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第五話 英雄は息子が夭折するのを知る、未来の食事

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一階に下りてきた二人は食堂に入ってきていた。目の前のテーブルの上にご飯ができていた。


どうやら、楓の家庭はバイキング形式のようだ。テーブルの真ん中に料理が並んでいる。楓の母親らしき人も、まだ

キッチンに立って料理を作っていた。


「お母さん、ご飯できてる?」


食堂に下りてきた楓は、明るい第一声を発した。お母さんが料理をしながら振り向いた。


 ナポレオンも丁度、いった矢先に食堂に入ってきていた。


その姿を楓のお母さんが一瞥した。


「できてるわ、あ、あなた誰?」


お母さんは、おたまをナポレオンの方に向け、外人がいたことに驚いていた。


「びっくりしないで、聞かないでね。あのフランスの英雄ナポレオンだよ」


「英雄といわれると、なれんな。楓のお母さんか。説明通り、名はナポレオン・ボナパルトだ。よろしくな」


 ナポレオンが照れ臭そうにいう。


楓が言っても全く信じるような素振りを一つも母親はみせなかった。それもそのはず、今はナポレオンがいた時代から、245年後である。


それに目の前に本人がいるが、もう当人はこの世界では他界している。


「お友達? まぁ、こんなに若くてカッコいい人なのね。ナポレオン十何世? うちにホームステイでもしにきたのかしら?」


全然、信じていない。どうやらホームステイのお友達と解釈したようだ。


「か、かあさん、十何世って、一世だよ。確かにナポレオン三世とかはいたけど」


「十何世ね、まぁ、素敵な衣装しているのね。フランスの衣装かしら。やっぱりフランス系は美形ね」


「かあさん、本物だってば。(あぁ、信じさせるのは無理か……)」


「ナポレオン三世? そんなやつがいるのか、楓?」


「あなたの後に後継者で出てくる政治家が一人いるんだよ。だけど、貴方が全てにおいて上だと想うよ。ナポレオン

三世の理想は、叔父にあたる貴方みたいになりたかったらしいし」


「俺の血族か。よくわからんな」


 さらっといい、ナポレオンは母親に敬礼しながら、席に着いた。


 楓が隣の席に着いたとき、ナポレオンの鋭い直感が働いた。


「ちょっと待て、楓、三世ということは、二世はいないのか? 俺の息子はどうした? 俺は結婚も出来ないのか? 

死ぬのか?」


 ナポレオンは、観察力が人一倍だった。楓の方を向き、声のトーンが少し高揚した。


「(さすが、鋭い)え、えとね、若くしてはナポレオン、貴方は死なないよ。ただね、二世は……」


 頬を指で掻き、楓は口を閉じた。その様子を隣でいたナポレオンはじっとみていた。


 何かを感じ取ったのだろう。見抜いたようだった。


「ははは、顔を濁すな。俺の息子のことだ、きっと立派に成長して才知ある軍人でもなっておろう」


 ナポレオンは苦笑いし、楓を元気付けるように肩をポンポンと軽く叩いた。


そして、目の前にあったパスタを皿に取った。


 だが、楓は気を使って、何も喋れなかった。二世がどうなるかもわかっていたからだ。とてもほんとのことを喋れ

るはずもなかった。



数秒、間をおいて、口を開いた。
























☆☆
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