8 / 53
第1章
第1章 04
しおりを挟む
しじみ
連絡ありがとう。いつ会いましょうか?
こちらは直近ですと明後日と明々後日なら空いています
美術室を後にした後、あるては灯夜から離れて道瑠とやり取りがしたかったため、一人トイレの個室へと入っていた。
あるて
では明後日どうですか?
私も放課後時間があるので時間は合わせます。
こうあるてが返――既読が付いた。
(はっや)
思わず心の中でツッコむあるて。
(……でもそろそろ出ないとな)
しかし長いこと灯夜を待たせることも出来ず、タイムリミットだと感じたあるては返信を気にしつつもトイレを後にした。
「お待たせ。帰ろっか」
あるてと灯夜は自転車を漕いで帰路を辿る。
「ねえねえ、あれから返事って返ってきたの?」
道中、灯夜があるてに尋ねる。短いがやり取りをしていたため、あるては一瞬ドキッとする。
「あれからスマホ見る余裕なかったからなあ。最後に見た時はまだだったし、絵に集中してたし」
それに対しあるては、正直に答えるのも恥ずかしく思いはぐらかす。
「てかそれぴよが気にすること?」
「そりゃ、私も一応年頃の女子高生ですからぁ。友達の色恋沙汰が気にならないワケないよ」
「色恋沙汰……ねえ。有り得んよ、そんなの。第一借りパクは絶対にしたくないし、マフラー返すためにもう1回は会わないといけないんだ。住所教えてもらって送っても良いけど、向こうの家族に気付かれたくないかもだし」
と、言ったと同時に、
(ああ、そうか……もう1回は会わないといけないのか。しっかしぴよが絡んで面倒なことになったな……)
あるては心の中でこう思った。
(ま、話した私の自業自得なんだけど)
そして本当に話して良かったのかどうか。あるては少し後悔した。
「ねえあるちゃん。そのマフラーって洗って返すんだよね?」
「ん、まあ当然ね」
「マフラーって家で洗うの難しいから、クリーニングに出さないといけないねぇ」
「大丈夫、昨日あの後その足で出したから。明後日には引き取れるみたいだから、その後だね」
あるての言葉に迷いは無い。
「…………あるちゃん」
「ん?」
「会うんだね? 明後日」
「? 何を言って――」
ふと、先程の自分の発言を思い返すあるて。そして――
「ぁあッ!?」
事態に気付くと、あるてが自転車をフラつかせてしまう。しかし、事無きを得た。
「わっ! 大丈夫?」
「ああ大丈夫。それよりも謀ったな? ぴよ……」
「待って! 私気になってただ訊いただけ! 今の完全にあるちゃんの自爆だよ、大爆発だよ!」
「うっさい!」
あるてが自転車を高速で走らせ、
「あっ! 待ってよあるちゃーん!」
置いてかれた灯夜はあるてを追おうとするも、壊滅的な運動神経故にすぐに諦めてしまう。
「はあ……はぁ……。もー、わっかりやすいなあ……あるちゃんは」
何処か嬉しそうに灯夜は言い、自分のペースで一人、自転車を走らせた。
(……悪いことしちゃったかな)
灯夜を置き去りにしてしまったあるての興奮は既に冷めて、平常心と共に申し訳無さも感じ始めていた。
「ま、ぴよなら許してくれるでしょ。後で謝ろ」
しかしその申し訳無さは、その信頼からすぐに払拭された。
(しかし明後日どうしよう。一度帰って着替えた方がいいかな? 制服でならそのまま行けるけど、特定されちゃうかなあ……)
そして頭を切り替えて、明後日のことをあれこれ考え始める。
(そう、明後日はマフラーを返すだけ。返すだけ――)
「っと」
赤信号に捕まり、自転車を停める。ここの赤信号は長めなことを知っているあるては今のうちにとスマートフォンを取り出した。
あるて
さっきはごめん、感情的になって置いてっちゃって。
こう灯夜に送り、スマートフォンをしまうとそのまま信号が青になるのを待った。
連絡ありがとう。いつ会いましょうか?
