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第04章 大団円
02話 ヒメの妊娠
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8月も中ごろのこと、ヒロちゃんの愛犬ヒメが調子悪くて散歩会を欠席した。日呂志おじさんがどんな具合か聞いてみるとヒロちゃんは言った
「何だか気持ちが悪いらしいんだ」
すると日呂志おじさんが言った
「妊娠かもしれないな。動物病院につれて行こう。妊娠判定してもらうんだ」
丁度、サムとヒメが交尾してひと月ほどだった。日呂志おじさんは言った。
「費用は俺が持つよ。責任は俺が取ると言ったろう。ヒメの体はこれまで人間の手で無理な繁殖に利用されてきた。それに子を産んでも、すぐに子を取り上げられていたんだ。ヒメは推定だけど6歳だ。ヒメにとっては最後の子を産むチャンスかもしれないんだ。子を持つという事がどんなに幸せなことかを実際に知ってもらいたいんだ。このままじゃヒメの生涯があんまりだろ。」
「子供のいないおじさんがどうしてそんなことが分かるのさ」
とさとしが生意気を言うと
「周りを見ていればわかるさ。例えば僕の妹つまり君の母さんを見ていればね。それにおじさんは作家だから作品というものがある、子どもの代わりにはならないけれど似たようなものなのさ」
と比呂志おじさんは言った。
その日の午後散歩会のメンバー全員で、動物病院へ、ヒメをつれて行った。先生はエコー検査を行った。そして
「おめでとうございます。妊娠です」
とヒメの妊娠の確定を宣言した。
この日から散歩会は、いつものコースを散歩をしたあと、欠席しているヒメの家、つまりヒロちゃんの家まで来てヒメの様子を見に行った
その時が来ると、サムが喜んでいた。父親になる自覚でもあるのだろうか、ヒメに会うのが楽しいらしい。ヒロちゃんの家の前まで来ると狼のように吠えた。
「ワオーン」
「ちょっと待っててねサム」
ヒロちゃんは玄関の靴を整理して、みなを家に上げた。
ロロは先陣を切って2階のヒメの部屋に向かった。おれがリーダーだとでも言うように。そして寺本が後に続く。そして息を切らしたサムとたえ子ちゃん、ユキとさとし、日呂志おじさんと続いて2階へ上がる。おじさんは最後尾について、「この訪問はおれが考えたのにな。なんだか散歩の隊列の順番の通りだな」と思った。おれはいつでも最後尾だ」
寺本が
「ヒメちゃんにあってもマテだからな」
とロロに言うと2階へ上がってもロロはマテをして待っていた。
「さあヒメ、みんなが来てくれたぞ」
とヒロちゃんが言うと、ヒメは早速起き上がってしっぽを振る。サムがヒメのそばによって体を預けるとそのままじゃれた。たえこちゃんが
「サム―、ヒメちゃんは大事な体なんだから乱暴は駄目よ」
と言った。言った先からサムはヒメに抱き着いてひっくり返し、顔をぺろぺろと舐めた。ロロとユキも続いて仲間に加わった
「こらユキおまえは体が大きいんだから手加減しろよ」
とさとしが言った。犬たちはみな喜んでいた。
さて、夏休み後半も、さとしたちは、犬を連れ歩いてたくさんの思い出をつくった。中でも、愛犬を連れた温泉旅行が楽しかった。もちろん散歩会のメンバー総ぞろいだ。犬チームはヒメが参加できなかったけれどヒメには首輪につける安産のお守りを買っていった。
犬専用の温泉施設もある。ロロとサムは大いに満喫した。2匹ともお湯を浴びると細っぴーになっておかしかった。そんな2匹を見て、ユキには彼らの姿がよっぽどおかしかったらしい、しきりに吠えて浴場の中を走り回った。
つづく
「何だか気持ちが悪いらしいんだ」
すると日呂志おじさんが言った
「妊娠かもしれないな。動物病院につれて行こう。妊娠判定してもらうんだ」
丁度、サムとヒメが交尾してひと月ほどだった。日呂志おじさんは言った。
「費用は俺が持つよ。責任は俺が取ると言ったろう。ヒメの体はこれまで人間の手で無理な繁殖に利用されてきた。それに子を産んでも、すぐに子を取り上げられていたんだ。ヒメは推定だけど6歳だ。ヒメにとっては最後の子を産むチャンスかもしれないんだ。子を持つという事がどんなに幸せなことかを実際に知ってもらいたいんだ。このままじゃヒメの生涯があんまりだろ。」
「子供のいないおじさんがどうしてそんなことが分かるのさ」
とさとしが生意気を言うと
「周りを見ていればわかるさ。例えば僕の妹つまり君の母さんを見ていればね。それにおじさんは作家だから作品というものがある、子どもの代わりにはならないけれど似たようなものなのさ」
と比呂志おじさんは言った。
その日の午後散歩会のメンバー全員で、動物病院へ、ヒメをつれて行った。先生はエコー検査を行った。そして
「おめでとうございます。妊娠です」
とヒメの妊娠の確定を宣言した。
この日から散歩会は、いつものコースを散歩をしたあと、欠席しているヒメの家、つまりヒロちゃんの家まで来てヒメの様子を見に行った
その時が来ると、サムが喜んでいた。父親になる自覚でもあるのだろうか、ヒメに会うのが楽しいらしい。ヒロちゃんの家の前まで来ると狼のように吠えた。
「ワオーン」
「ちょっと待っててねサム」
ヒロちゃんは玄関の靴を整理して、みなを家に上げた。
ロロは先陣を切って2階のヒメの部屋に向かった。おれがリーダーだとでも言うように。そして寺本が後に続く。そして息を切らしたサムとたえ子ちゃん、ユキとさとし、日呂志おじさんと続いて2階へ上がる。おじさんは最後尾について、「この訪問はおれが考えたのにな。なんだか散歩の隊列の順番の通りだな」と思った。おれはいつでも最後尾だ」
寺本が
「ヒメちゃんにあってもマテだからな」
とロロに言うと2階へ上がってもロロはマテをして待っていた。
「さあヒメ、みんなが来てくれたぞ」
とヒロちゃんが言うと、ヒメは早速起き上がってしっぽを振る。サムがヒメのそばによって体を預けるとそのままじゃれた。たえこちゃんが
「サム―、ヒメちゃんは大事な体なんだから乱暴は駄目よ」
と言った。言った先からサムはヒメに抱き着いてひっくり返し、顔をぺろぺろと舐めた。ロロとユキも続いて仲間に加わった
「こらユキおまえは体が大きいんだから手加減しろよ」
とさとしが言った。犬たちはみな喜んでいた。
さて、夏休み後半も、さとしたちは、犬を連れ歩いてたくさんの思い出をつくった。中でも、愛犬を連れた温泉旅行が楽しかった。もちろん散歩会のメンバー総ぞろいだ。犬チームはヒメが参加できなかったけれどヒメには首輪につける安産のお守りを買っていった。
犬専用の温泉施設もある。ロロとサムは大いに満喫した。2匹ともお湯を浴びると細っぴーになっておかしかった。そんな2匹を見て、ユキには彼らの姿がよっぽどおかしかったらしい、しきりに吠えて浴場の中を走り回った。
つづく
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