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22話 川越大輔(1)
しおりを挟むあらすじ
SNS上で誹謗中傷を受けた佐和子は病んでしまい食事が出来ず不健康な痩せ方をしていまう。夫の圭介は看病をし事情を聞くが、佐和子は圭介に離婚を告げられる事が怖くて話せない。
一方、バーのマスターの大輔は佐和子が誹謗中傷を受けている事、その嫌がらせをしてたのがバーの常連であり自分に好意を寄せている「えみ」という女性だと気付く。
えみをバーに呼び出した大輔は彼女に話を聞くが、彼女は当然認めない。
大輔はえみを罠にかけ、SNSアカウントの削除と嫌がらせをしていた事を認めさせる。えみは佐和子に対する嫉妬心や、自身が辛い境遇にあり嫌がらせをしたと認め反省する。
大輔は佐和子を安心させる為にバーに呼び出し話をする。嫌がらせをしていた人達を訴える事も出来ると話すが、佐和子は拒否。バーの品位を下げ、大輔と馴れ馴れしくしていた自分も悪かったと話し、大事にしないと決める。
佐和子はもうバーには来ず、大輔とは会わないと決める。大輔は嫌がるが、また嫌がらせに遭うといけないから会わないと自身も決めていたと思い返す。
大輔は、最後に佐和子と夫の話を聞きたいと頼み佐和子は馴れ初めを話す。その話には高校時代の出会い、佐和子が告白して付き合うようになった、9年間の遠恋、佐和子が結婚を提案して転勤に付いて行った、地元に戻り結婚生活を楽しく過ごしていた日々、東京に転勤になり無理に付いて来た話だった。
そして佐和子は夫は自分を好きではない、家族になりたかったから子供を望んだが出来なかった、しかし夫は子供の事を話し合う約束を忘れていた、夫の不倫を疑っていたと初めて大輔に話す。
佐和子は夫との離婚を決意。当て付けに大輔に不倫して欲しいと頼む。いつもの大輔なら拒否するが、佐和子の要求を受け入れようとする。
登場人物
川口佐和子
専業主婦の33歳。構ってくれない夫に不満を持っている。夫の気を引く為に偽装不倫を企てる。
おしゃべりで陽気な性格。酒に弱いくせに、酒癖は悪く飲むとマスターに絡む癖がある。
かなり鈍感な性格。
実は料理や掃除は上手い。
危機管理能力に乏しく、いつもマスターに危ないと怒られている。今回は誹謗中傷する相手に脅されたとはいえ、電話番号を教えてしまうという致命的な事をしてしまう。
誹謗中傷に病んだ佐和子は食事が出来ず不健康な痩せ方をしてしまう。
川口圭介
佐和子と同じ33歳。銀行勤務で支店長代理の役席。気が弱く優しい性格。佐和子が愛を求め、それに上手く応えられない。
佐和子以上に鈍感。佐和子のあからさまな態度にも気付いていない。
酔って絡んでくる佐和子に優しく笑って対応している。
佐和子曰く、自分に関心はないらしいが佐和子が具合悪くなるとしっかり向き合ってくれた。
佐和子が男性物のコートとマフラーを身につけていた事を気になり、付近を捜索した結果大輔のバーに辿り着いている。大輔と佐和子の関係に気付き始めるが何も言わない。
マスター(川越大輔)35歳
佐和子行きつけのバーのマスター。当て付け不倫ではなく、偽装不倫をしたら良いと提案する。
なかなかの美形であり、見つめられると落ちてしまう女性が多い。それ故に、大輔の事が好きな女性客が数人いる。本人はその事を自覚しており、佐和子を気にかけている事を知られないように気をつけている。
佐和子に意味深な態度を取っている。
佐和子がメッセージアプリ上で自分をブロックし、嫌われたと勘違いしていたが、自分のせいで誹謗中傷に遭っていたと気付く。嫌がらせをしていた人物を特定し、アカウントを削除させ問題を解決する。
関係
圭介と佐和子
同じ地方出身で同じ高校の同級生。遠距離恋愛9年で結婚。遠恋に耐えられなかった佐和子が圭介に着いていくから結婚したいと言った経緯があった。佐和子いわく、圭介はあまり喜んでいなかったらしい。
実は最近、佐和子は圭介の不倫を疑っていた。
29歳から31歳までは転勤先が2人の地元であり、車で出掛けたりして仲良く過ごしていた。佐和子も独身の時に働いていたスーパーで働き、家族や友達と会い圭介に愛を求めるばかりではなかった。31歳で東京勤務になり、佐和子はまた一人になった。
佐和子とマスター
