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サソリの毒
痛みの代償
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「全員注意しろ! 不審者が封鎖区域に侵入したらしい、見つけ次第力づくで拘束する事を許可する! 発砲はまだだ!」
「ったく、俺達の手に負える事件じゃないだろコレは……SATへの連絡はまだつかないのか」
「奴らの出動の承認には時間が掛かる、今回は期待しない方が良いだろうな……」
(今回はSATへの対策はしなくて良さそうです。それよりも、このまま警察の方々に見つからず、現場へ突入できるかというところですが)
「まずは現場の位置を確認だ。それから、えっと……警察に見つからないルート取りの検索も」
(了解しました)
マンホールから覗く俺の視界が切り替わり、真っ黒に変わる。目の前を通り過ぎる警察官の足音が白い波となり、俺の視界に響く。
(エコー・ヴィジュアライズモード。音波を視覚に表しています。……現場は、あそこのビルです)
「ほうほう……」
そこら中で発された音が世界を形作る。俺の視線の先には、真っ黒な世界に真っ白な輪郭を持った、巨大なビルがそびえていた。
「アレは何のビルだ?」
(巨大なショッピングモールだったようです。ですが)
青い矢印とシミュレーションが現れた。ホログラムのトラックがスピンし、ビルの腹へと突っ込むワンシーンが映し出される。成程、こうやって事故が発生したという事か。
「……普通、こんな風に急にスピンするか?」
(それが今回の事件なのでしょう。私が集めた情報によると、どうやら犯人グループはあらかじめクラリス・コーポレーションの輸送トラックのルートを把握し、そこへ襲撃をかけたようです)
「成程な」
つまり、トラックの運転手は走行中に襲われでもしたのか。そうしてパニックになり、ハンドルを操り損ねてビルへ衝突。
「人の命をなんとも思ってない連中だな、犯人は」
(命の価値の話は、私には判じかねます)
「……」
パラサイトがこんな風に言うのは珍しい。いつでもお調子者で、余計な事まで言う、機械らしからぬヤツだったのだが……今の答え方は、まるで機械そのものだった。
「……とにかく、ビル内部の犯罪者の人数を把握したい」
(はい。音波視覚を遠方へフォーカス。熱源探知と併用し、人数の把握を行います……)
ビルの内部の音の微かな揺らぎが視界に映る。しばらく押し黙っていると、やがてパラサイトは結論を出した。
(立てこもり犯の人数は7人です)
「7人か、よし、なら……」
(人質の人数は40人を超えています)
「ひと、人質!? 奴ら、また人質を取ってるのか!?」
(はい。どうやら買い物客を巻き込んでいるようです。だから警察の突入も難航しているのかと)
「……」
それは困った。相手がたった7人なら、どれだけ重武装していても真正面から突っ込んで殴り飛ばせば良い話だったのだが……人質が居るなら話は別だ。無関係な市民を巻き込む訳にはいかない。
ようやくパラサイト関係の手掛かりが掴めるかもしれないというのに、コレでは手出しも出来ない。悔しさに歯を食いしばっていると、頭の中で声が響いた。
(何を躊躇うのです、ご主人様。戦いましょう、前回と同じく楽勝です)
「馬鹿、状況が違い過ぎる。わざわざ首を突っ込んで、事態を悪化させたらどうするんだ」
(何故他の命を気にかけるのです? パワードスーツを着用すれば、誰がやったのかの判別はつきません。ご主人様の罪にはならず、銀色の鉄人形が罪を被るでしょう)
「……」
あまりの物言いに、少し絶句してしまった。だが、同時に何処かで納得もした。コイツは『ご主人様』を守ろうとはするが、他人は全く気にかけないマシーンなのだ。
シマヨシさんの顔が脳裏をよぎる。俺は少し目を閉じ、また開いた。
「……良いか、パラサイト。一回しか言わないから、よく聞いとくんだ」
(はい、なんでしょう?)
「命の重さは皆同じだ。人にはそれぞれ生きなきゃならない人生があるし、役割がある。そんなに簡単に、人を死なせるなんて言うな」
(それは、人間の道徳的観念からの発言ですか?)
「違う、……お前のルームメイトからの、心からの忠告だ」
(心は分かりません)
「俺にも分からねえよ……」
微妙に伝わったのか伝わってないのかよく分からないリアクションが返り、俺は思わず溜め息を吐く。
(……ですが、分かりました。ご主人様の言う通り、命の重さを皆同じに書き換えておきます)
「ああ。……まあ、説教臭かったな。悪い」
(ふふ、ご主人様の意外な一面でしたね)
「機械がからかうんじゃねえよ……」
俺だって意外だ。これまで人とのかかわりがあまり無かったから知らなかったが、俺というヤツは人の影響を受けやすいらしい。何処かのお人よしめ……。
とにかく今最優先すべきなのは、どうにかして人質を傷付けず、犯人共の目を掻い潜って制圧し、奴らから情報を聞き出す方法だ。そんな夢みたいな事ができれば、だが。
(さて、ではご主人様の行動方針も確認できましたので、スーツのスニーキング機能をオンにします)
「ああ……ああ?」
(この機能がオンになっている間は、パワーが多少落ちる代わりに、駆動音が限界まで静かになり、装甲も少し軟化して音を立てなくなります。また、光を吸収するダークブルーのカラーリングになり……)
「待て待て、そんな機能があったのか? 黙ってたんだな?」
(真正面から殴り込んだ方が効率的だと思っていましたので)
「このポンコツ……」
思わず悪態をつきそうになり、俺はこらえて顔を上げる。マンホールをずらし、身体をアスファルトへ引き上げる。
「もう一回スーツアップだ。行くぞ」
(了解です)
その言葉と同時に、俺の全身は深い闇を思わせる装甲に包まれた。
………………
「なあ、前回の奴らは失敗したらしいな」
「ああ、聞いた話じゃロボットにやられたらしい。イカれてる」
「だ、だよなぁ。流石にイカレすぎだぜ」
犯罪者たちは各々手に銃を持ち、ショッピングモールを歩き回っている。銃の種類は豊富であり、マシンガン、ショットガン、ハンドガンからスナイパーライフルまで持っている。潤沢すぎる装備だ。
だが、一人の犯罪者は震え声で、不安げに仲間に語り掛ける。
「……で、でもよ、アワナミ高校のガキ共も口をそろえて言ってるらしいんだ。ロボットが銃弾を弾いて、殴ったって……」
「馬鹿が、そんな与太話を信じるのか? どうせサツが俺達をビビらせるために作りあげた嘘だ。ビビってないで、見張りを続けろ」
「だ、だよな、悪い……」
「ったく……おい、聞こえるか。全員定期報告をしろ」
鬱陶しそうに怖がる仲間をはねのけ、通信機へ連絡を呼びかける立てこもり犯。
『4Fバルコニー、異常なし』
『3Fの積み荷監視中、異常なし』
『……』
『階段、異常なし』
『1F異常なし』
「おい、2Fの人質見張り役はどうした。応答しろ」
『……』
通信機から声は帰らない。立てこもり犯は苛立ち、エスカレーターへと足をかけて、恐怖に怯えた仲間を振り向く。
「おい、テメェはこの地下を見張ってろ。俺は2Fの様子を見て来る」
「お、オッケー、任せとけよ……」
力なく頷く仲間を置き去りに、男はエスカレーターを駆け上り、2Fへと上がって行く。
「ははは、奴はどうしたんだ」
「サボってやがったら、撃ち殺してやる」
「そいつは楽しみだぜ」
途中、1Fを見張っていた仲間がニヤニヤと笑って茶化してくるのをはねのけ、男は2Fへと駆けのぼる。そして、人質たちが居た場所へと入った。
婦人服コーナーである。人質たちは相変わらず恐怖に震え、膝をついた姿勢で両手を頭の上で組んでいる。
だが、人質を見張っていたハズの仲間は居ない。忽然と消えている。
「おい、奴を何処へやった」
「し、知りません……」
男は人質へと銃口を向け、脅すように尋ねる。しかし人質は怯えたまま、震えて首を横に振るのみ。
「テメェ、しらばっくれるつもりか! アイツを何処に……!!」
『ぐああああああああああああ!!!』
その時、男の通信機から大音量で悲鳴が流れた。男は素早く通信機を手に取り、悲鳴の出どころを探ろうとする。
「おい、今のはどいつだ。全員、無事なのか」
『ち、地下、異常なし』
『1F異常なし。今の悲鳴は上からだ』
『3F、異常な……な、なんだコイツ!? やめっ、ぎゃああああ!!?』
「おいっ、動けるヤツは全員3Fへ急げ! 今すぐにだ!」
男は咄嗟に指示を出し、マシンガンを構えて飛び出す。そしてエスカレーターを駆け上り、3Fへと到着した。
それと同時に、3Fを見張っていた仲間がドサリと男へ倒れ込んできた。男はそれを受け流し、反射的に銃を構える……が、銃口の先には何もない。波打つような闇が見えるだけだ。
「ちくしょう、なんだってんだ……」
毒づきながら、男は倒れた仲間を見下ろす。恐怖の表情のまま気絶した仲間は、どうやら発砲したらしく、手に持つ銃から硝煙が立ち昇っている。しかし、肝心の敵を仕留められていない。
「おいおい、コイツはひどいな……」
「な、なな……」
後から上って来た仲間二人も、このありさまを見て二の句も継げない。男は注意喚起しようと振り向き、ゾワリと固まった。
仲間二人の後ろに、闇をそっくり人型に切り抜いたような存在が立っていたのだ。ソイツは、二人の頭を掴むと、思い切り打ち合わせて気絶させた。
『これであと一人』
ぼそりと、奇妙に歪んだ声が闇に広がる。男は慌てて立ち上がり、正体不明の敵へ銃口を向ける。
しかし、銃を向けられても、その怪物は動揺しない。何事かをぼそぼそと呟きながら、じりじりと迫って来る。
『……いや、だから殺すのは不味いって……いくら悪人でも、殺しちゃったらそれは……でも……ああ、それは認める、殴るのは楽しいけど……』
「ば、バケモンがぁぁぁぁぁああ!!!」
不気味な独り言に耐えきれず、男はトリガーを引いた。
◆
(すみません、またご主人様の独り言で相手を怖がらせてしまいました)
『こんな時なのに話しかけて来るから!!』
銃弾の嵐を弾きながら、目の前の男へと突進する。そして俺はシミュレーションに従い、相手の銃を掴み、もぎとって放り捨てた。
「ああああ!!」
それでもまだ殴りかかって来る男の手首と首根っこを掴み、押して3Fの手摺から身体をはみ出させる。
男は暫く暴れようとしていたが、膂力がこちらに敵わないのを知ると、ぐったりと身体を弛緩させた。そこで俺もようやく力を緩め、両手で襟首をつかんで宙づりにする。
『よし、それじゃあ尋問だな……』
(ご主人様、情報収集ならお早めにお願いします。今の発砲音を警察に聞かれました、突入まで時間がありません)
『マジかよ、じゃあ手短に行かないとな。オイ、聞いてるか。今回お前らが狙っていた物資はなんだ』
俺は立てこもり犯を宙づりにしたまま、じっとその目を見つめる。が、肝心の犯罪者は、目を逸らして此方を見ない。
『おい、聞いてるのか。お前は昨日クラリス・コーポレーションを襲ったヤツと同じなのか』
「……へへへ、革命が起きるぜ」
『お前の将来設計を聞いてるんじゃない、さっさと答えろ。さもないと……』
「さもないと?」
『……寄生虫、うつすぞ』
「……」
俺もうまい脅しが思いつかず、微妙な言葉が出てきてしまう。だが意外にもこの意味不明な脅し文句は効いたらしく、犯罪者は目に見えてうろたえている。傍から見たら狂人っぽいのが功を奏したか。
『どうだ、本当の事を言う気になったか』
「……俺達は、スコーピオンズ……この国に回る、サソリの毒……」
『……スコーピオンズ?』
(名を登録しておきます。この尋問も録音中)
『何が目的だ、スコーピオンズ。クラリス・コーポレーションを何度も襲って、何がしたい』
襟首を掴む手に力を込める。だが、男は首を横に振る。
「俺は知らない。『プレゼント』がどうとか、そんな話しか知らないんだ」
『……プレゼント?』
「中身も知らない。俺には分からない……」
(声紋乱れ無し。脈拍正常。嘘はついていません)
末端の構成員には何も知らせないのが組織のやり方か。それなら、コイツらは、内容も知らない任務のためにトラックの運転手を殺した事になる。
1Fのエントランスホールから多数の足音が聞こえて来る。俺は犯人の襟首を掴んだまま、顔を近付けて見つめる。
『お前は何も知らない任務のために、トラックの運転手を殺したのか。血も涙もない外道だな』
「……」
だが、彼は何も言い返さず、震える腕をあげて一方を指さした。その方向を見ると、気絶していたハズの立てこもり犯の一人が、這いずって何かに手を伸ばしている。
俺は困惑し、咄嗟の行動を決めかねる。その隙に、這いずっていた犯罪者は、階層の隅に積んであった四角い箱のようなものに触れた。
『おい、何を……』
もう無力化していたと思い込んでいた犯罪者に、俺は追撃を出すのを躊躇ってしまう。次の瞬間、巨大な箱だと思い込んでいた『それ』は、発光し、複雑なパズル機構じみてバラけた。
『おい!?』
