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第1章
第1章 08
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「『あーそーぼ!』じゃなくてさ。もっと遊びたいならもう少し時速さんたちと遊べばいいのに」
御影を自分の部屋に入れた道瑠は、最初にこう言った。
「3戦もしたら充分だよ。それに今は道瑠くんと言葉で遊びたいのだ」
実際の所は先程の『MANE DE KILL』で大満足の勝利が出来たため、良い気分のまま勝ち逃げをしたかったんだろうと道瑠は察した。そして『言葉で遊ぶ』と言う意味も、兄弟故に道瑠にはわかっていた。
「それで、何か話でも?」
「そうそう。で、何か進展あった?」
「別に。ただ明後日会うよ。マフラー返してもらうだけだけど」
進展とは、道瑠とあるてのことだ。
「だけぇ……? 道瑠くーんホントにそれだけで良いの?」
「別に僕は――そりゃ兄さんには感謝してるけどさ。どうなろうと、後は僕自身の問題……じゃないかな?」
「うん、それはそう。でも僕も可愛い可愛ぃい弟のために協力したんだからさ。話を聞く権利はあるんじゃないかなーって」
「まあ……。でも、僕自身の問題って肯定してくれた上で言うけど、そうであって兄さんが楽しむための娯楽じゃないからね?」
「えぇー。何であろうと僕が楽しむ、それが僕の生きる意味なのにぃ……」
残念そうに言うが、御影のその声のノリは変わらず軽い。
「じゃあ1つだけ。その子、あるてさんだっけ? 早いとこ彼女にあのコト伝えないと駄目だよ? 文章じゃなくてちゃーんと自分の言葉でね」
「それは……わかってるよ」
「ほんとかなー? 道瑠くん不器用だから。よーし、じゃあ僕から1つ縛りを設けよう」
「縛り……?」
提案ではなく縛りと言ったことに御影らしさを感じつつも、道瑠は謎に思った。
「君は将来のために外見からなりきって出掛けることがあるよね。それは続けて良いんだけど、あるてさんの前では禁止」
「……一応聞くけど、どうして?」
その頃。
「――私はね、嬉しいんだよぅ。他でもないあるちゃんに春が訪れる予感がするから」
灯夜はベッド上でゴロゴロしながら、あるてと通話していた。
『だからそう言うのじゃないってば』
「もーっ、あるちゃんはカタブツだなー。照れ隠しで今日も私を置いて帰っちゃったくらいには意識してるんじゃないの? あの時のあるちゃんにご馳走様って思って、感謝って送ったんだよー?」
『こりゃ駄目だ。ぴよに何言ってもわかってくれないみたいだし、切るよ?』
「あ、じゃあ待ってあるちゃん。最後に1つだけ言わせて?」
『……何?』
「いやーあまり大したことじゃないんだけどね? そうやってすぐ逃げようとするの……良くないと思うなー」
『う…………ごめん』
さっきまでと違い、雰囲気が少し重くなる。
「あっ! 別に責めてるわけじゃないからね? 時には逃げることも大切だし」
灯夜は最初にフォローを入れつつも、
「でもあるちゃん、今日の帰りもそうだったけど追い詰められると……まあアレは自爆だったけど、今も電話切ろうとしてたし逃げ癖があるような気がしてねぇ」
直球の言葉――指摘をあるてにぶつける。
『………………』
あるては図星を突かれ何も言い返すことが出来ない。
「ホントに嬉しかったからって言うと言い訳になっちゃうんだけど、私もからかい過ぎちゃったね。ごめん」
『いや、ぴよが謝ることじゃ……』
「大丈夫だよあるちゃん、本当はわかってるから。明後日その道瑠さんって人と会って、ホントにマフラー返すだけかもしれないし、遊ぶことになるかはわからないけど。でも……」
灯夜は一旦話を止め、一息つく。
「何であれ彼のこと気になるのなら、何があっても逃げないで、解散するまで一緒にいて見定めるべきだと思う。その結果今後どうするのか、仲良くするのか離れるか決めても良いと思うな」
『……そっか』
「そうそ。って言う私が何だか恥ずかしくなってきちゃったから、もう切ろっか!」
『ちょっ、言うだけ言っといて――』
「ってのが、あるちゃんの逃げ癖。わー、我ながら名演だよ!」
『ぴーよー?』
「待って怖いよあるちゃん! ……まあそれはそれとして、時間的にもアレだから冗談無しで寝よっか」
『はぁ……それもそっか。じゃ、おやすみ』
「うん。また明日ー!」
重かった雰囲気は途中からすぐに無くなり、2人は通話を終えた。
御影を自分の部屋に入れた道瑠は、最初にこう言った。
「3戦もしたら充分だよ。それに今は道瑠くんと言葉で遊びたいのだ」
実際の所は先程の『MANE DE KILL』で大満足の勝利が出来たため、良い気分のまま勝ち逃げをしたかったんだろうと道瑠は察した。そして『言葉で遊ぶ』と言う意味も、兄弟故に道瑠にはわかっていた。
「それで、何か話でも?」
「そうそう。で、何か進展あった?」
「別に。ただ明後日会うよ。マフラー返してもらうだけだけど」
進展とは、道瑠とあるてのことだ。
「だけぇ……? 道瑠くーんホントにそれだけで良いの?」
「別に僕は――そりゃ兄さんには感謝してるけどさ。どうなろうと、後は僕自身の問題……じゃないかな?」
「うん、それはそう。でも僕も可愛い可愛ぃい弟のために協力したんだからさ。話を聞く権利はあるんじゃないかなーって」
「まあ……。でも、僕自身の問題って肯定してくれた上で言うけど、そうであって兄さんが楽しむための娯楽じゃないからね?」
「えぇー。何であろうと僕が楽しむ、それが僕の生きる意味なのにぃ……」
残念そうに言うが、御影のその声のノリは変わらず軽い。
「じゃあ1つだけ。その子、あるてさんだっけ? 早いとこ彼女にあのコト伝えないと駄目だよ? 文章じゃなくてちゃーんと自分の言葉でね」
「それは……わかってるよ」
「ほんとかなー? 道瑠くん不器用だから。よーし、じゃあ僕から1つ縛りを設けよう」
「縛り……?」
提案ではなく縛りと言ったことに御影らしさを感じつつも、道瑠は謎に思った。
「君は将来のために外見からなりきって出掛けることがあるよね。それは続けて良いんだけど、あるてさんの前では禁止」
「……一応聞くけど、どうして?」
その頃。
「――私はね、嬉しいんだよぅ。他でもないあるちゃんに春が訪れる予感がするから」
灯夜はベッド上でゴロゴロしながら、あるてと通話していた。
『だからそう言うのじゃないってば』
「もーっ、あるちゃんはカタブツだなー。照れ隠しで今日も私を置いて帰っちゃったくらいには意識してるんじゃないの? あの時のあるちゃんにご馳走様って思って、感謝って送ったんだよー?」
『こりゃ駄目だ。ぴよに何言ってもわかってくれないみたいだし、切るよ?』
「あ、じゃあ待ってあるちゃん。最後に1つだけ言わせて?」
『……何?』
「いやーあまり大したことじゃないんだけどね? そうやってすぐ逃げようとするの……良くないと思うなー」
『う…………ごめん』
さっきまでと違い、雰囲気が少し重くなる。
「あっ! 別に責めてるわけじゃないからね? 時には逃げることも大切だし」
灯夜は最初にフォローを入れつつも、
「でもあるちゃん、今日の帰りもそうだったけど追い詰められると……まあアレは自爆だったけど、今も電話切ろうとしてたし逃げ癖があるような気がしてねぇ」
直球の言葉――指摘をあるてにぶつける。
『………………』
あるては図星を突かれ何も言い返すことが出来ない。
「ホントに嬉しかったからって言うと言い訳になっちゃうんだけど、私もからかい過ぎちゃったね。ごめん」
『いや、ぴよが謝ることじゃ……』
「大丈夫だよあるちゃん、本当はわかってるから。明後日その道瑠さんって人と会って、ホントにマフラー返すだけかもしれないし、遊ぶことになるかはわからないけど。でも……」
灯夜は一旦話を止め、一息つく。
「何であれ彼のこと気になるのなら、何があっても逃げないで、解散するまで一緒にいて見定めるべきだと思う。その結果今後どうするのか、仲良くするのか離れるか決めても良いと思うな」
『……そっか』
「そうそ。って言う私が何だか恥ずかしくなってきちゃったから、もう切ろっか!」
『ちょっ、言うだけ言っといて――』
「ってのが、あるちゃんの逃げ癖。わー、我ながら名演だよ!」
『ぴーよー?』
「待って怖いよあるちゃん! ……まあそれはそれとして、時間的にもアレだから冗談無しで寝よっか」
『はぁ……それもそっか。じゃ、おやすみ』
「うん。また明日ー!」
重かった雰囲気は途中からすぐに無くなり、2人は通話を終えた。
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