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第一話 現代に現れた英雄とパピルスのしおり
しおりを挟む大人しげな少年はある理由で、家にある古びた倉庫の整理をしていた。そう、運命の歯車はこのときから、変わろうとしていたのだ。
「ん、何だ、この箱。妙な形だな。なんだろ?」
そういいながら、少年は赤黒い木箱をスパッと開封した。何やら、中には、変わった色と、変わった素材の紙があった。
エジプトのパピルスのような素材だった。栞のように、上に古びた紐がついている。
「(これ、何だろ。栞かな?)ん、何か字が書いてあるぞ。エジプトの古代文字? 紐がついてる。これ栞かな。ちょうどいいや、栞なくして探してたところだったし、使おう」
「よし、こいつで倉庫の整理おわりっと。部屋で本、読もう」
そういい、少年はその奇妙な木箱を持ち、倉庫を後にした。
少年の容姿は、見たところ学生のようだ。髪は赤みが掛かった茶髪をしている。茶髪の割には華奢で大人しそうだ。筋肉も少しある。
普通に生活していれば、女の子にもモテそうな顔つきをしている。
だが、年頃の割には、色気づいた様子もなかった。
「それにしても、妙な紙の栞だな? パピルスってとこみると、まるで古代エジプトのやつみたいだ。五枚あるな」
少年は部屋で、赤黒い奇妙な木箱を開けて、中身を確認していた。
部屋は、本だらけだった。この歳の割には、歴史が好きなのか、歴史書が多かった。
少年は、一冊の本を本棚から、手に取った。それは、歴史書の『ナポレオン』という本だった。
「さて、続き読もう。確か、ナポレオンの少年期だったな」
少年が、本を片手に読もうと少年期のページを開いた時だった。
何やら、一階から足音がした。
「楓、ご飯よ。お昼ごはんにしましょ」
「はい、母さん、今いくよ」
部屋の入り口のドアを開け、そこから一階に向かって大きな声で言う。どうやら、少年のお母さんのようだ。明るい
のびのびした甲高い声だった。
「仕方ないな、ご飯か。栞ないな。この奇妙な紙の栞、使おう」
いうと、エジプトのパピルスのような、紙の栞のようなものをナポレオンの少年期のページに挟み本を閉じた。
「ナポレオンか。逢いたいな。僕の憧れだもんな」
すると、栞が言葉に反応したのか、白く光りだしたではないか。
「な、なんだ、栞と本が光ってる」
一瞬、楓は目を疑って、何回も閉じたりして、顔を抓ったりした。
だが、現実のことであった。現に、栞は輝きを失わない。
楓が驚いて床に本を落とした時だった。
本が光り、続いて栞が一瞬、眩く輝いて、消えた。
「眩しい。ここはどこだ? 何だこの部屋は、図書館か? 敵国か?」
「うそ、ほ、本から人が出てきた」
なんと、本から洋風のカッコをした楓と同い年くらいの少年が出てきた。その姿は?
「ま、まさか、そのかっこ?」
指を刺し、楓は急いで栞が消えた本を拾い、読んでいたページをみた。
同じ格好で、同じ内容が書かれていた。確かに、本の描写には片手に本を持っていた。
動揺の色が隠せなかった。
☆☆
おはようございます。
今日またアップします。
応援よろしくお願いします。
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