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第04章 大団円
04話 ヒメの出産
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ヒメは、いつも家にいる日呂志おじさんに預けられた。いつ出産が始まるか分からないからだ。おじさんは犬の出産に立ち会ったことがあるらしい。そしておじさんの居候している部屋には、犬の出産時に必要なものが集められた。部屋のすみにはヒメのケージが置かれ、その一角にはバスタオルがしきつめられた。子犬が産まれた時に体重を計る小さなはかりなども置かれた。獣医師にはいつでもれんらくが取れるようにしてある。犬は安産というけれど、小型犬はそうでもないらしい。さあ、準備万端だ。するとなんと、次の通院日を待たずして出産は始まってしまった。十四日の夕方のことだ。散歩会のメンバーにもれんらくがいって、みなで出産に立ち会うことになった。
ヒメは力み始めた。股の間から袋状のものが出始めた。みな静かに見守った。しだいに小さな犬の頭が出て来た。しかしこの状態で止まってしまった。日呂志おじさんがヒメの背中を軽くたたくようにさすっている。もうすぐ一時間経つ。するとにわかに一ぴき目の子犬が生まれた。ヒメは赤ん坊の全身をなめるとへその緒をかみ切って、そこをしきりに舐めた。さあ何びき生まれるのだろう。おじさんがあいかわらずヒメの背中を軽くたたくようにさすった。そうこうしているうちに二ひき目が生まれた。ヒメは同じように子犬の全身をなめ、へその緒をかみ切ると、そこをぺろぺろ舐め始めた。しばらくするとまた生まれた。ヒメはまた同じように子犬を処置した。するとヒメは水を飲みに行った。どうやらこれで終わりらしい。子犬たちを一ぴきずつヒメから借りて洗面器に張ったぬるま湯に浸し体を軽く洗ってあげた。
「オス二ひき、メス一ぴきだな」
毛色は、オス二ひきが親と同じクリームでメスは珍しい黒だった。
そして体重を計った。三びきの体重はどれも百グラム前後あった。
「上出来、上出来」
と日呂志おじさんが額のあせをぬぐいながら言った。
「あんなに小さいなんて。かわいい」
とたえ子ちゃんが甘い口調で言った
「目が開いていないね」
とさとしが言った。おじさんは
「二週間もすれば開くだろう。自然に任せるんだな」
と言った。
寺本は思わず感心してしまった。
「感動しました。日呂志おじさんは何でもできるんですね」
「ああ、うちの母親が犬を飼ってるんでな。知ってるはずだよ。マルっていうんだ」
「ああ、ユキちゃんのお母さんですね」
さとしが喜びながら口をはさんできた。
「ぼくの願いをかなえてくれた犬さ」
再び日呂志おじさんが言った
「マルは中型犬だから安産だったけど、今回はちょっとあせったよ」
「それと子犬はどうする」
日呂志おじさんがヒロちゃんに向かって言った。すると
「こんなにかわいい犬だもの一ぴきくらいなら飼いたいなヒメのためにも、ヒメはメスだからオスがいい。息子だね」
日呂志おじさんは
「じゃあ残り二ひきは俺が里親を探すよ」
と言うか言わないかの内に
たえ子ちゃんが
「わたしも一ぴき飼いたい。わたしはサムがオスだから、メスがいい。それに黒のポメラニアンってかわいらしいわ」
と言い出した。
「じゃあ残り一ぴきは里親を探すよ」
と言ったけれども、それもさとしが飼うと言い出した
「おれは残りのオスを飼いたい。ユキはメスだからね。これなら、三びき全員が離れ離れに過ごすことはないだろ」
「おじさんの理想はそうだけど、飼う犬が増えるってことは大変なことだぞ。遊び半分じゃだめだ。責任は重大だぞ」
すると子犬のもらいて三人は
「分かっています」
と声をそろえた。「まあこの子たちなら大丈夫だろう」と日呂志おじさんは思った。
「三週間くらいはお母さんの母乳で育つんだ。子犬は。そして生まれて三ヵ月くらいは母親といっしょに過ごさなければならない。それまではおじさんが全部世話をするよ。会いたくなったらいつでも会いに来てくれ」
「お願いします」
と三人は言った。
「散歩会は冬休み以降、一気に犬の数が増えるね」
っとうれしそうに寺本が言った。
「よしヒメ。今度はもう誰にもとられないぞ、子どもたちは、いつでのキミのものだ。ヒメにはこの幸せを知ってもらいたかったんだ。今までは散々だったからな」
と日呂志おじさんは、ヒメのあご下をなでながら言った。
つづく
ヒメは力み始めた。股の間から袋状のものが出始めた。みな静かに見守った。しだいに小さな犬の頭が出て来た。しかしこの状態で止まってしまった。日呂志おじさんがヒメの背中を軽くたたくようにさすっている。もうすぐ一時間経つ。するとにわかに一ぴき目の子犬が生まれた。ヒメは赤ん坊の全身をなめるとへその緒をかみ切って、そこをしきりに舐めた。さあ何びき生まれるのだろう。おじさんがあいかわらずヒメの背中を軽くたたくようにさすった。そうこうしているうちに二ひき目が生まれた。ヒメは同じように子犬の全身をなめ、へその緒をかみ切ると、そこをぺろぺろ舐め始めた。しばらくするとまた生まれた。ヒメはまた同じように子犬を処置した。するとヒメは水を飲みに行った。どうやらこれで終わりらしい。子犬たちを一ぴきずつヒメから借りて洗面器に張ったぬるま湯に浸し体を軽く洗ってあげた。
「オス二ひき、メス一ぴきだな」
毛色は、オス二ひきが親と同じクリームでメスは珍しい黒だった。
そして体重を計った。三びきの体重はどれも百グラム前後あった。
「上出来、上出来」
と日呂志おじさんが額のあせをぬぐいながら言った。
「あんなに小さいなんて。かわいい」
とたえ子ちゃんが甘い口調で言った
「目が開いていないね」
とさとしが言った。おじさんは
「二週間もすれば開くだろう。自然に任せるんだな」
と言った。
寺本は思わず感心してしまった。
「感動しました。日呂志おじさんは何でもできるんですね」
「ああ、うちの母親が犬を飼ってるんでな。知ってるはずだよ。マルっていうんだ」
「ああ、ユキちゃんのお母さんですね」
さとしが喜びながら口をはさんできた。
「ぼくの願いをかなえてくれた犬さ」
再び日呂志おじさんが言った
「マルは中型犬だから安産だったけど、今回はちょっとあせったよ」
「それと子犬はどうする」
日呂志おじさんがヒロちゃんに向かって言った。すると
「こんなにかわいい犬だもの一ぴきくらいなら飼いたいなヒメのためにも、ヒメはメスだからオスがいい。息子だね」
日呂志おじさんは
「じゃあ残り二ひきは俺が里親を探すよ」
と言うか言わないかの内に
たえ子ちゃんが
「わたしも一ぴき飼いたい。わたしはサムがオスだから、メスがいい。それに黒のポメラニアンってかわいらしいわ」
と言い出した。
「じゃあ残り一ぴきは里親を探すよ」
と言ったけれども、それもさとしが飼うと言い出した
「おれは残りのオスを飼いたい。ユキはメスだからね。これなら、三びき全員が離れ離れに過ごすことはないだろ」
「おじさんの理想はそうだけど、飼う犬が増えるってことは大変なことだぞ。遊び半分じゃだめだ。責任は重大だぞ」
すると子犬のもらいて三人は
「分かっています」
と声をそろえた。「まあこの子たちなら大丈夫だろう」と日呂志おじさんは思った。
「三週間くらいはお母さんの母乳で育つんだ。子犬は。そして生まれて三ヵ月くらいは母親といっしょに過ごさなければならない。それまではおじさんが全部世話をするよ。会いたくなったらいつでも会いに来てくれ」
「お願いします」
と三人は言った。
「散歩会は冬休み以降、一気に犬の数が増えるね」
っとうれしそうに寺本が言った。
「よしヒメ。今度はもう誰にもとられないぞ、子どもたちは、いつでのキミのものだ。ヒメにはこの幸せを知ってもらいたかったんだ。今までは散々だったからな」
と日呂志おじさんは、ヒメのあご下をなでながら言った。
つづく
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◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
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