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たこ焼きじゃなくてお好み焼きに

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 おれはあの後、すぐに眠った。
 本当は地球が本当に滅びるかどうか確かめるために、ずっと起きているつもりだったんだけど……、さすがは小学生。十時を過ぎる頃には完全に眠っていたようだ。
 次の日、地球が滅びるなんていうことがあるハズもなくて、学校に行くとケンはケラケラと笑いながら、何事もなかったかのように「おはよう」と手を振った。
 当然おれは文句を言って、そうしたらケンのやつは、こう言ってのけた。
「きっと、キミがあの時たこ焼きを頼んだから地球は救われたんだよ。いやぁ、お好み焼きにしなくって、よかったよかった」
 正直言って、ワケが分からなかった。ケンが続けて言うには、こうだ。
「だってね、マサキくん。キミがあの時お好み焼きを頼んでいたら今日の地球がどうなっているか、なんて、誰にも分からないじゃないか」
 つまり、からかっていたのだ。どうせその日の学校で、おれがケンの「地球を救う」という答えに対して、文句を言いたそうな顔をしていたから、からかってみたくなったんだろう。
 今思えば、あの頃のおれは自分でもビックリするほど純粋だったな。
 どうしてだろうか、おれは急に、そんなことを思い出してしまった。
 あれから何年が経ったんだっけ。今、おれは高校一年生だから――、なんだ、たったの四年ってところか。
 何の因縁か、おれとケンは中学だけでなく高校までも同じである。
「おい、ケン。話があるんだ」
 なんとなく、本当に何となくではあるけれど、今になって仕返しでもしてやろうという気分になった。
「なんだい、マサキくん」
 マサキくんという呼び方は、あの頃から変わっていない。やっぱり偉そうで、堂々としたもじゃもじゃ頭。
「明日な、地球が滅びるかも知れないんだ」
 ぎらぎらと光を反射させながら、昔から変わらないメガネは笑いだす。
「はっはっは。いきなり何を言い出すんだいキミは」
 おれは――、憮然として言い返した。
「今日の帰りに商店街にでも行って、本当に地球が滅びるのか調べようぜ」
 いよいよケンは首をかしげてしまう。
「今度は、たこ焼きじゃなくてお好み焼きを頼むんだ」
 いつかおれが、ひねくれて卒業文集にそう書いたように。
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