11 / 30
第1章 100の仲間たち
11話 魔女との総力戦2
しおりを挟む
さて、作戦も折り返し地点だ。魔女の魔力を減退するらしい唐辛子を魔女の朝食に混入させることに成功した。魔女がこの朝食を食べてくれれば、魔女はただの老婆にすぎなくなるはずだ。部屋の片隅にある、封印の水晶玉も訳なく、手に入れられるだろう。しかし果たしてうまくいくだろうか。チュヴィンが小屋の窓の片隅に隠れて中の様子をうかがった。隣には小人になった和寿が立っている。あれだけの唐辛子を朝食の煮込みに入れたのにもかかわらず、魔女は嫌な顔一つせず平らげた。チュヴィンは羽で和寿の背を押した。
「さあご主人の出番です」
和寿はチュヴィンの背を撫でた。シュ~~~ンという轟と共に等身大となり魔女の小屋の入り口をノックした
「誰だい」
魔女は入り口の扉を不用心に開けた。さっきのウサギが返ってきたと思ったのだ。そして和寿は部屋の片隅にある水晶玉を確認すると、
「封印の水晶玉はいただいて行く」
といって強引に扉の中にはいって行く。魔女は魔法の呪文を唱えていた。しかし魔法は発動しない。どうやら魔封じも成功したようだ。魔女は杖で和寿をたたいたがそんなものへっちゃら。まるでぼうっきれで撫でられているほどの力しかこもっていない。和寿は、封印の水晶玉を持ち上げた。カラスのジャックが言った通りわりと重さがある。しかし和寿が持ち上げられるだけの重みしかなかった。さあ外では四角い網を広げたトンビが4羽待っている。和寿は網の真ん中に水晶玉を置いた。トンビは飛び立ち水晶玉は運ばれた。
上空に残っていたトンビやカラスが森に隠れていたウサギやハムスターをつかみ撤収する。彼らにはあと2往復、作戦本部との間を行き来してもらわねばならないだろう。スズメの撤収が残っていたのだ。魔女は相変わらず、か弱い力で杖を右に左に振っている。和寿を何とかしなければならないと一心不乱であったのだろう。あたりに運悪く子スズメが一羽隠れていた。メイちゃんだ。メイちゃんが杖で叩き落されてしまった。和寿は魔女の杖を取り押さえたチュビンが叩き落されたメイちゃんを見に行った。しかしメイちゃんは気を失っているだけらしい。和寿は左手に優しくメイちゃんを包み込んだ。ひとつでも犠牲者を出すわけにはいかない。魔女をこれ以上暴れないように和寿は体を抑えた。しばらくの間、抑えた。
さて最後の撤収だ。トンビとカラスがやって来た。まず和寿は気を失っているメイちゃんを優先してとんびに手渡した。続々やってくるトンビとカラスにスズメたちは運ばれてゆく。最後に和寿はチュビンの背を撫でるとメリメリメリと轟をあげ体が縮んでゆく。和寿はチュヴィンに身をまかせると空へ飛んで行った。魔女は和寿が小さくなりチュヴィンの背に乗り、逃げ去っていくのを確かめると、あとから追い上げた。しかし魔女のほうきの遅いこと遅いこと。時速1メートルくらいであろうかその飛行シーンはコミカルで面白かった。最後のトンビが和寿の乗ったチュヴィンをわしづかみにすると魔女にはどうやったって追い付かないスピードで離れてゆく。
「なっ。上手くいったろ。未来に心配や不安を持ち込む必要は無かったろ」
チュヴィンが言った。最後にちょっと子スズメが気絶させられたという予想外のアクシデントに見舞われたが、作戦は無事終わったのだ。おじいさんの運転する車は急ぐこともなく安全運転で自宅に向かった。気絶した子スズメのメイちゃんは無事目を覚ました。メイちゃんは最後までネットワークの一番隅でチュヴィンの声を仲間に伝えていたのだ。ご苦労様。
100の仲間たちが和寿の家に到着すると早速封印の水晶玉が和寿によって運ばれ、軒に設置された。そして封印を解くべく、スズメ4羽衆が集まって呪文が唱えられた。声は小さく聞き取ることはできなかったが、うなりのような音声となって場をおごそかにした。すると水晶玉に光が灯った。和寿は何が変わったか確かめるために、和美お母さんにチュヴィンを会わせてみた。
「こんにちは」
チュヴィンが話してみた。
「和寿、まだスズメを放さなかったの。駄目じゃない。あらこのスズメ。何か話したわよ。どうしちゃたのかしらわたし」
母さんが言った
「やった成功だ。これで世界が徐々に変化するだろう」和寿は喜んだ。
『万能のコミュニケーション能力』が人間に備わるとどうなるか。まず人間同士コミュニケーションが密になった。敵や味方がはっきりしてくる。しかしそれによって争うこともしなくなるのだ。争えばどちらも得が無いという結論にお互いが気づくのだ。それにコミュニケーションの障害という観念自体が無くなった
さらに人間と動物間での変化。双方向のやり取りができるようになった。しかし鳥や動物と人間の大人の内にはまだ少しの齟齬があったが。全体として動物園などの施設は減り始めた。あらかじめわかっていたことだが知的生物であるイルカやクジラを狩るという習慣も無くなった。
まだまだ色々なことがたくさん起こった。
「さあご主人の出番です」
和寿はチュヴィンの背を撫でた。シュ~~~ンという轟と共に等身大となり魔女の小屋の入り口をノックした
「誰だい」
魔女は入り口の扉を不用心に開けた。さっきのウサギが返ってきたと思ったのだ。そして和寿は部屋の片隅にある水晶玉を確認すると、
「封印の水晶玉はいただいて行く」
といって強引に扉の中にはいって行く。魔女は魔法の呪文を唱えていた。しかし魔法は発動しない。どうやら魔封じも成功したようだ。魔女は杖で和寿をたたいたがそんなものへっちゃら。まるでぼうっきれで撫でられているほどの力しかこもっていない。和寿は、封印の水晶玉を持ち上げた。カラスのジャックが言った通りわりと重さがある。しかし和寿が持ち上げられるだけの重みしかなかった。さあ外では四角い網を広げたトンビが4羽待っている。和寿は網の真ん中に水晶玉を置いた。トンビは飛び立ち水晶玉は運ばれた。
