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第02章 散歩会新メンバー、日呂志おじさん、たえ子ちゃん
08話 たえ子ちゃん入院する2
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さて、始業である。2組のホームルームで小林先生は話された。
「おはようございます。今日は残念なお知らせがあります。クラスの斉藤たえ子さんが病気で入院しました。そこで斉藤さんにお手紙を書きましょう。それをまとめて同じ図書委員の新田君に届けてもらいます。病気とたたかう斉藤さんのはげみになるような手紙を書いてください。明日までの宿題とします」
「先生、どんな病気なんですか?」
とクラスのひとりが質問した
「Ⅰ型糖尿病という病気です。すい臓からインスリンというホルモンが分泌されなくなってしまう病気です」
黒板にも図を書いて説明する。
しつもんは続く
「入院するなんて、大きな病気なのですか?」
「教育入院といって病気とのせっし方を含めて、これからのちりょうを自分でできるようにするための入院です」
「自分でちりょう? 病院でお医者さんが治してくれないんですか? 治らないんですか?」
「病気をコントロールすれば健康な人と同じ生活ができるわ」
と先生は言葉をにごした。
ヒロちゃんはたえ子ちゃんのことを考えた。たえ子ちゃんがどうして病気にかからなければならないのか。「神様はずいぶん不公平だな…」と思った。
その日の散歩会でもヒロちゃんはたえ子ちゃんの話題にふれた。
「どうしたらたえ子ちゃんをはげますことができるだろう」
「治らない病気なんだから気休めを言ったって心にとどかないよね」
とさとしは言った。
「そうだよな…」
と寺本がうなづいた。
さとしはとほうにくれてユキにたずねてみた
[なあユキどうしたらいいと思う」
「クーン」
ユキは鼻を鳴らした。主人の悲しい表情を見て察したのだ。
日本犬はじょうにあつい。
「だれもたえ子ちゃんの気持ちにはなれない。それは仕方のないことだ。みなができるはんいで心をよりそわせて付きそってあげるしかないのかもな」
とおじさんが言った。
みなはおじさんの意見がもっともだと思ったけれど、具体的にどうしたらいいのかを思いうかべられなかった。
「おみまいの時、たえ子ちゃんに、サムの写真をたくさんとって、持って行ってあげようよ」
とヒロちゃんが言った。「そうだ、それがいい」とみんなはさんせいした。今、サムの散歩はたえ子ちゃんの母さんがしていた。ヒロちゃんは、早速たえ子ちゃんの母さんにわけを話して相談した。そして、面会日まで散歩会の面々が夕方だけサムの散歩のめんどうを見ることになった。そしてサムの元気なすがたを写真にいっぱいおさめた。
さてよくじつの学校だ。クラスのみなはたえ子ちゃんへの手紙を書いてきた。それはまとめられてヒロちゃんにたくされた。
一週間後に卒業式はおごそかに行われた。たえ子ちゃんの出席はかなわなかった。そして春休みに入った。
つづく
「おはようございます。今日は残念なお知らせがあります。クラスの斉藤たえ子さんが病気で入院しました。そこで斉藤さんにお手紙を書きましょう。それをまとめて同じ図書委員の新田君に届けてもらいます。病気とたたかう斉藤さんのはげみになるような手紙を書いてください。明日までの宿題とします」
「先生、どんな病気なんですか?」
とクラスのひとりが質問した
「Ⅰ型糖尿病という病気です。すい臓からインスリンというホルモンが分泌されなくなってしまう病気です」
黒板にも図を書いて説明する。
しつもんは続く
「入院するなんて、大きな病気なのですか?」
「教育入院といって病気とのせっし方を含めて、これからのちりょうを自分でできるようにするための入院です」
「自分でちりょう? 病院でお医者さんが治してくれないんですか? 治らないんですか?」
「病気をコントロールすれば健康な人と同じ生活ができるわ」
と先生は言葉をにごした。
ヒロちゃんはたえ子ちゃんのことを考えた。たえ子ちゃんがどうして病気にかからなければならないのか。「神様はずいぶん不公平だな…」と思った。
その日の散歩会でもヒロちゃんはたえ子ちゃんの話題にふれた。
「どうしたらたえ子ちゃんをはげますことができるだろう」
「治らない病気なんだから気休めを言ったって心にとどかないよね」
とさとしは言った。
「そうだよな…」
と寺本がうなづいた。
さとしはとほうにくれてユキにたずねてみた
[なあユキどうしたらいいと思う」
「クーン」
ユキは鼻を鳴らした。主人の悲しい表情を見て察したのだ。
日本犬はじょうにあつい。
「だれもたえ子ちゃんの気持ちにはなれない。それは仕方のないことだ。みなができるはんいで心をよりそわせて付きそってあげるしかないのかもな」
とおじさんが言った。
みなはおじさんの意見がもっともだと思ったけれど、具体的にどうしたらいいのかを思いうかべられなかった。
「おみまいの時、たえ子ちゃんに、サムの写真をたくさんとって、持って行ってあげようよ」
とヒロちゃんが言った。「そうだ、それがいい」とみんなはさんせいした。今、サムの散歩はたえ子ちゃんの母さんがしていた。ヒロちゃんは、早速たえ子ちゃんの母さんにわけを話して相談した。そして、面会日まで散歩会の面々が夕方だけサムの散歩のめんどうを見ることになった。そしてサムの元気なすがたを写真にいっぱいおさめた。
さてよくじつの学校だ。クラスのみなはたえ子ちゃんへの手紙を書いてきた。それはまとめられてヒロちゃんにたくされた。
一週間後に卒業式はおごそかに行われた。たえ子ちゃんの出席はかなわなかった。そして春休みに入った。
つづく
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