8 / 46
第01章 さとし
08話 おばあちゃんの新しいコースター
しおりを挟む
さとしの夏休みも八月に入った。母さんに言われて、八月の最初の日、さとしはおばあちゃんの家をたずねた。おばあちゃんの家に着くと、マルがかけよってくる。さとしは大喜びでマルをだきよせた。
「ばあちゃん。コースター失くしちゃったんだ。ごめんなさい。」
さとしは申しわけなさそうにおばあちゃんに言った。
「母さんから聞いたわ。海に飛びこんだんですって、それほど大切にしていたのね。でももう問題無いわ。マルのコースターはさとしの心にあるの。物は無くなっちゃうけれど、心に焼き付いたものは無くならないわ」
「でも、おばあちゃん、あれをなくしてから、なんだか元気が出ないんだ。もう犬はぼくのもとにおとずれないような気がして。あのコースターはぼくのお守りだったんだよ。もしかしたら、おいのりをしたのが良くなかったのかもしれない。自分の都合で神様に無理なことを言ったのかも、もうおいのりなんかしないよ。だからもう一度作ってくれる?」
「ああ、それならもう母さんに言われて作っておいたよ」
おばあちゃんは奥の部屋にさとしを通して、たんすの引き出しからそれを取り出した。
「わー」
そのコースターには、マルの顔がアップでししゅうされていた。
「これのほうがマルだってよくわかるでしょ」
「ありがとう。今度こそ、大事にするよ」
さとしは元気を取りもどした。その後マルとボール遊びをしたり引っぱりっこをしたりして遊んだ。そして少し早い夕方にマルを散歩させて、さとしはおばあちゃんの家をあとにした。
それからさとしは、ヒロちゃんと寺本とともに、夏休み中釣りや海水浴をして遊んだ。案の定、宿題のかたずけが大変だった。
つづく
「ばあちゃん。コースター失くしちゃったんだ。ごめんなさい。」
さとしは申しわけなさそうにおばあちゃんに言った。
「母さんから聞いたわ。海に飛びこんだんですって、それほど大切にしていたのね。でももう問題無いわ。マルのコースターはさとしの心にあるの。物は無くなっちゃうけれど、心に焼き付いたものは無くならないわ」
「でも、おばあちゃん、あれをなくしてから、なんだか元気が出ないんだ。もう犬はぼくのもとにおとずれないような気がして。あのコースターはぼくのお守りだったんだよ。もしかしたら、おいのりをしたのが良くなかったのかもしれない。自分の都合で神様に無理なことを言ったのかも、もうおいのりなんかしないよ。だからもう一度作ってくれる?」
「ああ、それならもう母さんに言われて作っておいたよ」
おばあちゃんは奥の部屋にさとしを通して、たんすの引き出しからそれを取り出した。
「わー」
そのコースターには、マルの顔がアップでししゅうされていた。
「これのほうがマルだってよくわかるでしょ」
「ありがとう。今度こそ、大事にするよ」
さとしは元気を取りもどした。その後マルとボール遊びをしたり引っぱりっこをしたりして遊んだ。そして少し早い夕方にマルを散歩させて、さとしはおばあちゃんの家をあとにした。
それからさとしは、ヒロちゃんと寺本とともに、夏休み中釣りや海水浴をして遊んだ。案の定、宿題のかたずけが大変だった。
つづく
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
ゆうれいのぼく
早乙女純章
児童書・童話
ぼくはゆうれいになっていた。
ゆうれいになる前が何だったのか分からない。
ぼくが帰れる場所を探してみよう。きっと自分が何だったのかを思い出して、なりたい自分になれそうな気がする。
ぼくはいろいろなものに憑依していって、みんなを喜ばせていく。
でも、結局、ゆうれいの自分に戻ってしまう。
ついには、空で同じゆうれいたちを見つけるけれど、そこもぼくの本当の居場所ではなかった。
ゆうれいはどんどん増えていっていく。なんと『あくのぐんだん』が人間をゆうれいにしていたのだ。
※この作品は、レトロアーケードゲーム『ファンタズム』から影響を受けて創作しました。いわゆる参考文献みたいな感じです。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
ヒーローヒロ
えりっく
児童書・童話
ヒーローに選ばれてしまった小学六年生の少年は
宇宙からやってきた謎の生命体に寄生された人々を救うために
変身して立ち向かう。
彼のもとには場をかき乱すことに余念がない仲間たちと
役に立つのか微妙なラインのヒーローアイテムが。
少年は地球を守ることができるのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
第二音楽室の化け物
おにぎり
児童書・童話
健太はコメノ小学校に通う5年生だ。
ピアノ教室に通う健太は一週間後に控える発表会に向けて、「カノン」を練習していた。
この日、健太は体操服を忘れたのを思い出して放課後の小学校に忍び込んでいた。
ロッカーから体操服を取って教室を出ようとすると、どこからかピアノの音が聞こえてくる。
その落ち着いた旋律に聞き覚えがあった。
「カノン」だ。
音楽室に行ってみるが、そこには誰もいなかった。
一体誰が奏でているのだろう。どうしても気になった健太はその旋律を辿ることにした。
そして遂に、三階の男子トイレと女子トイレの間、『第二音楽室』があるのを見つけた。
しかし、この学校には音楽室は一つしかない。疑問に思いながらも健太は第二音楽室に足を踏み入れた。
そこで健太が見たもの。それは恐ろしく黒く、ドロドロの化け物であった。
恐ろしい見た目に叫ぼうとするが、その化け物が奏でる「カノン」の旋律に言葉を失った。それはどこか寂しげであり、儚げであった。
健太は耳を離せなかった。自分が理想とする旋律がそこで流れていたのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
黒ウサギの雲の向こう
枯葉
児童書・童話
昔々の森のなか。そこには世にも不思議な、人語を話すという黒ウサギが住んでいました。
そのウサギは森で唯一の黒い毛をもち、ほかの白うさぎ達からはからかわれ、忌み嫌われる対象となっていました。
黒ウサギは、一匹ぼっちで過ごす毎日でした。
ある日、人の言葉を使っているところを悪知恵の働く白うさぎに見つかってしまった黒ウサギは、その白うさぎから「仲間になってほしい」との誘いを受けます。
しかし、白うさぎ達の仲間になるための条件というのは、村から食料を盗むために黒ウサギに人語を話す特技を使って村人を騙してほしいとのことでした。
人語を話す特技を悪用することに腹を立てた黒ウサギでしたが、反面いつも孤独という寂しい時間を過ごすなか、ずっと仲間という存在を欲していた強い思いもありました。
黒ウサギは悩んだ末、嫌々ながらも白うさぎの条件を飲むことにしました。
村での盗みを終え森への帰路につく道すがら、黒ウサギはある家で目の見えない若い女性、トツナと出会いました。
その女性にウサギの姿を見られる心配がないと安心した黒ウサギは、得意の人語を使ってトツナと会話をしてみることにしました。
時間を忘れ、トツナが知りたがっている『色』についての話をしているうちに、黒ウサギは、段々と心にかかっていた雲が晴れていくような穏やかな気持ちを感じていました。
それからも黒ウサギは、村人や白うさぎ達の目を盗んでは、たびたびトツナに会いに行くようになりました。
そんなある日、村で盗みを働くウサギ達がいるという噂をトツナは耳にすることとなりました……
森で孤独な生活を送っていた黒ウサギと、目の見えない女性トツナとの交流を描いた作品となっております。
つたない文章で紡いだ物語ではありますが、どうかお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる