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第二十五章 終わりの、終わり
12 昭和の戦後ではなかろうか。というほどに、あまりにボ
しおりを挟む昭和の戦後ではなかろうか。
というほどに、あまりにボロな平屋建てなのである。
ガタついた窓のサッシは、もういっそ開けっ放し。
そんな部屋と縁側との境で、昭刃駆が横たわりごろごろしている。
手持ちぶさたどころか、身体持ちぶさたといった様子で。
部屋の奥にある狭い狭い台所では、駆の兄である智成が調理中。夕飯を作っているところだ。
野菜を刻み。
といた卵に肉をつけ、パン粉をまぶし。
油を張った小さなフライパンを、コンロの火に掛けて。
鼻歌混じりに。
「ホッホケサイサー」
どこの民謡か、時折、そんなわけの分からない歌声混じりに。
一見、普段と変わらぬ陽気な昭刃家のお兄ちゃんであるが、なんだか陽気を演じているようにも見えるのは、どこかに普段とは違う翳りがあるのだろう。
当然といえば、当然ではあるのだが。
「なあ、兄貴」
縁側との境でごろごろしている弟が、兄へと声を掛ける。
「ん?」
兄、首を上げ、横たわってる愚弟の姿を目に入れる。
「テレビ、って機械を知ってるか? 人類の発明品の一つだ」
愚弟の口から出るのは愚問であった。
「当たり前だバカ。うちにないのは、単に金がないからだ。つうか中古のをお前が破壊したんだろが、幼稚園の時に、飛び蹴りくれてさ」
「ニュース、きっとやってるよな」
「やってるらしいな」
テレビに限らず、新聞、ネット、現在やたら騒がれ取り上げられているのは、十代少女の大量失踪について。
駆は、そのことをいっているのである。
ことが起きたのは数日前。
全国各地で、中学生と高校生を中心に、千人超というとてつもない規模で、女子生徒の行方不明者が続出したのだ。
だというのに各警察の対応が、どうもあまり大事と受け取っていない様子らしく、まさか国家ぐるみでなにかが起きているのでは、と盛んに報道されているのだ。
「……大丈夫だよ。あいつ、少女じゃないもん」
智成は、少し躊躇いがちな笑みを浮かべると、カツを揚げる音に陽気な声を乗せた。
「そうだよな。……姉ちゃん、男だもんな」
「だな。だから大丈夫だ。明日にでも帰ってくるさ」
智成は、ははっと笑った。
「作るメシが凶悪にまずくても……また、食いたいよね」
「そうだな。残念だけど今日はおれの美味いカツを食え」
「兄ちゃんのもくそまずいよ」
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