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第一章 異世界からきた姫様
第五幕 げぇ、このドラゴンが乗っかってるような料理、食べるのかよ!?
しおりを挟む「ムコ殿! もう、パンとやらをいただいておるダスよ!」
ピットが、ムシャムシャとパンを食べながら言う。もう、三枚くらい平らげている。
「ピットか。起きてたんだな。ユニ、で、このトースト、何?」
ぞっとした顔で、パンを注視し、ゆーまは、パンを指差しながら言った。
「魔法の国、特製フルーツ、ドラゴン桃トーストだよ!」
「ド、ドラゴン桃?」
「ユニの魔法球で、材料を本国から取り寄せたの。朝、早く起きて作ったの。食べてみて」
ユニは、軽くウィンクをしながら、ゆーまを見詰め、キッチンの台に両手付き、立て肘(ひじ)をする。だが、どう見ても、これは?
「せんぱい、ゾッとしないで、おいしそうじゃないですか。見た目、ドラゴンですけど、折角、作ってくれているんだし、食べましょうよ」
あいちゃんも、どうみても、パンの上にピンク色のドラゴンが乗っているようにしか見えないパンを見て、少し、躊躇(ちゅうちょ)したが、嫌な顔をせずに、パンを手に取った。
「そ、そうだな。じゃ、食べるか。ドラゴン桃? (いけるのか)」
あいちゃんの仕草を見て、ユニにいけないと思ったのか、真摯(しんし)な面持ちでドラゴン桃トーストを手に持つ。
一体、どんな味がするのだろう?
「じゃ、頂きまーす!」
その瞬間、目を閉じ、ピンク色のドラゴンを見ないで、口にトーストを丸ごと突っ込んで食べた!
「う、うまい!」
「おいしいです。こんな食べ物、食べたことないですぅ!」
二人とも意外という面持ちでびっくりしている。顔を見合わせ、目をパチクリする。
「意外と見かけによらず、美味いもんだな、どうみても竜がパンの上に乗ってるようにしか見えないんだが……」
ゆーまが、そういった矢先だった!
「何を言うのじゃ、この罰当たりもの!」
パシコン!
「ブッ!」
「ナにすんだ! ラクリ!」
ラクリが、ゆーまの後頭部を思いっきりスリッパでたたいた。ゆーまは耐え切れず、頭が前のめりになり、パンを口から少し落とした。
「姫様が、一生懸命、早く起きて作ったんじゃ。うまいに決まっとろうが!」
ラクリが、怒り、パタパタ羽を動かし、しかめ面で、ゆーまの頬っぺたをつねりながら言う。
「こら、引っ張るな! 美味くないなんて言ってないじゃん!」
負けじと、ゆーまは、ジト目で横で飛んでいるラクリに言い返す。
「姫様は、こう見えても、魔法の国テスラでは、料理の腕前は五本の指に入るくらいぴか一だったのじゃ!」
頬っぺたをつねるのを止め、腕を胸の前で組み、えっへんと言った面持ちでラクリは言った。
「へぇ~そうなのか。家庭的でいいな。そういう料理できるお嫁さんがいいよな」
「あん、家庭的でしょ! いいお嫁さんでしょ♡」
ゆーまが、ユニを褒めた瞬間だった!
ユニが、嬉しそうな顔で、大きな胸を寄せ、むギュのポーズをまたする。
「(あいちゃんの顔色が変わった)う、褒めすぎたか? 頼む、メイドの格好で言うの止めてくれ」
あいちゃんの顔が、だんだん曇ってくるのに、ゆーまは気付いた。
「ハイ、旦那様!」
ユニは、軽快に明るい声でいう。
「うふふ、ユニさんて、面白い人ですね」
あいちゃんは、ドラゴン桃トーストを口にしながら、その口を上品に手で隠し、サラッと言った。
ゆーまは、ゆっくり視線をユニに向ける!
「(これじゃ、あいちゃんに俺が、メイドプレイをしてるみたいに見えるじゃネーかよ)」
はぁ、と溜息を付き、ゆーまは下を向き、少し落ち込んだ。
「で、せんぱい、さっきから不思議に思っていたんですけど、その羽の生えたフィギュアみたいなのオモチャですか?」
あいちゃんが、不思議そうな顔で、ラクリを指差す。
「誰が、フィギュアじゃァッ! オモチャじゃあッ!」
ラクリが、あいちゃんの言動に、激怒した! 顔が、怒り顔になっている。
「まぁまぁ、ラクリ、落ち着いて!」
ユニが、割って入り、どうにか、ラクリの興奮を収め、仲介する。
「それと、そこの魔法使いみたいなカッコした子供も、何ですか?」
「えっとなぁ、その、判らないぞナ!」
あいちゃんの問いに、どうにかして、誤魔化そうと、おどけながら、ゆーまは答えを返すが、無理だった。もう、見てしまっていて、手遅れの状態だった。ユニがニコニコしている。
「せ・ん・ぱ・い、漫才やっている時みたいなこと言って、誤魔化さないで下さい」
「あい殿、こう見えても、わしは、れっきとした魔法の国の妖精じゃ。しかも、ユニ姫様の世話役であり、大臣じゃ!」
ラクリは、キッパリという。
「へぇ、そうなんですか」
感心したように、目をパチクリし、あいちゃんは、溜息を付くことなく、明るい声で笑う。
「あ、あいちゃん、驚かないの?」
「だって、ドラゴン桃まで出てきて、ユニさん見てるから、そうなんだろうなって、思うくらいで皆、いい人だし」
ゆーまの問いにも、どうとしたことなく、あいちゃんは、答えた。平然を装っている。
「婿殿と違って、物分りの良い女性じゃ! 本物の妖精じゃ! 覚えておけ!」
納得したように、ラクリは、何故か、上から目線で言う。さすが、大臣クラスと言った所か。
「はーい」
その時だった、ピットが、割って入った。
☆☆
第六幕につづく。10/25UP予定。感想なんでもいいのでおまちしてます。
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