不穏なものを感じ取り、吊り下げていた男を放り捨てて駆け寄る。だが直後、俺は全身に衝撃を受け、吹き飛んだ。
『おおっぐぅ!?』
3Fの手摺を破壊し、吹き飛んで2Fに転がる。突入しようと2Fに駆けのぼっていた警官たちが、防護シールド越しに俺を見て狼狽える。
「な、なんだコイツ、降って来たぞ!?」
「何が起きてる!?」
「拘束しろ!!」
『伏せろ、伏せてろ! 危険だ!』
俺は必死に警告し、立ち上がって『それ』を待ち構える。数秒後、巨大な足音を響かせながら、重機のような影が落ちて来た。
『それ』は、全身を灰色の鋼鉄で覆っていた。足は無骨な十字の形をしており、踏ん張りやすいフォルムをしている。腕は巨大に膨らみ、指はかぎづめのように曲がっている。
(クラリス・コーポレーション社製、ロボットスーツです。本来は被災地の瓦礫を撤去するなど、救助を目的として製造されたスーツです)
『救助が目的? さっき思いっきり殴られたけどな』
(油断が原因ですね。ここからは油断しないでください、殺されます)
「はははは! すげえパワーだ、お前なんか怖くねえぜ!!」
ロボットスーツに身を包み、犯罪者は高笑いしながら歩いて来る。俺は拳を構え、巨大な鉄塊と向き合う。
「ど、どうすれば……」
「狼狽えるな! まずはデカい方だ、突撃!」
『とつ、何!? よせ!』
果敢にも怪物に向かっていく警官たちへと叫ぶが、彼らは聞く耳を持たず、ライオットシールドを握って突っ込んで行く。
雪崩のように突撃する青い制服たちに、数秒、重機じみた影は固まる。が、ヤツが身を屈めたかと思えば、直後に警官たちは吹き飛ばされていた。膂力を解き放ったロボットスーツは、高笑いして俺を見下ろす。
「はははは……どうだ! もう一度俺をやれるか、ごみ屑め!」
『ちくしょう、やるしかねえか! スニーキングモードを解除だ、やるぞ!』
(了解、スニーキングモード解除。やりましょう、ご主人様)
途端、俺の全身のダークブルーの塗装が消え、銀色に変化する。俺はロケットスタートじみた勢いで怪物へと駆け、拳を叩き付けた。
が、その拳はかぎづめにやすやすと受け止められた。ロボットスーツの男はニヤニヤと笑い、俺を見詰めて来る。俺のこめかみを冷や汗が伝う。
『……えっと、降参』
「認めねえなあ!!」
ダメ元で言ってみると、強烈な拳が返って来た。何とか片腕でガードするも、受け切れずに吹き飛んで壁を突き破る。
『ぐお……!!』
(やはりパワーで押し負けます。真正面から打ち合うのはやめましょう)
遅すぎる警告を脳内で聞きながら、1Fに落ちてバウンドする。それを追い、怪物が落ちて来る。
「どうしたぁ、人形野郎! もうちょっと根性見せろや!」
『おい、これって逃げた方が良いんじゃねえのか』
(そうなった場合、人質は人質のまま。命の重みが平等なら、ここから離れる訳にはいきません)
『分かってるよ、言ってみただけだ!』
俺は起き上がり、置いてあった看板を掴んでバットのように振り抜いた。ロボットの片腕がそれを掴み、捻りつぶして放り投げる。
『おいマジかよ、ステゴロで勝てる相手じゃないだろ!』
(帰ったら格闘術の練習をしましょう)
「ははは! じゃあ今度はこっちから行くぞ!」
スーツの中身が高笑いし、その巨大な腕部からドリルがせり出す。ただでさえ劣勢なのに、ここにきて敵に武装追加。俺は蒼白になり、ジリっと後退する。
「そんじゃあ死んどけや!!」
叫び、重機が駆けて来る。一歩が大きく、あっという間に距離を詰められ、ドリルが目の前に迫っていた。
『うおぉ!?』
ギリギリで躱し、胸にドリルが掠って火花を散らす。体幹ごと持って行かれそうな回転の威力に、俺は思わず驚愕する。
(回避シミュレーション作動。ご主人様、隙を見つけて攻撃です)
視界の誘導に従い、俺は必死に身体を回避のルートに乗せる。ドリルが嵐のように押し出され、次々に逃げ場を潰す。
「潰れろォ!!」
『クソ、ここか!!』
苛立つ犯罪者が大振りな一撃を繰り出した。俺はそれを躱し、生じた隙にローキックを叩き込む。
膝関節部を攻撃され、ロボットスーツが膝をつく。やはりこのスーツの弱点は総重量だ。極めて重い体重を支えるのは、脚部。ゆえにその脚部へダメージを集中させれば、勝ち目はある!
『そらよ!!』
降りて来た顔に、思い切りサッカーボールキックを繰り出す。防護ガラスがそれを食らい、重機じみた怪物が仰け反る。
がら空きになった体へと取り付く。そして俺は叫んだ。
『ロボットスーツの機構を解析だ!』
(了解。破壊に効率的な部位を表示します)
通常の視界に、巨大ロボットスーツの致命的部位が赤く染まって表示される。俺はそれに従い、鉄の中へと腕と突き込んだ。
そして、右腕のコントロールを司るコードを引きちぎった。
途端にスーツの右腕がダラリと垂れさがり、火花が散り始める。やったのだ。
『おっしゃ、どんなもんだ……!?』
だが直後に、俺は身体をかぎ爪で掴まれ、弾丸のような勢いで投げられていた。
『ううっぐわあ!?』
壁を突き破り、ショッピングモールから弾き出される。そのままアスファルトを削り、俺は道路の上へとのびた。
外で突入の指示を行っていた警官たちが、俺を見て驚きの声を上げている。
「なんだコイツ!?」
「おい、中で何が起きてるんだ! 突入部隊との連絡が途絶えたぞ!」
『いいっででで……』
(オイルエンプティ、オイルエンプティ。速やかに給油してください)
『今かよ……!!』
最悪のタイミングでガス欠が発生し、息苦しさが襲ってくる。意識が朦朧とする中、ドスドスと怪物が迫って来る。
そして、ロボットスーツの男は、俺を仰向けにし、足で抑え付けた。
「よくも、仲間をやってくれたもんだぜ。なあ、このスーツの右腕も動かなくなっちまった。ボスにどう説明すればいいんだ? 折角の『プレゼント』だってのによ……!!」
俺は言い返す事もできず、徐々に踏みつぶされながら何とか力を奮い起こし、身体の上の足を掴んで対抗し始める。しかし、超重量はなかなか持ち上がらない。
「無駄な抵抗だぜ! 死ね!!」
男は叫び、左腕のドリルを展開させて俺の首へと押し付け始めた。火花が散り、凄まじい振動で脳までシェイクされる。
「おいっ、アイツら何をやってるんだ!?」
「知らないが、片一方が死んじまうぞ! もしもし、発砲許可を! もしもし!!」
警官たちが叫ぶのが聞こえる。俺は足を持ち上げるのを諦め、ドリルを掴んで少しだけ持ち上げる。摩擦で手のひらが熱され、火花が一層激しく散り始める。
