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第一章 サイキックディヴァージュ
第五話 ダイイングビジョン
しおりを挟む「出た、一つだけブロック解除に成功したぜ」
どうやら、ダイイングビジョンのようだ。
「な、なんだこれは?」
出てきたイメージビジョンに困惑した面持ちをRYOは見せる。
「カタカナと平仮名かしらこの変な文字? フ? え? 笛? なんのことかしら?」
野志穂警視がRYOの後ろから顔を近づけサイコメトリーコンピューターを覗き込む。つられて、面子が近付いてくる。そのカタカナの文字は辛うじて読める程度だった。
「笛で殺したのかな?」
「カナちゃん、いくらなんでもそれじゃ思いっきり何回も殴打しないといけないじゃない」
若菜が否定するように言う。確かに犯人は笛で殺すのには時間が掛かりそうだ。
「それにこの歪(いびつ)な光の物体なにかしら?」
ダイイングビジョンの映像を隅々まで見ながら野志穂警視は物体の色の歪さに気づく。
「恐らく凶器だ。俺達に被害者の脳から最後のメッセージだ」
RYOが耽々という。重苦しく重厚な声だった。
瞬間的に何やらRYOは解ったのか、ニヤリと不敵な笑みを見せた。
「(あの鈍い凶器の光り具合は恐らく鍍金(めっき)色。ステンレスじゃない)だとしたら……」
RYOはあごに手をつき、青い眼光を照らし瞳の視線を死体に向けた。
「(鍍金(めっき)製の凶器? 変だ、最近の包丁はステンレス製だ)そうか、判ったぞ」
RYOが突拍子もない声を上げた。面子がびっくりして顔を見合わせた。
「ダイイングビジョンのカタカナと平仮名の文字はフ、え、笛じゃなく元素記号だ」
サイコメトリーコンピューターを軽く弄りながら、RYOは顔を後ろに向け、野志穂警視の方を一瞥する。
野志穂警視の顔が綻び謎のキーワードの答えが解りそうな事に嬉しそうな笑みを見せた。
「つまり、Fe、鉄のことだ!」
RYOはあっさりと軽快な明るい声でパッと閃いたようにいう。一同が動揺した。
「なるほどね、鉄製の凶器かしら? 凶器を探して!」
野志穂警視は急いで一緒に引き連れていた下っ端の警官に言った。
警官が動こうとしたその時だった!
「待て、野志穂警視!」
「凶器なんて見付からないぜ」
すんなり憶測に過ぎないが、RYOは予見した面持ちでいう。
「どういうこと?」
野志穂警視の顔に動揺の色が浮かんだ。懸念し訊き返す。警官たちも動きを止めた。
「そんなヘボな事をする犯人じゃないぜ。これは完全犯罪だ」
RYOは言い切った。何か確信があるのだろうか?
RYOは死体の方に、顔を向けて、歩いていく。
「切り口を見てみろ。これは明らかに包丁のような鋭利な刃物だ」
ズサリと大きく切り込まれた切り口を指差し、死体があるその場にRYOはうずくまって野志穂警視の方を覗き込んだ。一同の視線がRYOに集まる。
「今時、鉄製の鍍金(めっき)仕上げの包丁や、ナイフなんて店屋に売っているはずがない。錆びてしまうため、ほとんどがステンレス製だ」
RYOが言うと一同が唖然(あぜん)とし、野志穂警視とのやり取りに息を呑(の)んでいく。
「あらかじめ、ベリアルは自分自身で作っていたのさ! 凶器を完全に消す為にね!」
ギラリと死体を睨み、RYOは蹲っていた状態から、立ち上がり、辺りを見回す。
「凶器を消す?」
「何か、手掛かりがあるはずだ」
数歩あるき、風呂場の洗面台にRYOは近づいていく。
「(ん、水道を止めているのにやけに多く水が出てるな)」
ちょっとした異変にRYOは気付く。確かに洗面台に水が溜まっていた。
「(冷たい?)」
水が溜(た)まっている受けにRYOは人差し指を突っ込んで確認をした。
☆☆
第六話につづく。UP予定。
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