実は佐和子のバーでの飲み代を半額にしており、通常バーではかかる席料も取っていない。客贔屓だと言われない為に二人だけの秘密にしている。
佐和子の事をかなり気にかけており、佐和子の話を聞き、手を繋いできたり抱きしめたり、二人の距離が縮まっている。また一緒に出かける約束をしている。
佐和子がマスターと連絡を取らないとアカウント主と約束している為、一方的に連絡を断つ。マスターは自身の言動のせいだと思い謝るが、佐和子は違うと否定。話し合いをしようとするが、佐和子がある勘違いをして逃げてしまう。
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22話 川越大輔(1)
どれだけ旦那の事好きなんだよと苛ついた……。
彼女との出会いは一年前……。12月の寒い日にうちのバーに来たのがきっかけだった。……二人の男に連れられて……。
一 一年前 一
『いらっしゃいませ。』
その日も大輔はいつも通りバーのマスターとして接客をしていた。そこに二人の男性と、一人の女性が来店してきたのだ。
『三人で。』
『はい、お好きな席にどうぞ。』
客達はテーブル席に座る。一人は標準体型の、どこにでも居そうな愛想の良さそうな男性。一人は地味なコートにノーメイクのバーに来るには珍しい垢抜けていない女性。……そしてもう一人の男性は骨格が良く、180センチある大輔より大柄の人物だった。
……新規か……。珍しいな……。
大輔はそう思いつつ、オーダーを取りに行く。
『何をお作りしましょうか?』
二人の男性は慣れたように注文していくが、一人の女性はその質問に固まってしまう。作るの意味が分からないようだ。女性は男性に明らかに意見を求めるような視線を送るが、男性二人はお互いに「飲み過ぎるなよ」と言い合っており女性の視線に気付いていない。
『良かったら、メニュー表ありますよ。』
見かねた大輔はメニュー表を渡す。あえて男性に……。
『ほら、なんでも好きなの選んで良いから。』
『……ありがとうございます……。』
男性の一人がメニュー表を女性に渡し、女性はそれを受け取る。
バーによってはメニュー表がない店もあるが、新規の客が気後れしないように「バー アモネス」ではメニュー表を用意し、悩んでしまう客には出している。
女性は一人メニュー表を見るが、また固まってしまう。そして男性達をまた見るが、二人はコートをコート置き場のハンガーにかけに行き、その足でお手洗いに行き女性を一人にしてしまう。
見かねた大輔が、女性が好きな酒や果物を聞き出しアルコール度数が低く飲みやすい酒や果物のジュースを勧めていく。
『何にするの?』
男性達が戻って来る。
『……あ、えーと。……オレンジジュース下さい……。』
『かしこまりました。』
大輔は注文を受け、準備に戻ろうとするが……。
『……え?酒頼まないの?』
『……あ、はい。』
男性達は表情を険しくする。
『……さっきのはなし!これ持って来て!』
男性が大輔を呼び戻し、注文を変えてくる。指差したのは、明らかにアルコール度数が高いカクテルだった。
『……いや、これは……。初めてのお客様にはおすすめ出来ないものでして……。まずはアルコール度数が低めのものから順番にお楽しみ頂いた方が……。』
大輔は必死に説明し、女性が流されないように話す。しかし……。
『い、一杯飲んだら充分です!これ下さい!』
女性はアルコール度数の高いカクテルを注文する。
大輔は女性の言っている意味がよく分からないが、自身の発言は逆効果だったと悟る。しかし大輔は、大丈夫、まだ挽回出来ると自身に言い聞かせ、女性の注文を変えようとする。
『オレンジジュース出しましょうか?当店のオレンジジュースは果汁100%で味も……。』
『いいから早く持ってこい!』
今まで黙っていたもう一人の骨格の良い男性が強い口調で大輔の発言を静止する。女性はその声にビクつき俯く。
『……おい!……あ、ごめんね、大丈夫だからね?』
先程からよく話す男性は、女性に優しく話しかける。
しかし女性は小さく頷くのみだった。
『……そうゆう訳だから早く持ってきて。』
愛想の良い方の男性が女性の肩を撫でながら話す。
『……あ、はい。すみません……。』
大輔は注文を受け、その場から離れ酒の準備をしながら思考を巡らす。
……これはまずくないか?いやしかし、どう見ても彼女は未成年ではないよな……?
