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2話 魔法少女のゆううつ

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 さて、ここで問題です。
 秘密がバレそうな時、どう対応したら正解だと思う?

 1.見まちがいじゃないの? とごまかす。
 2.変なこと言わないで、と怒る。
 3.〇〇くん←(名前忘れた)っておもしろいこと言うね! と茶化す。

 解説
 1.見まちがいじゃないの? とごまかす。→セオリーだけど有効。成功率六十パーセントぐらい。
 2.変なこと言わないで、と怒る。→相手が怯んでもう言わないかもしれない。成功率七十パーセントぐらい。
 3.〇〇くん←(名前忘れた)っておもしろいこと言うね! と茶化す。→バカなこと言ったと思い、言わなくなる。成功率九十パーセント。


「はあ、はあ、はあ」
 私は一人走っていた。

 私の答え。
 4.突き飛ばして逃げる。→認めたようなもの。成功率0パーセント。

(終わったー!)
 そう悟った私は、一人頭を抱える。

(こうなった時のシュミレーションは何度もしてきたのに、なんで最悪の選択をしてしまったのー! いやいや、あいつが悪い。あんな顔近づけて見つめてくる方が!)
 あの状況を思い出し、また顔が熱くなる。

(まったく! なんてやつなの! 天罰よ落ちろ! ……いや、ウソです! 落ちなくていいです!)
 私は、頭の中で何度も何度も念じる。

「はぁー」
 すると襲ってくる、脱力感。
(だめだ、疲れた……。いやいや、歩いて帰る! 歩いて帰る!)

 そう繰り返しながら、家の前にようやく着いた。
(とにかく寝たい……)
 お母さんに渡されているカギを取り出そうと、背負っていたランドセルを下ろそうとした瞬間。
 ガチャっと、玄関のドアが開いた。

(また、やっちゃったー!)

 慌てて周りを見渡すと、見回り活動してくれているおじさんと目が合った。
 なんか言いたそうな不思議そうな目で、こっちを見てくる。

「き、今日もありがとうございましたー!」
 私は慌てて家の中に入り、ドアをバシンと閉める。

(ああー! あの顔は見たよね? またやっちゃったよー! おじさん、忘れて! ……いや、違います! 忘れなくていいです! お願い、忘れないでー!)

 私はまた、何度も何度も念じていた。

「はぁー」
 より疲れが出てランドセルを下ろし、ソファで崩れるように横になる。

 ……この惨劇の通り、『ふっと思ったことが魔法の力になってしまう』。
 それが私の能力。
 「とにかく寝たい」と、ふっと思ったことにより。カギを探すことをすっ飛ばして玄関のカギを開け、ドアまで開いてしまった。
 なんで玄関が開いたか?
 それは、家のソファで居眠りする自分を想像していたから。
 だから時間短縮のために、魔法を使ってしまうのだ。

 この力は、便利そうだと思われそうだけど、そんなことはない。
 思ったことが、全てその通りになる。
 もう、めんどくさくて仕方ないのだ。

 今日みたいにペンケースが落ちそうになって、「落ちないで」とふっと思ったら浮いてしまったり。「とにかく寝たい」とふっと思ったら、玄関ドアが開いてしまう。
 ペンケースに「浮いて」と念じた訳でも、玄関ドアに「開いて」と願った訳でもない。
 ふっと思ったことが勝手に連想されそうなってしまう、厄介な力だ。


 私は疲れからそのまま寝てしまい、目が覚めたら夕方。
 窓からオレンジ色の夕日が見える。
(やばっ、何時間寝ていたの! ……お腹すいた)

 するとその瞬間、冷凍庫から鶏肉が出てきて勝手に解凍をし始め。冷暗所から玉ねぎが出てきて皮むきを始め。冷蔵庫から卵が出たかと思えばボールに割って入れ、引き出しから勝手に出てきた菜箸で溶き始める。
(またやってしまったー! ストップ!)

 そう念じると、それらの動きは全て止まる。
「い、家で良かった……」
 心臓がバクバク鳴りながら、思わず一言。

 ── お腹すいた。
 その思いと共に、オムライスが食べたいと想像した自分がいた。
 だから勝手に準備を始めてしまったみたいだ。

 気持ちが落ち着いた私は、自分で食事の準備を始める。
 魔法を使わない。それを徹底しているからだ。

 お母さんが言うには、赤ちゃんの頃から魔法が使えたらしい。
 ねんねの時から、ミルクを勝手に飲んだり、おもちゃを動かして遊んでいた。
 初めて見た時はひっくり返りそうになったと笑って話してくれた。そりゃ、そうだろう。

 お父さんもお母さんも、私の力のことは理解してくれている。
 だから家ではやらかしても笑って見てくれていて、すごく気が楽だったりする。
(ついでに二人の夜ご飯も作るか……)
 そう思い、材料を追加した。

 しかし、今日は盛大にやらかしてしまった。
 昨日まで春休みだったから気が抜けてしまっていたようだ。
 それに春は暖かく眠たくなりやすい。眠いときは気が抜けてしまい、ふっと色々と考えてしまうのだ。

 明日から気を引きしめないといけない。
 そう思い、私は心にフタをした。
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