[完結] 偽装不倫

野々 さくら

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35話 川口圭介(6)

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結婚生活は混乱ばかりだった……。


『圭介、今日何食べたい?』

佐和子が聞いて来る。


『……え?チョコかな……?』


『ご飯の話しだよー。』


『……え?あ、なんでも良いかな……?』

『えー?何か言ってよ。』


『佐和子が食べたい物で良いから……。』


── 俺は意見を聞かれるのが初めてで、どう答えて良いのかが分からなかった……。


家に居る時は母さんが大半を決めていた。

大学生になり家を出た時は、自分で住む場所やバイト先を決めたりしていたけど、それは自分だけの希望だから決められた。同様に一人の食事や、佐和子に出す食事は自分で選べた。何故なら自分が作り、食費にも限りがあり他の選択肢がなかったから……。

しかし相手に何かをしてもらおうとしたり、選択肢が出来ると急に選べなくなった。

そのほかにも二人で住む新居、ネット回線などをどこまで契約するか、結婚する上で決めないといけない事は多数あったが俺は何も言えなかった……。

こんな俺だから、せっかく東京に指輪を買いに行っても、俺は選べずに佐和子を驚かせてしまった……。

しかも、せっかく買った指輪をなんか恥ずかしくなってすぐ外してしまったし、何をやっているのだろう?


……今までどうしてきたのかと思い返すと、友人が俺を助けてくれていた。選べずに悩んでいると、俺が無意識に見ている方をさりげなく勧めてくれたり、何も言わない俺の意見を一回一回聞いてくれていたのだと気付いた。


そして勉強や仕事は、数字や相手の意向に合わせていくものだから影響なかったみたいだった。

……だから社会生活では困らなかったけど、好みや趣味趣向のような曖昧な事を聞かれても決められなかった……。


そして一緒に住むという事は、当たり前だけどずっと一緒に居る事。勿論嬉しいけど、それは好きなテレビが見られない事だった……。以前、仮面ヒーローをこっそり録画しておいたら、佐和子が「録画間違えたー!誰が見るの?」と笑っていた。

……それはそうだ、少年が見るものなんだから……。俺が録画したなんて夢にも思わなかっただろう……。


その他にも、俺は脂っこいものが幼少期からの食生活からか受け付かない。その為、佐和子は薄味のさっぱりしたものに合わせてくれ、揚げ物を控えた和食を中心にしてくれた。

それは、スーパーの惣菜やお弁当はなどに頼らず、いつも佐和子が手作りで一から作ってくれるという事。俺はふりかけご飯で良いのだけど、佐和子がそれを許さずにご飯とお弁当まで作ってくれた。

毎日の手間……、そして佐和子は洋食やファーストフードが好きなのを知ってる……。本当に申し訳ないと思っている……。


『美味しい……。』

俺は食事をしながら呟く。

『何が好き?』


『全部好きだよ。……特に魚かな?この魚すごく美味しい。』

『赤魚の煮付けね。分かった。』


佐和子のおかげで肉や魚が人並みに食べられるようになり、また食生活の改善の為か以前に比べ体も丈夫になっていった。……まあ普通の人に比べると虚弱だけど、すぐ熱を出す体質は改善された。

転勤先は雪国だったけど、雪かきをしても熱を出すこともなく、以前寒空の下歩いただけで熱を出していた俺には、それが驚きだった。




そんなある日、俺が家でテレビを見ていると……。


パリン!

俺の体がビクッとなる。

『……あ!ごめんなさい……。』

佐和子が慌てて声に出す。


『……ど、どうしたの……?』


『食器落としちゃって……。』

『大丈夫?』


『うん、でもこれ圭介のお茶碗なのに……。』

『い、良いんだよ。』

俺が片付けを行い、佐和子がその間に掃除機を取りに行く。


『ありがとう。……随分手際が良いんだね……。』

『そ、そうかな?はは……。』


バクンバクンバクン。

冷静を装っていたけど、俺の心臓は激しく鼓動を打っていた。


── 落ち着け……。佐和子は俺に投げつけたのではない……。大丈夫だから……。


家を出て十年が経っても俺は母さんに怯えていた。……食器を投げつけられ、割れた食器の片付けをしていた幼少期の記憶が蘇ってきた。


『ねえ?大丈夫?』

佐和子は俺を見て聞いてくる。

……俺の体は無意識に震えていた。掃除機を見ると、叩かれていた事まで思い出してしまったからだ。


『佐和子!』

俺は佐和子をただ抱きしめた。

『どうしたの?』

『な、なんでもないからしばらくこうさせて……。』

『うん、いいけど……?』


俺は自身の過去を話せなかった……。虐待を受けていたなんて……、両親に愛されなかった子供だなんて佐和子には知られたくなかった……。


『圭介……。』

佐和子は何も聞かなかった。時折おかしくなる俺を見て不安な表情を見せるも、話を変えて笑って話しかけてくれた。

そんな佐和子のおかげで辛い過去を少しずつ忘れられるようになっていった。






転勤から二年、29歳になってもこの地で働いていた。しかし、転勤半年ぐらいから佐和子の様子が少しずつ変わっていった……。


『ただいま。』

『……おかえりなさい。』


佐和子は何も言わず食事の準備をする。


……この二年で佐和子の口数が減ってしまい、表情も暗く塞ぎ込むようになった。買い物以外はどこにも行かずずっと家に居た。

見かねた俺は休みの日は出かけようと誘ったけど、佐和子は嫌がり家にばかり居た。


── こんなに話さない子だっけ?確かに家も好きだと言っていたけど外出も好きだった。それに以前はもっと笑っていた、花のように可愛らしく……。


佐和子を心配していた日々を過ごす中、辞令が出た。次の勤務先は佐和子の実家付近の支店だった。

佐和子の実家の近く……、つまり俺の実家の近くだ……。


『……え?』

俺は凍り付く。あの実家に?……嫌だ……。

勤務地は実家の隣の市であり、車で15分ぐらいの距離だった。田舎の小さな町、うっかり鉢合わせしてもおかしくない距離……。俺は怯えた。


しかし、佐和子に転勤の事を話すと笑った。地元に帰れると……。


それから佐和子は急に活気に満ち溢れた表情をし、引越しの準備を始めた。その表情は昔のような明るい笑顔。……花のような笑顔だった……。

俺は気付いた。佐和子はずっと我慢していたのだと。

慣れない土地に慣れない人。俺は進学や転勤で何度となくしてきたけど佐和子は初めて。相当なストレスだったと……。


『……ごめんな、帰ろう。』

『うん!』


しかし、母さんと対面してしまったらどうなるのだろう?その恐怖に俺はただ震えた。


そんな引越しを控えた時、お義父さんから電話がかかってきた。「大丈夫だから帰ってきなさい」との事だった。

話によると、母さんはまた借金をしたらしく母さんの母親、俺の祖母に連れられ実家に帰ったらしい。


── 俺のせいだ……。俺がお金を送らなかったから……。

黙り込む俺をお義父さんは

「君のせいじゃない。息子の生活が困窮する事が分かっていたのに、収入の大半を仕送りさせる親。どこかで断ち切らなければ君はおかしくなっていた。お母さんは実家で生活する事になったし、借金はおそらくおばあさんが返してくれたのだろう。大丈夫だから……。」