客が未成年ではない場合、店の責任者として酒の提供を断る理由はない。また、女性が明らかに嫌がっている場合は断る事は出来るが、彼女が注文している。今の大輔は注文通り酒の準備をするしかなかった。……少し手心をつけて……。
『いやっ!』
女性の悲鳴が聞こえる。
『ど、どうしました?』
大輔は思わずテーブル席に行く。
『……いや、別に。ちょっと手が滑って……。』
女性の肩を触っていた男性は慌てて離れる。
『え?』
大輔は女性を見る。……女性は怯えた目で大輔をじっと見ている。
『……あの、大丈夫ですか……?』
大輔は女性に近付こうとするが……。
『良いから酒持って来い!』
骨格の良い男性に一喝される。
『はい!』
大輔は女性から目を逸らし酒の準備をする。準備が終わり持って行くと、女性は俯いている。
大輔はどこか安堵の表情を浮かべながら客の前にグラスを並べていく。そして立ち去ろうとするが、女性がコートを着たままな事に気付き預かると声をかける。
『……ほら、預かるって……。』
『い、いいです……。』
女性はコートを抑えて俯いている。
『……そうですか?ではごゆっくり。』
大輔は状況を分かっておらず、その意味が分からない。
『かんぱーい。』
三人はグラスを軽く当て飲み始める。
大輔は女性の事をチラチラ見るが、男性達に睨みつけられ阻まれる。この状況を理解したくても出来ない状態にあった。
大輔は女性が心配だった。女性は気が弱そうで、何も言えなさそうに見えたからだ。男二人と女一人の歪な関係、知人には見えずおそらく行きずりの関係だろう。
彼女は化粧もせず、服も着飾る事もせず、東京の怖さを知らずに来てしまった地方出身の無垢な女性だろうと予想する。無防備な彼女はこのまま……。
大輔は自身の推測に青ざめ、どうするか思考を巡らす。……しかし、そんな大輔の心配はこの斜め上をいく事となる……。
『けいすけのば~か!あんぽんたん!かぼちゃ!おたんこな~す!』
女性は豹変した。
『うん、うん。』
『もお、「うん」しかいわないんだから!』
『佐和子は可愛いな~。』
男性は女性の頭を撫でる。
『かわいい?ほんとう?きゃー!けいすけ、すきすき!』
女性は男性に抱きつく。
そしてその姿を大輔は呆然と見ている。
……すごい変わりようだ……。まあ、良かった……。他人行儀だったからまずい事が起きていると思ったが、彼氏と友達だったんだな……。取り越し苦労だった。
大輔は胸を撫で下ろし、アルバイトの子が洗ってくれたグラスを拭き片付けていく。まもなくバイト終了時間、アルバイト二人には賄いを作って食べるように話してある。
『けいすけ~!いまのもういっぱいちょうだ~い!もういっぱい!』
女性はカウンター内にいる大輔の元に来て、面倒くさいぐらいに絡んでくる。
『いや、もう止めておいた方が……。』
実はこのやり取りも10回以上している。普通なら提供するのだが、女性の様子から大輔が提供を拒否しているからだ。
……あれだけでここまで酔うのか?弱過ぎだろう……。
大輔はそう思いつつ、先程のカクテルを規定量で作っていたらどうなっていたのかと考え恐ろしくなる。
『もっとのむの~!きょうはだいじなひでしょう?それなのにしごとばかり!けいすけのばか!しごととけっこんしたらいいのに!』
女性は先程から泣き叫んでおり、より面倒くさい絡みになっていた。
しかし大輔は女性に対し面倒くさいとは思わず、むしろ酒を飲まないとこのような本音も話せない性格なのだろうと察する。
……だから大輔は女性をカウンター席に座らせ、ハンカチを渡し、オレンジジュースを差し出す。
『……え?』
