10 / 14
第九話「初詣だよ、全員集合!(メメント襲来!)」
しおりを挟む
「あーねんまつ。何か面白い事ないかしら」
「さやかちゃん、こたつでだらだらしてるからそう感じるんだよ。私は楽しみだな。日本のオショーガツ!」
さやかとリリィは演劇部の部室で年末を過ごしていた。
普通の学生なら自宅や外出先でのんびりといった所だが、いつアンドロメダの襲来があるか分からないこのご時世、プレリュード隊には学校での待機が命じられたのだ。
当然泊りがけである。
「あーあ、やんになっちゃう。唯一の楽しみは豪勢なおせちくらいね」
「わぁお!ジャパニーズオセチ!楽しみ~」
派手な反応をするリリィ。
正月年末と言えば和のイベント盛りだくさんなのだ。
外国人であるリリィが浮かれるのも無理はない。
「エデン女学院の演劇部のは毎年特別豪勢なのよね~」
「あまり浮ついて貰っても困るわよ?」
「「きょ、京子部長!?」」
こたつに入っていた二人の後ろには演劇部長の京子が立っている。
驚く二人を尻目に京子もこたつに入った。
「今日は冷えるわね~」
「「(京子部長がこたつでまったりするなんて…意外!)」」
「あらあら、もう先に入ってますのね」
椿がこたつを見回して言う。
京子が入ってなかったらはしたないとか言うんだろうなぁ…と思ったリリィであった。
「あーずっるーい、芽衣も入る!」
「ふふふ、慌てなくてもこたつは逃げないわよ」
芽衣と由香子がこたつに入り込んでくる。
残りのメンバーが入る余裕はもうない…のだがこたつは二つあったのだ。
なんとういう用意周到!
「アメリカじゃこたつはなかったからね、懐かしい」
「年末は紅白逃したか~アニソン枠減らされたからなぁ…まあこたつでまったりもいいか」
続けてやって来たのは咲夜と明日香。
既に椿の入っている二つ目のこたつに入って来る。
その横にはアニメショップの福袋が二袋握られていた。
どうやら明日香には秘密を打ち明けたらしい。
他の部員もあれは明日香の物だと思っているだろう。
「じゃあ今年の最後とアンドロメダ殲滅を祈って、乾杯!」
「かんぱーい」
京子の合図で皆がグラスをかかげる。
とは言っても未成年なので中身はジュースなのだが…
しかしなにより今日は他の部員も最低限しかいないし部活もお休みだ。
こんなチャンス滅多にないとはりきったリリィは皆に提案した。
「みんなで行きませんか?初詣!」
「初詣?」
きょとんとする他の部員であった。
そして除夜の鐘が鳴り年が明ける…
―年明け
「あけましておめでとうございます!」
「はりきってるわね、リリィ…。でも芽衣が寝そうだから静かにね」
「あっはい…」
小さい子はもう寝る時間だ…そう思ったリリィは声を抑えた。
「夜更かしはお肌に悪いから私ももう寝ますわ」
仮眠室に向かう椿。
それに釣られて我よ我よと芽衣も明日香も咲夜も由香子も京子までもが仮眠室へ眠そうに向かった。
「じゃあこれから勇気爆裂バーン・ガーディアン!のDVD全話鑑賞会をはじめまーす」
「ええ~見たい特番があるんだけど…」
いきようようとDVDBOXを取り出すリリィに対しぶーたれるさやか。
それでも付き合ってくれる辺り友達思いなのだろう。
勇気爆裂バーン・ガーディアン!とは昔流行った日本のロボアニメである。
母に幼少期に見せられてからというもの、この作品の大ファンになったリリィは戦闘中の歌にもこのアニメの主題歌を使用している。
これは一種のイメージトレーニングでもあるのだ…多分、恐らく。
「くらえ必殺、バーンフィニッシュ!」
テレビから必殺技の音声が流れて来る。
人型ロボットが巨大な剣を持って突撃していった。
眠気に負けたさやかはそのまま眠ってしまったが、リリィはその雄姿を目に焼き付けていた。
母の様に一流のRS操者に、そして大女優になるにはこのロボットの様に挫けぬ心と熱い勇気が必要なのだ。
「勇気…爆裂…むにゃ」
リリィは番組のキャッチコピーを口にしながらそのまま眠ってしまった。
そして朝8時になった頃…
「いい加減起きなさい、二人とも!」
「「ひゃい!?」」
京子の一声で目を覚ますリリィとさやかの二人。
周囲を見渡すと皆眠そうにしながら眠気眼をこすっている。
