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第2章
第2章 13 『この、馬鹿ッ――!!』
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「あの件、灯夜ちゃんが道瑠くんと接触して2人の仲を取り持った話は知ってるよね?」
『はい。……ん?』
「もし次また何かやらかしたら、あのツインテがジェットエンジンになって道瑠くん目掛けてカッ飛んで来ると思うよ? 道瑠くん、あの時も灯夜ちゃんが怖かったみたいだし。あ、でもそれも面白いかもな……」
「じょ、冗談じゃない!」
唐突に聞こえてきた、この場を外しているはずの道瑠の声。
『え、道瑠!?』
「あっちゃー、言い過ぎたかな。実はね、道瑠くんずっと側にいたんだよ」
『う、嘘でしょ!? だってドアの音もしたし――』
「あーそれね、開けて閉めただけ。本当に出ようとした道瑠くんを僕が引き止めたのよ。ずっと黙ってるように伝えたんだけど、灯夜ちゃんの怖さの根が深かったみたいで」
『――――ッ!!』
ずっと道瑠はいないものと思い話していたが、つまりそれは全て丸聞こえだったと言うことで、あるては恥ずかしさから声にならない声を上げる。
御影が灯夜のことをちゃん付けで馴れ馴れしく呼んでいること、道瑠がそこまで怖がるほどに灯夜が怖い側面を持っていることなど疑問があったはずだが、全てが吹き飛んでしまった。
『この、馬鹿ッ――!!』
「あぁーっひゃっひゃっひゃ――ゲホッ、ゴホッ……。あー、愉悦が極まるぅ!」
「ごっ、ごめん本当に!」
『大丈夫、道瑠は悪くない。寧ろ道瑠も被害者だよね?』
「兄さんにスマホの画面見せられてさ、あんなこと書かれてたんだもん」
『……何て?』
これはきっと、道瑠くんも聞いた方が有益な話だと思う
だから出てかない方がいいんじゃないかな
「だって、ねえ。僕、嘘は吐いてないでしょ?」
「それは……否定出来ないけど……」
「でしょー? 取り敢えずあるてさんも落ち着いて深呼吸しよう」
『貴方がこうさせたんでしょうに!』
「ほら。吸ってー、吸ってー、また吸ってー、めげずに吸ってー……」
「吐かせてあげて!?」
一向に吐かせようとしない御影に、思わず道瑠がツッ込んだ。
『ふっ、あっははははは……』
そしてそんな二人のやり取りに、あるてが笑う。
「君も取り乱したり笑ったり忙しいねぇ」
『あ、いえ、兄弟で仲が良いんだなって』
「ひひっ、呼吸なだけにピッタリよ。まあだいぶ脱線しちゃったけど……」
御影が話を区切ると、再び声が切り替える。
「会ってまだ短いのにそこまで弟のことを気にしてくれるのは兄として大変嬉しいし、僕が思ってる以上の何かが君たちの間にあるんだろうね。だからあるてさん。これからも道瑠くんと、是非とも仲良くして欲しい」
『…………わかりまし――はいはいもう寝るよ』
「? あるて?」
不自然な受け答えに、道瑠が声を掛ける。
『あ、ごめん。お母さんからもう寝なさいのノックが来て』
「なるほど。それじゃあここまでかな?」
「だね。僕もこの上無く楽しんだし、満足したよ」
『それに振り回されるこっちの身にもですね……あ、そうだ。寝る前に1つ。御影さん』
「ん?」
『……喫茶店教えてくれて有難うございました。カオスだけど料理も美味しくて、良いお店でした』
「潔白のことだね? いいのいいの。気に入ったんならまた行くと良いんじゃないかな。それじゃ、おやすみ」
「おやすみ、あるて」
『おやすみなさい』
こうして、3人の通話が終わった。
「……あのさ」
「どうしたんだい? ちょっと怖いよー道瑠くん」
「本当にあるてまで兄さんの愉悦に巻き込まな――ん?」
道瑠が御影に物申し切る前に、スマートフォンに通知が入った。あるてからだった。
あるて
突然のことで、しかも噂通りのお兄さんでしたし疲れたけど楽しかったです。
御影さんにもありがとうと伝えてください。おやすみなさい。
「…………ふむ」
それを一緒に見た御影は、少し考え込む。
「……道瑠くん」
「何?」
御影が道瑠の両肩に手を置き、真剣な表情で道瑠の目を見る。
「あるてさん、もうマジで泣かすな。僕が蒸発死しそうなくらいにこんな良い子を、もう」
御影のその表情と声、言葉に一瞬たじろぐ道瑠だが、全てを理解すると道瑠も同じ表情で返した。
「……うん」
「じゃ、僕は戻るよ。邪魔したね。そして色々ありがとちゃん。おやすみ」
肩から手を離すと、ひらひらと手を振って軽いノリで御影は道瑠の部屋を後にした。そして自室に戻り、パソコンの電源を落とす。
「……さて、寝るか。あーでも寝れるかな? こんな胸躍っちゃって」
――一方、道瑠は。