『大丈夫ですか?あまり体調良くないですよね?酔い覚ましには果物が良いですよ。勿論、サービスなので遠慮なく飲んで下さい。』
実は大輔は女性の相手をしながら、女性に出すためにオレンジを絞っていたのだ。女性は明らかに悪酔いしており、言わないが表情から頭痛や吐気を感じていると読み取れた。それが余計に悲観した考えを巡らせ泣き叫ぶぐらいになっていると感じたのだ。酔いを覚まし淋しさを男性にぶつけた方が良い、大輔はそう思っている。
『ありがとうけいすけ!だいすき!』
女性はなんと大輔にまで抱きついてくる。
『……私は違いますよ……。』
大輔はそっと女性から離れる。こんな事でいちいち動揺していたらバーのマスターなんてやっていられない。大輔は大人の対応をする。
女性はハンカチで涙を拭き、大輔の作ってくれたオレンジジュースを飲む。女性は驚いた表情を見せ、大輔に一言呟く。
『あまーい!おいしい!ありがとうけいすけ!』
女性は子供のようにあどけなく笑う。その唇にはオレンジジュースがベッタリ付いているが、女性は酔っており気に留めてもいない。その無邪気な姿があまりにも可愛くて……。
……大輔はその笑顔に一瞬時の流れを忘れてしまう。
その間に女性はオレンジジュースを飲んでおり、大輔は思わず跪き女性と同じ目線になる。
『……あ、あの私はけいすけではなく大輔です!』
『だいすけ?』
『そう……、だから……。』
大輔は優しく微笑み、女性を見つめる。その色気のある目で見つめられたら大概の女性は落ちてしまう。その女性も……。
『……何してるんだよ?』
見つめ合う大輔と女性に対し、先程まで愛想が良かった男性は大輔を睨みつけ威嚇してくる。その表情と声に大輔は現実に引き戻され、自身の過ちに気付く。
『これジュースだよな?こいつは酒を頼んでいたのに、なんでそんな物飲ます?』
『……あ、いや、気分良くなかったようでオレンジジュースを……。勿論サービスですのでお代には入れません!』
大輔の声は震える。
『あ?客が欲しい物用意したら良いんだ!さっきのやつ出してやって!とびきり濃いやつね。』
『……いや、さすがにこれ以上は……。体調も良くないみたいですし今日はジュースで締めた方が良いです!私は彼女にお酒を飲む楽しさを知ってもらいたくて!』
『お前には関係ないだろう!』
男性は大輔を睨みつける。
『……あ、はい……。』
女性は男性に手を引かれ席に戻される。その表情は先程までの無邪気な笑顔は消えていた。酔いが少し覚めたのか、表情は少しずつ険しくなる。
男性は女性に話しかけるが反応せず、女性は大輔を真っ直ぐな眼差しで見つめている。その眼はまるで捨てられた子犬のような目で、放っておけなくなるぐらいの悲しい眼差しだった。
その視線には気付いていたが大輔は何を言えず、カクテルを用意して女性に提供する。……気付かないでくれと願いながら……。
『……どうぞ……。』
『ありがとうございます、だいすけさん。』
『……いえ……。』
……俺の事、だいすけと呼んでくれるのか……。守れなかったのに……。
そう思いながら、女性から離れる。そしてすぐ、男性二人が一気飲みするように女性をはやしたてる。女性は少しためらった表情をするが酒を一気に飲む。
……嘘だろ……。
大輔はそのやり取りに唖然としている。
女性はカクテルを一気に飲み干し大輔を見る。その眼差しは感謝を伝えている。
……実は、大輔は先程のカクテルのアルコールをノンアルコールに変更していた。だから酒を飲んでも女性は理性を保っている。
大輔は女性の変わらない姿に安堵しつつ、同時に別の感情も湧き出す。
……今のに本当にアルコールが入っていたらどうするだよ?急性アルコール中毒になるだろう!この男達何考えているんだ!
