クラップロイド

しいたけのこ

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歪んだ生物

ヒーロー・スクランブル

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 グラニーツァ、最終取引当日。


 アレクセイはいつもと同じ、決まった時間に起きた。そしていつも通り、身だしなみを整えて鏡を見る。

 そこに映るのは寸分の乱れもない自分の姿である。スーツには皺ひとつなく、オールバックの髪は一本たりともセットからはみ出ていない。

 これが、理想だ。彼は鏡の前で厳粛な表情を浮かべる。世界は常に、このシワひとつないスーツのようにあるべきなのだ。

 その脳裏に浮かぶのは、すべてが整然と均等化され、皆がロボットのように暮らす理想の世界だ。そこでは誰もが絶対の距離を保ち、決められた言葉で決められた挨拶を繰り返す。争いなど起きようはずがない。

 もし争いが起きれば、グラニーツァが介入して止める。新世界では唯一の武力集団、唯一の法……新たな神だ。


 アレクセイという男は狂っていた。そして厄介なことに、狂っている自覚はなかった。彼にとって、人間性は邪魔でしかない。

「……今日、世界は一歩理想に近付く」

 確認するように。確かめるように、彼はそう呟く。彼はコトダマの類を信じていなかったが、それはしかし、必要な『儀式』だった。覚悟の儀式だ。

 ノック音が響いた。彼が部屋の扉を開くと、そこには大柄な男が1人立っていた。猫のタイピン、黒いハンチング帽、ゴツゴツとした時計……アレクセイの腹心の部下である。


「ボス。すべて手筈通りに」
「結構。念のために『奥の手』は用意できたかね?」
「整っています」
「良い事だ。今日は実に良い日だな、ヤーコフ」
「ええ」


 ヤーコフと呼ばれた男は何の感情もなくそう返す。グラニーツァ加入時に家族を殺すテストを受け、5歳の弟を手にかけた時、彼の心は死んだ。猫のタイピンは弟からの最後のプレゼントだ。

 アレクセイはしかし、その答えに満足したように笑みを浮かべると、巨漢の肩をパシパシと叩いた。

「共に理想を為そう。我々は先駆者だ」


 彼らは廊下を歩き出す。狭く暗い廊下は、行く先に頼りにならぬ蛍光灯がともるばかりである。両脇にいくつか扉はあるが、どれも人の気配を感じさせない。

「スィーニの様子はどうかね?」
「本部で我々を切り捨てる動きはほぼ確定的です。今日が分水嶺でしょう……少しでも計画に綻びが出れば、スィーニが我々を粛清します」
「実に残念だ。グラニーツァならば、我々の理想を理解してくれると思っていたが」


 言いながら、アレクセイは廊下の突き当り、両開きの扉へたどり着く。彼がそれを押し開くと、その向こうには巨大なガレージが広がっていた。


 車、トラック、バイク……大量の乗り物の周囲には、ギチギチなほどの量のロシア人が詰めている。グラニーツァ、アレクセイ派閥の全メンバーが集結していた。彼らは皆、青い瞳でこの場に現れたリーダーを見上げる。

「諸君!!!」


 ろうろうと響く大声に、ガレージ中が水を打ったような静けさで応える。氷のように冷えた沈黙だ。


「今日こそはあらゆる戦いにおいての結末が現れる日である!! 我々の闘争は決して無駄ではなかったと示される日である!!!」





 日付が変わるころから、ずっと俺とテツマキさんは息を潜めていた。雑草も虫ものびのびやりたい放題の廃工場近くでは、身を隠すのはそう難しい事ではなかった。

 背の高い草の陰に入り、飛び回る虫を相手にせず、長い時間身動きなしに気配を殺し続ける……想像以上に忍耐を要求されるが、深呼吸して意識の深みに到達し、それに耐える。目の前、なかば瓦礫と化した廃工場に、未だ動きはない。

 俺の全身の傷はまだ治癒しきっていない。それに反して、すぐ隣に感じるテツマキさんの存在……そのコンディションは大したものに仕上がっている。煙玉や電撃手袋のような秘密道具も作ってきたようだ……ホント、メカニックとかの方が向いてるんじゃないか。


 集中を深め、目を瞑って誓いの記憶を引き出す。カモハシさんの笑顔。人工呼吸器を付けたウロサキ。氷のような横顔のスズシロ。去ってゆくマーカス。死んでゆくシマヨシさん。

「……」

 俺がやらなければならない。これ以上、だれかにとってのシマヨシさんを死なせるわけにいかないのだ。

「気を張りすぎるな。持たんぞ」
「……分かってます」
「なら、いい」

 神経を張り詰めさせていると、隣から気づかわしげな声がかかる。テツマキさんだ……俺が緊張しすぎなのを感じ取ったのだろうか。

「いえ、すみません……ちょっと、緊張して」
「だろうな……呼吸だ。呼吸して緊張を循環させろ」
「……」

 まるでベテランの戦士のように、テツマキさんは落ち着いた雰囲気で構えている。実際彼女はベテランだ……修羅場の経験だって俺より多いだろう。

 そんなテツマキさんを見ていてふと気になり、口を開く。

「……テツマキさんは、ヒーローって何だと思いますか」
「ヒーロー?」
「あ、いや……」

 笑われるかと思ったが、鉄の戦士は真剣な表情で考え込む。……ホント、バカみたいな質問に真剣に答えてくれるんだからなぁ。

 やがて彼女は顔を上げ、俺を見据えて言った。


「知らん」
「えぇ……」


 直球すぎる。もうちょっとこう、手心というか……。

「知ってたら、ヒーローになってる。お前をここに巻き込まなかっただろうな」
「……まだ気にしてるんですか」
「お前が居る限り気にする。私は大人だ。子供を守るのが役目のハズなんだ」

 ……俺がクラップロイドであることで、本当に色んな人に負担をかけ続けているものだ。もっと上手く立ち回らなければならないのだろう。


「ひとつアドバイスしてやる……理想を目指すな。苦しいだけだ」

 テツマキさんがそう言う顔は、今も死ぬほど苦しんでいる人のそれだった。

 俺にとっての理想はテツマキさん……言いかけていたそんな言葉を飲み込み、俺はまた沈黙を守り始める。





「今日こそ、我々が英雄として称えられる日!! 勝利が与えられる日である!!」
「「「祖国のために!!!」」」
「散っていった同志のためにも!!! 忠誠の証明のために死んでいった家族のためにも!!!」
「「「同志のために!!! グラニーツァのために!!!」」」
「そして世界のためにも!!!」
「「「理想のために!!!」」」

 ガレージが音圧でビリビリと震える。なかば恍惚とした表情で、アレクセイは叫ぶ。

「諸君、銃とGMDを持ちたまえ!! 戦いの準備をしろ!! 必ず邪魔は入る!!!」
「「「目的のために!!!」」」
「この取引を完遂させてこそ、我々の勝利だ!!」

 一斉にサブマシンガンやアサルトライフル、そしてGMDを手に持ち、トラックやバイク、乗用車へと乗り込み始めるロシア人達。既にこの場のメンバーだけで、一個の小国に匹敵するほどの軍事力と言っても過言はない。

 それでも尚、アレクセイに油断はなかった。マーカスやクズハといった巨大な不安要素を取り除き、しかし除けなかった小さな『しこり』。



「……クラップロイド」



 彼は小さくその名を呟き、用意した『彼女』へ視線をやった。



 使うことに、ならなければよいが。アレクセイは外道だった。






「……来ました」

 草の中、腰をほんの少し浮かせる。遠くから明らかに似つかわしくない大量の車群が向かってくる。どれも、運転手はロシア人ばかりだ。

「情報は精確だったわけか。……しかし、多いな。ここが街はずれでなければ相当目立っていた……」
「!! テツマキさん、あっちからも」

 反対側の道からも、かなりの量の車が向かってきている。多くはバンやピックアップトラック……乗っているのはアジア人が多い。主に中国人のようだが、闇鍋だ。

「いよいよだ。気配を殺すぞ、まだ見つかるわけにはいかない」
「はい」


 息をひそめ、連中が到着するのを見つめる。土ぼこりを上げながら、大量の車が次々に廃工場前に到着してゆく。トラックやバンからぞろぞろと降りてくるロシア人やアジア人は、皆が物騒な武器を手に持っている。

 ロシア人側は、巨大な銃器や、何かしらを入れた袋を廃工場へ担ぎこんでゆく。アレも今回の交渉道具か。


「……どこから手に入れるんだ、あの武器を……もはや軍レベルだぞ」
「……」

 テツマキさんがぼやくのを聞きながら、俺は必死に視線を辺りに走らせる。必ずアレクセイが来ている筈だ。そしてジュウロン会のベイ・ユアンという暗殺者も……。

 その瞬間、微かなムズつきを感じ、俺は咄嗟に頭を伏せた。視線だ……誰かが、こちらを見たのだ。


 そろりと覗くと、アジア人側の車の中から、禿頭の面長な男がこの辺りの草むらに視線をやっていた。……幸いなことに、見つかっているわけではないようだが……かなり警戒している様子。その細い目は何かを見つけようと、せわしなく動いている。

「……テツマキさん、アレ見えますか」
「ああ、見える……ベイ・ユアンだな。間違いない」
「ジュウロン会……」

 やはりこの会合、一筋縄ではいかない。気持ちを引き締め直し、事の成り行きを見守る。


 ロシア人達とアジア人達はしばらく睨み合っていたが、やがて砂利を踏みしめる音が近づいてきた。車両群後方から現れたのは、巨漢を引き連れたアレクセイだ。

「やあやあ! 今日はいい日だな、ジュウロン会の諸君」

 グラニーツァ側は警戒して銃を握る手に力を籠める。対してジュウロン会は、いぶかしげにアレクセイを見つめ、しばしアクションを起こさなかった。

 だが、やがてピックアップトラックのドアが静かに開かれ、そこから禿頭の男が降りてきた。ベイ・ユアン……その立ち姿を見ればわかる。すさまじいまでに、『殺し』に特化した体格だ。手足は長く、無駄な筋肉がない。

「ショック・リアクター、ドクトリン・ブレーカーが買えると聞いた。だからこそ、この頃派手に活動しているお前達とも取引しに来たのだが」
「無論、取引にウソはつかん」

 暗殺者は後半を強調するように言う。それを聞いたアレクセイは指を弾き、脇に立つ巨漢にスーツケースを取り出させた。

 どうやら中身はコンピューターのようだ……何かのデータが格納されているらしい。黙って見つめるベイ・ユアンの顔は、ブルーライトで照らされている。だが、俺達からは画面がギリギリ見えない……。

「クソ……パラサイト、見えるか」
(スタンドアロン式のようです。ここからのハッキング閲覧は不可能)
「くっ」


「この座標は?」
「ドクトリン・ブレーカーを監禁している場所だよ。信用料として、15人分を渡そう。残り半分は取引成立の後に」
「……」


 暗殺者の細い目が少しだけ開かれ、その座標を吟味するように見つめる。そして、やおら携帯を取り出すと、何処かへ通話をかけ始めた。

「もしもし。……あぁ。カラタテ通りの24番地を確認しろ」


 ……恐らくは、ドクトリン・ブレーカーが本当にその場に居るかの確認に向かわせたのだ。その瞬間の沈黙は、ジュウロン会、グラニーツァ、そして俺達にとっても非常に重要な沈黙だった。この情報が嘘なら、俺達には打つ手なし。グラニーツァも八方塞がりで、ジュウロン会はロシア人テロリストへの報復に出るだろう。


 永遠かのように思える沈黙が、重く俺達を包んでいた。静かに、深く呼吸を続け、次の瞬間に何が起きてもいいように身構える。ロシア人とアジア人はお互いに睨み合っている……誰か1人でもその場から動こうものなら銃撃戦が始まるだろう。


 やがて、ベイ・ユアンがその携帯を降ろした。その一瞬は、アレクセイでさえ緊張した面持ちだった。俺は自分のこめかみを一筋、汗が伝い落ちるのを感じ……そして直後、面長の暗殺者は破顔した。


「良い取引になりそうだな、グラニーツァ」


 その言葉の意味を考え、そして理解する。つまりドクトリン・ブレーカーの居場所データは本物で、今、この場にある……!! ここが、最大の、チャンス!!!


 静かに動き出そうとした時、俺は廃工場の向こう側から物音を聞いて固まった。超特大の嫌な予感が背筋を駆け抜ける。


「ったく、あんなの悪戯の通報に決まってるってのに……」


 ザク、ザクという足音、ぼやく声。その音を聞き、グラニーツァ、ジュウロン会、どちらも動きを止める。アレクセイは眉を跳ねさせ、懐に手を突っ込む。ベイ・ユアンもその長い手足に緊張を走らせ、音のした方を見つめる。


「……!!」

 テツマキさんは目を見開く。広大な廃工場を挟み、向かい側から無防備に現れたのは……警官服を着た、1人の男性だった。通報が、裏目に出たのだ。


 彼は集まった車、そしてテロリストとマフィアたちを見て、目を見開く。急いで無線機に手を伸ばす彼に、辺りの殺気が一斉に集中する……!!


 悪党どもの銃口が持ち上がる前に、俺は飛び出し、叫んでいた。


「パラサイトッ!!! スーツ・アップだ!!」
(了解、スーツアップ)


 その声に、今度は視線がこちらへ一斉に向く。俺は銀色の装甲に包まれながら、不意打ちでロシア人の1人へタックルをかまし、砂利の地面で両手両足を使い、ドリフトじみてターンし停止する。


 数百名の殺気に満ちた視線が俺を射抜く。注目が逸れた警官が、慌てて逃げ出すのが見える。


 パワードスーツの中、俺は全身に喝を入れ、両足で立って腹の底から声を出した。


『そこまでだ!! 悪いが、良い取引にはさせてやれないぞ!!』

「チッ」
「これはこれは……」

 ベイ・ユアンが面倒そうに舌打ちし、両腕をダラリと下げて構える。アレクセイはグラニーツァに何らかのハンドサインを出し、発砲を待機させて面白そうに俺を見つめる。

「まだ闘志が折れないかね、クラップロイド君。魅力的だ、その不屈……いっそうちに来ないか?」
『家族を殺してか? 悪いが、俺にはもう情の有る肉親は居ない』
「なんと……一世一代のオファーのつもりだったのだがね。分かっているのか? キミは今、生きるか、死ぬかだ」

 銃口が一斉に持ち上げられ、俺を狙う。チクチクとした殺気、ムズムズと感じる視線が、俺の肌を粟立たせる。

 アレクセイは笑みを消さず、こちらを見つめている。余裕だ。奴は余裕で俺と向き合っている……。俺の街で、好き勝手してくれた悪魔が。


『お前こそ、分かってるのか』
「……?」
『10人以上死んだ。この前の爆破でな』
「それがどうかしたかね」

 表情ひとつ変えず返ってくる答えに怒りを通り越し、一瞬だけ呆然となる。そして、すぐに諦めがやってくる。コイツはこういう人間なのだ。俺達とは根本的に相容れない人間。歪んだ生物。

「理想だ! 理想のために死んだ人間は立派だよ、クラップロイド君。だからこそ、邪魔をしないでくれたまえ。キミがこの理想実現を拒めば、彼らの犠牲は無駄になる」
『……俺にだって理想はある』


 息を吸い、吐く。集中しろ。いま、視界に映っているクソ野郎をぶん殴るためにも……集中を、深めろ。


「ほう? キミに?」
『けど、俺の理想のために死ぬのは、俺だけでいい』
「……そうかね」


 アレクセイがまた、ハンドサインを掲げる。グラニーツァ達は一斉に銃の引き金に指をかけ、クロスファイアの陣形をとっている……恐らく俺は殺されるだろう。だが、テツマキさんが居る。俺がここで暴れ、引き付けて、彼女がなんとか突破口を見つけてくれれば……!

「残念だ、クラップロイド君! キミを助けてやりたかった」
『……』


 ほんの一瞬だけ、ヘルメットの内側で目を瞑る。スズシロ、カモハシさん……2人を助けたかった。だが、やっぱり俺は力不足らしい。すみません、シマヨシさん……俺は、ヒーローではありませんでした。

「では、彼を殺……」


「よく言った、小僧キッド!!!!!!!!」


 大音声が、響いた。強烈な音圧で、レンガ造りの廃工場が、車の窓が、トラックのサイドミラーが、カタカタと震える。聞き覚えのある声……見上げると、崩れかけた廃工場の上、その男が立っていた。

「お前の覚悟、試させてもらった。そして俺も覚悟した。……いくつになっても、人間ってのは学べるな」

「誰だ」

「俺だ!!!」

 風に翻る深碧のミリタリージャケット。袖を突き破るようにして出た筋骨隆々の腕。マスクで隠された目元……!!


