【完結】魔法少女お助け係に任命される 〜力隠してクラスの事件を解決します〜

野々 さくら

文字の大きさ
上 下
5 / 22

5話 魔法少女と差出人不明のラブのレター(1)

しおりを挟む

「何これ! 嫌がらせ?」
 私は手紙を見て、手を震わすけど。
「……普通にラブレターだろ?」
 そんな私に、こいつは呆れたような顔を見せてくる。

「ラブレター? ラブのレター? 何それ? 何がしたいの、そんな物渡して」
「愛の告白だ」
「何で直接言わないの?」
「直接言えないこともあるんだよ。優花は鈍いなー」

(悪かったな! だったら、差出人の名前ぐらい書いといてよ。全く、さっさと出てきてよ。その差出人!)
 こいつの得意げの顔にイラッとしてそう思うけど、それはマズイ。

(……あ、待って、やっぱり出てこないで! 人を呼んでしまうのは、すごくまずい! 自分を抑えろ! 心にフタ! お願い、来ないでー!)
 私は慌てて周りを見渡すが、それらしき人は居ない。
 どうやら間に合ったようだ。良かったー!


 何度もやっているが、魔法の力が出る前に強く念じることで止めることもできる。
 でも、取り消すのはすごく力がいて疲れる。
 だから、本当はやりたくないのだ。

「相手に心当たりとかないのか?」
 手紙を見つめながら、こいつはするどい目つきでそう聞いている。

「ない……かな……」
「学年は同じだと思うか?」
「え。えーっと」
 米田さんは口ごもり、うつ向いてしまう。
 だけどこいつも引かない。

「頼む、教えてくれ」
「……同じだと思う……」
「そっか。ありがとう。じゃあ最後に。この手紙になんて返事するつもりなんだ?」
「え! あ、いや、その……」
 こいつの問いに、米田さんはまたうつむき、モジモジとしてしまう。
 そのほっぺは、さっきより赤くなっていた。

「……分かったよ。じゃあこの手紙、預かって良いか?」
「え? あ……」
 米田さんは手紙を渡してきて、何かを言おうと口を開けるけど、すぐにギュッと閉めて黙り込んでしまう。

 あれ? こんなに話さない人だっけ?

「大丈夫、丁重に扱うから」
「あ、ありがとう。お願いできる?」
 そう言い、米田さんは何度も頼みながら家に帰って行った。
 そんな背中にふっと思う。
 変な手紙なんか、放っておけば良いのに。

「じゃあ……」
 こいつにそう言い、私も家に向かおうとする。

「何言ってるんだよ? これから、お前の家でミーティングだろ?」
「……え? はあー? しかも何で私の家なの!」
「オレは四年の頃に引っ越ししてきたから、情報が少ない。だけど、優花の家ならあるだろう?」
「何が?」
「文集だよ」
「文集? 学年の終わりに一年のまとめを書くあれ? そんなもん見てどうするの?」
「字を見比べるんだよ」
「え? マジで? 五年生男子って何人いると思っているのー! 」
「えー。八十人ぐらいだったかな?」
「ウソでしょう……」
 放心状態の私を尻目に、結局こいつは有無を言わさず私の家に来た。

(カギは自分で使う! 自分で使う!)
 私はカギをランドセルから取り出し、早々に念じる。
 こいつの前で、うっかり魔法を使ってしまったら終わりだからだ。

「おじゃましまーす!」
「じゃまするなら帰ってー!」
「あいさつだろ? いらっしゃいぐらい言えないのか?」
「言わなーい!」
 そう言いながら、リビングでこいつを待たせる。
 早く帰らせたい。そう思いたいのを必死に抑えて、私は二階にある自分の部屋に行く。
 こいつに、絶対ここで待っていてと念を押しながら。

(文集は確か……)
 部屋を見まわし、どこに片付けたかを思い出す。
(あ、そうだ棚の奥の……)
 そう思った瞬間、私の両手に一年生から四年生までの文集が現れる。
(うわあー! またやっちゃったー!)

 また魔法を使ってしまった。
 場所を思い出した瞬間、取り出すのが大変で嫌だと考えてしまったからだろう。
 睡眠不足から抑えられなかったのも、一つの理由だ。
(まあ、誰も居なかったし、良か……。)

 後ろを振り向くと、こいつは無表情で私を見ていた。

(終わったー! 見た? 見たよね? 私のバカー! 自分の部屋だからって気を抜き過ぎた!)

 私の頭の中はパニックになる。もうだめだ、もう……。

「……へぇ、優花はこういうの好きなんだ」
 そう言い、こいつは私の部屋に入って来た。

「は? ちょっと待って! 何、勝手に入って来てるの?」

 私の部屋は、カーテン、ベッド、机、タンス、全てがピンクだ。
 しかも、ユルカワイイ「ウサウサ」という、うさぎのぬいぐるみが大好きで集めている。
 ……極め付けには、幼稚園向けのキャラクターだったりする……。

 こいつに、こんなの見られるなんて本当に終わったー!

「学校では、服も持ち物も地味なのにこうゆうかわいいの好きなんだ。なんで、学校に持ってこないんだ? 文房具ならキャラクターものは許可されているだろう?」

「うるさい!」
 私はこいつをムリやり部屋から追い出す。
 そうしないと魔法を使ってしまいそうだったからだ。
 あんたには、私の気持ちなんて分からないんだよ!

「……悪かったよ。でも別にいいじゃねーかよ。好きな物は好きで! 」

「笑わないの? 全然、私のイメージじゃないし!」
「そのイメージって誰が作ってるんだ? 」

「え?」
 私は黙ってしまう。そういえば誰なのだろう?

「自分で作ってるんだろ? 別に、お前がかわいい物持ってても誰も笑いもしねーよ。だろ?」

「……うん」
 思わず頷いてしまった。
 なんだろう、こいつは。私の心でも読んでいるのだろうか?
 言って欲しかった言葉を、もらったような気がした。

「そんなことより、米田さんの手紙! 持ってきたの?」
 私はこいつから目をそらす。恥ずかしくて見ていられなかった。

「え? だって下のリビングで……」
「文集を持って降りるのがめんどくさいの! だから、手紙持ってきて! 私のランドセルもね!」
「ああ!」
 そう言い、あいつは降りて行った。
 今のうちに気持ち落ち着かせないと……。

 窓から外の景色を見ながら、深呼吸をする。
 なんだろう、いつもと同じ景色なのに世界がキラキラして見える。
 かわいい物が好きのを知ったのも、この部屋に入ったのも、あいつが初めて。でも、なんか、今は嫌な気は全然しなくて、むしろ……。

「待たせたなー。始めよーぜ」
「うん……」

(だめだ、全然落ち着かなかった。いやいや、今は米田さんのこと! そうだよ、こいつはその為に来ているんだから)

 私は頭の中を、必死に入れかえる。
 米田さんに笑ってもらう為に、差出人を特定したいから。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】ノラ・ジョイ シリーズ

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!? ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~

橘花やよい
児童書・童話
宝石店の娘・ルリは、赤い瞳の少年が持っていた赤い宝石を、間違えてお客様に売ってしまった。 しかも、その少年は吸血鬼。石がないと人を襲う「吸血衝動」を抑えられないらしく、「石を返せ」と迫られる。お仕事史上、最大の大ピンチ! だけどレオは、なにかを隠しているようで……? そのうえ、宝石が盗まれたり、襲われたりと、騒動に巻き込まれていく。 魔法ファンタジー×ときめき×お仕事小説! 「第1回きずな児童書大賞」特別賞をいただきました。

処理中です...