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第七章 甦ろうとする魔神
第九十四話 無数の毒針
しおりを挟むファイたちはデステールビーと固唾を呑んで、ずっと対峙していた。
間合いをじりりと詰めていく。
「俺たちを甘く見過ぎたな、この道化師やろう、人形如きに負ける我らではない」
レギンがフォライーの方を向き、啖呵を切って、首を斬るジェスチャーをした。
「次はお前の首だ!」
「く、ぐぐ、この大男め、抜かしおって、デステールビーよ、皆殺しにしろぉ!」
フォライーはこの言葉に顔を歪め、杖を強く握りしめた。
形相が変わっていく。
レギンはそれを鼻で笑った。
「頼りは、蜂ってわけか、腰抜けめ」
レギンがそういった時だった。
「ぐがが、フォライー様を侮辱するな」
なんとデステールビーが鋭い眼光を光らせ、咆哮をあげた。
レギンがニヤリと不敵な笑みを見せた。
「ほぉ、いっちょ前にしゃべるのか、人形蜂さんよ!」
「黙って今まで睥睨してたってわけか」
ファイがそういった矢先だった。
デステールビーが羽音を風切らせて、動いた!
「いくぞ、我の死の尾からは逃げられん!」
「死毒尾(ポイズンキラーテール)」
何と体から無数の尾が出でてそれはファイたちに向かっていく。
「何、体の至るところから針が付いた尾が?」
「まさか、デスファントムの」
「そうだろうな、その系統だ、恐らく」
レギンとファイのやり取りにヒョウが考察し重い声で言った。
レギンが向かってきた、毒の尾を躱しながら、横目でファイにいった。
「坊主、躱し切れるか、恐らく当たれば即死に近い毒だぞ」
「おっさんも、当たるなよ。ウィード様のポイズンプリズナーがあるうちは当たっても大丈夫だ」
ファイは言うと同時に、横手に走った。
次々と、ファイに向かっていた毒の尾が地面に刺さっていく。
その数、ざっとみても数十はある。
その攻撃を上手いことファイは見事に躱していた。
ファイは見計らい、ラスタを左手に集中させた。
「そらよぉ、お見舞いしてやる! 炎殺拳(フレアナックル)」
ファイの左手から、炎の弾が数発、出でて、それは、何発もデステールビーの尾に命中した。
命中し、毒の尾は針の先端から尾の部分まで溶けてなくなった。
しかし、動じる敵でもなかった。
「何の、それしきの炎の弾! 燃えても毒針は無限だ!」
なんと、一瞬のうちにファイがフレアナックルで粉砕した毒の尾が全て再生した。
「なんて再生力なの、全て再生したわ」
「エリュー、気を散らすな。民の命を守るのが我らの使命だ」
「はい、テアフレナ様」
エリューは心配そうにファイたちの戦いをみていた。
テアフレナも万が一を考察はしていた。敵が襲ってこないかを。
ファイが瞬速移動で毒の尾を躱しながら、声音をあげた。
「あの尾の根幹を仕留めない限り、無限に切っても再生するってわけか」
「それにしても、何てスピードだ、躱すので精いっぱいだ」
キュラが続けてそういった矢先だった。
キュラがハッとした。
「危ない、レイティス、アザレ!」
「しまった!」
何と敵の刃靭がもろに高速で後ろにいたレイティスとアザレ副将軍を襲った。
「ぐはぁ、えいぃ」
キュラだ。キュラが瞬時にスピードをあげ、レイティスに刺さるのを自身の肉を断ち、かばった。
同時にキュラはアザレ副将軍を殺そうとしていた毒の尾を剣で断ちきり、攻撃を妨げた。
だが、キュラは致命傷だった。
「ぐ、鎧を貫通した、なんて、ざまだ、この私が」
「キュラ様!」
一瞬のうちにキュラは毒で顔が蒼くなっていく。脚を地につき、剣を地面に突き刺して松葉杖のようにした。
その一瞬を見逃す敵ではなかった。
瞬時に無数の槍のような毒の尾がキュラたちを呑み込もうとしていた。
それは風切り音をたて、向かってくる!
「第二波がくるぞ、いけない! 集中されてる!」
ヒョウが見兼ねて声音をあげた。
ファイも声につられて一瞥し、顔が引きつった。
しかし、自分が死んでもと思い、ファイはキュラの前に瞬速移動で舞い戻り、敵を牽制した。
だが、敵も容赦なかった。真向から向かってくる。
「(やべぇ、この数一体、どうすれば? 後ろには負傷したキュラ様とアザレ副将軍、レイティス、オネイロス団長も)」
そのときだった。
「間に合え!」
ヒョウだ。ヒョウがラスタを発生させ、こっちに向かってくる。
瞬間的に爆発させ、ヒョウは空中から大きく肩を振り被った。
「氷斬巨刀(アイスザンバー)」
Shuuu!
なんと、氷の刃靭が長く伸び、ファイに向かっていった、全ての毒の尾を中間あたりから、根こそぎ切り落とした。
それは地に落ち、体液が滴り落ちた。
ファイがヒョウに目で合図した。
「サンキュー、ヒョウ、助かったぜ、丸ごと一発に斬るのはいい考えじゃねーかよ」
「気を抜くなファイ! また再生するぞ、ほんの一瞬の余地しかない」
ヒョウがファイの横手に降り立った。レギンも近くにいる。
「なんて厄介な毒の尾っぽだ。おまけにスピードが速い」
ヒョウがそういった時だった。
「それより、キュラ様、しっかりしてください。もしや、毒が?」
レイティスが自分をカバってくれたキュラに言い寄ってきた。
ファイはその様子を一瞥し、急いで檄を飛ばした。
「毒だ、奴の毒にかかってる、ニミュエー早くキュラ様にポイズンプリズナーを」
「わかった。今いく」
ニミュエはスピードを上げ、両手でポイズンプリズナーを持ち、キュラの方へ素っ飛んでいった。
フォライーはじっとこの模様を空中で浮遊しながらみていた。
人が倒れる姿に快感があるのか、顔色が高揚していく。両手を天にかざした。
「くひひひ、そうだ、もっといたぶれ、デステールビーよ、奴らを血祭りにした後はこの町のものを皆殺しにし、血の海にするのだ、くひひひ」
その瞬間だった。フォライーは妙なことに気が付いた。
☆☆
UP予定。感想おまちしてます。
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