そう言って宥めてくれた。


俺はしばらく罪悪感に押しつぶされ苦しんだけど、そんな俺を佐和子は支えてくれた。

……佐和子はなんとなく気付いているだろう。俺は普通の人と何かが違う……と。それでも何も聞かずただ側に居てくれた。

俺は頼んだ、一緒に実家に来て欲しいと。

佐和子は了承してくれ、地元に戻り荷解きをする前にバスで実家に向かった。すると……。


もう、別の家族が住んでいた。大きくて、綺麗な家だった。……しかし、俺はこの家が大嫌いだった。

滅多に帰って来ない父、いつも不機嫌で俺を叩いてくる母。良い思い出なんてなかった。家も、仲の良い家族が住んでいた方が幸せだろう。そう思ったけど……。


俺の目からは涙が流れていた。……何故か分からない。もう母さんに会えないから?もう家には帰れないから?分からなかった……。


『圭介?大丈夫?』

佐和子が心配そうに俺を見てくる。


── 佐和子が俺が親を見捨てたと知ったらどう思うだろう?軽蔑されるよな……。

『……ごめん泣いて……。なんでもないよ……。帰って荷物を出さないと……。』


『……今日はいいじゃない?私も行きたい所があるの。来て!』

そう言うと佐和子は、佐和子の実家に俺を連れて行った。ご家族に挨拶をしようとする俺を、佐和子は可愛い黄色の車に無理矢理乗せた。


『じゃあ車もらっていくから!挨拶はまた後で!』

そう言い残し、車を走らせた。


『いやいやいや、挨拶しないと!あ、お土産は家か!』

『そんなの後で良いの!』


『車使ってもらっていたんだよね?持って来て良いの?』

『大丈夫ー、返してもらう予定だったの。メンテナンスもしてもらっておいたし!』


佐和子は18歳で免許を取得し、よく車で遊びに行くと言っていたけど、転勤先には持ってこなかった。

前住んでいた土地は結構な都会で車の交通量が多かった。その為、佐和子は田舎道しか知らないからと運転を怖がり、車は実家で使って欲しいと頼んでいたらしい。

しかし今回帰って来れたのと、あまり使ってないとの事で佐和子がまた車を持つことになったらしい。


『久しぶりの運転!二年振りだけど体はやっぱり覚えてるものね!』

『へえー、すごいな!俺は免許持ってないからよく分からない感覚だな。……どこ行くの?』

『秘密!』

そう言い佐和子は車を走らせる。その先には……。


綺麗な海が見える浜辺だった。


『うーん、いつ来ても綺麗な場所!』

『え……?もしかして海!』

『そうだよ、あれ?来た事ないの?小学校の校外学習とかで来なかった?』


俺はこの場所の看板を見る。……名前は聞いた事があった。小学校四年の校外学習で初の泊まりだと友達と喜んでいたら、母さんが行ったらだめだと言った。テストで100点取れなかったから……。

