リトル・ヒーローズ

もり ひろし

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13話 ヒーロー作業着、冬バージョン

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 ヒーロー慈善隊に悲しい出来事が起こった。恵ちゃんのおじさんが入院してしまったのだ。おじさんは腹痛を訴えると下血した。病院に行くと腸にポリープが見つかったのだ。悪性のものらしい。すぐに手術が行われた。あんなに元気なおじさんだったのに…。恵ちゃんに聞くと今日はもう痛みもなくお見舞いも受け付けているという、なので学校の帰りに皆で病院に寄った。



「おじさん大丈夫? おじさんがいなきゃ、今や隊は保てないよ」
健は言った。
「そんなことはないさ。おじさん無しでも立派にやっていると思うぞ。てっ言うかおじさんを殺すなよ、手術は上手く行ったんだ。大丈夫さ。」
「何か買って来ましょうか」
吉郎が言った。
「何か食べものが欲しいところだけれど。おじさん点滴で絶食中なんだ。何もいらないよ。あっ。週刊誌でも買ってきてもらおうかな」
「分かりました。週刊誌ですね」
吉郎はすぐに病室をあとにして売店に行った。
「退院はいつ頃なんですか」
悟が聞いた。
「一週間以内にできると思うよ。また隊員に混ぜてくれよな」
「もちろんです」
「恵、心配かけたな。おじさんはヒーローだから大丈夫さ。不死身だよ」
恵ちゃんは泣きそうだった。
しばらくよもやま話をした。特にヒーロー作業着の冬バージョンの話しが盛り上がった。「今度はおじさんがデザインしよう。今度はちゃんと作業着をデザインするぞ。ヒーロースーツではなくてね。冬の朝は冷える。でもあまりボテボテの服じゃさえないしね。動きやすさを追求して中綿をスリムに工夫しよう」

「そろそろ帰らなきゃ。おじさんも休んでよ」
「ああそうするよ」



「おじさん元気そうだったじゃん。あれなら大丈夫だよ。あれがおじさんの運の底さ。これからはいいことが待っているよ」
健が言った。
「そうよねおじさんはこれまでさんざん苦労してきたんだもの、これからは神さまが祝福してくれるわ」
恵ちゃんは涙をにじませた瞳に笑みを浮かべて言った。

おじさんは若くしてⅠ型糖尿病を患った。血糖をコントロールしようとしては不意に低血糖に襲われる。普通の人と同じスタートラインに立つのが困難だった。それゆえのマイペースでできるリモートワークだ。でも今、おじさんは、名前の通り明るかった。田村明。これも名は体を表すということなのだろう。健も大鷲健。ガッチャマンの呼び名を受け継いでいる。自分も名前に負けずヒーロー慈善活動をがんばろうと思った。



次の日、暇に任せて、早速おじさんは病室でヒーロー作業着をデザインしたようだ。学校が終わって午後、デザイン画が健の自宅のパソコンにおくられてきた。
「かっこいい」
健は早速プリントアウトしたデザイン画を悟に見せに行った。
「おうっ。かっこいい。胸にワンポイント、イメージカラーが原色ではないが、入ってる。原色でないのがまたいい。でも作るのにお金がかかりそうだね」
「おじさんが恵ちゃんのお母さんつまり妹に作らせるって言ってたよ。たぶん時間がかかるね。恵ちゃんのお母さん仕事してるし、本当に申し訳ない」
「手作りか~愛着がわくな~。本当に至れり尽くせりだね。おじさんには感謝しなきゃ。恵ちゃんの家にも行ってみようよ。きっとおじさんのデザイン画届いているよ。一大騒動だぞ。話をしに行こうよ。吉郎も呼ぼう」
悟が言った。
「おうっ」
健が答えた。

恵ちゃんの家に行くとお母さんが出て来た。
「今兄のデザイン画のこと知ったわ。昔、洋裁をやってたからできるとは思うけど難しいところまでは再現できないと思うわ」
「作ってくれるだけで感謝です。僕ら小学生だからまだお金が無いんで」
「ワークマンっていう手はないのね」
「僕らはそれでいいんですが、おじさんが今度乗り気で」
健は言った。
「兄は凝り性だからね。兄もヒーロー慈善隊やっているんだってね」
「時々参加してます」
「グリーンの採寸が大きいと思ったわ。でも作業中は兄を時々休ませてね。体動かすとたまに低血糖の処置があると思うから。兄も大変なのよ。わたしも仕事があるからできるのは二月先ぐらいになると思うわ。それまで各自で防寒対策してね」
「ごっそうさんです」
プリンをいただいた吉郎が言った。
キャラクターがぶれないな。
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