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第1章 100の仲間たち

07話 チュヴィン、仲間を集める

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 日曜日の昼過ぎの学校は課外活動の一部の生徒しか使っていなかった。よってひっそりと静かだった。寿和はお腹が減っていたけど、にわかに忙しくなったわが身に鞭打って昼食は我慢した。「さて動物の世話をしなくっちゃ」教室に入るとウサギのピョンちゃんがまず出迎えの声をあげた。
「ご主人がきたぞ。おいらもうお腹と背中がくっついちゃったよ」
ハムスターのミッキーも話し始めた。
「日曜も散歩したいなご主人」
「皆忙しいんだ。散歩係は決めたのだから我慢しておくれよ」
「まあご主人がそういうのなら仕方ないか」
なんだかんだ、まず話始めるこの一羽と一匹が、それぞれの種族のまとめ役といったところか。
「今日は一昨日クラスの皆が持ってきた野菜くずがたくさんあるぞ。たんと食べてくれ」皆は
「やったー」
と声をあげた。
「ねえ君たち。君たちは僕の仲間になってくれないか」
寿和は例の件を皆に話し始めた。ウサギのピーターが
「何の話ですか?」
と問うた
「僕は行きがかり上、人間の代表なんだ。人間の『魔女に封じられた万能のコミュニケーション能力を開放する会』の代表といったところかな」
「人間が皆ご主人のょうに理解ある人間なら賛成ですぜ」
「この能力が解放されたなら人間は皆そうなると思うよ」
「ご主人がそう言うなら協力してもよろしかろう。なんたって世界一信用のおける人間様なのだから」
「仲間になって何をするんです」
ハムスターのジェリーが話し始めた。
「それがまだよくわからないんだ。でもなるだけメンバーは多い方がいいから、約束したら守ってほしいんだ。初めは君たち次第さ」
「ご主人のことなら信じてもいいよな!」
とジェリーは皆に問うた。
「オー!」
と皆は声を高らかにあげた。動物たちはその生活ぶりから楽天的だった。
「ありがとう。みないいのだね。それじゃあまた明日会おう」
動物たちはご飯に夢中でかぶりついていた
寿和は教室をあとにした。
これでウサギ6羽とハムスター10匹が仲間となった。たくさんといっていたけれどいったいどれくらい仲間を集めたらいいのだろう。明日の朝にでもチュヴィンに聞かなきゃ。



さて翌朝である。季節はもう梅雨の走りだ。重たい雲が垂れ込めていた。寿和の家に、今日はスズメたちが50羽ほどやって来た。チュヴィンは言った。
「スズメたちの仲間の方は私がまとめておきましたからご安心を」
「すごい数だね」
「我々スズメは集団を重んじる鳥。これくらいの数など容易に集まります。それにこのもくろみは我々スズメたちが責任をもって代々引き継いできたもの。反対する者はいません。よその群れに協力を頼めばもっと集めることもできましょう」
「仲間は一体どれくらいを集めればいいの」
「色々な種類集めて、100も集まればいいでしょう」
「じゃあ今半分と少しといったところだね。昨日学校の動物にも話をつけて来たよ」
「それはそれは頼もしゅうございます」
「あとはハクちゃんが知り合いのカラスとトビに話しをつけてくれると言ってたよ」
「それじゃあもう決まりですな」
そこへハクちゃんがやって来た。後ろにカラスとトビの集団を引き連れていた。ちょっと面白い組み合わせだった。ハクちゃんはよく襲われないなあ。
「おはようございます」
ハクちゃんは言った
「トンビ10羽、カラス20羽と話が付いたぞ」
「俺の仲間なんで少々弱虫かもしれないが、仲間を襲うことはないし、一様鳥類のギャング、カラスだし、トビはこれでも猛禽だよ。頼りになるでしょ。いちよう食物連鎖が上の鳥類だから弱いのみつけるの大変だったんですぜ。これだけ探すのも苦労したんだから」
「あぁ、助かるよハクちゃん。これで頭数は98おおむねたりたな。一週間後に決行しよう」
チュヴィンが言った
「教室の動物たちには後で僕が伝えておくよ」
寿和が言った。

ひと段落。

「それで何をするんで」
ハクちゃんが聞いた
「魔女を探し出して封印の水晶玉を奪うのです。そうすれば私たちスズメの貴族4羽衆が封印を解きます。そうすれば人間は万能のコミュニケーション能力を取り戻すでしょう」
チュビンはとうとうすべてを話してしまった。魔女の話なども言ってしまった。ご主人が怖気づかないことを祈る………。おや! 大丈夫のようだ。ご主人は胆が太いのかもしれない。
「口でいうのは簡単だけど一体魔女はどこに居るんだい」
「さあ」
「エーッ」
「ここまでしか伝えられていないのです」
チュヴィンが言った
しばし誰も口を開けることができなかった。
「しばらくは、皆で案を出しながら前へ進みましょう」
すると早速トビのトヴィンが、その口ぶりから有力かどうかは分からないけど、情報を漏らした。
「富士山の北のふもとの森にいるっていうのを、おれのばあさまが言っていたのを聞いたことがあるべ」
「富士山か。遠征だな。俺たちなんて到着するまで何日かかるか分かったもんじゃない」
チュビンが言った
「それはみんな一緒さ」
「僕が連れて来るウサギやハムスターなんて翼がないんだぞ。とても移動なんかできないよ」
寿和が言った。
早くも話は暗礁に乗り上げた。
「車でもあればなあ。でも一体だれが運転するんだか」
寿和は言った。
「そうだ僕は一人だけ人間を仲間にできるんだ。車を運転できる人間を仲間にしよう。でも鳥や動物のことが分かる才能のある人間に話さないと。というと?………そうだおじいさんにしよう紳吉じいちゃんだ。ちょっとぼけてるけど、時々文鳥のブンちゃんと話してるのを見たことがある。才能があるかも。ついでにブンちゃんもさそおう。これで頭数ちょうど100だ」
車は良案です。おじいさまとブンちゃん、そちらのほうはご主人に頼みましょう。
「もしかして、富士山ではないかもしれないぞ」
誰かが言い始めた
「偵察を出そう。ここは空からはとびさんに任せて、森の中はカラスさんに任せよう。

………会議は続く。
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