だが、叫ぶ余裕はできた。俺は首を警官たちへと向け、大きく息を吸い込み、叫んだ。
『2Fだ! 2Fに人質が居る、他の立てこもり犯は片付けた! 今の内に急いでくれ!!』
「……!!」
警官たちは、暫く俺の言葉が信用に値するかというのを考えているようだった。しかし、俺にはもはやそれ以上の言葉を紡ぐ余裕はなく、またドリルと格闘を始めざるをえない。
やがて、一人の警官が叫んだ。
「……突入部隊との連絡が取れない今、俺達が行くしかないだろ! 全員、行くぞ! 2Fだ!」
「クソ、始末書の言い訳は銀色に光る人形ってか!?」
ドタドタと走る音が、ショッピングモールの方向へと消えて行く。これで心置きなく戦える。俺は首を迫りくるドリルへと向け、全力で抗う。
(オイルエンプティ、オイルエンプティ、アラート、アラート、このままでは動作停止します)
『クソ、これを退けられねえのかよ!』
(少しでも敵のバランスを崩せばいけます。しかし、このままでは)
バランスを崩す。そんな要素は今の俺からは出て来ない。いよいよ息苦しさが最高に達し、意識が途絶えそうになったその瞬間……
銃声が響き、重機のような影が僅かに傾いだ。その少しのバランスのほつれに、思いがけずやってきた幸運に、俺は食らい付いた。
ドリルを支える鉄芯を横から殴りつけ、叩き折る。ドリルへ全体重をかけていた怪物が、よろめく。その重心の変化を見計らい、俺は拳を敵の腹部へ押し当て、巴投げのように投げ飛ばした。
巨大な質量が道路に沈み、揺れる。俺の全身の装甲が軋む。
『っは、っは、あ、……!!』
(オイルエンプティ、オイルエンプティ。速やかに給油してください)
よろよろと立ち上がり、発砲した者を見る。彼は、自分でも自分のやった事が信じられないと言いたげに、手の中の拳銃を見ている。
撃ったのは、一人の若い警官だった。彼はしばらく言葉を探し、ゆっくりと口を開く。
「……無事か?」
『……助かった』
とりあえず感謝し、オイルを探して辺りを見回す。が、次の瞬間、若い警官は目を剥いて叫んだ。
「危ない!」
『何、』
振り向く暇もなく、俺はすさまじい威力で撥ね飛ばされ、道路を転がった。
「やってくれるぜ、このクソ野郎……!!」
ボロボロになりながら、ロボットスーツが立ち上がる。どうやらまだやる気らしく、ヒビの入った強化ガラス越しに、犯罪者の殺意に燃える瞳が覗く。
「おうえ、応援を願います! こちら待機班、重機のようなスーツをまとった犯罪者が手に負えません!!」
若い警官も車の陰に慌てて隠れ、無線で応援を呼んでいる。しかし今、俺達以外の助けは期待できない。
(オイルエンプティ、)
『……クソ……』
時折意識が飛ぶのを無理にこらえ、俺は停めてあったバイクにすがって立ち上がる。……バイク。
『……おい、確か』
(オイルエンプティ)
もはやそれ以外言わなくなってしまったパラサイトに、俺は会話を諦める。そしてスクーターのエンジン部を掴み、抉り出した。
「ごみ屑ロイドめ、潰れて死ね!!!」
超質量の怪物が駆けて来る。振り上げられた拳を見詰めながら、俺はエンジンを咀嚼し、飲みこんでいた。
拳が、直撃した。衝撃が風になり、俺の周囲を吹き抜けていった。
「……何?」
『グググググウゥゥゥゥゥゥ……!!!』
しかし、俺は吹き飛ばなかった。今度こそ、歯を食いしばり、拳を受け止めていた。
(燃費、パワーともに向上。エンジンの取り込み完了)
『よーし、受け止められるぜクソ野郎……!!』
(反撃開始といきましょう)
犯罪者の目に怯えがよぎる。その隙を見逃さず、俺は拳を強化ガラスへと叩き込んだ。
ヒビが広がり、超質量スーツがよろめいて後退る。俺は短距離走の選手じみて体を屈め、地面が爆ぜるほどの威力で跳躍した。
そして、その威力を全て足に込め、ドロップキックを繰り出した。強化ガラスが粉砕され、ロボットスーツが吹き飛び、アスファルトを削ってめり込んで行く。
「な、なんでだ、なんで俺が負けてる!? さっきまで勝ってたはずなのに!?」
『どうだかな! とにかく、お前はここで終わりだ!』
俺はスーツへ跳びかかると、犯罪者の胸倉を掴み、引きずり出した。そして宙づりにすると、尋問の体勢に入る。
『それじゃあ答えろ。お前達は何故クラリス・コーポレーションを襲う』
「……」
『答えろ! あのスーツより悲惨な目に遭いたいのか!?』
強く脅すと、男は恐怖に負け、喋り出した。
「お、俺はただの運転手だ、やめてくれ……! 金をやると言われて、今回の事故を起こしただけだ、本当だ! まさか人質事件になるなんて思っても無かったんだ!」
『下手な言い訳を……』
(声紋に乱れは見られません。嘘はついていないかと)
パラサイトの声に遮られ、俺は混乱してしまう。という事はつまり……。
『……つまり、お前は本当はトラック運転手で、金を払われたから自主的にショッピングモールへ突っ込んだって事か?』
「か、金が必要だったんだ! 分かるだろ!?」
『積み荷は何だったんだ。スコーピオンズに雇われたのか?』
「わ、分からない、どれも分からない。俺たちクラリス・コーポレーション専属の輸送業者は、自分が何を運んでるかなんて知らされない……」
ますます訳が分からない。謎が深まり過ぎている。
もっと情報を引き出そうとした次の瞬間、声が響いた。
「その人を放すんだ!」
見れば、先程俺を助けてくれた若い警官が、今度は銃口をこちらに向けて立っていた。
俺は暫く迷い、結局男を放すと、踵を返して走り出した。
「ま、待て! こちら待機班、被疑者のうち一人が逃亡中……は、速いです!」
待てと言われて待つハズもなく、俺は全力疾走で封鎖区域を離脱した。
◆
「だいぶボロボロにやられたけど、スーツは大丈夫なのかよ」
(自己修復機能がついています。1日ほど間を置けば、大丈夫ですよ)
「そうか、なら良いけど……」
結構苦戦してしまった。俺はダメージを負った身体で、すたすたと歩いていく。封鎖が解除され、通行止めされていた車の列が徐々に前に進んで行く。
(それより、ご主人様の身体が心配です。今、全力で治癒細胞を働かせていますが……)
「どうも……治る時って痛いな」
(そんなものです。痛いのがお好きなら、痛覚レベルを引きあげますよ)
「やめてくれ」
(冗談です)
何か言えばとんでもない返しが待っている。この寄生虫との会話は油断できない……そう思いながら歩いていると、見覚えのある車が流れて来た。
中に乗っている女性は、俺を見るなり、驚いてハザードを焚く。そしてすぐに車から降りて来た。