「初詣に行くんでしょ?じゃあ早くおせちを食べましょう?」
由香子が食堂を指さす。
そして食堂に向かうとそこには幾人かの部員が既に集まっていた。
彼女達はリリィ達に駆け寄ると、あけましておめでとうございます、と挨拶してきた。
同じくあけましておめでとうございます、と返すリリィ。
ジッサイアイサツは大事なのだ、忘れてはいけない。
「ほらほらリリィちゃん見てよ~伊勢海老丸々だよ~あ、あっちのステーキもお寿司もおいしそう!」
「慌てなくてもおせちは逃げないよ、さやかちゃん」
しかし一般家庭のおせちに比べれば確かに豪華である。
お嬢様校であり名門演劇部のおせちとなればこれだけ豪華になるのも当然と言える。
椿だけがこんなものかと言った感じで見ていた。
まあ財閥のご令嬢なのだ、当然だろう。
「でも私は普通の奴も食べたかったな。ジャパニーズニモノとか」
「そう思って作って来たわよ」
由香子は手持ちの風呂敷を広げると3段くらいのお重が出て来た。
豆腐にごぼうに蓮根に数の子、栗きんとん…どれも一般家庭のおせちの定番である。
「学校の奴と比べたら月並みだけど、どうかしら?」
「おいしいです!おふくろの味って奴です!」
はりきって食べるリリィは一人で完食する勢いだった。
「まあ、庶民の味も悪くはありませんわね」
椿の中での最大限の褒め言葉で称賛する。
あの人をめったに人を褒めない椿が褒めたのだ、余程おいしいのだろう。
他のプレリュード隊の面々もこぞって由香子のおせちを堪能する。
さやかだけが豪勢な演劇部のおせちに夢中になっていた。
そして気付いた時には時既にお寿司…いや遅し。
由香子のおせちは完食されていた。
「がーん、さやか一生の不覚!」
「ふふふ、また作ってきてあげるわよ」
「本当ですか!?」
優しく微笑む由香子の手を握り、目をキラキラとさせるさやか。
まああのおせちはおいしかったし気持ちは分からんでもないリリィであった。
そして初詣の準備を始めるプレリュード隊の面々。
リリィには母のお古の晴れ着があった。
綺麗に保管されていたのかシミ一つ無い。
しかしリリィはそれの着方が分からなかった。
どうしようと困っていた矢先である。
既に雅な晴れ着に着替えた椿が近付いてきた。
「しょうがありませんわね、着付けて差し上げてもよくってよ?」
「椿さん…ありがとうございます!」
本当は優しい人なんだよなぁ…日本で言うツンデレって奴かもしれない。
そう思ったリリィであった。
―都内某神社
ぱんぱん
紐を持って鈴を鳴らすと雅な晴れ着姿のリリィ達は手を合わす。
願い事はただ一つ、アンドロメダが世界からいなくなりますように…ではなく演技力の上達だったり家族円満だったり健康だったり色々だ。
「さあ、そろそろ帰るわよ」
京子が皆を先導して鳥居をくぐろうとしたその時である。
アンドロメダの巨体が上空に突如現れた。
いつもの円盤型のアンドロメダとは違い人型である。
六体のアンドロメダはリリィ達の方を向き内一人が声を発した。
「君達があの美しいシンフォニーを奏でていたのか、実に興味深い」
「お前たちは何者なの?」
京子は人型のアンドロメダに尋ねる。
「ただの観客だよ。メメントと呼んでくれたまえ」
「ただの観客が何故人を襲う!」
「人の悲鳴や死に際は実に美しいじゃないか。しかし私達はもっと美しい物を見つけた…歌と踊りだ」
別のメメントがずいっと出てきて話を続ける。
「しかしただ聞くだけはつまらない。死に際の歌や踊りこそ最も美しいと思わないかい?」
更に別のメメントが話を続ける。
「それがもし自分の死に際だったら…もっと甘美な物になると思わない?」
「死にたいなら勝手に死んでればよろしいのですわ!傍迷惑な…!」
要するにこっちを死ぬ寸前まで追い詰めて、必死に抵抗されて派手に死にたいらしい。
身勝手なメメント達の願望に憤慨する椿。
どうやら狂った死にたがりの様だ…しかも周囲を巻き込む凄く迷惑な奴。
「君達の美しい歌や踊りで倒される事に意味があるのだよ。ではまた会おう」
「あっ、待ちなさい!」
リリィが追いかけようとするがメメント達は空高く飛翔するとあっという間に姿を消してしまった。
