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第二章 鬼ヶ島鬼神面殺人事件
第十九話 ダイイングビジョンの謎
しおりを挟むRYOが捜査をしているところを遠くから遠目でアイドルとマネージャーがずっとみていた。姫君恭子が重い口を開いた。目には涙がたまっていた。
「ねぇ、弐二マネージャ、あの子は何をしてる子なの。警察と一緒に高校生じゃない」
「なにやら、高校生みたいですが、警察の方みたいですよ。警視もいるようですし、信憑性は高いと思われますが」
「な、なつもとせんせい」
姫君恭子は辛いのか、夏元せんせの姿をみるたびに、うつむいて涙を流していた。
マネージャーも下を向いてハンカチで涙をぬぐった。姫君恭子の肩をさすった。
「これは、グループの命運がわかれますね」
「どうして、私のコンサートで死んだり、こなかったら死ななかったのかな」
「つらいのは分かりますが、今は犯人を捕まえることが先決です。夏元せんせのためにも」
そういい、死んだ姿をみるのがつらいのか、へたり込んで、その場を去ろうとした。
しかし、警察がこの場にはいる。そう簡単にはいかなかった。
RYOが姫君恭子の目の前に立ちはだかった。
「ちょっと、待ってくれ、お二人さん。タレントだからって、部屋に帰らすわけにはいかないぜ」
「きみ、何者なの? 高校生でしょ、私と同じ歳くらいの? 警察なんて嘘でしょ」
「・・・俺はれっきとした警察だ。警視庁サイバーアイズの捜査官だ。そこにいる、野志穂警視が俺の上司にあたる」
「よろしくね♡アイドルさん」
野志穂警視が近づいてきて、色っぽい声で大きな胸をぷるんと動かしながらいった。
姫君恭子はRYOのある事に気が付いた。
「きみ、髪の色と、目の色が、青なんて? あなたたち何者なの」
たしかに、日本人ではあり得ない現象だった。
RYOは再び啖呵を切った。
「とにかくだ、今は犯人を捕まえるのが先決だ。あなた達も被疑者にあたる。帰らせないぜ、取り調べが終わるまでは」
そういい、RYOは天井をまた見上げた。
「落ちた位置からすると、吊られていた場所はあそこだな」
「よし」
RYOは急いで動き、ワイヤーが垂れているところの端によじ登っていった。
☆☆
「やはりな、あったぞ、これだ。この装置をダゴンは使ったんだ」
「RYO、何かあったの?」
野志穂警視が唐突にいった。
「ああ、野志穂さん、あったぜ、恐らくプログラムが施された、タイマー式、オートリールだ」
「オートリール?」
カナが首を傾げた。
続いて翔が口を開いた。
「師匠、いや、RYOーさん、一体なんなんスか?」
「インフェルノの犯罪技術で、訓練されたダゴンが、マイコンにプログラムを施し、切れる時間を計算し、タイマーで落ちる瞬間をセッティングしていたのさ」
「なるほどね♡」
野志穂警視があごに手をやり、首を縦に振った。見事だと。
「おそらく、死亡推定時刻は今日より前だ。ホテル入りした時に殺されていたかもしれない」
そういい、RYOは装置を工具を使って外した。
それなりに取れるようにつけられていた。
「オートリールは、こんな風に自動でワイヤーをまくことができる。高さを指定すれば、そこで止めることも可能だ」
オートリールが動き、ワイヤーをするするとまき始めた。
一同が面食らった。
一定の位置でオートリールが止まった。
「ワイヤーの切れ目は計算し、吊るときに事前にいれていたというわけだ」
そういい、軽く手で持っていたオートリールをRYOは地面においた。
「よっと。野志穂さん、サイコメトリーコンピューターで夏元せんせを調べるぜ」
そういい、引っ張り出していたサイコメトリーコンピューターのボタンを押した。
「検死解析!」
LLL
「コンピューターから光が? 嘘でしょ」
その場にいるものが面食らった。姫君恭子は絶句した。開いた口がふさがらない。
光解析だ。
「今をときめく、アイドルさん、驚いているようね。サイバーアイズが開発した、光解析よ」
野志穂警視は自信満々の顔つきで言った。
そのときだった。
「検死データが出たぜ、死亡推定時刻は昨日? いや、違うな、ホテルに到着する前に、もう殺されていたみたいだぜ」
「そんな、まさか」
「夏元せんせい」
マネージャーと姫君恭子は唖然となりぽかんとしていた。
「三日前の午後六時半から午後七時の間と検死結果は出ている」
「三日前?」
その場にいたものが顔を見合わせた。
「ホテルに私たちが到着入りしたのは昨日よ? 確か夏元せんせ、ホテルのロビーで会ったときは普通に生きていて話をした記憶があるわ」
驚きの色を隠せなかった。たしかに生きていたのだ。スタッフの記憶にあるからだ。
RYOはにやりと笑った。
「おそらく、インフェルノの催眠技術、人体融合薬を投与されたんだろうぜ」
「死んだ人を生きた人のように操る技術ね」
野志穂警視は説明するようにすらっと言った。
「じゃぁ、会った時は、私は死んでる人と話をしたってことなの」
「そうだろうぜ」
「そんなのゾンビじゃない」
「アイドルが言う言葉じゃないわよ、姫君恭子さん」
野志穂警視が姫君恭子に向かって、毅然といった。
その間にもRYOは巧みにキーボードを叩いていく
何やら表示された。
「よし、死因データが出た。死因はヒ素だな」
「ヒ素?」
「師匠いや、RYOさんなんすか、それは」
「劇物指定の、いわゆる毒物だ。この数値を見る限りでは、かなりの量をもられてるな」
「そんなのまでわかるの?」
姫君恭子が言ったその時だった。野志穂警視が横やりをいれた。
「RYO、ダイイングビジョンは見える? 何か夏元せんせの記憶がみえれば」
「野志穂さん、今やってるところだ」
「よし、一つだけブロックを解いたぜ」
なにやら不可解な文字やら絵が表示された。
「なんだこれは?」
「その三角で端が丸いのは、多分、ギターのピックじゃない?」
「なるほど、さすが音楽をやってるだけのことはある、発想ね」
「でも、△の線の一部が切れてますよ、これってデルタって記号じゃナイっスか?」
「ちがうわよ、翔君、きっと、楽器に関係あるなら、トライアングルよ」
若菜が翔にちゃちを入れる。野志穂警視と姫君恭子もずっと固唾を飲んで考えていた。
野志穂警視が重い口を開いた。
「もう一つの絵は、どうみてもお酒ね」
「夏元せんせお酒好きだったから」
「いや、ちがうな、ダイイングビジョンだ。好きなものだからと言って出てくることはない。何かに関係してるんだ」
RYOがいった、その瞬間だった。急遽事態が急変した。
「なんだ、いけない、サイコメトリーコンピューターの電波ステルスの壁を突破してきている」
コンピューターの画面に何やら映し出された。
『ぐはは、ベートーヴェンの英雄は死ぬ。死をもって報いよ。このダゴン様に殺されるのだ、失楽園の再会だ』
「ふざけやがって」
「俺が阻止してやる」
ダゴンだ。犯人がどこからか、暗号を送ってきたのだ。
犯人はこの模様をみているのではないか、だれの目にもそれは映った。
誰しもが怖くてあたりを見回していた。
☆☆
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