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第六章 六番目の魔法使い
08 「お前、実は敵のスパイだろ。ヴァイスタ帝国とか、ヴ
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「お前、実は敵のスパイだろ。ヴァイスタ帝国とか、ヴァイスタ事務所とかからの」
昭刃和美は、慶賀応芽の顔へ向けてびしっと指を差した。
「で、出会い頭になにをゆうとんねん。しまいにゃどつくぞコラア」
面食らいながらも、きっと凄む応芽。
ここは、天王台第三中学校の体育館である。
いつもの五人で歩いていたところ、たまたま体育館の積まれたマットの上でリストフォンを操作している応芽を見つけたカズミが、因縁ふっかけたのだ。
「証拠はある。いい逃れの出来ない決定的な証拠がな」
カズミは、澄ました顔でちょっと知的な雰囲気を装いながら、制服のポケットをごそごそ。
なにかを取り出して、正面へ突き出した。
戦隊ヒーローの、青い戦士のキーホルダーだ。
「ドドンジャーは追加戦士含む全員が、メインカラーは原色一つ。お前みたいに、黒と赤のハーフアンドハーフとか、中途半端なのは一人もいねえんだよ!」
「いやそれたまたまじゃから、そもそもうちらのカラーリング自体がたまたまじゃから」
明木治奈が、思考暴走気味のカズミを止めようと、両肩に手を置いてぽんぽん叩いた。
「なあ令堂、なんの話をしとるんや? このアホは」
応芽は、ちらりと視線を、まだ常識の通じるであろう令堂和咲へと向けた。
「ああ、あのね……これ」
アサキは自分のバッグに取り付けられている赤い戦士のキーホルダーを摘んで、ちょっと恥ずかしそうに笑みを浮かべながら応芽へと見せた。
「いまいってたドドンジャーとかいうヒーロー番組が、わたしたちの魔道着と色が同じでね。何故かこのキーホルダーが、以前みんなで泊まったホテルの売店に売っていて、カズミちゃんがわたしたちにって買ってくれたんだ」
「ああ、そうなんや。よお分かったわ。……くっだらね」
つまらんものを聞いてしまった、とばかりに、応芽は小指を耳に突っ込んでこりこり掻いた。
「なんだとお! 偽物のくせしやがって!」
その態度に真っ赤な炎が燃え上がったのは、カズミである。持ってるキーホルダーは、水のバクゲキブルーのくせに。
「なんや偽物って!」
応芽も負けじと応戦する。
「追加戦士のバクゲキシルバーは、その名の通りの銀色なんだよ。お前みたいに禍々しい赤黒じゃねえんだよ。つまり、あたしらにいつかほんとに加わる魔法使いは銀色。つまり、お前はニセモノ。決定」
「関係ないやろ! ただの子供番組やん!」
「ほっほっ、仲間外れがそんな嫌か。哀れよのお。なんだかんだ、輪に入りたいんだな。寂しいなあ、可愛そうだなあ、お前。友達いなさそうだもんなあ」
「アホ抜かせええ!」
応芽は、足元に転がっているバスケットボールを拾うと、素早く振りかぶって全力で振り抜いた。
バチーン!
