アンリアルロジック〜偽りの法則〜

いちどめし

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第三話 『手に入れたもの』

2-2 依頼

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「思い出したというか、そうだな……思いついたよ」 
「何を……?」 
 どういうわけだか、私の口は会話する。 
「いや、ね。北沢さんにちょっと、お願いできないかなと思ってね」 
「お願い?」 
「ああ。実は二年前にも、お守りを渡した生徒がいてね。一年後に返してほしいって言ってあったんだけど、未だに返してもらってなくて。それを、もらってきてくれないかな、と」 
 なんだ。そんなこと。 
「どうかな。頼まれてくれると嬉しいんだけど」 
 断らせてくれるようには思えない。だけど、それほど大変なようにも思えない。だから、何か裏があるようにしか思えない。はい、と言いそうになって息を止めると、深澤先生が緩慢な動きで座りなおした。 
「効いたよね、お守り」 
 ぞわり、と背筋が波を打つ。お礼をしろということか。 
 私の思考を否定するかのように、言葉は続く。 
「だから、返すのが惜しいっていうのは分からなくもないんだけど」 
「返したら、どうなるんですか」 
 ふふっ、と深澤先生は柔らかく笑った。 
「友達、できた?」 
「はい」 
「それは、お守りを返したからってなくなることはないよ」 
 だから、大丈夫。 
 私がそう思ったのか、先生がそう言ったのか。去年流行ったJ-popを吹奏楽部が演奏し始めたせいで、それはよく分からなくなった。 
 三年生ですかと私が聞くと、深澤先生はその意図がすぐに分かったようで、そうそうと頷いた。 
「三年生の、室町唯子って子なんだけど、ちょっと頼まれてくれないかな」 
「一応、返してもらえるようにしようとは思いますけど」 
「ああ、それで十分だよ。だめだったとしても文句は言わないからさ、ちょっと声かけてみて」 
「はい。でも、どんな人かも、クラスも知らないし」 
「ああ、そのことなら、矢野さんに聞いてくれれば良いよ」 
 唐突に出てきた名前に、一瞬、思考が止められた。 
 やのさんって、誰だっけ。矢野さんって――もしかしたら、あの、 
「さなえさん……?」 
 全く自信のない小さな声で言うと、そうだよと即答される。 
「やっぱり知ってたか。クラス一緒だし、少し目立つ子だからねえ。僕に頼まれたって言えば分かるはずだからさ、二人で行ってきてくれないかな」 
「わかりました」 
 矢野さんも一緒なんだ。そう思うと、途端に気が楽になった。 
「ありがとう。じゃあ、お願いね」 
 深澤先生の椅子がきいいと鳴ったので、私は友達待たせてるのでと言って立ち上がった。 
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