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第五章 古代から生き永らえたもの

第六十七話 氷の結界

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「逃がすかぁ、フレアブレード!」
ファイが火種を切り、攻撃を仕掛けた。炎の刃靭が中距離にいた、デカラビアに幾重も音速に向かっていく。
「う、らぁらぁあぁらぁぁらぁッ」
さらに、ファイは魔剣を振り、刃靭を凄まじいスピードで無数に繰り出した。
音速に炎の刃靭が伸びていく。目にも留まらぬ速さだ。一体、どう対処する?
デカラビアの顔色が変わった。
「炎の刃靭だと? 小賢しい、弾き返してくれるわぁ、はあっぁぁぁっぁッ」
後ろが、岩山で行き場がなく、間合いが狭まっているのもあり、余りの刃靭の速さと、その数に、流石のデカラビアも躱すのは無理だと判断したのか、その場に立ち止まり、刃靭を真面に自分の手で受け流そうとした。闘気を高める!
BANGAGAGA!
誰もが直撃かと思ったが、そう上手くはいかなかった。
ファイのフレアブレードの刃靭をいとも簡単に次から次に両手で素早く弾いていく。ファイの一撃も可也の衝撃だろうが、デカラビアは難なく弾いていく。
ファイはデカラビアに技を全て弾かれたことに顔色を変え強敵だと察知していた。その時だった。
その瞬間を待っていたと相槌をファイに打つとチャージしていたヒョウが素早く動いた! デカラビアは凝視する。
「もらったぁ、『自動小刀(オートナイフ)!』全層発射ぁッ!」
右手で支え、左手に装備されていた自動小刀(オートナイフ)の全ナイフをデカラビアに向けて発射した。自動小刀(オートナイフ)は唸りを上げてデカラビアに瞬速に猛進していく。
間合いがもうない!
「(ナイフ?)小癪な、フン!」
デカラビアは突撃してきた自動小刀(オートナイフ)の十二丁の内、二丁を素早く叩き落した。後の十丁は外れデカラビアの後方に流れた!
「!」
ヒョウがニヤリと笑った。何か、算段のあるかのような面持ちで。
「フン、それだけ撃って、二発しか当たらんではないか? 何処に撃っているのだ、この下手糞!」
デカラビアが獰悪な声でほざく。
「誤算だったな、後ろの岩に刺さりゃ、それで、いいんだよッ!」
何の計算があるのか、ヒョウが片手を前に突き出した。
「な、何だと?」
デカラビアが後ろの岩壁に突き刺さった十丁の自動小刀(オートナイフ)を見遣った。
「もう、遅い! 展開、『氷結界(アイス・デルタ)ッ!』」
ヒョウが氷の魔闘気を発生させ、片手に力を入れた。
その瞬間、反応し、自動小刀(オートナイフ)が輝き、術が発動した。
一瞬にして、デカラビアを術が包み込んだ。
「な、何、ナイフを始点にして、凍っただとぉ!」
デカラビアの表情が裏を掛れ、苦渋に満ちた。
光り輝く氷の結界がデカラビアを逃げれないように完全に閉じ込めていた。デカラビアはその術の中で荒れ狂った。
「何、出れん、クソッ、これは、氷の結界かァッ! 己ぃ、こんな氷の結界など、我が力で、打ち破ってくれるわぁッ!」
デカラビアは身体からオーラを発し、突貫しようと、態勢を瞬時に変えた。
「くぉらぁあぁっあっっぁっッ!」
精一杯、デカラビアは闘気を纏った身体で氷の結界に体当たりしたが、ビクともしなかった。
衝撃が結界で相殺される。
「グググ、クソ、破れん!」
拳を握り、更に闘気を纏った体で破ろうと前に力を入れる。だが、結界はそう簡単に破れなかった。
それを察したのか、動きを一瞬止め、デカラビアは、悔しそうに舌打った。ヒョウが冷徹な青い瞳でニヤリと嘲笑った。
そして、暫し間を置き、徐にヒョウは口を開いた。