「厄介な奴等が現れたわね…気を引き締めていくわよ!」
お正月気分で浮かれない様に、新たな敵に油断しない様に京子が喝をいれる。
「了解!」
今後のメメント達との激しい戦いを予想し新年心機一転、気合を入れるプレリュード隊であった。
「さやかちゃん、こたつでだらだらしてるからそう感じるんだよ。私は楽しみだな。日本のオショーガツ!」
さやかとリリィは演劇部の部室で年末を過ごしていた。
普通の学生なら自宅や外出先でのんびりといった所だが、いつアンドロメダの襲来があるか分からないこのご時世、プレリュード隊には学校での待機が命じられたのだ。
当然泊りがけである。
「あーあ、やんになっちゃう。唯一の楽しみは豪勢なおせちくらいね」
「わぁお!ジャパニーズオセチ!楽しみ~」
派手な反応をするリリィ。
正月年末と言えば和のイベント盛りだくさんなのだ。
外国人であるリリィが浮かれるのも無理はない。
「エデン女学院の演劇部のは毎年特別豪勢なのよね~」
「あまり浮ついて貰っても困るわよ?」
「「きょ、京子部長!?」」
こたつに入っていた二人の後ろには演劇部長の京子が立っている。
驚く二人を尻目に京子もこたつに入った。
「今日は冷えるわね~」
「「(京子部長がこたつでまったりするなんて…意外!)」」
「あらあら、もう先に入ってますのね」
椿がこたつを見回して言う。
京子が入ってなかったらはしたないとか言うんだろうなぁ…と思ったリリィであった。
「あーずっるーい、芽衣も入る!」
「ふふふ、慌てなくてもこたつは逃げないわよ」
芽衣と由香子がこたつに入り込んでくる。
残りのメンバーが入る余裕はもうない…のだがこたつは二つあったのだ。
なんとういう用意周到!
「アメリカじゃこたつはなかったからね、懐かしい」
「年末は紅白逃したか~アニソン枠減らされたからなぁ…まあこたつでまったりもいいか」
続けてやって来たのは咲夜と明日香。
既に椿の入っている二つ目のこたつに入って来る。
その横にはアニメショップの福袋が二袋握られていた。
どうやら明日香には秘密を打ち明けたらしい。
他の部員もあれは明日香の物だと思っているだろう。
「じゃあ今年の最後とアンドロメダ殲滅を祈って、乾杯!」
「かんぱーい」
京子の合図で皆がグラスをかかげる。
とは言っても未成年なので中身はジュースなのだが…
しかしなにより今日は他の部員も最低限しかいないし部活もお休みだ。
こんなチャンス滅多にないとはりきったリリィは皆に提案した。
「みんなで行きませんか?初詣!」
「初詣?」
きょとんとする他の部員であった。
そして除夜の鐘が鳴り年が明ける…
―年明け
「あけましておめでとうございます!」
「はりきってるわね、リリィ…。でも芽衣が寝そうだから静かにね」
「あっはい…」
小さい子はもう寝る時間だ…そう思ったリリィは声を抑えた。
「夜更かしはお肌に悪いから私ももう寝ますわ」
仮眠室に向かう椿。
それに釣られて我よ我よと芽衣も明日香も咲夜も由香子も京子までもが仮眠室へ眠そうに向かった。
「じゃあこれから勇気爆裂バーン・ガーディアン!のDVD全話鑑賞会をはじめまーす」
「ええ~見たい特番があるんだけど…」
いきようようとDVDBOXを取り出すリリィに対しぶーたれるさやか。
それでも付き合ってくれる辺り友達思いなのだろう。
勇気爆裂バーン・ガーディアン!とは昔流行った日本のロボアニメである。
母に幼少期に見せられてからというもの、この作品の大ファンになったリリィは戦闘中の歌にもこのアニメの主題歌を使用している。
これは一種のイメージトレーニングでもあるのだ…多分、恐らく。
「くらえ必殺、バーンフィニッシュ!」
テレビから必殺技の音声が流れて来る。
人型ロボットが巨大な剣を持って突撃していった。
眠気に負けたさやかはそのまま眠ってしまったが、リリィはその雄姿を目に焼き付けていた。
母の様に一流のRS操者に、そして大女優になるにはこのロボットの様に挫けぬ心と熱い勇気が必要なのだ。
「勇気…爆裂…むにゃ」
リリィは番組のキャッチコピーを口にしながらそのまま眠ってしまった。
そして朝8時になった頃…
「いい加減起きなさい、二人とも!」