上空に残っていたトンビやカラスが森に隠れていたウサギやハムスターをつかみ撤収する。彼らにはあと2往復、作戦本部との間を行き来してもらわねばならないだろう。スズメの撤収が残っていたのだ。魔女は相変わらず、か弱い力で杖を右に左に振っている。和寿を何とかしなければならないと一心不乱であったのだろう。あたりに運悪く子スズメが一羽隠れていた。メイちゃんだ。メイちゃんが杖で叩き落されてしまった。和寿は魔女の杖を取り押さえたチュビンが叩き落されたメイちゃんを見に行った。しかしメイちゃんは気を失っているだけらしい。和寿は左手に優しくメイちゃんを包み込んだ。ひとつでも犠牲者を出すわけにはいかない。魔女をこれ以上暴れないように和寿は体を抑えた。しばらくの間、抑えた。
さて最後の撤収だ。トンビとカラスがやって来た。まず和寿は気を失っているメイちゃんを優先してとんびに手渡した。続々やってくるトンビとカラスにスズメたちは運ばれてゆく。最後に和寿はチュビンの背を撫でるとメリメリメリと轟をあげ体が縮んでゆく。和寿はチュヴィンに身をまかせると空へ飛んで行った。魔女は和寿が小さくなりチュヴィンの背に乗り、逃げ去っていくのを確かめると、あとから追い上げた。しかし魔女のほうきの遅いこと遅いこと。時速1メートルくらいであろうかその飛行シーンはコミカルで面白かった。最後のトンビが和寿の乗ったチュヴィンをわしづかみにすると魔女にはどうやったって追い付かないスピードで離れてゆく。
「なっ。上手くいったろ。未来に心配や不安を持ち込む必要は無かったろ」
チュヴィンが言った。最後にちょっと子スズメが気絶させられたという予想外のアクシデントに見舞われたが、作戦は無事終わったのだ。おじいさんの運転する車は急ぐこともなく安全運転で自宅に向かった。気絶した子スズメのメイちゃんは無事目を覚ました。メイちゃんは最後までネットワークの一番隅でチュヴィンの声を仲間に伝えていたのだ。ご苦労様。
100の仲間たちが和寿の家に到着すると早速封印の水晶玉が和寿によって運ばれ、軒に設置された。そして封印を解くべく、スズメ4羽衆が集まって呪文が唱えられた。声は小さく聞き取ることはできなかったが、うなりのような音声となって場をおごそかにした。すると水晶玉に光が灯った。和寿は何が変わったか確かめるために、和美お母さんにチュヴィンを会わせてみた。
「こんにちは」
チュヴィンが話してみた。
「和寿、まだスズメを放さなかったの。駄目じゃない。あらこのスズメ。何か話したわよ。どうしちゃたのかしらわたし」
母さんが言った
「やった成功だ。これで世界が徐々に変化するだろう」和寿は喜んだ。
『万能のコミュニケーション能力』が人間に備わるとどうなるか。まず人間同士コミュニケーションが密になった。敵や味方がはっきりしてくる。しかしそれによって争うこともしなくなるのだ。争えばどちらも得が無いという結論にお互いが気づくのだ。それにコミュニケーションの障害という観念自体が無くなった
さらに人間と動物間での変化。双方向のやり取りができるようになった。しかし鳥や動物と人間の大人の内にはまだ少しの齟齬があったが。全体として動物園などの施設は減り始めた。あらかじめわかっていたことだが知的生物であるイルカやクジラを狩るという習慣も無くなった。
まだまだ色々なことがたくさん起こった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
マダム・シレーヌの文房具
猫宮乾
児童書・童話
マダム・シレーヌの文房具という巨大な文房具を使って、突如現実から招かれるマホロバの街で戦っているぼくたち。痛みはないけど、意識を失うか、最後の一人になるまで勝つかしないと、現実には戻れない。ぼくの武器は最弱とからかわれる定規だ。いつも強いコンパスなどに殺されている。ある日、現実世界に戻ってから、「大丈夫か?」と男の子に声をかけられた。※不定期更新です。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
シンクの卵
名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。
メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。
ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。
手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。
その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。
とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。
廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。
そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。
エポックメイキング。
その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。
その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。
セプトクルール 三賢者と虹色の夜明け
マイマイン
児童書・童話
現実界に住む魔法使いのすぐるが、幻想界へと旅立ち、仲間たちと共に悪魔王カオスを倒して数年後、すぐるは幻想界で出会い、『誓い』を結んだ魔族の少女リリスと共に、現実界で平和な生活をおくっていました。
しかし、祖父から魔力を受け継いでいるすぐるは、現実界での生活にはなじめず、他の生徒たちからは好奇の目で見られたり、化け物扱いされていましたが、祖父から託された使命の事、リリスが亡き両親から託された使命の事などが忘れられず、再び幻想界へ旅立とうと決意をしたのでした。
今回は主人公が三人で、それぞれの物語を進んでいくことになります。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミでヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる