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プロローグ
プロローグ 02
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「2名様ご案内でーす」
あるてはチャラ男に誘われるがまま近くにあった喫茶店に入り、席を案内される。
「ご注文が決まりましたらボタンで読んでください」
「どもー」
向かいに座った男が軽いノリで店員に礼を言うと、店員は去って行った。
「…………さて」
一体どんな話をするのか。あるては警戒したが、
「ちょっくらトイレ行ってくらーね。何か頼むなら先にいいから」
その分心の中であるてはコケた。何気に気になっていた大きなバッグを抱え、男はトイレへと向かった。
(……逃げ出すチャンスかな?)
あるては思った。しかし、まるで身体《からだ》が――心がそれを拒否しているかのように感じ、立ち上がろうとはしなかった。
(えっ、何で……?)
それが何故か、あるて自身もわからない。諦め切ったわけではないが取り敢えずメニューを開いた。
「こうなったら奢ってもらうか。助けてもらってってのはあるけど、ここに付き合ったってことでおあいこにして」
(――遅い。男性のトイレにしてはと言うより女性でも遅い)
男がトイレに行ってからおよそ10分が経過するが、まだ戻って来ない。
(これ本当に逃げ出せたんじゃ……? まあいいや、先に頼んじゃお)
先に頼んでていいと言われたが待っていたあるては痺れを切らし、ベルボタンを押した。注文を受けに来たのは席を案内した店員とは別の店員だった。
「はい。ご注文をどうぞ」
「この蜂蜜キャラメルモカマキアートを1つ」
「蜂蜜キャラメルモカマキアートをお1つですね。ご注文は以上で?」
「はい」
「かしこまりました。お待ちください」
店員が去ったのを確認すると、
「………………はぁ」
あるては大きく溜息をつく。店の奥にあるトイレの方から男性が一人出て来るが、あの目立つ縮れ麺のような髪ではなかった。
「……ん?」
しかしその彼が持っているのはあの男と同じ、大きなバッグだった。
(最近の男性の流行りなの?)
「や、お待たせ」
中性的な顔にやや長めの髪をハーフアップにした、あるてと歳が近いと思われる少年はあるてと向かいの椅子に座った。その声は高くも低くもない、優しさと落ち着きを感じるような声色をしていて、喋り方も含め全くの別人のようだった。
「誰!?」
理解が追い付かないあるては咄嗟にこう反応する。
「まあ……そうなるよね。驚かせてごめん。これ見てわからないかな?」
そう言うと少年は、バッグの中からあの縮れ麺のようなウィッグを取り出した。
「……コスプレ?」
「コスプレって言うのかな。それよりも訓練と言うか。取り敢えず説明すると――」
「お待たせしました。蜂蜜キャラメルモカマキアートです」
「はい、有難うございます」
少年の話はあるての注文を持って来た店員に遮られた。
「あ、すいません。僕も注文良いですか?」
「少々お待ちください。……はい、どうぞ」
少年はついでにホットのカフェラテを注文し、その後、あるてに説明を始めた。
あるてはチャラ男に誘われるがまま近くにあった喫茶店に入り、席を案内される。
「ご注文が決まりましたらボタンで読んでください」
「どもー」
向かいに座った男が軽いノリで店員に礼を言うと、店員は去って行った。
「…………さて」
一体どんな話をするのか。あるては警戒したが、
「ちょっくらトイレ行ってくらーね。何か頼むなら先にいいから」
その分心の中であるてはコケた。何気に気になっていた大きなバッグを抱え、男はトイレへと向かった。
(……逃げ出すチャンスかな?)
あるては思った。しかし、まるで身体《からだ》が――心がそれを拒否しているかのように感じ、立ち上がろうとはしなかった。
(えっ、何で……?)
それが何故か、あるて自身もわからない。諦め切ったわけではないが取り敢えずメニューを開いた。
「こうなったら奢ってもらうか。助けてもらってってのはあるけど、ここに付き合ったってことでおあいこにして」
(――遅い。男性のトイレにしてはと言うより女性でも遅い)
男がトイレに行ってからおよそ10分が経過するが、まだ戻って来ない。
(これ本当に逃げ出せたんじゃ……? まあいいや、先に頼んじゃお)
先に頼んでていいと言われたが待っていたあるては痺れを切らし、ベルボタンを押した。注文を受けに来たのは席を案内した店員とは別の店員だった。
「はい。ご注文をどうぞ」
「この蜂蜜キャラメルモカマキアートを1つ」
「蜂蜜キャラメルモカマキアートをお1つですね。ご注文は以上で?」
「はい」
「かしこまりました。お待ちください」
店員が去ったのを確認すると、
「………………はぁ」
あるては大きく溜息をつく。店の奥にあるトイレの方から男性が一人出て来るが、あの目立つ縮れ麺のような髪ではなかった。
「……ん?」
しかしその彼が持っているのはあの男と同じ、大きなバッグだった。
(最近の男性の流行りなの?)
「や、お待たせ」
中性的な顔にやや長めの髪をハーフアップにした、あるてと歳が近いと思われる少年はあるてと向かいの椅子に座った。その声は高くも低くもない、優しさと落ち着きを感じるような声色をしていて、喋り方も含め全くの別人のようだった。
「誰!?」
理解が追い付かないあるては咄嗟にこう反応する。
「まあ……そうなるよね。驚かせてごめん。これ見てわからないかな?」
そう言うと少年は、バッグの中からあの縮れ麺のようなウィッグを取り出した。
「……コスプレ?」
「コスプレって言うのかな。それよりも訓練と言うか。取り敢えず説明すると――」
「お待たせしました。蜂蜜キャラメルモカマキアートです」
「はい、有難うございます」
少年の話はあるての注文を持って来た店員に遮られた。
「あ、すいません。僕も注文良いですか?」
「少々お待ちください。……はい、どうぞ」
少年はついでにホットのカフェラテを注文し、その後、あるてに説明を始めた。
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