「ど、どうしたのその青あざ!? なんで、トイレに行ってたんじゃ……」
「あー……」
イコマ先生への言い訳を考えていなかった。俺は頬を掻き、目を逸らした。
「ったく、俺達の手に負える事件じゃないだろコレは……SATへの連絡はまだつかないのか」
「奴らの出動の承認には時間が掛かる、今回は期待しない方が良いだろうな……」
(今回はSATへの対策はしなくて良さそうです。それよりも、このまま警察の方々に見つからず、現場へ突入できるかというところですが)
「まずは現場の位置を確認だ。それから、えっと……警察に見つからないルート取りの検索も」
(了解しました)
マンホールから覗く俺の視界が切り替わり、真っ黒に変わる。目の前を通り過ぎる警察官の足音が白い波となり、俺の視界に響く。
(エコー・ヴィジュアライズモード。音波を視覚に表しています。……現場は、あそこのビルです)
「ほうほう……」
そこら中で発された音が世界を形作る。俺の視線の先には、真っ黒な世界に真っ白な輪郭を持った、巨大なビルがそびえていた。
「アレは何のビルだ?」
(巨大なショッピングモールだったようです。ですが)
青い矢印とシミュレーションが現れた。ホログラムのトラックがスピンし、ビルの腹へと突っ込むワンシーンが映し出される。成程、こうやって事故が発生したという事か。
「……普通、こんな風に急にスピンするか?」
(それが今回の事件なのでしょう。私が集めた情報によると、どうやら犯人グループはあらかじめクラリス・コーポレーションの輸送トラックのルートを把握し、そこへ襲撃をかけたようです)
「成程な」
つまり、トラックの運転手は走行中に襲われでもしたのか。そうしてパニックになり、ハンドルを操り損ねてビルへ衝突。
「人の命をなんとも思ってない連中だな、犯人は」
(命の価値の話は、私には判じかねます)
「……」
パラサイトがこんな風に言うのは珍しい。いつでもお調子者で、余計な事まで言う、機械らしからぬヤツだったのだが……今の答え方は、まるで機械そのものだった。
「……とにかく、ビル内部の犯罪者の人数を把握したい」
(はい。音波視覚を遠方へフォーカス。熱源探知と併用し、人数の把握を行います……)
ビルの内部の音の微かな揺らぎが視界に映る。しばらく押し黙っていると、やがてパラサイトは結論を出した。
(立てこもり犯の人数は7人です)
「7人か、よし、なら……」
(人質の人数は40人を超えています)
「ひと、人質!? 奴ら、また人質を取ってるのか!?」
(はい。どうやら買い物客を巻き込んでいるようです。だから警察の突入も難航しているのかと)
「……」
それは困った。相手がたった7人なら、どれだけ重武装していても真正面から突っ込んで殴り飛ばせば良い話だったのだが……人質が居るなら話は別だ。無関係な市民を巻き込む訳にはいかない。
ようやくパラサイト関係の手掛かりが掴めるかもしれないというのに、コレでは手出しも出来ない。悔しさに歯を食いしばっていると、頭の中で声が響いた。
(何を躊躇うのです、ご主人様。戦いましょう、前回と同じく楽勝です)
「馬鹿、状況が違い過ぎる。わざわざ首を突っ込んで、事態を悪化させたらどうするんだ」
(何故他の命を気にかけるのです? パワードスーツを着用すれば、誰がやったのかの判別はつきません。ご主人様の罪にはならず、銀色の鉄人形が罪を被るでしょう)
「……」
あまりの物言いに、少し絶句してしまった。だが、同時に何処かで納得もした。コイツは『ご主人様』を守ろうとはするが、他人は全く気にかけないマシーンなのだ。
シマヨシさんの顔が脳裏をよぎる。俺は少し目を閉じ、また開いた。
「……良いか、パラサイト。一回しか言わないから、よく聞いとくんだ」
(はい、なんでしょう?)
「命の重さは皆同じだ。人にはそれぞれ生きなきゃならない人生があるし、役割がある。そんなに簡単に、人を死なせるなんて言うな」
(それは、人間の道徳的観念からの発言ですか?)
「違う、……お前のルームメイトからの、心からの忠告だ」
(心は分かりません)
「俺にも分からねえよ……」
微妙に伝わったのか伝わってないのかよく分からないリアクションが返り、俺は思わず溜め息を吐く。
(……ですが、分かりました。ご主人様の言う通り、命の重さを皆同じに書き換えておきます)
「ああ。……まあ、説教臭かったな。悪い」
(ふふ、ご主人様の意外な一面でしたね)
「機械がからかうんじゃねえよ……」
俺だって意外だ。これまで人とのかかわりがあまり無かったから知らなかったが、俺というヤツは人の影響を受けやすいらしい。何処かのお人よしめ……。
とにかく今最優先すべきなのは、どうにかして人質を傷付けず、犯人共の目を掻い潜って制圧し、奴らから情報を聞き出す方法だ。そんな夢みたいな事ができれば、だが。
(さて、ではご主人様の行動方針も確認できましたので、スーツのスニーキング機能をオンにします)
「ああ……ああ?」
(この機能がオンになっている間は、パワーが多少落ちる代わりに、駆動音が限界まで静かになり、装甲も少し軟化して音を立てなくなります。また、光を吸収するダークブルーのカラーリングになり……)
「待て待て、そんな機能があったのか? 黙ってたんだな?」
(真正面から殴り込んだ方が効率的だと思っていましたので)
「このポンコツ……」
思わず悪態をつきそうになり、俺はこらえて顔を上げる。マンホールをずらし、身体をアスファルトへ引き上げる。
「もう一回スーツアップだ。行くぞ」
(了解です)
その言葉と同時に、俺の全身は深い闇を思わせる装甲に包まれた。
………………
「なあ、前回の奴らは失敗したらしいな」
「ああ、聞いた話じゃロボットにやられたらしい。イカれてる」
「だ、だよなぁ。流石にイカレすぎだぜ」
犯罪者たちは各々手に銃を持ち、ショッピングモールを歩き回っている。銃の種類は豊富であり、マシンガン、ショットガン、ハンドガンからスナイパーライフルまで持っている。潤沢すぎる装備だ。
だが、一人の犯罪者は震え声で、不安げに仲間に語り掛ける。
「……で、でもよ、アワナミ高校のガキ共も口をそろえて言ってるらしいんだ。ロボットが銃弾を弾いて、殴ったって……」
「馬鹿が、そんな与太話を信じるのか? どうせサツが俺達をビビらせるために作りあげた嘘だ。ビビってないで、見張りを続けろ」
「だ、だよな、悪い……」
「ったく……おい、聞こえるか。全員定期報告をしろ」
鬱陶しそうに怖がる仲間をはねのけ、通信機へ連絡を呼びかける立てこもり犯。
『4Fバルコニー、異常なし』
『3Fの積み荷監視中、異常なし』
『……』
『階段、異常なし』
『1F異常なし』
「おい、2Fの人質見張り役はどうした。応答しろ」
『……』
通信機から声は帰らない。立てこもり犯は苛立ち、エスカレーターへと足をかけて、恐怖に怯えた仲間を振り向く。
「おい、テメェはこの地下を見張ってろ。俺は2Fの様子を見て来る」
「お、オッケー、任せとけよ……」
力なく頷く仲間を置き去りに、男はエスカレーターを駆け上り、2Fへと上がって行く。
「ははは、奴はどうしたんだ」
「サボってやがったら、撃ち殺してやる」
「そいつは楽しみだぜ」
途中、1Fを見張っていた仲間がニヤニヤと笑って茶化してくるのをはねのけ、男は2Fへと駆けのぼる。そして、人質たちが居た場所へと入った。
婦人服コーナーである。人質たちは相変わらず恐怖に震え、膝をついた姿勢で両手を頭の上で組んでいる。
だが、人質を見張っていたハズの仲間は居ない。忽然と消えている。
「おい、奴を何処へやった」
「し、知りません……」
男は人質へと銃口を向け、脅すように尋ねる。しかし人質は怯えたまま、震えて首を横に振るのみ。
「テメェ、しらばっくれるつもりか! アイツを何処に……!!」
『ぐああああああああああああ!!!』
その時、男の通信機から大音量で悲鳴が流れた。男は素早く通信機を手に取り、悲鳴の出どころを探ろうとする。
「おい、今のはどいつだ。全員、無事なのか」
『ち、地下、異常なし』
『1F異常なし。今の悲鳴は上からだ』
『3F、異常な……な、なんだコイツ!? やめっ、ぎゃああああ!!?』
「おいっ、動けるヤツは全員3Fへ急げ! 今すぐにだ!」
男は咄嗟に指示を出し、マシンガンを構えて飛び出す。そしてエスカレーターを駆け上り、3Fへと到着した。
それと同時に、3Fを見張っていた仲間がドサリと男へ倒れ込んできた。男はそれを受け流し、反射的に銃を構える……が、銃口の先には何もない。波打つような闇が見えるだけだ。
「ちくしょう、なんだってんだ……」
毒づきながら、男は倒れた仲間を見下ろす。恐怖の表情のまま気絶した仲間は、どうやら発砲したらしく、手に持つ銃から硝煙が立ち昇っている。しかし、肝心の敵を仕留められていない。
「おいおい、コイツはひどいな……」
「な、なな……」
後から上って来た仲間二人も、このありさまを見て二の句も継げない。男は注意喚起しようと振り向き、ゾワリと固まった。
仲間二人の後ろに、闇をそっくり人型に切り抜いたような存在が立っていたのだ。ソイツは、二人の頭を掴むと、思い切り打ち合わせて気絶させた。
『これであと一人』
ぼそりと、奇妙に歪んだ声が闇に広がる。男は慌てて立ち上がり、正体不明の敵へ銃口を向ける。
しかし、銃を向けられても、その怪物は動揺しない。何事かをぼそぼそと呟きながら、じりじりと迫って来る。
『……いや、だから殺すのは不味いって……いくら悪人でも、殺しちゃったらそれは……でも……ああ、それは認める、殴るのは楽しいけど……』
「ば、バケモンがぁぁぁぁぁああ!!!」
不気味な独り言に耐えきれず、男はトリガーを引いた。
◆
(すみません、またご主人様の独り言で相手を怖がらせてしまいました)
『こんな時なのに話しかけて来るから!!』
銃弾の嵐を弾きながら、目の前の男へと突進する。そして俺はシミュレーションに従い、相手の銃を掴み、もぎとって放り捨てた。
「ああああ!!」
それでもまだ殴りかかって来る男の手首と首根っこを掴み、押して3Fの手摺から身体をはみ出させる。
男は暫く暴れようとしていたが、膂力がこちらに敵わないのを知ると、ぐったりと身体を弛緩させた。そこで俺もようやく力を緩め、両手で襟首をつかんで宙づりにする。
『よし、それじゃあ尋問だな……』
(ご主人様、情報収集ならお早めにお願いします。今の発砲音を警察に聞かれました、突入まで時間がありません)
『マジかよ、じゃあ手短に行かないとな。オイ、聞いてるか。今回お前らが狙っていた物資はなんだ』
俺は立てこもり犯を宙づりにしたまま、じっとその目を見つめる。が、肝心の犯罪者は、目を逸らして此方を見ない。
『おい、聞いてるのか。お前は昨日クラリス・コーポレーションを襲ったヤツと同じなのか』
「……へへへ、革命が起きるぜ」
『お前の将来設計を聞いてるんじゃない、さっさと答えろ。さもないと……』
「さもないと?」
『……寄生虫、うつすぞ』
「……」
俺もうまい脅しが思いつかず、微妙な言葉が出てきてしまう。だが意外にもこの意味不明な脅し文句は効いたらしく、犯罪者は目に見えてうろたえている。傍から見たら狂人っぽいのが功を奏したか。
『どうだ、本当の事を言う気になったか』
「……俺達は、スコーピオンズ……この国に回る、サソリの毒……」
『……スコーピオンズ?』
(名を登録しておきます。この尋問も録音中)
『何が目的だ、スコーピオンズ。クラリス・コーポレーションを何度も襲って、何がしたい』
襟首を掴む手に力を込める。だが、男は首を横に振る。
「俺は知らない。『プレゼント』がどうとか、そんな話しか知らないんだ」
『……プレゼント?』
「中身も知らない。俺には分からない……」
(声紋乱れ無し。脈拍正常。嘘はついていません)
末端の構成員には何も知らせないのが組織のやり方か。それなら、コイツらは、内容も知らない任務のためにトラックの運転手を殺した事になる。
1Fのエントランスホールから多数の足音が聞こえて来る。俺は犯人の襟首を掴んだまま、顔を近付けて見つめる。
『お前は何も知らない任務のために、トラックの運転手を殺したのか。血も涙もない外道だな』
「……」
だが、彼は何も言い返さず、震える腕をあげて一方を指さした。その方向を見ると、気絶していたハズの立てこもり犯の一人が、這いずって何かに手を伸ばしている。
俺は困惑し、咄嗟の行動を決めかねる。その隙に、這いずっていた犯罪者は、階層の隅に積んであった四角い箱のようなものに触れた。
『おい、何を……』
もう無力化していたと思い込んでいた犯罪者に、俺は追撃を出すのを躊躇ってしまう。次の瞬間、巨大な箱だと思い込んでいた『それ』は、発光し、複雑なパズル機構じみてバラけた。
『おい!?』
不穏なものを感じ取り、吊り下げていた男を放り捨てて駆け寄る。だが直後、俺は全身に衝撃を受け、吹き飛んだ。
『おおっぐぅ!?』
3Fの手摺を破壊し、吹き飛んで2Fに転がる。突入しようと2Fに駆けのぼっていた警官たちが、防護シールド越しに俺を見て狼狽える。
「な、なんだコイツ、降って来たぞ!?」
「何が起きてる!?」
「拘束しろ!!」
『伏せろ、伏せてろ! 危険だ!』
俺は必死に警告し、立ち上がって『それ』を待ち構える。数秒後、巨大な足音を響かせながら、重機のような影が落ちて来た。
『それ』は、全身を灰色の鋼鉄で覆っていた。足は無骨な十字の形をしており、踏ん張りやすいフォルムをしている。腕は巨大に膨らみ、指はかぎづめのように曲がっている。
(クラリス・コーポレーション社製、ロボットスーツです。本来は被災地の瓦礫を撤去するなど、救助を目的として製造されたスーツです)
『救助が目的? さっき思いっきり殴られたけどな』
(油断が原因ですね。ここからは油断しないでください、殺されます)
「はははは! すげえパワーだ、お前なんか怖くねえぜ!!」
ロボットスーツに身を包み、犯罪者は高笑いしながら歩いて来る。俺は拳を構え、巨大な鉄塊と向き合う。
「ど、どうすれば……」
「狼狽えるな! まずはデカい方だ、突撃!」
『とつ、何!? よせ!』
果敢にも怪物に向かっていく警官たちへと叫ぶが、彼らは聞く耳を持たず、ライオットシールドを握って突っ込んで行く。
雪崩のように突撃する青い制服たちに、数秒、重機じみた影は固まる。が、ヤツが身を屈めたかと思えば、直後に警官たちは吹き飛ばされていた。膂力を解き放ったロボットスーツは、高笑いして俺を見下ろす。
「はははは……どうだ! もう一度俺をやれるか、ごみ屑め!」
『ちくしょう、やるしかねえか! スニーキングモードを解除だ、やるぞ!』
(了解、スニーキングモード解除。やりましょう、ご主人様)
途端、俺の全身のダークブルーの塗装が消え、銀色に変化する。俺はロケットスタートじみた勢いで怪物へと駆け、拳を叩き付けた。
が、その拳はかぎづめにやすやすと受け止められた。ロボットスーツの男はニヤニヤと笑い、俺を見詰めて来る。俺のこめかみを冷や汗が伝う。
『……えっと、降参』
「認めねえなあ!!」
ダメ元で言ってみると、強烈な拳が返って来た。何とか片腕でガードするも、受け切れずに吹き飛んで壁を突き破る。
『ぐお……!!』
(やはりパワーで押し負けます。真正面から打ち合うのはやめましょう)
遅すぎる警告を脳内で聞きながら、1Fに落ちてバウンドする。それを追い、怪物が落ちて来る。
「どうしたぁ、人形野郎! もうちょっと根性見せろや!」
『おい、これって逃げた方が良いんじゃねえのか』
(そうなった場合、人質は人質のまま。命の重みが平等なら、ここから離れる訳にはいきません)
『分かってるよ、言ってみただけだ!』
俺は起き上がり、置いてあった看板を掴んでバットのように振り抜いた。ロボットの片腕がそれを掴み、捻りつぶして放り投げる。
『おいマジかよ、ステゴロで勝てる相手じゃないだろ!』
(帰ったら格闘術の練習をしましょう)
「ははは! じゃあ今度はこっちから行くぞ!」
スーツの中身が高笑いし、その巨大な腕部からドリルがせり出す。ただでさえ劣勢なのに、ここにきて敵に武装追加。俺は蒼白になり、ジリっと後退する。
「そんじゃあ死んどけや!!」
叫び、重機が駆けて来る。一歩が大きく、あっという間に距離を詰められ、ドリルが目の前に迫っていた。
『うおぉ!?』
ギリギリで躱し、胸にドリルが掠って火花を散らす。体幹ごと持って行かれそうな回転の威力に、俺は思わず驚愕する。
(回避シミュレーション作動。ご主人様、隙を見つけて攻撃です)
視界の誘導に従い、俺は必死に身体を回避のルートに乗せる。ドリルが嵐のように押し出され、次々に逃げ場を潰す。
「潰れろォ!!」
『クソ、ここか!!』
苛立つ犯罪者が大振りな一撃を繰り出した。俺はそれを躱し、生じた隙にローキックを叩き込む。
膝関節部を攻撃され、ロボットスーツが膝をつく。やはりこのスーツの弱点は総重量だ。極めて重い体重を支えるのは、脚部。ゆえにその脚部へダメージを集中させれば、勝ち目はある!
『そらよ!!』
降りて来た顔に、思い切りサッカーボールキックを繰り出す。防護ガラスがそれを食らい、重機じみた怪物が仰け反る。
がら空きになった体へと取り付く。そして俺は叫んだ。
『ロボットスーツの機構を解析だ!』
(了解。破壊に効率的な部位を表示します)
通常の視界に、巨大ロボットスーツの致命的部位が赤く染まって表示される。俺はそれに従い、鉄の中へと腕と突き込んだ。
そして、右腕のコントロールを司るコードを引きちぎった。
途端にスーツの右腕がダラリと垂れさがり、火花が散り始める。やったのだ。
『おっしゃ、どんなもんだ……!?』
だが直後に、俺は身体をかぎ爪で掴まれ、弾丸のような勢いで投げられていた。
『ううっぐわあ!?』
壁を突き破り、ショッピングモールから弾き出される。そのままアスファルトを削り、俺は道路の上へとのびた。
外で突入の指示を行っていた警官たちが、俺を見て驚きの声を上げている。
「なんだコイツ!?」
「おい、中で何が起きてるんだ! 突入部隊との連絡が途絶えたぞ!」
『いいっででで……』
(オイルエンプティ、オイルエンプティ。速やかに給油してください)
『今かよ……!!』
最悪のタイミングでガス欠が発生し、息苦しさが襲ってくる。意識が朦朧とする中、ドスドスと怪物が迫って来る。
そして、ロボットスーツの男は、俺を仰向けにし、足で抑え付けた。
「よくも、仲間をやってくれたもんだぜ。なあ、このスーツの右腕も動かなくなっちまった。ボスにどう説明すればいいんだ? 折角の『プレゼント』だってのによ……!!」
俺は言い返す事もできず、徐々に踏みつぶされながら何とか力を奮い起こし、身体の上の足を掴んで対抗し始める。しかし、超重量はなかなか持ち上がらない。
「無駄な抵抗だぜ! 死ね!!」
男は叫び、左腕のドリルを展開させて俺の首へと押し付け始めた。火花が散り、凄まじい振動で脳までシェイクされる。
「おいっ、アイツら何をやってるんだ!?」
「知らないが、片一方が死んじまうぞ! もしもし、発砲許可を! もしもし!!」
警官たちが叫ぶのが聞こえる。俺は足を持ち上げるのを諦め、ドリルを掴んで少しだけ持ち上げる。摩擦で手のひらが熱され、火花が一層激しく散り始める。
だが、叫ぶ余裕はできた。俺は首を警官たちへと向け、大きく息を吸い込み、叫んだ。
『2Fだ! 2Fに人質が居る、他の立てこもり犯は片付けた! 今の内に急いでくれ!!』
「……!!」
警官たちは、暫く俺の言葉が信用に値するかというのを考えているようだった。しかし、俺にはもはやそれ以上の言葉を紡ぐ余裕はなく、またドリルと格闘を始めざるをえない。
やがて、一人の警官が叫んだ。
「……突入部隊との連絡が取れない今、俺達が行くしかないだろ! 全員、行くぞ! 2Fだ!」
「クソ、始末書の言い訳は銀色に光る人形ってか!?」
ドタドタと走る音が、ショッピングモールの方向へと消えて行く。これで心置きなく戦える。俺は首を迫りくるドリルへと向け、全力で抗う。
(オイルエンプティ、オイルエンプティ、アラート、アラート、このままでは動作停止します)
『クソ、これを退けられねえのかよ!』
(少しでも敵のバランスを崩せばいけます。しかし、このままでは)
バランスを崩す。そんな要素は今の俺からは出て来ない。いよいよ息苦しさが最高に達し、意識が途絶えそうになったその瞬間……
銃声が響き、重機のような影が僅かに傾いだ。その少しのバランスのほつれに、思いがけずやってきた幸運に、俺は食らい付いた。
ドリルを支える鉄芯を横から殴りつけ、叩き折る。ドリルへ全体重をかけていた怪物が、よろめく。その重心の変化を見計らい、俺は拳を敵の腹部へ押し当て、巴投げのように投げ飛ばした。
巨大な質量が道路に沈み、揺れる。俺の全身の装甲が軋む。
『っは、っは、あ、……!!』
(オイルエンプティ、オイルエンプティ。速やかに給油してください)
よろよろと立ち上がり、発砲した者を見る。彼は、自分でも自分のやった事が信じられないと言いたげに、手の中の拳銃を見ている。
撃ったのは、一人の若い警官だった。彼はしばらく言葉を探し、ゆっくりと口を開く。
「……無事か?」
『……助かった』
とりあえず感謝し、オイルを探して辺りを見回す。が、次の瞬間、若い警官は目を剥いて叫んだ。
「危ない!」
『何、』
振り向く暇もなく、俺はすさまじい威力で撥ね飛ばされ、道路を転がった。
「やってくれるぜ、このクソ野郎……!!」
ボロボロになりながら、ロボットスーツが立ち上がる。どうやらまだやる気らしく、ヒビの入った強化ガラス越しに、犯罪者の殺意に燃える瞳が覗く。
「おうえ、応援を願います! こちら待機班、重機のようなスーツをまとった犯罪者が手に負えません!!」
若い警官も車の陰に慌てて隠れ、無線で応援を呼んでいる。しかし今、俺達以外の助けは期待できない。
(オイルエンプティ、)
『……クソ……』
時折意識が飛ぶのを無理にこらえ、俺は停めてあったバイクにすがって立ち上がる。……バイク。
『……おい、確か』
(オイルエンプティ)
もはやそれ以外言わなくなってしまったパラサイトに、俺は会話を諦める。そしてスクーターのエンジン部を掴み、抉り出した。
「ごみ屑ロイドめ、潰れて死ね!!!」
超質量の怪物が駆けて来る。振り上げられた拳を見詰めながら、俺はエンジンを咀嚼し、飲みこんでいた。
拳が、直撃した。衝撃が風になり、俺の周囲を吹き抜けていった。
「……何?」
『グググググウゥゥゥゥゥゥ……!!!』
しかし、俺は吹き飛ばなかった。今度こそ、歯を食いしばり、拳を受け止めていた。
(燃費、パワーともに向上。エンジンの取り込み完了)
『よーし、受け止められるぜクソ野郎……!!』
(反撃開始といきましょう)
犯罪者の目に怯えがよぎる。その隙を見逃さず、俺は拳を強化ガラスへと叩き込んだ。
ヒビが広がり、超質量スーツがよろめいて後退る。俺は短距離走の選手じみて体を屈め、地面が爆ぜるほどの威力で跳躍した。
そして、その威力を全て足に込め、ドロップキックを繰り出した。強化ガラスが粉砕され、ロボットスーツが吹き飛び、アスファルトを削ってめり込んで行く。
「な、なんでだ、なんで俺が負けてる!? さっきまで勝ってたはずなのに!?」
『どうだかな! とにかく、お前はここで終わりだ!』
俺はスーツへ跳びかかると、犯罪者の胸倉を掴み、引きずり出した。そして宙づりにすると、尋問の体勢に入る。
『それじゃあ答えろ。お前達は何故クラリス・コーポレーションを襲う』
「……」
『答えろ! あのスーツより悲惨な目に遭いたいのか!?』
強く脅すと、男は恐怖に負け、喋り出した。
「お、俺はただの運転手だ、やめてくれ……! 金をやると言われて、今回の事故を起こしただけだ、本当だ! まさか人質事件になるなんて思っても無かったんだ!」
『下手な言い訳を……』
(声紋に乱れは見られません。嘘はついていないかと)
パラサイトの声に遮られ、俺は混乱してしまう。という事はつまり……。
『……つまり、お前は本当はトラック運転手で、金を払われたから自主的にショッピングモールへ突っ込んだって事か?』
「か、金が必要だったんだ! 分かるだろ!?」
『積み荷は何だったんだ。スコーピオンズに雇われたのか?』
「わ、分からない、どれも分からない。俺たちクラリス・コーポレーション専属の輸送業者は、自分が何を運んでるかなんて知らされない……」
ますます訳が分からない。謎が深まり過ぎている。
もっと情報を引き出そうとした次の瞬間、声が響いた。
「その人を放すんだ!」
見れば、先程俺を助けてくれた若い警官が、今度は銃口をこちらに向けて立っていた。
俺は暫く迷い、結局男を放すと、踵を返して走り出した。
「ま、待て! こちら待機班、被疑者のうち一人が逃亡中……は、速いです!」
待てと言われて待つハズもなく、俺は全力疾走で封鎖区域を離脱した。
◆
「だいぶボロボロにやられたけど、スーツは大丈夫なのかよ」
(自己修復機能がついています。1日ほど間を置けば、大丈夫ですよ)
「そうか、なら良いけど……」
結構苦戦してしまった。俺はダメージを負った身体で、すたすたと歩いていく。封鎖が解除され、通行止めされていた車の列が徐々に前に進んで行く。
(それより、ご主人様の身体が心配です。今、全力で治癒細胞を働かせていますが……)
「どうも……治る時って痛いな」
(そんなものです。痛いのがお好きなら、痛覚レベルを引きあげますよ)
「やめてくれ」
(冗談です)
何か言えばとんでもない返しが待っている。この寄生虫との会話は油断できない……そう思いながら歩いていると、見覚えのある車が流れて来た。
中に乗っている女性は、俺を見るなり、驚いてハザードを焚く。そしてすぐに車から降りて来た。
「ど、どうしたのその青あざ!? なんで、トイレに行ってたんじゃ……」
「あー……」
イコマ先生への言い訳を考えていなかった。俺は頬を掻き、目を逸らした。
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