こちらは直近ですと明後日と明々後日なら空いています
美術室を後にした後、あるては灯夜から離れて道瑠とやり取りがしたかったため、一人トイレの個室へと入っていた。
あるて
では明後日どうですか?
私も放課後時間があるので時間は合わせます。
こうあるてが返――既読が付いた。
(はっや)
思わず心の中でツッコむあるて。
(……でもそろそろ出ないとな)
しかし長いこと灯夜を待たせることも出来ず、タイムリミットだと感じたあるては返信を気にしつつもトイレを後にした。
「お待たせ。帰ろっか」
あるてと灯夜は自転車を漕いで帰路を辿る。
「ねえねえ、あれから返事って返ってきたの?」
道中、灯夜があるてに尋ねる。短いがやり取りをしていたため、あるては一瞬ドキッとする。
「あれからスマホ見る余裕なかったからなあ。最後に見た時はまだだったし、絵に集中してたし」
それに対しあるては、正直に答えるのも恥ずかしく思いはぐらかす。
「てかそれぴよが気にすること?」
「そりゃ、私も一応年頃の女子高生ですからぁ。友達の色恋沙汰が気にならないワケないよ」
「色恋沙汰……ねえ。有り得んよ、そんなの。第一借りパクは絶対にしたくないし、マフラー返すためにもう1回は会わないといけないんだ。住所教えてもらって送っても良いけど、向こうの家族に気付かれたくないかもだし」
と、言ったと同時に、
(ああ、そうか……もう1回は会わないといけないのか。しっかしぴよが絡んで面倒なことになったな……)
あるては心の中でこう思った。
(ま、話した私の自業自得なんだけど)
そして本当に話して良かったのかどうか。あるては少し後悔した。
「ねえあるちゃん。そのマフラーって洗って返すんだよね?」
「ん、まあ当然ね」
「マフラーって家で洗うの難しいから、クリーニングに出さないといけないねぇ」
「大丈夫、昨日あの後その足で出したから。明後日には引き取れるみたいだから、その後だね」
あるての言葉に迷いは無い。
「…………あるちゃん」
「ん?」
「会うんだね? 明後日」
「? 何を言って――」
ふと、先程の自分の発言を思い返すあるて。そして――
「ぁあッ!?」
事態に気付くと、あるてが自転車をフラつかせてしまう。しかし、事無きを得た。
「わっ! 大丈夫?」
「ああ大丈夫。それよりも謀ったな? ぴよ……」
「待って! 私気になってただ訊いただけ! 今の完全にあるちゃんの自爆だよ、大爆発だよ!」
「うっさい!」
あるてが自転車を高速で走らせ、
「あっ! 待ってよあるちゃーん!」
置いてかれた灯夜はあるてを追おうとするも、壊滅的な運動神経故にすぐに諦めてしまう。
「はあ……はぁ……。もー、わっかりやすいなあ……あるちゃんは」
何処か嬉しそうに灯夜は言い、自分のペースで一人、自転車を走らせた。
(……悪いことしちゃったかな)
灯夜を置き去りにしてしまったあるての興奮は既に冷めて、平常心と共に申し訳無さも感じ始めていた。
「ま、ぴよなら許してくれるでしょ。後で謝ろ」
しかしその申し訳無さは、その信頼からすぐに払拭された。
(しかし明後日どうしよう。一度帰って着替えた方がいいかな? 制服でならそのまま行けるけど、特定されちゃうかなあ……)
そして頭を切り替えて、明後日のことをあれこれ考え始める。
(そう、明後日はマフラーを返すだけ。返すだけ――)
「っと」
赤信号に捕まり、自転車を停める。ここの赤信号は長めなことを知っているあるては今のうちにとスマートフォンを取り出した。
あるて
さっきはごめん、感情的になって置いてっちゃって。
こう灯夜に送り、スマートフォンをしまうとそのまま信号が青になるのを待った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる