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第六話 friend's side『私の主人公』

4-1 縮んでいく放課後

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 結局そのまま、特に実のある会話をすることもなく、私たちはベイバンを後にした。家が厳しいという井上さんは一足先に駅へ向かい、残った私たちはアイドルの雑誌が欲しいという野田さんと一緒に本屋へ向かい、文房具を物色した。
 慧真はずっと笑顔だった。
 ベイバンへの道中から、本屋を出るまでずっと、慧真の顔は陰ることも、陰りかける気配すらもなく、笑顔のままだった。
 だけど。
 だから、私は気が気ではなかった。
 他のメンバーを呼ぼうと提案した時点で、こうなる予感はしていた。私の理想の通りにはならいことぐらい、ほとんど確信めいて分かっていたのだ。
 慧真がわざわざ自分で集めた同級生たちの前で自分の暗い部分を見せないことなんて、最初から察しのつくことだった。親しくもない同級生たちに囲まれて、私が慧真に対して部活のことを問い質すなんて、できるわけがなかった。
 そのくせ、私は焦っていた。
 慧真があられシェイクを飲み終わった辺りから、部活のことを問い質すきっかけを与えてくれない彼女に対して、私は愚かにも焦ってしまっていた。
 早く帰ってしまってはチャンスを失ってしまうような気がしたから、井上さんを先に帰して本屋に寄ったというのに。欲しがっていた雑誌を胸に抱える野田さんの隣で、慧真は相も変わらず楽しそうで。
「じゃあ、また明日」
 野田さんがちょっとふざけて、畏まった声を出した。当たり前のように慧真がそれを真似た返しをして、シルバーの自転車は野田さんと重たそうなスクールバッグを乗せて駅の反対側へと走り去っていく。
 賑やかな二人が去って、放課後が、縮んでいく。
 少し乱暴ですらある沈みかけの夕陽に照らされて、特別で一世一代の放課後が、縮んでいく。
 残された私と慧真と北沢さんは電車通学で、それなのに、誰かの足が自然と駅へ向かうということはなかった。このまま放課後を終わらせてしまうことが不安で、私の足は次の遊び場を探そうとしているのだった。
 何の気もなしに夕陽に背を向けて二人の方へ向き直ると、ふと北沢さんと目が合って、だけどすぐに、何やらそわそわとしたような彼女の視線は僅か上方へと逃げ出した。
 一緒にいる間ずっと緊張か、あるいは遠慮をしているようだった澄まし顔の彼女も、もしかしたら私と同じで、この放課後をまだまだ終わらせたくないのかも知れない。
 早く帰りたいだけということだって大いに考えられるし、トイレに行きたいだけだという可能性も無くはないし、ひょっとしたら私の顔が汚れていて、それを指摘しようかどうか迷っているだけなのかも知れない。
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