「「ひゃい!?」」
京子の一声で目を覚ますリリィとさやかの二人。
周囲を見渡すと皆眠そうにしながら眠気眼をこすっている。
「初詣に行くんでしょ?じゃあ早くおせちを食べましょう?」
由香子が食堂を指さす。
そして食堂に向かうとそこには幾人かの部員が既に集まっていた。
彼女達はリリィ達に駆け寄ると、あけましておめでとうございます、と挨拶してきた。
同じくあけましておめでとうございます、と返すリリィ。
ジッサイアイサツは大事なのだ、忘れてはいけない。
「ほらほらリリィちゃん見てよ~伊勢海老丸々だよ~あ、あっちのステーキもお寿司もおいしそう!」
「慌てなくてもおせちは逃げないよ、さやかちゃん」
しかし一般家庭のおせちに比べれば確かに豪華である。
お嬢様校であり名門演劇部のおせちとなればこれだけ豪華になるのも当然と言える。
椿だけがこんなものかと言った感じで見ていた。
まあ財閥のご令嬢なのだ、当然だろう。
「でも私は普通の奴も食べたかったな。ジャパニーズニモノとか」
「そう思って作って来たわよ」
由香子は手持ちの風呂敷を広げると3段くらいのお重が出て来た。
豆腐にごぼうに蓮根に数の子、栗きんとん…どれも一般家庭のおせちの定番である。
「学校の奴と比べたら月並みだけど、どうかしら?」
「おいしいです!おふくろの味って奴です!」
はりきって食べるリリィは一人で完食する勢いだった。
「まあ、庶民の味も悪くはありませんわね」
椿の中での最大限の褒め言葉で称賛する。
あの人をめったに人を褒めない椿が褒めたのだ、余程おいしいのだろう。
他のプレリュード隊の面々もこぞって由香子のおせちを堪能する。
さやかだけが豪勢な演劇部のおせちに夢中になっていた。
そして気付いた時には時既にお寿司…いや遅し。
由香子のおせちは完食されていた。
「がーん、さやか一生の不覚!」
「ふふふ、また作ってきてあげるわよ」
「本当ですか!?」
優しく微笑む由香子の手を握り、目をキラキラとさせるさやか。
まああのおせちはおいしかったし気持ちは分からんでもないリリィであった。
そして初詣の準備を始めるプレリュード隊の面々。
リリィには母のお古の晴れ着があった。
綺麗に保管されていたのかシミ一つ無い。
しかしリリィはそれの着方が分からなかった。
どうしようと困っていた矢先である。
既に雅な晴れ着に着替えた椿が近付いてきた。
「しょうがありませんわね、着付けて差し上げてもよくってよ?」
「椿さん…ありがとうございます!」
本当は優しい人なんだよなぁ…日本で言うツンデレって奴かもしれない。
そう思ったリリィであった。
―都内某神社
ぱんぱん
紐を持って鈴を鳴らすと雅な晴れ着姿のリリィ達は手を合わす。
願い事はただ一つ、アンドロメダが世界からいなくなりますように…ではなく演技力の上達だったり家族円満だったり健康だったり色々だ。
「さあ、そろそろ帰るわよ」
京子が皆を先導して鳥居をくぐろうとしたその時である。
アンドロメダの巨体が上空に突如現れた。
いつもの円盤型のアンドロメダとは違い人型である。
六体のアンドロメダはリリィ達の方を向き内一人が声を発した。
「君達があの美しいシンフォニーを奏でていたのか、実に興味深い」
「お前たちは何者なの?」
京子は人型のアンドロメダに尋ねる。
「ただの観客だよ。メメントと呼んでくれたまえ」
「ただの観客が何故人を襲う!」
「人の悲鳴や死に際は実に美しいじゃないか。しかし私達はもっと美しい物を見つけた…歌と踊りだ」
別のメメントがずいっと出てきて話を続ける。
「しかしただ聞くだけはつまらない。死に際の歌や踊りこそ最も美しいと思わないかい?」
更に別のメメントが話を続ける。
「それがもし自分の死に際だったら…もっと甘美な物になると思わない?」
「死にたいなら勝手に死んでればよろしいのですわ!傍迷惑な…!」
要するにこっちを死ぬ寸前まで追い詰めて、必死に抵抗されて派手に死にたいらしい。
身勝手なメメント達の願望に憤慨する椿。
どうやら狂った死にたがりの様だ…しかも周囲を巻き込む凄く迷惑な奴。
「君達の美しい歌や踊りで倒される事に意味があるのだよ。ではまた会おう」
「あっ、待ちなさい!」
リリィが追いかけようとするがメメント達は空高く飛翔するとあっという間に姿を消してしまった。
「厄介な奴等が現れたわね…気を引き締めていくわよ!」
お正月気分で浮かれない様に、新たな敵に油断しない様に京子が喝をいれる。
「了解!」
今後のメメント達との激しい戦いを予想し新年心機一転、気合を入れるプレリュード隊であった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
亡国の系譜と神の婚約者
仁藤欣太郎
ファンタジー
二十年前に起こった世界戦争の傷跡も癒え、世界はかつてない平和を享受していた。
最果ての島イールに暮らす漁師の息子ジャンは、外の世界への好奇心から幼馴染のニコラ、シェリーを巻き込んで自分探しの旅に出る。
ジャンは旅の中で多くの出会いを経て大人へと成長していく。そして渦巻く陰謀、社会の暗部、知られざる両親の過去……。彼は自らの意思と無関係に大きな運命に巻き込まれていく。
☆本作は小説家になろう、マグネットでも公開しています。
☆挿絵はみずきさん(ツイッター: @Mizuki_hana93)にお願いしています。
☆ノベルアッププラスで最新の改稿版の投稿をはじめました。間違いの修正なども多かったので、気になる方はノベプラ版をご覧ください。こちらもプロの挿絵付き。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
解放
かひけつ
ファンタジー
ある少年は、抗った。
謎の施設。謎の検査。謎の生活。
頭が狂いそうになりながらも施設から出る方法を模索する。
使えるものを活かした反抗計画とその結末は……。
ある科学者は悩んだ。
時折、無力感や後悔の念が身を焦がす。
利口が故に、自己嫌悪に陥ってしまう。
悩みぬいた末に出した結論は……。
ある貴族は覚悟を決めた。
貴ばれる血族であるが故のプライド、
それ相応とは言い難い重しをつけさせられる。
一家を背負い込む覚悟を、世界を調和させることを……。
あるモノは、嘆いた。
自由にはなれない……。
そう思わせる程、管理されてしまった世界。
ここには情すら……ないのかもしれない……。
諦めかけていた、でも、希望が見えた気がした……。
その希望は現状を打開し、解放してくれるのだろうか?
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
JK LOOPER
ネコのうた
ファンタジー
【最初にドーン!】
現代の地球にて、突如、[神のデスゲーム]が執行されてしまいます。
日本の、とある女子高生が、ひょんなことから、タイムループしたり、ジョブチェンジしつつ、終末に挑んでいく事になりました。
世界中を巻き込んでの、異形の者たちや人類との戦いの果てに、彼女らは未来を変えられるのか?!
それとも全滅してしまうのか??
といった、あらすじです。
【続いてバーン!】
本編は、現実世界を舞台にしたファンタジーです。
登場人物と、一部の地域や企業に団体などは、フィクションであり、実在していません。
出来るだけグロい描写を避けていますが、少しはそのような表現があります。
一方で、内容が重くならないように、おふざけを盛り込んだりもしていますが、やや悪ノリになっているのは否めません。
最初の方は、主人公が情緒不安定気味になっておりますが、落ち着いていくので、暖かく見守ってあげてください。
【最後にニャ―ン!】
なにはともあれ、楽しんでいただければ幸いです。
それではこれより、繰り返される時空の旅に、お出かけください。
レインボーアーク
上野佐栁
ファンタジー
主人公の赤月月美は最初は人見知りで、月乃後をいつも追いかける感じだったけど月乃とアイドルの道を見つけて、ライバルや仲間と一緒にスイーツクイーンを目指す話である。
ドラゴネット興隆記
椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。
ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる