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第21話「魔神メイドとプリースト(神官)」
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ここはイグニス神殿。
ある王都にある巨大な神殿で、戦と救済の神であるイグニスを信仰している。
今日は魔術師ギルドからの依頼で、あるマジックアイテムを引き取りにきたのだが・・・
「魔神が神聖な神殿に入るなど許しません!」
赤髪でロングヘアーの少女神官が入り口で通せんぼして入れてくれないのだ。
こんな出会い方じゃなければ一杯誘いたい位だが、そうもいかない。
彼女は俺に気付くとキッとした眼差しを送って来た。
「あなたは・・・魔神の使い魔か眷属ですね!」
違う違う、逆だって―の。
俺は魔術師ギルドの紹介状を見せると渋々だが俺だけ通して貰った。
「なるべく早く戻ってくるからな。変な事するなよ」
俺は指輪をかざして命令する。
「この小娘の相手でもして時間を潰すか・・・」
エデンはにやりと笑うと少女の方を見る。
「な、何ですか!それで脅しのつもりですか!」
「別に・・・」
怒り心頭の少女は新米プリースト(神官)のジェナ。
正義燃える熱血少女で超が付く程真面目で信仰心が強い。
彼女を新人と甘く見た者は、巨大なメイスを扱うその筋力とお説教の餌食になるだろう。
しかし今回は魔神相手で相手の方が数段格上である。
さすがのジェナも今回は見張る事しかできなかった。
一方でエデンはそんなジェナをにやにやと見つめたり、髪をかきあげたりと何気ない仕草で反応を楽しんでいた。
「その辺にしとけよ、エデン」
「もう戻ったのか。つまらん」
さて後はこの品を魔術師ギルドに持ち帰るだけだ。
意外に簡単な依頼だなぁと思いつつ、俺とエデンは神殿を後にした。
「・・・・・・(絶対悪事の証拠を見つけてやるんだから!)」
ジェナはまだエデンを信用しておらず、何かやらかすと踏んで尾行を開始した。
―
「ふう、ようやく依頼完了だな」
「つまらん依頼だ」
俺とエデンはマジックアイテムをギルドに届けると、
久々の王都に観光にでかけた。
「(依頼は終わったって言うのにまだ何かやる気なの?)」
ジェナの尾行は続く。
―
「たく、少しは遠慮しろよ・・・こんなに買い込んで」
「魔神である前に姫だからな。ドレスもアクセサリーも必需品だ」
俺はエデンの買い物に付き合っていた。
やれドレスだのやれ指輪だの靴だの俺は召使いじゃないっつーの。
まあ金はこれまでの依頼ので余裕はあるからいいんだけども、
こういう荷物持ちってメイドの仕事じゃないのか?
よし指輪で命じようと思ったが時既に遅し、指輪をはめた指は荷物で塞がっていた。
仕方ない諦めよう、としみじみ思いつつ荷物持ちをしている俺であった。
「(あんなに買い込んで・・・まさか邪悪な魔法装置の材料!?)」
ジェナの尾行はまだ続く。
―
「ふぃー、疲れたー」
ようやく馬車までたどり着いた俺。
そして俺が荷物を置こうとしたその時である。
「よう、姉ちゃん達!金目の物全部置いてきな!」
野盗の集団が現れた。
野盗のリーダーらしき人間がナイフを俺に向けて来る。
「エ、エデン、助けてくれ!」
「指輪の命令も無しに貴様の言う事等聞く物か」
愉悦の表情で俺の方を見つめるエデン。
しょうがない、また第三の願いをちらつかせて・・・
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!」
野盗のリーダーが俺に猿ぐつわを噛ませる。
これでは何も喋る事はできない!
万事休すか・・・と思ったその時である。
「そこまでよ!」
その声の主はイグニス教の神官ジェナであった。
ジェナは巨大なメイスを振り回すと次々と野盗共を蹴散らしていく。
そして突然の出来事に狼狽する野盗のリーダーの隙を付き俺はタックルした。
当然荷物などおかまいなしである。
俺ははめられた猿ぐつわを外すと指輪をかざし命じた。
「エデンよ、殺さない程度にあいつ等を痛めつけろ!」
「くくく、いいだろう」
ダークブラスト!
