良い武器(斧)を見つけるために仕方なく勇者と魔王討伐に一緒に行ってあげる

ルーナ

文字の大きさ
12 / 13

9

しおりを挟む
「あー良く寝た」

リリムは清々しい朝だと思った。ほぼ丸一日移動に使いそのまま模擬戦、夜には美味しいご飯にお酒。護衛の二人も気さくで話しやすかったため、実に充実した一日だったと思った。

「さて、レオンは起きたかな?」

さっと朝の支度を行い一階へ降りた。

「お、おはようございます」
「おはよう」
「お、お、おえっ」

レオンは元気なさそうであるが普通に挨拶が出来た。護衛の二人は様子がおかしい。

「元気ないね三人とも」

リリムは気になって声をかけた。

「いや、大丈夫。僕はまた気を失ってしまったことに対して考えることがあって。二人は単なる二日酔いだよ」
「面目ないです」
「仕事には影響でないように気をつけます」

そんなに沢山飲んでなかったじゃないとリリムは思った。リリム一人がハイペースでのみ、二人はスローペースだったので堪らず酌をしてやったのだった。

「二人ともあまりお酒に強くなかったのね。付き合わせてごめん」

お酒は強い人弱い人がいると父親から聞いていた。軍で沢山の人と酒を飲む機会があったガルムは、酒は無理に飲ませるものではないとリリムに教えたのだった。

「いえ、二人とも強い方なのですがっ……」
「ドワーフは種族的に強い人が多いから……」
「リリム、ドワーフの感覚で飲めるヒューマンなどいないと思っていた方が今後の為だろう。ドワーフはお酒を小さいころから飲むと聞いている」

確かに村では10歳から飲酒が許されている。しかも火酒かしゅと呼ばれる非常にアルコール度数が強いものが主流だ。

「そうね、ここの度数も低かったし勉強になったわ」

ヒューマンとの種族としての違い。村を出て早々に目の当たりにして旅に出て良かったと少しだけ思った。

「あんた体調はどうもないの?」
「昨日の事には触れないでいてくれるとありがたいよ」

実際問題、大衆の面前で止めると自信満々に言い切り、簡単に負けてしまったのだ。勇者の肩書も相まって羞恥心はうなぎのぼりである。

「さて、今後の予定なんだけどいいかな?」
「ええ」
「食料はここに来るまでで全然使っていないから、このまま王都へ向かおうと思う。移動は乗合馬車で。ゆっくりでも二日程度の移動になる。」
「分かったわ」
「それで、今度は単独行動はなし、みんなと一緒に移動する。いいね?」
「うん、それで出発は何時にするの」
「もしよければすぐにでも出ようと思っているけど……みんなどうかな?」

レオンはそう言って視線を護衛に向けた。

「私はいつでもいいわよ」
「勇者、様。私どもも大丈夫ですので気をつかわれなくて大丈夫です」
「う、おなじく」

ホントに大丈夫かなと思ったが、レオンは口に出さなかった。

「じゃあ30分後に村の入り口に集合で」

その場は朝食を摂って解散となった。リリムは二階に荷物を取に行きすぐに出払った。時間まで村を散策しようと思った。体躯に似合わず大きなリュック、それに大きな斧をぶら下げている少女は前日の騒乱があってかなりの認知度になっていた。

「お、昨日の嬢ちゃんじゃねーか。頑張ってくれよ」
「あ、昨日のおねーちゃんだ!」
「もう村をでるのかい?」

などなど、いろいろな人に声をかけられた。リリムにとってはなんでかなー?と思っていたが、村人からしたら魔王討伐のメンバーであり、強さは昨日見ている。強ければ強いほど安心するのだ。勇者が強いのは皆知っていた。国王の方針で国民を安心させるために情報を流していたのだ。その勇者よりも強い人が同行するなんてこれほど心強いことはないだろうと皆思っていた。

30分はあっとゆう間だった。行く先々で声をかけられ十分に散策出来なかったので少し不満が溜まっているが、悪くないとも思っていた。入口へ行くと三人とも待っていた。

「待たせたかしら?」
「いや、みんな時間より早く来ていただけさ」

レオンはリリムとは逆でいそいそと入口までやってきた。

「もうそろそろ乗合馬車が来るだろう。食料はなるべく使言った方がいい。余ったものは孤児院にでも寄付しよう」
「勇者様、馬車がきました」
「丁度良かった。りりむ、他の人も利用するんだから迷惑をかけないように」
「分かってる、子供じゃないんだから」

その返しに護衛二人は微笑んだ。

乗合馬車は何事もなく二日後に着いた。途中魔物も何度か出たが過剰戦力である。問題には成らなかった。リリムが何度か暴走しそうになったが、今後の金策の話しをしてなだめて行った。ある程度お金は父親からもらっていたが乗合馬車だってタダではない。ずっと護衛が面倒見てくれるわけもないので勇者と二人で生活できるように王都で冒険者登録をすることになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...