学校で行けなくても、家から30分の距離。車やバスに乗り、家族で海に遊びに行く事はあるだろう。……しかし、俺は連れて来てもらった事がなかった。


大人になってもわざわざ行く事はなく、初めての海だった。


佐和子がそんな話聞いたら、普通に引くだろう……。だから……。

『その日熱出して……。はは……。』

嘘を吐いた。


『……そっか……。』

佐和子は俺を見て何かを言いたげな表情をする。


『お、俺子供の頃は本当に病弱で……。』

無理に笑う。


『……じゃあ、今校外学習のコースに行こう!』

そう言い佐和子は俺を引っ張って行く。そこは隣接した山だった。小学生が登る小さな山。それなのに俺は一人息切れした。

それでも登り切ると、展望台から海が見えた。


『すごい!綺麗だな!』

俺は初めて見る景色に感激した。その他にも木や野花や鳥、久しぶりにじっくり見た。俺が嫌いだった地元にはこんなに美しいものがいっぱいだったんだ……。

山から降りて来ると目の前には夕日と海が広がっていた。

── 綺麗だな……。実家から車で30分の距離にこんな綺麗な場所があったのか……。俺は本当に何も知らないんだな……。海や山の美しさも夕日も……。

その後、日没までゆっくり見届け車に乗り帰る。


『……佐和子ありがとう……。』

『ううん 来たかっただけー。あ、実家行って良い?お兄ちゃん達がうるさいから!』

『勿論、一度アパートに戻ってくれる?お土産取りに行かないと!』

『うん!』

その後、佐和子の実家に挨拶に行った。佐和子はすごく喜び、安堵の表情を浮かべていた。


── やっぱりホームシックだったんだ……。知らない土地に付いて来てくれた、今日もすぐ両親に会いたい気持ちを抑えて実家に行ってくれ、連れ出してくれた。

感謝しかなかった……。



その後佐和子は以前働いていたスーパーに再雇用してもらい働き始めた。


そして高校の友達の裕太と綾乃さんに会いに行き、佐和子は久しぶりに再会に喜んでいた。


俺も久しぶりに裕太に会い喜んでいると、「あの時は気付かなくて悪かった」と謝ってきた。

俺がやたら東京に行きたがっていた様子や、その後の母さんの悪評から俺が困っていたとようやく気付いたと話してくれた。


……俺はその言葉だけで充分だった。理解してくれる人がいてくれる、すごく救われた……。


だから俺は前を向いて生きていくと決めた。





地元に戻って来て半年、佐和子は土曜日に仕事の休みを希望し車で色々な所に連れて行ってくれ、俺の世界を広げてくれた。

だけど、佐和子は地元のような田舎道じゃないと運転は出来ないと言っている。次の転勤場所が都会なら、佐和子はまた塞ぎ込むだろう。だから……。


『……俺も免許取って良いかな?』

『え?』


『俺も運転してみたいんだ!……いいかな?』

『うん!』


俺も運転して佐和子を連れて行きたい……。次転勤になって、佐和子が運転が怖いと言っても俺が運転して佐和子を車で連れ出す。そう決めた。

こうして俺は教習所に通い免許を取得した。



『どこ行きたい?』

『圭介は?』


『佐和子が選んで。』

── 佐和子が選んだ場所に連れて行きたい。


『うん……、じゃあ……。』


こうして、土曜日は車で出かけるのが習慣になった。買い物、レジャー、ただのドライブ、それでも楽しかった。







地元に戻って来て一年、裕太と綾乃さんが結婚する事になった。俺達を引き合わせようとしている間に仲良くなり、付き合い、結婚するなんて運命だなと感じる。

そして二人のおかげで俺達は結婚出来た。とても感謝しており、祝福したい。その思いで佐和子と共に参列した。


挙式に披露宴、とても良い式で二人はすごく幸せそうだった。綾乃さん綺麗だった……。……佐和子も着ないのかな……。


『綾乃綺麗だよ……。』

佐和子はそう言いながら、式の始まりから披露宴が終わり車の中でもずっと泣いていた。人の幸せをここまで祝福出来る、真っ直ぐ育ってきた証だ。


『良い式だったー!』

帰って来た佐和子は、スマホの写真を見ながら綾乃さんに送る写真を厳選していた。

裕太は白のタキシードでビシッと決め、綾乃さんはシルエットが美しさを引き立てると言われるマーメイドドレスと呼ばれる純白のドレスを着ていた。そのドレスは光に照らされるとキラキラ光り綾乃さんの美しさをより引き立ていた。

二人とも綺麗に着こなし、本当に良く似合っていた。

佐和子は写真を見てまた泣き出し、俺は佐和子の涙を拭きながら、その写真を見て呟く。


『……佐和子は憧れないの?』

『え?』

『ドレス。』

佐和子は俺の言葉にスマホの写真をじっと見たかと思えば、わざとらしく笑い始める。

『私?ないない!ああゆうのは綾乃みたいな美人が着るものだし!』

『……でも、佐和子も……。』


『それより、どっちの写真の方が綺麗に写ってると思う?』

『え……。えーと、どっちも綺麗だと思うよ……。』

『あー、確かにそうだよねー。どっちも選んじゃえ!』



……俺達は式を挙げなかった。結婚を決めたあの日、式はどうするか聞いたら佐和子の答えは「しない」だった。


母さんへの仕送りをしていた関係で俺の貯金はほとんどなく、二人が住む分の賃貸物件の費用、引越し代がかかる事から式代は用意出来なかった。

お義父さんお義母さんは佐和子に用意していた結婚資金はあるし、もし気を使うなら借りる事にしてもいいと言ってくれたけど、それは嫌だった。


でも結婚して三年、今は貯金もある。

仕送りを止め、二人で慎ましく生きていたらお金はこれほど貯まるのだと驚いた。佐和子が節約をしていてくれたのも大きかっただろう。

そして地元に帰って来てからは、佐和子がスーパーで働いてくれるようになり尚更。今なら……、今なら……。

でも俺はそんな気持ちを話せなかった……。






そしてその後すぐ、30歳の結婚記念日を迎えた。

佐和子が海を見たいと言うから寒空の下、海見えるあの浜辺に二人で行った。


そこで佐和子が俺を見て言った。

『そろそろ子供が欲しい』

と。


俺はその言葉に固まった。


── 子供……。俺が父親になるって事か……?……俺もあの男みたいにならないか?話しかけても無視され、手は跳ねのけられ、発達が遅かった俺を見切り「お前のせいだ」と母さんに責任転嫁していた……。息子が殴られているのを見ていただけの男の息子が父親に……?


俺は佐和子の顔を見る。


── でも佐和子なら、もし俺が子供の発達具合で扱いを変えようとしたら止めてくれる。しっかり愛して育ててくれる。俺の間違いをしっかり指摘してくれるだろう。……きっと生まれて来た子は佐和子みたいなおっとりとした子だろうな。見てみたい……、会ってみたい……。俺が愛されなかった分も俺は我が子を愛したい。



俺は笑って頷いた。


『……本当に良いの?』

『うん。』


『……ありがとう……。』

心なしか佐和子は嬉しそうではないけど、俺も子供を望むようになっていた。


しかし、気持ちとは裏腹に俺は毎回避妊をしようとして佐和子にしなくて良いと止められる始末。……初めての時の失敗が俺の中で深く残り、その癖だけは治らなかった。

その都度佐和子は何か言いたそうにしていた……。







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