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第01章 さとし
03話 おばあちゃんの思案
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明くる日の朝、母さんとさとしは、心の中で気まずいと思いながらも、昨日のけんかのことなどなかったかのようにふるまった。小さな子どもと大人の親子げんかなんてこんなものだ。子どもは親に逆らっても何もいいことはない。親のほうも心得たもので、そのあっとう的な力でわざわざけんかをむしかえしたりするようなことはしない。さとしは昨夜の、ボリュームのあるたんじょう会のごちそうを、朝から口いっぱいにほおばった。おなかがへっていたのだ。おばあちゃんは昨夜、家にとまったようだ。キッチンで母さんと何やら話しあっている。そして母さんとの会話がすむとおばあちゃんはさとしにこう言った
「おはよう、さとし。今日からしばらくばあちゃん家にとまりなさい。マルの世話をしておくれ。犬をかう練習になるわ。ばあちゃんもひとりじゃ大変なのよ」
母さんは何も言わなかった。昨日は少し言いすぎたと反省している。
「母さん。行ってもいいかな」
「ああ、行っておいで。でも、あまりおばあちゃんにわがまま言うもんじゃありませんよ」
「うん」
さとしは心の中で、「マルに会える」と喜んだ。
「あまりわがまま言うような時はしかってくださいね。」
と母さんはおばあちゃんに念をおした。
早速さとしはとまりのじゅんびをととのえた。そしてテーブルに置きっぱなしになっていたおばあちゃん手作りのコースターを手に取って、
「これ、お守りのように大事にするね」
とおばあちゃんに言って荷物に加えた。このコースターはさとしにとって、いつか出会うかもしれない、自分の犬との縁を取り持つアイテムのような気がしたのだ。
「おばあちゃん早く行こうよ」
「あーはいはい」
おばあちゃんも帰り仕度を始めた。
「おはよう、さとし。今日からしばらくばあちゃん家にとまりなさい。マルの世話をしておくれ。犬をかう練習になるわ。ばあちゃんもひとりじゃ大変なのよ」
母さんは何も言わなかった。昨日は少し言いすぎたと反省している。
「母さん。行ってもいいかな」
「ああ、行っておいで。でも、あまりおばあちゃんにわがまま言うもんじゃありませんよ」
「うん」
さとしは心の中で、「マルに会える」と喜んだ。
「あまりわがまま言うような時はしかってくださいね。」
と母さんはおばあちゃんに念をおした。
早速さとしはとまりのじゅんびをととのえた。そしてテーブルに置きっぱなしになっていたおばあちゃん手作りのコースターを手に取って、
「これ、お守りのように大事にするね」
とおばあちゃんに言って荷物に加えた。このコースターはさとしにとって、いつか出会うかもしれない、自分の犬との縁を取り持つアイテムのような気がしたのだ。
「おばあちゃん早く行こうよ」
「あーはいはい」
おばあちゃんも帰り仕度を始めた。
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