「チ、無駄だ、『氷結界(アイス・デルタ)』は俺の魔闘気が続く限り、どんなことが合っても、打ち破ることは出来ん。クっ、(それにしても、こいつ、何てパワーだ、結界に対する負荷が今までの敵より凄い)」
デカラビアの一撃が可也、重かったのか、ヒョウが歯を食いしばって、結界を制御している魔闘気の力を引き上げた。
「グハハ、それは、良いことを聞いたぞ、お前の力が落ちれば、ここから、出れるという訳だな。我が、オーラで結界など粉砕してくれるわァッ!」
デカラビアは結界の中で、パワーを高め、右手に集中させた。桁外れに、驚愕するほどの、闘気が結界の中で発生した。
ヒョウがそれを一瞥し、気がついた。
「(あの闘気、拙いッ!)」
ヒョウが懸念し、眉間に皺を寄せた。表情に曇りが出た。
その時だった。
デカラビアがチャージしていた技の陣容を完成させた。そして、動いた!
「『魔星閃滅弾(デスブラスター)!』」
獰悪な声で吠えると同時に、とんでもない闘気の技が真面にヒョウの結界にぶち当たった! 
ヒョウは結界を制御していた左手の威力を強める。押され、ヒョウの足が反動で、地面に少しめり込んだ。力と力が伯仲している。
ヒョウはデカラビアを睨みつけた。
だが、あろうことか、結界に罅が入り、術が砕けそうになった。
その瞬間、好機と見計らってか、ファイが魔剣を携え、デカラビアの方に、駆け込んだ!
「グっ、(なんて負荷だッ)ファイ、今だぁッ、一発で決めろ、結界は、そう長くは持たん!」
ヒョウが甲高い重厚な声で必死に言った。
その想いはファイに見事に届いた。
そして、魔剣を振り翳す体勢をし、地を蹴り、欺くように間合いを計り、入り込んだ!
デカラビアがその様子をチラッと一瞥した。
だが、気付くのがもう遅かった。
確実に射程圏内に入っていた。
「あぁ、判ってる、一撃で決めてやるッ、うぉらぁぁぁぁッ!」
「!」
「炎、一刀両断、『炎殺断(フレア・ストライク)!』」
デカラビアの頭上に地を蹴って跳び上がった瞬間、もう、魔剣の切っ先にファイは爆発的な魔闘気のエネルギーをチャージしていた。
そして、瞬間的にエネルギーを膨張させ、魔剣に携えた状態で、思いっきり、結界の中にいたデカラビアの方に振り込んだ! 
一瞬、光に遮られたが、デカラビアの顔が反応で歪んだ。
デカラビアは拙いと思ったのか、罅の入った結界を急いで砕こうとしたが、手遅れだった。
莫大なエネルギーの斬撃の一閃が結界諸とも粉砕するかのように飛んだ!
「し、仕舞ったぁッ!」
光が無数に立ち綻び、デカラビアを包み込んだ。
辺り一面に、轟音が轟く。光の閃光と共に、膨大なエネルギーで爆発が巻き起こった。
岩石が崩れ去り、自動小刀(オートナイフ)があった結界を打ち破り、デカラビアのいた場所の岩山が真っ二つに割れた。それだけは、人間の目でも確認可能だった。
だが、砂塵が舞い散り、微かにしか、その様子は見えない。
デカラビアの消息も当然、確認できる状況ではなかった。
ファイたちが目を見開いて砂塵が舞い散るのを凝視していた。
「凄い、岩山が真っ二つに割れた?」
「あれで生きているの?」
エリューとイーミ姫が後方の家屋があるところの前で、手に汗を握りながら怪訝な面持ちで言った。
砂塵が収まりかけた、その時だった。
「ぐはぁッ!」
リビコッコだ! 何と、リビコッコがデカラビアの前に立ち開り、耐え忍んでいた。
だが、様子が変だ。
「チ、生きてやがったかッ!」
ヒョウが、眉間に皺を寄せ、悔しそうに舌打った。
「リ、リビコッコ、お主ぃッ!」
デカラビアは、リビコッコの後ろ側に崩れ去った岩山の瓦礫から、身体に覆い被った岩石を除けながら、出てきた。
そして、垣間見たものに、驚嘆した。
何と、リビコッコの身体の半身が全くなかった。これで生きているのが、不思議だ。人間なら確実に即死だ。





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