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第2章 鳥や動物たちの時代
09話 寿和、世界子どもサミットからの誘い
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チュヴィンは何とも寂しい気持ちでいた。相棒と思っていた和寿が頼りにならず、半ば喧嘩しているような状態だった。和寿はSDGs万歳とお祭りのように騒いでいるが、なんとも頼りない結論を提示してきたのだ。もう少し人間が目標をクリアするのに待ってくれというのだ。そんなことを言っている間にもう過去のことだけど日本のトキは滅んでしまったではないか。我々スズメも他人ごとではない。全盛期に比べれば数を減らしてしまっているのだ。もっと深刻なこともある。我々が住んでいる県の鳥として掲げられているシロチドリは絶滅危惧種に指定されているなんてこともある。チュヴィンにとって人間のやっているSDGsという運動は素晴らしいなんて悠長なことは言っていられない。現に今、仲間が絶滅してしまうかもしれないのだから。
そこへハクセキレイのハクちゃんが久しぶりに現れた。ハクちゃんはいつも通り明るく振舞った。
「やあ! チュヴィン。ご無沙汰。仲間に聞いたんだけど和寿と喧嘩しているんだって」
「ああ。和寿があんまり悠長なことを言っているんでね」
「何の話」
ハクちゃんが聞いた
「人間の地球に生きる生き物としてのふるまいさ」
「このままでは我々スズメは、じき滅んでしまう。我々が万能のコミュニケーション能力を人間に実現させたので、核戦争は排除された。人間は誰のおかげでその能力を得たのかを知らない。もともとあった能力として認識しているようだ。そして自分たちが核戦争などするわけがないと強く信じ込んでいる。すべてが人間にとって苦労して勝ち取ったものでなく外部から強制的に、一瞬で変わったのだから、そう思い込んでしまったのだろう」
「そして人間は自分たちの経済問題を優先して、我々が滅びてしまうかもしれない道を選んでいるのだ。建前では我々を保護しようと言っているんだけどね。」
「いや自分たちの選択がやがてじぶんたちにも問題として降りかかってくるのを知っているのだけど、それはまだ先の事と思っている。次世代が考えて、ゆっくり解決していけばよいものと思い込んでいるのさ。そして現在の経済問題を最優先に考えている」
「人間たちは我々が救ってやったことなど、和寿坊っちゃんと紳吉おじいさんしか知らないのだから恩知らずとも言えない。坊ちゃんも他の人間にそれを説明するのは困難らしい。まあ万能のコミュニケーション能力によって人間たちの結束が強くなり表面上我々鳥や動物たちと話し合い、理解して、すべてを理知的に事が運ぶことができるという思い込みに人間がおちいったのは計算外だったけど」
チュヴィンはまくしたてた。
「ずいぶんまくしたてたね。万能のコミュニケーション能力が核戦争を止めるうえで必須の事だった。核戦争か起これば我々鳥や動物でさえ滅んでしまうのだから。我々にとって、いまの世が気に食わなくともしょうがないよ」
「人間にしたらそれで上出来なんだろ。和寿坊っちゃんに責任はないよ。仲直りするといい。僕らのことを一番よく知っている人間なのだから。我々も人間と話せるようになったのだから、手を尽くして頑張ってみようじゃないか」
とハクちゃんは演説を約束して去って行った。
約束通り数日後ハクちゃんは、ためしに人が集まるところで演説を始めてみた。
「このままでは生物の多様性が失われてしまいます。皆さん我々を救うと同時に自らも救ってください。人間を含むすべての生き物は究極的には、生物の多様性がもたらす恵みによって暮らしているのです。生物の多様性が失われればやがて生態系は崩れ、人間を含む生き物は生きて行けなくなるのです。人間を含む生き物の生活は健全な自然生態系と生物多様性が維持されていなければ、成り立ちません」
まったく足を止めて聞いてくれるものなし。合いの手を入れてくれる者もなし。今言ったことは、我々鳥や動物の間では重大な出来事のように思われる真実だが、人間には通用しないのだ。これにはハクちゃんも唖然とした」
一方チュヴィンは再び和寿と仲直りした。チュヴィンは思いやりを持っては多くのことに譲歩していた。そのせいかチュヴィンは以前より柔和な顔立ちになった。見る人が見ればそこに悲しみが漂っているのを知ることができるだろう。和寿も。それに気づいていた。和寿は和寿で、チュヴィンのことを気にかけていた。そこへ希望のニュースが舞い降りてきた。和寿はチュヴィンに報告した。
「今度、世界子どもサミットが行われる。そこではSDGsのことが議題になっている。その世界サミットに日本代表として僕が出席することになったんだ。SDGsの問題点を訴えるいいチャンスさ」