心からの怒りだった……。酒を嗜む者が、おそらく酒の危険さを知らない女性に危ない飲ませ方をする。……許せなかった……。
大輔は思わず男性達を睨んでしまう。大輔の怒りの目と、酔わない女性。……小細工など男性達にはお見通しだろう。
『おい!』
男性の一人が強い口調で大輔を呼び出す。
『……はい、なんでしょうか……。』
『これ本当にアルコール入っていたか?間違えてないか?』
男性はノンアルコールの入っていたグラスを持ちながら大輔に凄む。
それに対し、大輔は動揺を思わず態度で示してしまう。
『まあいい、もう一杯持ってこい!』
『……あ、いや、本当にこれ以上は……。』
『やっぱりわざとか?』
『……あ。』
大輔は俯き黙ってしまう。しかし……。
『じょ、女性の方はもう飲める状態ではありません!ですからその注文は受ける事は出来ません!』
大輔の声は震えているが、その姿勢は凛としている。
『……お前、やるのか?』
先程まで黙っていた骨格の良い男性が大輔を睨んでくる。その目は威圧的で、蛇に睨まれた蛙の心境が分かるぐらいだった。
……逆らったら何されるか分からない……。
大輔の体から嫌な汗が滲み出る。
『わたしのみたい!もういっぱい!』
女性が間に入たおかげで張り詰めた空気が緩む。
……しかし女性は先程のように陽気な態度ではなく、無理に笑っているように見えた。だが、この状況で逆らえるはずもなく大輔は酒の用意をするしかなかった。
……どうする?先程みたいにノンアルコールに変えるか?いや、俺の行動は疑われている……、酒を確認してくるかもしれない……。嘘だと分かれば俺は……。
考えを巡らした結果、大輔は規定量の酒を用意する。……怖かったのだ……。
『……どうぞ。』
『ありがとうございます……。』
『ほら、飲めよ。』
『はい……。』
女性は無理に酒を飲むが、先程の酒よりアルコール度数が高く一気に酔いが回ったのか、目は虚ろになりテーブルに突っ伏してしまう。
『大丈夫ですか!分かりますか!』
大輔は慌てて女性の体を揺さぶる。
女性は返事はしないが体調には変わりなさそうだ。いわゆる泥酔と呼ばれる状態で眠ってしまっている。
大輔は当然分かっている。彼女が自分を助けようとしてくれた事を……。
『……もう良いだろう?ここまで飲ませれば問題ないだろう?』
『それもそうか。吐かれると面倒だし、そろそろ行くか?』
『……さあ、行こう。起きて。』
テーブルに突っ伏している女性を男性は起こす。
『ようしょくや?いるみねーしょん?』
女性は顔を上げ男性に笑いかける。その目は虚ろで泥酔状態だと分かる。
『……もっと良い所だよ。』
『ありがとうけいすけ!だいすき!』
女性は上機嫌で男性に抱きついている。
大輔はとっくに自身の勘違いに気付いている。けいすけは彼女の恋人、口ぶりから記念日に彼が仕事で喧嘩をしてしてしまったと読み取れる。……そしてこの男達は、そんな淋しい女性をバーに連れ込み濃い酒を飲ませ泥酔させるまで酒を飲ませている他人……。彼女の恋人ではないが、彼女は酔っており、全ての人を恋人だと思い込んでいる現状だ。
……これはまずい……、このまま連れて帰られたら彼女は……。
大輔の心臓は激しく鼓動を打つ。助けられるのは自分しかいない……。しかし止めたら何をされるか分からない……。もう厄介ごとはごめんだ……、修羅場はごめんだ……。
大輔は思わず後ずさる。
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