魔法使い×あさき☆彡

かつたけい

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第四章 カズミちゃんはアイドル?

10 「だからって、なんでお前が目指すんだあああああああ

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「だからって、なんでお前が目指すんだあああああああ!」

 あきかずの悲痛な絶叫が轟いた。

「♪ おくのおすなああきらきらあっ ♪ ……特に理由はないけど、カズミちゃんが諦めるのもったいないから代わりにわたしが、って思ってえ。♪ はあてなくうひろがるほひぞらのおおなかああああ ♪」

 ここは学校の屋上。りようどうさきが楽しげな笑顔で、手マイクで歌い続けている。
 
「だからって、よりによってなんでお前が……。こ、鼓膜がっ、脳があ……」

 両耳を押さえて、苦悶の表情で身悶えしているカズミ。

 カズミだけではない、横にいるはるたちも、それぞれ苦行に耐えているような凄まじい顔だ。

「下手を、遥かに、通り過ぎておる」

 治奈が青ざめた顔で、身体をがくがく震わせた。

「これ新種のイジメだよおお」

 成葉が泣きそうな顔になっている。
 いやかなり目に涙が滲んでいる。

「心頭滅却、心頭滅却。臨・兵・闘・者・皆・陣・列……」

 正香が目を閉じ、必死に精神を集中させて、快音波から意識をそらそうと努力している。
 額の脂汗が凄い。

「♪ うわれあえたぁあ奇跡イイイイイイイイ ♪」
「いい加減にしやがれええええええええ!!」

 ボッガーーーーン!

「あいたあっ!」

 頬に魂全力パンチを食らったアサキは、くるくるっと周りながらフェンスに物凄い勢いで顔面直撃して、ずるずるぐでーっと伸びてしまった。

「わたくし、カズミさんの乱暴なところは好きではありません。ですが、今だけは……今だけは感謝致します」

 正香は、ハァハァ息を切らせながら、カズミの両手をがしっと握った。

「このままだったら、あたしたち全滅してたからな。助かっても、脳機能に後遺症が出たりとか。しかしすげえな、こいつの歌声。ヴァイスタ倒せるんじゃねえの?」

 ブーーーーーー

 五人のリストフォンが、一斉に振動した。

「ヴァイスタ出よったって」

 治奈が、いち早くリストフォンの画面を開き、出現位置の確認をしている。

「カズにゃんが余計なこというからあ」

 成葉、不平顔で糾弾だ。

「あたしが呼んだわけじゃねえよ! つうか、そうだとしたら張本人アサキじゃねえかよ!」
「昼でも出るんだあ」

 張本人が、ゾンビのごとくむくーっと上体を起こした。

「出るよ。一回、戦ったことあんだろが。平日に学校を抜け出して、ってのは、お前は今日が初めてだろうけど」
「そうか、日曜の昼に戦ったっけ」
「……はい。分かりました。すぐ向かいます。後で報告します。ほいじゃ」

 リストフォンでぐろ先生との通話を終えた治奈は、振り返りみんなの顔を見回しながら、

「あとのことは先生に任せて、うちらは行こうか」

 左腕を立てると、カーテンを開くようにすっと横へ動かした。
 と、その瞬間、その姿が消えていた。

 同じ場所にある異なる空間、くうへと入ったのである。

「お先っ」

 続いて、成葉と正香の姿も消えた。

「うっしゃ、やるぞお!」

 カズミは、アサキの肩に腕を回すとぐいと引き寄せた。

「なるべくフォローはしてやるから、未熟モンは無茶だけはせずしっかり経験を積め。分かったか?」
「うん。頼りにしている」

 微笑を浮かべるアサキ。

 カズミの顔にもくすぐったそうな可愛らしい笑みが、でもそんな自分に照れたように、ニヤリ粗野な笑みへと作り直した。

 肩を組んだまま、二人の姿も異空へと消えた。
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