和寿は日本代表になるくらいには子どもたちと一部の大人の間では力を持っていた。やたらと鳥や動物の立場をしっていることで世界的に有名だ。世界サミットだ。色々な国の人が集う。世界には様々な言語があるのに訳者なしに通じ合えることになっていた。これも当たり前のできごとのように皆は認識していた。なんの不思議とも思わない。これも万能のコミュニケーション能力によるものなのに。北の魔女に人間には封じられていた万能のコミュニケーション能力を開放したのは和寿と紳吉おじいさんとその仲間たちのおかげだというのに。
そこへハクセキレイのハクちゃんが久しぶりに現れた。ハクちゃんはいつも通り明るく振舞った。
「やあ! チュヴィン。ご無沙汰。仲間に聞いたんだけど和寿と喧嘩しているんだって」
「ああ。和寿があんまり悠長なことを言っているんでね」
「何の話」
ハクちゃんが聞いた
「人間の地球に生きる生き物としてのふるまいさ」
「このままでは我々スズメは、じき滅んでしまう。我々が万能のコミュニケーション能力を人間に実現させたので、核戦争は排除された。人間は誰のおかげでその能力を得たのかを知らない。もともとあった能力として認識しているようだ。そして自分たちが核戦争などするわけがないと強く信じ込んでいる。すべてが人間にとって苦労して勝ち取ったものでなく外部から強制的に、一瞬で変わったのだから、そう思い込んでしまったのだろう」
「そして人間は自分たちの経済問題を優先して、我々が滅びてしまうかもしれない道を選んでいるのだ。建前では我々を保護しようと言っているんだけどね。」
「いや自分たちの選択がやがてじぶんたちにも問題として降りかかってくるのを知っているのだけど、それはまだ先の事と思っている。次世代が考えて、ゆっくり解決していけばよいものと思い込んでいるのさ。そして現在の経済問題を最優先に考えている」
「人間たちは我々が救ってやったことなど、和寿坊っちゃんと紳吉おじいさんしか知らないのだから恩知らずとも言えない。坊ちゃんも他の人間にそれを説明するのは困難らしい。まあ万能のコミュニケーション能力によって人間たちの結束が強くなり表面上我々鳥や動物たちと話し合い、理解して、すべてを理知的に事が運ぶことができるという思い込みに人間がおちいったのは計算外だったけど」
チュヴィンはまくしたてた。
「ずいぶんまくしたてたね。万能のコミュニケーション能力が核戦争を止めるうえで必須の事だった。核戦争か起これば我々鳥や動物でさえ滅んでしまうのだから。我々にとって、いまの世が気に食わなくともしょうがないよ」
「人間にしたらそれで上出来なんだろ。和寿坊っちゃんに責任はないよ。仲直りするといい。僕らのことを一番よく知っている人間なのだから。我々も人間と話せるようになったのだから、手を尽くして頑張ってみようじゃないか」
とハクちゃんは演説を約束して去って行った。
約束通り数日後ハクちゃんは、ためしに人が集まるところで演説を始めてみた。
「このままでは生物の多様性が失われてしまいます。皆さん我々を救うと同時に自らも救ってください。人間を含むすべての生き物は究極的には、生物の多様性がもたらす恵みによって暮らしているのです。生物の多様性が失われればやがて生態系は崩れ、人間を含む生き物は生きて行けなくなるのです。人間を含む生き物の生活は健全な自然生態系と生物多様性が維持されていなければ、成り立ちません」
まったく足を止めて聞いてくれるものなし。合いの手を入れてくれる者もなし。今言ったことは、我々鳥や動物の間では重大な出来事のように思われる真実だが、人間には通用しないのだ。これにはハクちゃんも唖然とした」
一方チュヴィンは再び和寿と仲直りした。チュヴィンは思いやりを持っては多くのことに譲歩していた。そのせいかチュヴィンは以前より柔和な顔立ちになった。見る人が見ればそこに悲しみが漂っているのを知ることができるだろう。和寿も。それに気づいていた。和寿は和寿で、チュヴィンのことを気にかけていた。そこへ希望のニュースが舞い降りてきた。和寿はチュヴィンに報告した。
「今度、世界子どもサミットが行われる。そこではSDGsのことが議題になっている。その世界サミットに日本代表として僕が出席することになったんだ。SDGsの問題点を訴えるいいチャンスさ」
和寿は日本代表になるくらいには子どもたちと一部の大人の間では力を持っていた。やたらと鳥や動物の立場をしっていることで世界的に有名だ。世界サミットだ。色々な国の人が集う。世界には様々な言語があるのに訳者なしに通じ合えることになっていた。これも当たり前のできごとのように皆は認識していた。なんの不思議とも思わない。これも万能のコミュニケーション能力によるものなのに。北の魔女に人間には封じられていた万能のコミュニケーション能力を開放したのは和寿と紳吉おじいさんとその仲間たちのおかげだというのに。
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