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第01章 さとし
08話 おばあちゃんの新しいコースター
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さとしの夏休みも八月に入った。母さんに言われて、八月の最初の日、さとしはおばあちゃんの家をたずねた。おばあちゃんの家に着くと、マルがかけよってくる。さとしは大喜びでマルをだきよせた。
「ばあちゃん。コースター失くしちゃったんだ。ごめんなさい。」
さとしは申しわけなさそうにおばあちゃんに言った。
「母さんから聞いたわ。海に飛びこんだんですって、それほど大切にしていたのね。でももう問題無いわ。マルのコースターはさとしの心にあるの。物は無くなっちゃうけれど、心に焼き付いたものは無くならないわ」
「でも、おばあちゃん、あれをなくしてから、なんだか元気が出ないんだ。もう犬はぼくのもとにおとずれないような気がして。あのコースターはぼくのお守りだったんだよ。もしかしたら、おいのりをしたのが良くなかったのかもしれない。自分の都合で神様に無理なことを言ったのかも、もうおいのりなんかしないよ。だからもう一度作ってくれる?」
「ああ、それならもう母さんに言われて作っておいたよ」
おばあちゃんは奥の部屋にさとしを通して、たんすの引き出しからそれを取り出した。
「わー」
そのコースターには、マルの顔がアップでししゅうされていた。
「これのほうがマルだってよくわかるでしょ」
「ありがとう。今度こそ、大事にするよ」
さとしは元気を取りもどした。その後マルとボール遊びをしたり引っぱりっこをしたりして遊んだ。そして少し早い夕方にマルを散歩させて、さとしはおばあちゃんの家をあとにした。
それからさとしは、ヒロちゃんと寺本とともに、夏休み中釣りや海水浴をして遊んだ。案の定、宿題のかたずけが大変だった。
つづく
「ばあちゃん。コースター失くしちゃったんだ。ごめんなさい。」
さとしは申しわけなさそうにおばあちゃんに言った。
「母さんから聞いたわ。海に飛びこんだんですって、それほど大切にしていたのね。でももう問題無いわ。マルのコースターはさとしの心にあるの。物は無くなっちゃうけれど、心に焼き付いたものは無くならないわ」
「でも、おばあちゃん、あれをなくしてから、なんだか元気が出ないんだ。もう犬はぼくのもとにおとずれないような気がして。あのコースターはぼくのお守りだったんだよ。もしかしたら、おいのりをしたのが良くなかったのかもしれない。自分の都合で神様に無理なことを言ったのかも、もうおいのりなんかしないよ。だからもう一度作ってくれる?」
「ああ、それならもう母さんに言われて作っておいたよ」
おばあちゃんは奥の部屋にさとしを通して、たんすの引き出しからそれを取り出した。
「わー」
そのコースターには、マルの顔がアップでししゅうされていた。
「これのほうがマルだってよくわかるでしょ」
「ありがとう。今度こそ、大事にするよ」
さとしは元気を取りもどした。その後マルとボール遊びをしたり引っぱりっこをしたりして遊んだ。そして少し早い夕方にマルを散歩させて、さとしはおばあちゃんの家をあとにした。
それからさとしは、ヒロちゃんと寺本とともに、夏休み中釣りや海水浴をして遊んだ。案の定、宿題のかたずけが大変だった。
つづく
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