魔法使い×あさき☆彡

かつたけい

文字の大きさ
上 下
366 / 395
第三十五章 あなたの作る世界なら

04 身体にぴったりとした黒服を着た三人の少女、アインス

しおりを挟む

 身体にぴったりとした黒服を着た三人の少女、アインス、ツヴァイ、ドライ、その姿を見てアサキとカズミの顔が驚きと警戒とに曇りかげった。
 何故なら、三人は死んだはずだからだ。
 治奈はるなとヴァイスの戦いによる超魔法の巻き添えを受けて。焼け焦げて、生体ロボたる肉体は完全に崩れ散ったはずなのだから。

 現在、三人の姿は半透明で、身体も服も透けている。
 そして、ゆらゆらと揺らめいている。纏った輝きがではなく、彼女たち自身の肉体が、ゆらゆらと。

 これは、幻影か?
 これは、魂なのか?
 いずれにせよ、このタイミングである。先ほどのシュヴァルツと同じ類の存在だろう。あのシュヴァルツがなんだったのかも、まだ分からないことだが。
 分かっているのは、みな、敵であるということだ。シュヴァルツも、目の前で揺れるアインスたち三人も。

 ならば、細かいことは、

「どうだっていい!」

 カズミは叫びながら、斜面を駆け上がる。
 先ほどのシュヴァルツとの戦いで地面が大爆発して出来たすり鉢を、砂に足を取られることもなく軽やかに。

「変身!」

 駆け上がりながら左手に着けたリストフォンのスイッチを押しすと、走るポニーテールの少女の姿がデニムのミニスカートから青い魔道着へと変わっていた。
 そして両手それぞれにナイフを握り締め、黒い揺らめきの中へと突っ込んでいく。
 実体があるのかないのか透けて揺れている、まったく同じ顔をした黒服の少女たちへと。

 同じといっても、カズミには三人の誰が誰か区別は付いている。ヴァイスが、識別子を書き込んでくれたためだ。黒服の三人に対してではなく、アサキとカズミの魔力の目に対して。
 ただ、判別が出来るようになったところで、それで戦局がどうなるものでもなかったし、またカズミのやることが変わるわけでもなかったが。
 ただ三人を倒すだけである。
 そして道を切り開くだけである。
 アサキがヴァイスを助けに行くための道を。

「うらあああああ!」

 怒鳴り声を張り上げる。

 斜面の一番上に立つ、アインス、ツヴァイ、ドライ、彼女たち三人の手からは、いつの間にか白い光が棒状に伸びて握られていた。
 真っ白な光の剣。アサキがたまに魔力で作るそれとは、また別理論による、純然たる物理科学により生成される彼女たちの武器である。

「なにを持ってようと、何人が束になろうとも関係ねえ!」

 言葉通りカズミはまったく怖じけ付くことなく、身体を飛び込ませて、三人と打ち合い始めた。

「なに見てんだ! 早く行けよ!」

 斜面の途中で心配そうな顔をしているアサキへと、カズミは黒服と剣をかわしながら怒鳴り付けた。

「一人でなんて無茶だよ! わたしも、一緒に」

 アサキはそういうと、腕を振り上げリストフォン側面のスイッチを押そうとするが、それはますますカズミの気持ちを爆発させるだけだった。

「んな場合かよ! お前の相手はこいつらじゃねえ! あたしもこいつら倒したら、すぐに追い掛けるから! お前は澄ました顔の白服女を早く助けてやれ!」
「……分かった。……絶対に無事でいること。約束だよ、カズミちゃん。わたしは、笑顔の報告しか受けないからね」

 笑顔の報告しか受けない。
 くろ先生が口癖にようにいっていた言葉だ。
 それはいま、アサキの本心でもあっただろう。
 高尚な心理でもなんでもない。
 もう友はカズミしかいないからだ。
 だけど確かに、連れ去られたヴァイスを放ってはおけない。
 だからアサキは、目尻の涙を拭うと走り出した。

 斜面を駆け上がるアサキへと、ツヴァイ、ドライが、カズミから離れて迫る。白い光の剣で挟撃する。
 対してアサキの取った行動は単純だった。
 両手それぞれに魔法障壁を作り出して叩き付けられる剣を跳ね返しながら、中央突破したのである。

 跳ね返された剣の軌道を修正しつつ再び打ち掛かろうとするツヴァイたちであるが、打ち下ろすことは出来なかった。二人の足元に五芒星魔法陣、つまりは呪縛陣が張られていたのである。
 く、
 どちらからともなく二人は呻き、下半身、膝から下を輝かせて魔法陣を砕き消滅させた。
 顔を上げると、もう赤毛の少女の姿はどこにもなかった。
 黒服たちの前には、残った青い魔道着の少女が不敵な笑みを浮かべているだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...