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第04章 大団円
07話 『犬と歩けば!』
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さとしがユキを迎えてからもうじき一年が経つ。その間にさとしは、小学6年生から中学1年生になった。物心ついてから初めて区切りの時期を意識したのではないだろうか。たとえ小中一かん校だといっても区切りは区切りだ。そんな不安定な時期をさとしはユキと共に過ごせたのは有意義なことだと思っていた。もしユキがいなかったとしてもそれなりに乗り越えたであろうが、ユキといる今を知っているさとしにとって、それは想像するに経験したくない展開だった。そう、それは、一人っ子で、両親も共働きの子が味あわなければならない多くのこどくを持て余してしまうであろう展開であり、そして今もこどくに過ごしているであろう展開だ。それはさとしの心にトラウマを残していたかもしれない出来事であった
また、ユキがいなければ犬の散歩会は発足しなかった。おさななじみのヒロちゃんとの関係は続いていただろうけど、今のようにより親密に付き合っていたかどうかは分からない。中学生になってクラスの変わった寺本との関係は続いていたであろうか、これも分からない。また、たえ子ちゃんとは出会えなかったであろう。そして日呂志おじさんが同じ事情で雨宮家に転がり込んできたとしても、今のように打ち解けたあいだがらになっていたかどうかは、疑問である。
これら散歩会のきずなは4ひきの犬、いやもうすぐさらに3びき加わるのだが、それらの犬がいなければ当然できなかったきずなだ。犬が、人と人を結びあわせてくれたのだ。さとしは自分が成長するのに必要な分だけのこどくだけを抱いて、すんなりと区切りを乗りこえていったのだった。
「さあ今日を始めるか」
とさとしがまだねむそうな顔でかけ声を上げた。
今日も散歩会は続く。外は秋らしい好天である。さとしはユキの誕生会に文子おばあちゃんにもらったユキの新しい服をユキに着せてみた。採寸はマルのものだったがさすが親子おばあちゃんの言った通りぴったりだった。背中に写実的なユキの顔がししゅうしてある。その顔が微笑ましい。文子おばーちゃんブランドといっていいほどの出来上がりだ。それから去年さとしの誕生会にもらった、同じくおばあちゃんにつくってもらったさとしがお守りにしているコースターを取り出して、この気持ちのいい季節に感謝の念を送った。そして散歩会のメンバーのみんなにももれなく感謝の念を送った。中でも一番笑顔にかがやいていたヒロちゃんには特別にたっぷりと感謝の念を送っておいた。
ヒロちゃんの愛犬ヒメは、子どもの頃から散歩という習慣をもたなかったため、その喜びが分からなかった。散歩会に参加したてのころは消極的に最後尾を歩いていたものだが、ヒメが急成長し散歩の喜びを知った今では、2番目をサムといっしょに歩くようになった。ヒメとサムは仲良しだったし、飼い主の、ヒロちゃんとたえ子ちゃんもいいお付き合いをしているらしい。(くわしくはヒロちゃんに話させた)ユキは再び最後尾になった。でもそんなことどこ吹く風。自分がまだ1歳のじゃくはいであることも。そしてヒメは6才の大せんぱいであることも、ちゃんと心得ていた。
「クゥーン」
ユキは、となりを歩くさとしに甘えた鼻声で鳴いた。
もっとも本当の最後尾はいつも日呂志おじさんなのであるが、それは今、取りかかっている仕事の着想を得たいという、積極的な理由があることをさとしは今さらのように知った。その仕事とはもちろん小説である。後ろから散歩会の様子をながめているといいアイデアがうかぶのらしいのだ。そういえば日呂志おじさんがメモを取っていることをみんなは知っていた。小説のタイトルは『犬と歩けば!』といって、さとしらと同年代向けのものを書いているらしい。そして物語の完成も、もう間近らしい。さとしは完成したら最初に読みたいとだだをこねた。すると日呂志おじさんは「ああたのむよ」と一言いってくれたのであった。
つづく
また、ユキがいなければ犬の散歩会は発足しなかった。おさななじみのヒロちゃんとの関係は続いていただろうけど、今のようにより親密に付き合っていたかどうかは分からない。中学生になってクラスの変わった寺本との関係は続いていたであろうか、これも分からない。また、たえ子ちゃんとは出会えなかったであろう。そして日呂志おじさんが同じ事情で雨宮家に転がり込んできたとしても、今のように打ち解けたあいだがらになっていたかどうかは、疑問である。
これら散歩会のきずなは4ひきの犬、いやもうすぐさらに3びき加わるのだが、それらの犬がいなければ当然できなかったきずなだ。犬が、人と人を結びあわせてくれたのだ。さとしは自分が成長するのに必要な分だけのこどくだけを抱いて、すんなりと区切りを乗りこえていったのだった。
「さあ今日を始めるか」
とさとしがまだねむそうな顔でかけ声を上げた。
今日も散歩会は続く。外は秋らしい好天である。さとしはユキの誕生会に文子おばあちゃんにもらったユキの新しい服をユキに着せてみた。採寸はマルのものだったがさすが親子おばあちゃんの言った通りぴったりだった。背中に写実的なユキの顔がししゅうしてある。その顔が微笑ましい。文子おばーちゃんブランドといっていいほどの出来上がりだ。それから去年さとしの誕生会にもらった、同じくおばあちゃんにつくってもらったさとしがお守りにしているコースターを取り出して、この気持ちのいい季節に感謝の念を送った。そして散歩会のメンバーのみんなにももれなく感謝の念を送った。中でも一番笑顔にかがやいていたヒロちゃんには特別にたっぷりと感謝の念を送っておいた。
ヒロちゃんの愛犬ヒメは、子どもの頃から散歩という習慣をもたなかったため、その喜びが分からなかった。散歩会に参加したてのころは消極的に最後尾を歩いていたものだが、ヒメが急成長し散歩の喜びを知った今では、2番目をサムといっしょに歩くようになった。ヒメとサムは仲良しだったし、飼い主の、ヒロちゃんとたえ子ちゃんもいいお付き合いをしているらしい。(くわしくはヒロちゃんに話させた)ユキは再び最後尾になった。でもそんなことどこ吹く風。自分がまだ1歳のじゃくはいであることも。そしてヒメは6才の大せんぱいであることも、ちゃんと心得ていた。
「クゥーン」
ユキは、となりを歩くさとしに甘えた鼻声で鳴いた。
もっとも本当の最後尾はいつも日呂志おじさんなのであるが、それは今、取りかかっている仕事の着想を得たいという、積極的な理由があることをさとしは今さらのように知った。その仕事とはもちろん小説である。後ろから散歩会の様子をながめているといいアイデアがうかぶのらしいのだ。そういえば日呂志おじさんがメモを取っていることをみんなは知っていた。小説のタイトルは『犬と歩けば!』といって、さとしらと同年代向けのものを書いているらしい。そして物語の完成も、もう間近らしい。さとしは完成したら最初に読みたいとだだをこねた。すると日呂志おじさんは「ああたのむよ」と一言いってくれたのであった。
つづく
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