カズミの顔面に見事命中。
勢いよくのけぞった拍子に、カズミ、壁に後頭部を強打! 運の悪いことに、のぼり棒の持ち手の、ちょっと突き出た痛そうなところに。
「おおおおおおお! ダブルパンチ!」
両手でそれぞれ、顔面と、後頭部を押さえて、痛みにうずくまるカズミ。
ぐおおおお、
ぎしやあああ、
ざらびゃあああああ
と、しばらく凄まじく不気味な声で唸っていたが、突然がっと立ち上がった。
「やってくれたな、この関西弁がああああ!」
怒気満面、応芽の胸倉をがっしと激しく掴んだ。
「やったがなんや! それより関西弁という言葉自体をさも悪口であるかのように使うなクソボケが! ほんまムカムカするわ自分。なんならここで決着つけるかあ?」
「おう。望むところよ。どんな勝負でもいいぞ」
カズミは、ふふっと不敵に笑いながら、指をぽきぽきと鳴らした。
「じゃあ早く決めろよ。お前に選ばせてやっから。先に自慢しとくが、あたしはスポーツ万能だからな。さ、早く決めな」
「せやなあ……」
応芽は、端に転がっているさっきのバスケットボールをちらり見ると、親指で差しながら、
「あれの一対一なんかはどうや」
「上等! ……って、え、え、バスケ?」
ちょっと上ずった感じの、カズミの声。
「自信ないんか?」
「そ、そんなんじゃねえよバーロー! 得意。バスケ超得意! 日本代表に呼ばれるくらい得意。よよ幼稚園の頃のあだ名バスケ先輩」
わけの分からないことをいいつつ笑いつつ、歩いてそのボールを拾うと、そのままアサキへと近付いて耳打ちひそひそ、
「お前さ、確かバスケ部に入ってたとかいってたよな」
その質問に、赤毛の少女はきょとんとしながら自分を指差し、やがて小さく頷いた。
恥ずかしそうに笑いながら、
「レギュラーじゃ、なかったけどね」
「ええっ、なんだよもう! でも、背に腹は変えられねえ」
カズミは、ぎゅっと拳を握り、応芽へと向き直ると、強気な笑みを浮かべた。
「よおし、まずはあたしの弟子であるこいつが、お前と戦う! こいつごときに勝てないようじゃ、あたしと戦う資格なんかねえからな」
といわれて、飛び上がったのはアサキである。
「えーーっ! 自分がバスケ苦手だからって、押し付けないでよおお!」
勝負事に巻き込まれたアサキは、泣き出しそうな顔になって猛抗議だ。
「こ、声がでけえ! つか苦手じゃねえよ!」
「嘘だあ。だって体育の時、バスケ部でもない確か手芸部のタマキちゃんから奪えなくて、イライラして殴ってたじゃん」
「よ、よく見てたなお前。つうか味方の恥部を、こんな関西弁女に晒してどうすんだよ! 敵だぞ!」
「ウメちゃんだって味方、大切な仲間だよお」
「うるせえ。とっとと関西弁と戦え! 関東の極道全員が舐められてんだぞ!」
「カズミちゃんがやるのがスジだと思うけどなあ。そもそもわたし、ルーツは九州だし」
などと、関東モンとルーツ九州が、戦う戦わないで揉めているのを見て、応芽が、
「あたしは別に、どっちが相手でもええねんで。負けへんし」
ふふん、と鼻で笑った。
「だってよ。よかったなアサキ。よおし、そのちっちゃい胸を精一杯張ってえ、天三中代表として大阪代表を蹴散らしてこおい!」
背中をばあんと叩いた。
「いたっ! 意味分かんない! わたし最初っから嫌だっていってるのにい」
渋るアサキ。
「お願いします! ちょっと、ちょっとやってくれるだけで、いや、ムチャクチャ本気でやって欲しい。そ、そうだ、ハナキヤのケーキおごるから一番安いのだったらおごるからっ」
「しょうがないな。そんないうなら、やるだけやってみる。やるだけだからね。ハナキヤのケーキは、いらないよ」
「あざーっす! 助かる。うちの経済的にも助かる。おい、慶賀応芽、ウメ、関西女、あたしの一番の子分が、これからお前のことをボコボコにするから土下座する覚悟しとけ!」
カズミは、どばーんとかっこつけて応芽を指さした。
「子分とかちっちゃい胸とかいうから、やめようかなあ」
すっかり不貞腐れて、やる気のなさそうなアサキの顔。
「お、おっきくなるっ、いつか多分っ! 先輩っ! アサキ先輩! 師匠! 先生っ! ほんとお願い。ほんとお願いっ!」
カズミの方こそが土下座してしまった。
それどころか、ガスガスガスガス削岩機のように、頭を床に打ち付け始める始末。
「分かったよ、もう」
そんな頭を下げまくるくらいなら、最初からウメちゃんに対して無意味な敵対心を持たなければいいのになあ。
と、アサキはそんなことを考えながら長いため息を吐くと、応芽へと向き直った。
「それじゃあ、そんなわけなので、親交温める試合ということで、お手柔らかにお願いしまあす」
アサキは苦笑しながら、深々と頭を下げた。
「いいや、恨みはないけど本気でやらせてもらうで、令堂和咲。ウォーミングアップかつ圧勝して、次は、そこのくっそムカつく顔の女をぶっ潰して、泣きっ面を腹を抱えて笑ってやるんやからな」
「物騒なこというのやめようよお」
そもそも本来わたし関係ないのにい。
まったく、二人ともさあ。
「構わねえ、いわせとけ! 調子に乗ってる分だけ、吠えづらかくことになるからなあ。生き恥をさらしてやるぜえええ! 荷物をまとめて関西に帰るならいまのうちだあああ!」
ドガガガガとマシンガンのごとく大声強気で吠えまくるカズミ。
そもそも、アサキと応芽のバスケの実力をなんにも知らないというのに、何故にして彼女はここまで強気になれるのであろうか。
「そんなこといってえ、わたしが負けたら、種目を自分の得意なのに変えるつもりでしょお」
という理屈のようで。
「よ、よく分かっ……そんなセコイことしねえよ!」
「どうだかなあ」
などとカズアサ漫才を繰り広げていると、待たされている応芽が痺れを切らしてきたようで、
「やるならやるで、はよ始めるで!」
だん、と踵で床を蹴った。
「じゃっ、ナルハが笛吹くね。ワンゴール1点、だからスリーポイントも無しで。それでは天王台第三中学校杯争奪バスケットボールワンオンワン、開始! ピーーーッ!」
平家成葉が右腕を高く上げ、笛の音を真似て叫んだ。
令堂和咲と慶賀応芽によるバスケットボール、ワンオンワン、勝負開始である。
昭刃和美は、慶賀応芽の顔へ向けてびしっと指を差した。
「で、出会い頭になにをゆうとんねん。しまいにゃどつくぞコラア」
面食らいながらも、きっと凄む応芽。
ここは、天王台第三中学校の体育館である。
いつもの五人で歩いていたところ、たまたま体育館の積まれたマットの上でリストフォンを操作している応芽を見つけたカズミが、因縁ふっかけたのだ。
「証拠はある。いい逃れの出来ない決定的な証拠がな」
カズミは、澄ました顔でちょっと知的な雰囲気を装いながら、制服のポケットをごそごそ。
なにかを取り出して、正面へ突き出した。
戦隊ヒーローの、青い戦士のキーホルダーだ。
「ドドンジャーは追加戦士含む全員が、メインカラーは原色一つ。お前みたいに、黒と赤のハーフアンドハーフとか、中途半端なのは一人もいねえんだよ!」
「いやそれたまたまじゃから、そもそもうちらのカラーリング自体がたまたまじゃから」
明木治奈が、思考暴走気味のカズミを止めようと、両肩に手を置いてぽんぽん叩いた。
「なあ令堂、なんの話をしとるんや? このアホは」
応芽は、ちらりと視線を、まだ常識の通じるであろう令堂和咲へと向けた。
「ああ、あのね……これ」
アサキは自分のバッグに取り付けられている赤い戦士のキーホルダーを摘んで、ちょっと恥ずかしそうに笑みを浮かべながら応芽へと見せた。
「いまいってたドドンジャーとかいうヒーロー番組が、わたしたちの魔道着と色が同じでね。何故かこのキーホルダーが、以前みんなで泊まったホテルの売店に売っていて、カズミちゃんがわたしたちにって買ってくれたんだ」
「ああ、そうなんや。よお分かったわ。……くっだらね」
つまらんものを聞いてしまった、とばかりに、応芽は小指を耳に突っ込んでこりこり掻いた。
「なんだとお! 偽物のくせしやがって!」
その態度に真っ赤な炎が燃え上がったのは、カズミである。持ってるキーホルダーは、水のバクゲキブルーのくせに。
「なんや偽物って!」
応芽も負けじと応戦する。
「追加戦士のバクゲキシルバーは、その名の通りの銀色なんだよ。お前みたいに禍々しい赤黒じゃねえんだよ。つまり、あたしらにいつかほんとに加わる魔法使いは銀色。つまり、お前はニセモノ。決定」
「関係ないやろ! ただの子供番組やん!」
「ほっほっ、仲間外れがそんな嫌か。哀れよのお。なんだかんだ、輪に入りたいんだな。寂しいなあ、可愛そうだなあ、お前。友達いなさそうだもんなあ」
「アホ抜かせええ!」
応芽は、足元に転がっているバスケットボールを拾うと、素早く振りかぶって全力で振り抜いた。
バチーン!
カズミの顔面に見事命中。
勢いよくのけぞった拍子に、カズミ、壁に後頭部を強打! 運の悪いことに、のぼり棒の持ち手の、ちょっと突き出た痛そうなところに。
「おおおおおおお! ダブルパンチ!」
両手でそれぞれ、顔面と、後頭部を押さえて、痛みにうずくまるカズミ。
ぐおおおお、
ぎしやあああ、
ざらびゃあああああ
と、しばらく凄まじく不気味な声で唸っていたが、突然がっと立ち上がった。
「やってくれたな、この関西弁がああああ!」
怒気満面、応芽の胸倉をがっしと激しく掴んだ。
「やったがなんや! それより関西弁という言葉自体をさも悪口であるかのように使うなクソボケが! ほんまムカムカするわ自分。なんならここで決着つけるかあ?」
「おう。望むところよ。どんな勝負でもいいぞ」
カズミは、ふふっと不敵に笑いながら、指をぽきぽきと鳴らした。
「じゃあ早く決めろよ。お前に選ばせてやっから。先に自慢しとくが、あたしはスポーツ万能だからな。さ、早く決めな」
「せやなあ……」
応芽は、端に転がっているさっきのバスケットボールをちらり見ると、親指で差しながら、
「あれの一対一なんかはどうや」
「上等! ……って、え、え、バスケ?」
ちょっと上ずった感じの、カズミの声。
「自信ないんか?」
「そ、そんなんじゃねえよバーロー! 得意。バスケ超得意! 日本代表に呼ばれるくらい得意。よよ幼稚園の頃のあだ名バスケ先輩」
わけの分からないことをいいつつ笑いつつ、歩いてそのボールを拾うと、そのままアサキへと近付いて耳打ちひそひそ、
「お前さ、確かバスケ部に入ってたとかいってたよな」
その質問に、赤毛の少女はきょとんとしながら自分を指差し、やがて小さく頷いた。
恥ずかしそうに笑いながら、
「レギュラーじゃ、なかったけどね」
「ええっ、なんだよもう! でも、背に腹は変えられねえ」
カズミは、ぎゅっと拳を握り、応芽へと向き直ると、強気な笑みを浮かべた。
「よおし、まずはあたしの弟子であるこいつが、お前と戦う! こいつごときに勝てないようじゃ、あたしと戦う資格なんかねえからな」
といわれて、飛び上がったのはアサキである。
「えーーっ! 自分がバスケ苦手だからって、押し付けないでよおお!」
勝負事に巻き込まれたアサキは、泣き出しそうな顔になって猛抗議だ。
「こ、声がでけえ! つか苦手じゃねえよ!」
「嘘だあ。だって体育の時、バスケ部でもない確か手芸部のタマキちゃんから奪えなくて、イライラして殴ってたじゃん」
「よ、よく見てたなお前。つうか味方の恥部を、こんな関西弁女に晒してどうすんだよ! 敵だぞ!」
「ウメちゃんだって味方、大切な仲間だよお」
「うるせえ。とっとと関西弁と戦え! 関東の極道全員が舐められてんだぞ!」
「カズミちゃんがやるのがスジだと思うけどなあ。そもそもわたし、ルーツは九州だし」
などと、関東モンとルーツ九州が、戦う戦わないで揉めているのを見て、応芽が、
「あたしは別に、どっちが相手でもええねんで。負けへんし」
ふふん、と鼻で笑った。
「だってよ。よかったなアサキ。よおし、そのちっちゃい胸を精一杯張ってえ、天三中代表として大阪代表を蹴散らしてこおい!」
背中をばあんと叩いた。
「いたっ! 意味分かんない! わたし最初っから嫌だっていってるのにい」
渋るアサキ。
「お願いします! ちょっと、ちょっとやってくれるだけで、いや、ムチャクチャ本気でやって欲しい。そ、そうだ、ハナキヤのケーキおごるから一番安いのだったらおごるからっ」
「しょうがないな。そんないうなら、やるだけやってみる。やるだけだからね。ハナキヤのケーキは、いらないよ」
「あざーっす! 助かる。うちの経済的にも助かる。おい、慶賀応芽、ウメ、関西女、あたしの一番の子分が、これからお前のことをボコボコにするから土下座する覚悟しとけ!」
カズミは、どばーんとかっこつけて応芽を指さした。
「子分とかちっちゃい胸とかいうから、やめようかなあ」
すっかり不貞腐れて、やる気のなさそうなアサキの顔。
「お、おっきくなるっ、いつか多分っ! 先輩っ! アサキ先輩! 師匠! 先生っ! ほんとお願い。ほんとお願いっ!」
カズミの方こそが土下座してしまった。
それどころか、ガスガスガスガス削岩機のように、頭を床に打ち付け始める始末。
「分かったよ、もう」
そんな頭を下げまくるくらいなら、最初からウメちゃんに対して無意味な敵対心を持たなければいいのになあ。
と、アサキはそんなことを考えながら長いため息を吐くと、応芽へと向き直った。
「それじゃあ、そんなわけなので、親交温める試合ということで、お手柔らかにお願いしまあす」
アサキは苦笑しながら、深々と頭を下げた。
「いいや、恨みはないけど本気でやらせてもらうで、令堂和咲。ウォーミングアップかつ圧勝して、次は、そこのくっそムカつく顔の女をぶっ潰して、泣きっ面を腹を抱えて笑ってやるんやからな」
「物騒なこというのやめようよお」
そもそも本来わたし関係ないのにい。
まったく、二人ともさあ。
「構わねえ、いわせとけ! 調子に乗ってる分だけ、吠えづらかくことになるからなあ。生き恥をさらしてやるぜえええ! 荷物をまとめて関西に帰るならいまのうちだあああ!」
ドガガガガとマシンガンのごとく大声強気で吠えまくるカズミ。
そもそも、アサキと応芽のバスケの実力をなんにも知らないというのに、何故にして彼女はここまで強気になれるのであろうか。
「そんなこといってえ、わたしが負けたら、種目を自分の得意なのに変えるつもりでしょお」
という理屈のようで。
「よ、よく分かっ……そんなセコイことしねえよ!」
「どうだかなあ」
などとカズアサ漫才を繰り広げていると、待たされている応芽が痺れを切らしてきたようで、
「やるならやるで、はよ始めるで!」
だん、と踵で床を蹴った。
「じゃっ、ナルハが笛吹くね。ワンゴール1点、だからスリーポイントも無しで。それでは天王台第三中学校杯争奪バスケットボールワンオンワン、開始! ピーーーッ!」
平家成葉が右腕を高く上げ、笛の音を真似て叫んだ。
令堂和咲と慶賀応芽によるバスケットボール、ワンオンワン、勝負開始である。
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