闇の魔力のつぶてが野盗達に襲い掛かる。
「きゃっ!?」
突然の魔法攻撃に身をかがめるジェナ。
つぶてはジェナを避け、野盗達だけに命中した。
「ど、どうして助けてくれたの?」
「“あいつ等”にお前は含まれてないと思ってな」
この後俺はジェナに事情を説明して、今のエデンに害は無い事を理解して貰った。
ジェナはメイスを収めると神殿の方へ向けて帰っていった。
そして途中で振り返って一言。
「べ、別にあんた達の事、完全に信用したわけじゃないんだからね!」
敵意ある台詞とは裏腹に、ジェナの顔はにこりと笑っていた。
ある王都にある巨大な神殿で、戦と救済の神であるイグニスを信仰している。
今日は魔術師ギルドからの依頼で、あるマジックアイテムを引き取りにきたのだが・・・
「魔神が神聖な神殿に入るなど許しません!」
赤髪でロングヘアーの少女神官が入り口で通せんぼして入れてくれないのだ。
こんな出会い方じゃなければ一杯誘いたい位だが、そうもいかない。
彼女は俺に気付くとキッとした眼差しを送って来た。
「あなたは・・・魔神の使い魔か眷属ですね!」
違う違う、逆だって―の。
俺は魔術師ギルドの紹介状を見せると渋々だが俺だけ通して貰った。
「なるべく早く戻ってくるからな。変な事するなよ」
俺は指輪をかざして命令する。
「この小娘の相手でもして時間を潰すか・・・」
エデンはにやりと笑うと少女の方を見る。
「な、何ですか!それで脅しのつもりですか!」
「別に・・・」
怒り心頭の少女は新米プリースト(神官)のジェナ。
正義燃える熱血少女で超が付く程真面目で信仰心が強い。
彼女を新人と甘く見た者は、巨大なメイスを扱うその筋力とお説教の餌食になるだろう。
しかし今回は魔神相手で相手の方が数段格上である。
さすがのジェナも今回は見張る事しかできなかった。
一方でエデンはそんなジェナをにやにやと見つめたり、髪をかきあげたりと何気ない仕草で反応を楽しんでいた。
「その辺にしとけよ、エデン」
「もう戻ったのか。つまらん」
さて後はこの品を魔術師ギルドに持ち帰るだけだ。
意外に簡単な依頼だなぁと思いつつ、俺とエデンは神殿を後にした。
「・・・・・・(絶対悪事の証拠を見つけてやるんだから!)」
ジェナはまだエデンを信用しておらず、何かやらかすと踏んで尾行を開始した。
―
「ふう、ようやく依頼完了だな」
「つまらん依頼だ」
俺とエデンはマジックアイテムをギルドに届けると、
久々の王都に観光にでかけた。
「(依頼は終わったって言うのにまだ何かやる気なの?)」
ジェナの尾行は続く。
―
「たく、少しは遠慮しろよ・・・こんなに買い込んで」
「魔神である前に姫だからな。ドレスもアクセサリーも必需品だ」
俺はエデンの買い物に付き合っていた。
やれドレスだのやれ指輪だの靴だの俺は召使いじゃないっつーの。
まあ金はこれまでの依頼ので余裕はあるからいいんだけども、
こういう荷物持ちってメイドの仕事じゃないのか?
よし指輪で命じようと思ったが時既に遅し、指輪をはめた指は荷物で塞がっていた。
仕方ない諦めよう、としみじみ思いつつ荷物持ちをしている俺であった。
「(あんなに買い込んで・・・まさか邪悪な魔法装置の材料!?)」
ジェナの尾行はまだ続く。
―
「ふぃー、疲れたー」
ようやく馬車までたどり着いた俺。
そして俺が荷物を置こうとしたその時である。
「よう、姉ちゃん達!金目の物全部置いてきな!」
野盗の集団が現れた。
野盗のリーダーらしき人間がナイフを俺に向けて来る。
「エ、エデン、助けてくれ!」
「指輪の命令も無しに貴様の言う事等聞く物か」
愉悦の表情で俺の方を見つめるエデン。
しょうがない、また第三の願いをちらつかせて・・・
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!」
野盗のリーダーが俺に猿ぐつわを噛ませる。
これでは何も喋る事はできない!
万事休すか・・・と思ったその時である。
「そこまでよ!」
その声の主はイグニス教の神官ジェナであった。
ジェナは巨大なメイスを振り回すと次々と野盗共を蹴散らしていく。
そして突然の出来事に狼狽する野盗のリーダーの隙を付き俺はタックルした。
当然荷物などおかまいなしである。
俺ははめられた猿ぐつわを外すと指輪をかざし命じた。
「エデンよ、殺さない程度にあいつ等を痛めつけろ!」
「くくく、いいだろう」
ダークブラスト!
闇の魔力のつぶてが野盗達に襲い掛かる。
「きゃっ!?」
突然の魔法攻撃に身をかがめるジェナ。
つぶてはジェナを避け、野盗達だけに命中した。
「ど、どうして助けてくれたの?」
「“あいつ等”にお前は含まれてないと思ってな」
この後俺はジェナに事情を説明して、今のエデンに害は無い事を理解して貰った。
ジェナはメイスを収めると神殿の方へ向けて帰っていった。
そして途中で振り返って一言。
「べ、別にあんた達の事、完全に信用したわけじゃないんだからね!」
敵意ある台詞とは裏腹に、ジェナの顔はにこりと笑っていた。
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