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14話 新入隊員
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ヒーロー慈善活動は、全て上手く行っていた。そして今日から下校時も活動をすることにした。そして、寒くなるこれからの時期、本格的活動に際して、健たちはヒーロー慈善活動控え所をつくったのだった。ゴミ袋や拾いばさみなど、ゴミ拾いに使う道具を置いておく場所だ。ひとり二着配られたヒーロー作業着も置いておける。健の家の庭の片隅にテントを張って椅子を置いた。雨風もしのげる。ちょっとした秘密基地である。朝などちょっと時間より早く来て待機することもできる。水道もあるしカセットコンロもあるので、食材さえ持って行けば簡単な食事もできた。吉郎はもちろんそれを利用した。吉郎はいつも腹を空かせている。
「ああ眠い~!」
健は時間通りに控え所に行くと、吉郎はもう来ていた。吉郎はお湯を沸かしている。その間に顔を洗い身支度を整えると、沸いた湯でカップラーメンを作った。
「家で食べてこなかったのかい」
「いいや食べて来たよ。今日2食目だ」
「よく食べられるな」
「これからの活動の分の食事だ。これくらいは体を動かすだろ」
悟と恵ちゃんとおじさんも来た。
「外でカップラーメンの匂いがすると思ったらお前か」
悟が言った。
「おじさん体はもういいの」
健が言った。
「当り前よ。おじさんもヒーローの一味だからな」
「何だか悪の一味みたいな言い方をする。まあいいや」
今日はB地区だ。あの辺は町の中心地だからゴミが多いぞ。ゴミ袋二つは持って行こう」
それぞれゴミ袋と拾いばさみをもっ立ち上がった。
「ちょっと待ってくれる健、トイレ貸してくれる? おなかの調子が悪いみたい」
吉郎が言った。
「食べすぎじゃないのか?」
どうやら吉郎はおなかを壊したようだ。健の家で用を足しても、学校に着くまで冷や汗を流しながら作業に当たった。
健はてきぱきとゴミを拾った。それに伴いヒーローとしてのアイデンティティーが満たされていく。悟も最近健と同じような気持ちを味わっていた。恵ちゃんは、おじさんといられればそれで幸せといった雰囲気である。学校に着くとおじさんは帰って行った。恵ちゃんは寂しがった。おじさんにとってこの運動は普段体を動かさない分、心地よかった。
今日はまた新しい出来事が起きた。悟のクラスで、ヒーロー慈善隊に加わりたいという生徒が現れたのである。日比野守である。体の小さな男の子であった。本当かどうか知らないが守はクラスの嫌われ者だという。ある行動が卑怯という評判を呼んで皆の信用が得られなかったらしい。でもヒーローを志すということは思うところがあるんだろう。健は戸惑ったが仲間に入れてあげることにした。守は時間を守るし卑怯な難癖をつけることもしない、いい子であった。無口でとっつきにくいところがあるが悪い子じゃない。健は作業内用を守に知らせた。
「地味な活動だろ。これが実態さ」
健が言った。
「僕は卑怯者と呼ばれています。自分ではそんな大げさなことではないと思ってやってしまいました。あなた方はヒーローと呼ばれています。僕の反対ですね。うらやましいのです。僕の小学5年生をこんな評判で終わらせたくなかったのです。お仲間に入れてくれてありがとうございます」
「何か卑怯なことをしたのかい」
健が聞いた。
「夏休の宿題を家族にやらせたことがあるのです。それが表彰されて賞までを取ってしまいました。それを知っている近所の子がばらしたのです。卑怯と呼ばれてどんなに惨めな思いをしたか。あれ以来卑怯な行動は気をつけてしないようにしています」
「なんだそんなこと皆やっているよ。気にしすぎさ。あっけらかんとしていればいいのさ。もっと皆と馬鹿話して」
「でも辛かったのだね。君もヒーローに成って挽回しよう」
「君の弱点はもっと他のところにあると思うよ。ちょっと影を感じる。ヒーロー慈善隊に入って、そこを鍛え直していけばいいと思う」
「悟。おまえのクラスの日比野守。卑怯者なのか?」
健が聞いた。
「ああそんな話聞いたことがある」
「でも、おとなしい子だからそんなに関わることもないし良く分からないな」
「そうなんだ。じゃあよっぽど勇気を出して申し込んできたんだな。ヒーロー慈善隊に入りたいってよ」
「おとなしい子だと一回他人に言われただけで落ち込んじゃう子もいるからね。いいんじゃない入れてあげなよ。今ヒーロー慈善活動が本格化したろ。人手が必要さ。それに日比野の悩みが解決するかもしれないぞ」
悟が言った。ヒーロー慈善活動の活動範囲も膨れて来たようだ。
「ああ眠い~!」
健は時間通りに控え所に行くと、吉郎はもう来ていた。吉郎はお湯を沸かしている。その間に顔を洗い身支度を整えると、沸いた湯でカップラーメンを作った。
「家で食べてこなかったのかい」
「いいや食べて来たよ。今日2食目だ」
「よく食べられるな」
「これからの活動の分の食事だ。これくらいは体を動かすだろ」
悟と恵ちゃんとおじさんも来た。
「外でカップラーメンの匂いがすると思ったらお前か」
悟が言った。
「おじさん体はもういいの」
健が言った。
「当り前よ。おじさんもヒーローの一味だからな」
「何だか悪の一味みたいな言い方をする。まあいいや」
今日はB地区だ。あの辺は町の中心地だからゴミが多いぞ。ゴミ袋二つは持って行こう」
それぞれゴミ袋と拾いばさみをもっ立ち上がった。
「ちょっと待ってくれる健、トイレ貸してくれる? おなかの調子が悪いみたい」
吉郎が言った。
「食べすぎじゃないのか?」
どうやら吉郎はおなかを壊したようだ。健の家で用を足しても、学校に着くまで冷や汗を流しながら作業に当たった。
健はてきぱきとゴミを拾った。それに伴いヒーローとしてのアイデンティティーが満たされていく。悟も最近健と同じような気持ちを味わっていた。恵ちゃんは、おじさんといられればそれで幸せといった雰囲気である。学校に着くとおじさんは帰って行った。恵ちゃんは寂しがった。おじさんにとってこの運動は普段体を動かさない分、心地よかった。
今日はまた新しい出来事が起きた。悟のクラスで、ヒーロー慈善隊に加わりたいという生徒が現れたのである。日比野守である。体の小さな男の子であった。本当かどうか知らないが守はクラスの嫌われ者だという。ある行動が卑怯という評判を呼んで皆の信用が得られなかったらしい。でもヒーローを志すということは思うところがあるんだろう。健は戸惑ったが仲間に入れてあげることにした。守は時間を守るし卑怯な難癖をつけることもしない、いい子であった。無口でとっつきにくいところがあるが悪い子じゃない。健は作業内用を守に知らせた。
「地味な活動だろ。これが実態さ」
健が言った。
「僕は卑怯者と呼ばれています。自分ではそんな大げさなことではないと思ってやってしまいました。あなた方はヒーローと呼ばれています。僕の反対ですね。うらやましいのです。僕の小学5年生をこんな評判で終わらせたくなかったのです。お仲間に入れてくれてありがとうございます」
「何か卑怯なことをしたのかい」
健が聞いた。
「夏休の宿題を家族にやらせたことがあるのです。それが表彰されて賞までを取ってしまいました。それを知っている近所の子がばらしたのです。卑怯と呼ばれてどんなに惨めな思いをしたか。あれ以来卑怯な行動は気をつけてしないようにしています」
「なんだそんなこと皆やっているよ。気にしすぎさ。あっけらかんとしていればいいのさ。もっと皆と馬鹿話して」
「でも辛かったのだね。君もヒーローに成って挽回しよう」
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「悟。おまえのクラスの日比野守。卑怯者なのか?」
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「おとなしい子だと一回他人に言われただけで落ち込んじゃう子もいるからね。いいんじゃない入れてあげなよ。今ヒーロー慈善活動が本格化したろ。人手が必要さ。それに日比野の悩みが解決するかもしれないぞ」
悟が言った。ヒーロー慈善活動の活動範囲も膨れて来たようだ。
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