「この場は、ネクサスのリーダーであるこの俺!!! マーカスが、請け負った!!」

 爛々と輝く瞳は、その場の犯罪者全員を捉えている。その肉体は、やはり包帯まみれ、ガーゼまみれで、まともな戦闘ができる状態にあるとは思えない……。



 もうひとつ、普段と異なる点がある。それは彼の腰に巻かれた、大きなベルト。

 下腹部に巻かれたそのベルトは、中央に大人の握りこぶしほどの大きさの円い装置が付いている。強烈な存在感を放つそれは、どう見ても玩具の類ではない。


「そうか!! キミは確か、クズハ君とやり合ってボロボロだったと思ったが……動いていて、良いのかね?」
「嘗めるなよチンピラ。俺を誰だと思っている」


 深く、空気が震えるほど太い吐息を吐き出し、マーカスはゆっくりと両拳を腰の真横で構える。そして右腕を突き上げ、ビシィッと音が鳴るほどのキレで構えた。

「お前達がたとえ今の100倍の数になろうと、俺の後ろに背負うものがある限り!!」


 徐々に、光が集まってゆく。その光の中心は……マーカスの腰についたベルト、円い装置だ。その内部では、強烈に何かが駆動し、音を鳴らしているのが聞こえる。


「俺が倒れることはない!!! 変身!!!」



 一瞬後、彼の全身は閃光に包まれた。そして、灼かれた視界の中から、何かが飛び出し、砂利へと着地した。


 『その存在』は、全身を緑と蒼が混在するアーマーで覆っていた。バイザー部分は一直線に赤い筋が入っており、そこから漏れ出す光は平等に、犯罪者たちの顔を照らす。


 マーカス……ネクサスのリーダー。俺のアーマー事情を言い当てたのは、こういうカラクリだったのか。色々ショックで何も言えなくなっていると、この場に乱入してきたのはマーカスだけではないと気付く。


 バチバチバチィ!!! 電撃音と共に中空に現れ出たのは、パンクファッションに身を包んだ少女……ブリッツだ。青白い電撃と共に浮遊し、犯罪者たちを睥睨する。


「名乗りが長えんだよ、オッサン」
『簡略化はできん』

 そんな軽口を叩き合う2人……更に、もう1人。


 中型ドローンが一機、何かを乗せて飛来した。『彼女』はそこから飛び降り、軽やかに着地すると、ゴーグル越しに俺を見る。

「や。元気そうじゃん」
『……ディヴァイサー』


 ディヴァイサー、ウロサキ マキナだ。彼女はまだ怪我が治り切っていないのか、全身の包帯は痛々しい。だが、俺が心配そうなのを感じたらしく、彼女は鼻で笑って続ける。


「心配しないで。いま死にそうだったのは私じゃなくてキミだから」
『……それもそうだな』


「成程、成程……」


 アレクセイは笑う。その顔には、未だに余裕の笑みが貼り付いている……勝算が、あるのだ。


「それで、我々に勝てるのかね? ボロボロの組織と、未熟なクライムファイターが寄り集まって?」
『そのつもりだ』
「片腹痛し!!!」


 マーカスが答え、アレクセイが吼える。そして、更にハンドサインを掲げる。


 それを見たグラニーツァ構成員は、一斉に懐から注射器を取り出し、首筋に突き立てた。


「ではせいぜい醜く踊ってくれたまえよ。余興にはちょうど良い、戦果次第ではジュウロン会の皆さんもGMDを欲しがるかもしれないからな」


 ロシア人達が苦悶の表情を浮かべて変身を遂げる中、アレクセイは笑っている。俺が拳を構えるのと、マーカスが叫ぶのはほぼ同時だった。


『ネクサス、戦闘態勢!! 目標はドクトリン・ブレーカーとショック・リアクターの奪還だ!!』


 そして、変身を終えた怪物たちが俺達を睨む。直後に、押し寄せる怪物たちとの戦いが始まった。


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