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第十八章 明木史奈救出作戦
07 震え上がって当然の、規格外の大きさだ。だというのに
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震え上がって当然の、規格外の大きさだ。
だというのに、不思議とアサキは、恐怖を感じていなかった。
怖いはずなのに、怖くなかった。
自信であるのか、能力を読む直感力が育ったのか、早く史奈を助けねばという焦りと覚悟の故か、冷静、でもないが、恐怖はまったくなかった。
「大丈夫。わたしに任せて」
力強く微笑むと、力強く地を蹴った。
飛翔。
赤毛をなびかせ、アサキは飛び上がった。
ぶん
ぶん
数百メートルの上空から、アサキを目掛けて、ザーヴェラーの赤黒い光弾が撃ち出される。
すうっ、と円弧を描き避けたアサキは、続いて襲う光弾を手の甲で難なく払いのけた。
返す手のひらを、青白く輝かせて、右手に持っている洋剣の先端から根本へとエンチャント魔法を施していく。
ザーヴェラーの高さを遥か越えると、
今度は、遥か下にいるザーヴェラーへと飛翔。つまり落下の勢いを魔法で加速させた。
「やあああああああああああ!」
頭上へ振り上げた、青く輝く剣。
天も割れよ、地も砕けよとばかり、雄叫びを張り上げながら、思い切り振り下ろした。
熊と蚤ほどもサイズが違うというのに、その桁外れに常識外の巨大ザーヴェラーが、頭から、尾まで、見るも簡単に両断されていた。
二つに分かれても、なお巨大な物体が、浮力を無くし、落下を始めた。
と、見えたその瞬間、
ぼしっ
巨体がすべて、きらきら輝く粒子になり、空気に溶けて風に消えた。
まだ溶け残っている、金色の雪の中を、アサキは地上へと落下、着地した。
見守っていた仲間たちの前に立つと、剣を腰の鞘に収めた。
これだけのことをしてのけたというのに、少しも息が乱れていない赤毛の少女に、
「すげえなあ、ったく……」
カズミは、驚愕の態度を隠せなかった。
「噂に聞いた時、一人でどう倒したんだろうって疑問だったけど、いやはやなんとも、まさかここまでとはね」
常識を根本から覆すアサキの強さに、万延子も笑うしかないといった様子である。
「いや、あん時のアサキよりも格段に物凄えよ。……でもまあ、学校制服のままで超魔道着のウメに勝ったくらいだからな。変身すりゃあ朝飯前ってことか」
腕を組んでカズミ、うんうん頷き自分を納得させている。
「本当は、こんな力いらないけどね。倒したり壊したりの力なんか、嫌だよ。……でもいまだけは、必要だよね。フミちゃんを助け出すためにも。そして至垂所長のやろうとしていることを、食い止めるためにも。それじゃあみんな……行こう」
アサキの声に、四人は頷いた。
飛翔魔法を唱えて、全員、遥か上空へ。
風吹く異空の上空で、アサキと治奈、カズミの三人は、あらためて頷き合った。
これが決戦になること、平和への一歩が確実に築かれることを、心から願いながら、アサキはぎゅっと拳を握った。
顔を上げて、前方を見据える。
こうして五人の魔法使いは、東京へと向けて、飛んだのである。
人質に取られた明木史奈を救出するため。
そして、リヒト所長である至垂徳柳と、対決するために。
だというのに、不思議とアサキは、恐怖を感じていなかった。
怖いはずなのに、怖くなかった。
自信であるのか、能力を読む直感力が育ったのか、早く史奈を助けねばという焦りと覚悟の故か、冷静、でもないが、恐怖はまったくなかった。
「大丈夫。わたしに任せて」
力強く微笑むと、力強く地を蹴った。
飛翔。
赤毛をなびかせ、アサキは飛び上がった。
ぶん
ぶん
数百メートルの上空から、アサキを目掛けて、ザーヴェラーの赤黒い光弾が撃ち出される。
すうっ、と円弧を描き避けたアサキは、続いて襲う光弾を手の甲で難なく払いのけた。
返す手のひらを、青白く輝かせて、右手に持っている洋剣の先端から根本へとエンチャント魔法を施していく。
ザーヴェラーの高さを遥か越えると、
今度は、遥か下にいるザーヴェラーへと飛翔。つまり落下の勢いを魔法で加速させた。
「やあああああああああああ!」
頭上へ振り上げた、青く輝く剣。
天も割れよ、地も砕けよとばかり、雄叫びを張り上げながら、思い切り振り下ろした。
熊と蚤ほどもサイズが違うというのに、その桁外れに常識外の巨大ザーヴェラーが、頭から、尾まで、見るも簡単に両断されていた。
二つに分かれても、なお巨大な物体が、浮力を無くし、落下を始めた。
と、見えたその瞬間、
ぼしっ
巨体がすべて、きらきら輝く粒子になり、空気に溶けて風に消えた。
まだ溶け残っている、金色の雪の中を、アサキは地上へと落下、着地した。
見守っていた仲間たちの前に立つと、剣を腰の鞘に収めた。
これだけのことをしてのけたというのに、少しも息が乱れていない赤毛の少女に、
「すげえなあ、ったく……」
カズミは、驚愕の態度を隠せなかった。
「噂に聞いた時、一人でどう倒したんだろうって疑問だったけど、いやはやなんとも、まさかここまでとはね」
常識を根本から覆すアサキの強さに、万延子も笑うしかないといった様子である。
「いや、あん時のアサキよりも格段に物凄えよ。……でもまあ、学校制服のままで超魔道着のウメに勝ったくらいだからな。変身すりゃあ朝飯前ってことか」
腕を組んでカズミ、うんうん頷き自分を納得させている。
「本当は、こんな力いらないけどね。倒したり壊したりの力なんか、嫌だよ。……でもいまだけは、必要だよね。フミちゃんを助け出すためにも。そして至垂所長のやろうとしていることを、食い止めるためにも。それじゃあみんな……行こう」
アサキの声に、四人は頷いた。
飛翔魔法を唱えて、全員、遥か上空へ。
風吹く異空の上空で、アサキと治奈、カズミの三人は、あらためて頷き合った。
これが決戦になること、平和への一歩が確実に築かれることを、心から願いながら、アサキはぎゅっと拳を握った。
顔を上げて、前方を見据える。
こうして五人の魔法使いは、東京へと向けて、飛んだのである。
人質に取られた明木史奈を救出するため。
そして、リヒト所長である至垂徳柳と、対決するために。
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