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第六章 追憶の魔船

第七十七話 生気吸収

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「(こいつ、あれだけのオーラを真面に受けて、防いだだと?)」
 そのときだった。ヒョウが急を要し声音を上げ、術を発動させようとし、構えた。
「気を付けろ! 奴さんの手が伸びてきたぞ! 『氷魔風(アイスブリザード)!』」
 ヒョウは氷の風で獄手竜をカチカチに凍らせていく。だが、到底このくらいでは追いつかない。
 ファイがその状況を一瞥し、鋭い表情をする。
「こいつ、軌っても、軌っても、出てきやがる! なんのぉ!」

ZUSA!

 ファイは、上手く瞬速移動で、キュラに襲い掛かろうとしていた獄手竜を次から次へと切っていく。
 ファイの表情が一変した。
「へへ、手から、竜か、上等じゃネーか! こい、ぶった切ってやる!」
「フレアブレード!」
 ファイは横一文字に炎の波動の斬撃を繰り出し、横一列に上手く、襲い掛かる獄手竜を一発に斬殺した。だが、次から次へと、また本体がある限り、そこから、再生していく。
 これでは、埒が明かない。
 ドラゴスキュラが薄気味悪い不敵な笑みを見せた。
「グハハ、小賢しい真似をしおって、だが、我の『獄手竜』を切っても無駄だ、幾らでも再生は可能だ!」
 そういった矢先だった。
「フフ、アハハ、こりゃいいぜ」
 レヴェルが上を向き、高笑いをした。
「貴様、何が可笑しい!」
「お前は、ほんと、馬鹿だな。まだ、判らないのか? お前は再生させ、生体を出す度、俺に生気を与え続けてるということだ!」
「!」
 ドラゴスキュラが表情を強張らせた。勘付いたのだ。そのまさかに。
 その瞬間、レヴェルが駆け、動いた。
「魔剣士たち、手出しは無用だ! 俺が仕留める!」
「しかし!」
 ファイの言葉を聞くと、レヴェルは駆けていた状態から、素早く宙に飛び立った。
「お構いなしにいくぞ! 一撃で、決める!」
 レヴェルの闇の魔剣にエネルギーが集束していく。
 ドラゴスキュラも一瞥し、攻勢に出た。
「上かぁ! 逃がさん! 行け、我が竜たちよ」
「(ざっと、ニ、三十匹か)よかろう、生気を全て戴く、きな!」
 レヴェルの目の前には、本体から出でた獄手竜が何十匹も撃ち出ていた。
 これを目の当たりにし、ひるむことなく、レヴェルは闇のエネルギーを携え、剣を構えた。
「片っ端から斬ってやる! おらぁあぁッ!」
 レヴェルは瞬速に動き、次々と属性竜を斬っていく。切られたところからは血が出ていたものの、血は魔剣アンタレスバロールに吸収されていく。
「何、我の竜たちを、血が剣に吸い取られる!」
 そうドラゴスキュラが足掻いたときだった。
「おらぁ、らぁあぁあ!」
「ぐがあぁぁッ」
 レヴェルの強力な斬撃が、一匹の属性竜を切り落としていた。
 ドラゴスキュラはすぐさま、再生させようと、エネルギーを漲らせていく。
「再生!」
 属性竜が、また出でてきた。だが、しかし、このときには、手遅れだった。
 攻勢に入る前に、すでにレヴェルが動いていた。
 剣を振りかざした。
「もう、遅い、もらったぁ!」
「『獄竜砲!』」
 ドラゴスキュラの技が瞬時に炸裂した。
 だが、その捌きよりも、レヴェルは速く動いていた。
 見事に躱し、魔剣に莫大なエネルギーを収束させ、思いっきり上に薙いだ。
 これが勝機を決した。
「『闇魔殺斬(ダークブレイク)!』」

DWOOOOOOOOOOOOON!

 闇のエネルギーが伯仲し、炸裂展開し、物凄い地響きと共に、爆ぜて爆発した。
 この沙汰でドラゴスキュラは無事なのか。
 砂塵が舞い散る。それとともに、血が這い出てきていたが、それも見事に闇の魔剣に吸収されていく。
 そのときだった。
「ぐはぁッ、こ、ごッ、こんなまさかッ、に、人間などに我が敗れるなど……」
「ドラゴスキュラの頭身が本体から離れた」
 なんと、ドラゴスキュラの本体だけが、地面にばたりと落ちたではないか。
 足はなく、胴体だけだったが、致命傷にはかわりはなかった。
 ドラゴスキュラはもがき、悔しそうに地面の土を手で握りしめた。
 属性竜は、本体を斬り放され、再生はもう不可能だった。
「あやつ、一撃であの巨体を粉砕しおった、やるな」
 レギンがそういった矢先だった。
 レヴェルが闇の紋章を光らせ、魔剣を活性化させていく。
「生気吸収!」
「な、なに、我の属性竜の血が……」
「ドラゴンたちが、乾涸びていく?」
 なんと、痛手を負っていた属性竜が、見事に生気を吸われ、薄っぺらい紙切れのように完全に乾涸びた。
「ベイリン村の民たちの現象と全く一緒だ、何故?」
「!」
「ちょろいな、コアがなければ、ざっとこんなものだ」
 レヴェルは段平を裏返し、ニヤリと不敵な笑みを漏らした。
 ドラゴスキュラは大きく顔を上げて、凝視した。
「ぐくそ、殺してやる…殺してやる」
「フン、死に掛けだな。人間と思い、見下していたのが、お前の敗因だったな。手から出でた竜と本体の生気は全て戴いた。後は、お前だけだ」
 そういい、ドラゴスキュラの前で剣の切っ先を上げていた顔の眉間に突き付けた。
「終ったな、地獄でもう一回、寝んねしてな」
「己ぃ!」
 レヴェルが止めをさそうとした、そのときだった。

DOGAGA!

 ドラゴスキュラが手から、最後のあがきで獄手竜を発した。
 しかし、それも束の間、レヴェルは難なく躱してしまう。
「フン、その、手から出る竜は小手調べか? 笑わせるな。そんなに死にたけりゃ、今、殺してやる」
 レヴェルは不敵な笑みをみせ、構えていた剣を振り上げた。
 首を斬り落とそうとした。
「くそッ! 戻れ、我の竜よ!」
 ドラゴスキュラは、さっき放った獄手竜をレヴェルの背後から旋回させ、襲わさせた。
 しかし、レヴェルは動じもしなかった。
 難なく、瞬速移動で躱してしまう。
「フン、甘いな。そんな、古い手、勘付かないとでも思ってたのか? チェックメイトだ! あばよ、俺の生気になりな!」
 レヴェルは容赦はしなかった。
 これで確実に終わりだ。
 そのときだった。

BYU!

「何奴!」
 何者かが、レヴェルが止めをさそうとした瞬間に剣を突っ切ってこさせ、止めた。
 この剣はもしや、例の魔剣? 誰の目にも意外性が浮かんだ。


☆☆
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