけど、やめられない。
 
 すると、あいつがこっちを見た。
 そして、こっちにふにゃとした顔で笑いかけてくる。

 その瞬間、心臓がドクンドクンと音を立てて鳴り、私の体は一気に熱くなった。
 まただ。どうなってるの。

 私は、教室から出て行く。
 あいつが女子と一緒にいる姿に、どうしようもなくイライラしてしまうからだ。

 出てきたのは中庭。
 桜の木は青々とした葉っぱを付け、夏の始まりの風を優しく教えてくれる。

『優花を信じている』
 その言葉が今も頭から離れない。
 そんなこと初めて言われた。

 あの日から。いや、あの時から私は変だ。
 体の変化だけじゃない。
 青空が、入道雲が、風にゆれる木や花や、中庭の池が、全てがすごくきれいに見える。

 ……そして、それと反比例して考えてしまう黒い感情。
 それは……。


 昼休み終了のチャイムが鳴り、私は教室に向かう。
 やっと、昼休み終わった。
 いつもなら、昼寝の時間が終わる嫌な時間なのに、今は喜んでしまう。
 昼休みはあいつのそばに伊藤さんたちがいる。それが嫌だからだ。

 教室に戻るためにろうかを歩いていると、私を抜かして走っていく先生たち。
 その顔は険しくて、何かあったのだと分かる。
 そう思いながら教室に戻ると、クラス中がざわついていた。

 中心にいるのはあいつと、いつも取り囲んでいる三人の女子。そして先生が何人もいる。
 え? 何? 何があったの?

「みんな。ゆっくり深呼吸して。大丈夫だから」
「岡村くん。先生の顔見える?」
「今は驚いてしまっているだけだからね」

 先生たちが、優しく声をかけている。
 しかし、女子三人は静かに泣いていて、あいつは全然違う方向に向かって大丈夫だと声をかけていた。

 え? もしかして私の力?
 いや、でもそんなはずは。私は何も願ってなんか……。

「優花……」
 あいつは私をじっと見てきた。

「岡村くん! 見えるの?」
「はい、優花がいます」
 先生の問いに答えたあいつは、こちらをじっと見つめてくる。

「先生の顔は?」
「え? いや……」
 そう言うと、こいつは黙り込んでしまい、私から明らかに目をそらしてきた。

 次の瞬間、嫌な汗が出る。

 あ……。私、さっき考えたよね?
 伊藤さんたちと関わらないで。話さないで。
 ……翼、私以外を見ないでって。

 どうしよう! 私のせいだ!

 血の気が引いていくとは、このことを言うのか。
 本当に、それぐらい私の体は一気に冷たくなった。

 お、お願いします。翼の目を元に戻して!
 私の体は、いつの間にかガタガタと震えていた。
 お願い! お願い!


「……あ……れ? あ、大丈夫です! 見えます!」
 次の瞬間、翼の視力は元に戻ったみたいで、周りに大丈夫であることを主張する。

 良かった……。本当に。
 次は、伊藤さんたちの声を戻さないと。
 私は、元に戻して欲しいと願う。

 しかし、その声が戻ることはなかった。

 どうして? あいつは元に戻ったのに!  どうして! どうして!

 結局、伊藤さんたちの声は戻らず三人は病院に行くことになった。
 おそらく精神的なことで、一時的に声が出なくなってしまったのだろうと病院の先生は言っていたらしい。

 伊藤さんたちは当然学校を休むことになり、家で寝ていることになった。

 またやってしまった。
 ……私は、私は。
 幼稚園児の時、伊藤さんたちの記憶を消してしまったことがある。

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