(特別な存在……そう、なのかな……。それに、惚れて……? 僕もそうなのかもしれない……けど違うかも。うーん……)
こっちはこっちで、ぐっすりと眠れそうには無い様子だった。
『はい。……ん?』
「もし次また何かやらかしたら、あのツインテがジェットエンジンになって道瑠くん目掛けてカッ飛んで来ると思うよ? 道瑠くん、あの時も灯夜ちゃんが怖かったみたいだし。あ、でもそれも面白いかもな……」
「じょ、冗談じゃない!」
唐突に聞こえてきた、この場を外しているはずの道瑠の声。
『え、道瑠!?』
「あっちゃー、言い過ぎたかな。実はね、道瑠くんずっと側にいたんだよ」
『う、嘘でしょ!? だってドアの音もしたし――』
「あーそれね、開けて閉めただけ。本当に出ようとした道瑠くんを僕が引き止めたのよ。ずっと黙ってるように伝えたんだけど、灯夜ちゃんの怖さの根が深かったみたいで」
『――――ッ!!』
ずっと道瑠はいないものと思い話していたが、つまりそれは全て丸聞こえだったと言うことで、あるては恥ずかしさから声にならない声を上げる。
御影が灯夜のことをちゃん付けで馴れ馴れしく呼んでいること、道瑠がそこまで怖がるほどに灯夜が怖い側面を持っていることなど疑問があったはずだが、全てが吹き飛んでしまった。
『この、馬鹿ッ――!!』
「あぁーっひゃっひゃっひゃ――ゲホッ、ゴホッ……。あー、愉悦が極まるぅ!」
「ごっ、ごめん本当に!」
『大丈夫、道瑠は悪くない。寧ろ道瑠も被害者だよね?』
「兄さんにスマホの画面見せられてさ、あんなこと書かれてたんだもん」
『……何て?』
これはきっと、道瑠くんも聞いた方が有益な話だと思う
だから出てかない方がいいんじゃないかな
「だって、ねえ。僕、嘘は吐いてないでしょ?」
「それは……否定出来ないけど……」
「でしょー? 取り敢えずあるてさんも落ち着いて深呼吸しよう」
『貴方がこうさせたんでしょうに!』
「ほら。吸ってー、吸ってー、また吸ってー、めげずに吸ってー……」
「吐かせてあげて!?」
一向に吐かせようとしない御影に、思わず道瑠がツッ込んだ。
『ふっ、あっははははは……』
そしてそんな二人のやり取りに、あるてが笑う。
「君も取り乱したり笑ったり忙しいねぇ」
『あ、いえ、兄弟で仲が良いんだなって』
「ひひっ、呼吸なだけにピッタリよ。まあだいぶ脱線しちゃったけど……」
御影が話を区切ると、再び声が切り替える。
「会ってまだ短いのにそこまで弟のことを気にしてくれるのは兄として大変嬉しいし、僕が思ってる以上の何かが君たちの間にあるんだろうね。だからあるてさん。これからも道瑠くんと、是非とも仲良くして欲しい」
『…………わかりまし――はいはいもう寝るよ』
「? あるて?」
不自然な受け答えに、道瑠が声を掛ける。
『あ、ごめん。お母さんからもう寝なさいのノックが来て』
「なるほど。それじゃあここまでかな?」
「だね。僕もこの上無く楽しんだし、満足したよ」
『それに振り回されるこっちの身にもですね……あ、そうだ。寝る前に1つ。御影さん』
「ん?」
『……喫茶店教えてくれて有難うございました。カオスだけど料理も美味しくて、良いお店でした』
「潔白のことだね? いいのいいの。気に入ったんならまた行くと良いんじゃないかな。それじゃ、おやすみ」
「おやすみ、あるて」
『おやすみなさい』
こうして、3人の通話が終わった。
「……あのさ」
「どうしたんだい? ちょっと怖いよー道瑠くん」
「本当にあるてまで兄さんの愉悦に巻き込まな――ん?」
道瑠が御影に物申し切る前に、スマートフォンに通知が入った。あるてからだった。
あるて
突然のことで、しかも噂通りのお兄さんでしたし疲れたけど楽しかったです。
御影さんにもありがとうと伝えてください。おやすみなさい。
「…………ふむ」
それを一緒に見た御影は、少し考え込む。
「……道瑠くん」
「何?」
御影が道瑠の両肩に手を置き、真剣な表情で道瑠の目を見る。
「あるてさん、もうマジで泣かすな。僕が蒸発死しそうなくらいにこんな良い子を、もう」
御影のその表情と声、言葉に一瞬たじろぐ道瑠だが、全てを理解すると道瑠も同じ表情で返した。
「……うん」
「じゃ、僕は戻るよ。邪魔したね。そして色々ありがとちゃん。おやすみ」
肩から手を離すと、ひらひらと手を振って軽いノリで御影は道瑠の部屋を後にした。そして自室に戻り、パソコンの電源を落とす。
「……さて、寝るか。あーでも寝れるかな? こんな胸躍っちゃって」
――一方、道瑠は。
(特別な存在……そう、なのかな……。それに、惚れて……? 僕もそうなのかもしれない……けど違うかも。うーん……)
こっちはこっちで、ぐっすりと眠れそうには無い様子だった。
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