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第五章 それはまるで冷たい底なし沼のようで

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     1
 はなさきつぼみは、と向かい合うとすっと腰を軽く沈めた。
 向かい合う二人。

 ころ、と花咲蕾はボールを足の裏でなで転がした。
 次の瞬間には、多田ロカの脇を抜けていた。文字通りに、ボールが足に吸い付いていた。

「さすが主将や! っとあかん」

 高木双葉は相手チームの素晴らしいプレーに思わず感嘆の声を上げると、慌てて踵を返し守備に戻った。

 主将である花咲蕾は、ピッチ脇でずっと腕組みしていることが多く、紅白戦にも参加しないことが多い。
 しかしいざこうしてピッチに入れば、その実力は双葉のいう通りさすがというしかない実にハイレベルなものであった。

 このような小柄な身体の、どこにそんなパワーが秘められているのか。
 花咲主将は、さらにフィクソであるくちを抜いて、ゴレイロづかの守るゴールへと一直線。

「来いやおらあ!」

 二年生の戸塚真理の雄叫び。
 普段はやたらおとなしい彼女であるが、試合が始まると人が変わるのだ。主将を主将とも先輩とも思わぬ態度で、ゴール前で腰を落とし両手を広げ、睨み、叫び、威嚇した。

 花咲蕾は、タイミングをずらしにかかるような仕草を見せたその瞬間に、シュートを放っていた。
 ゴールネットが揺れた。

 なんの変哲もない正面からの正直なシュートであるというのに、戸塚真理は勝手に感覚や判断を乱して、簡単にゴールを許してしまっのだ。

FPフイールドプレーヤーが簡単に突破されたことが原因だから、別にツカマロは落ち込まなくていいよ」

 花咲主将はドンドンと拳で床を叩きつける戸塚真理を慰めると、くるりFPたちの方へと振り向いた。

「相手が個人技だけで攻めてくることはそうそうないだろうけど、もし攻めてきたら佐原南ってこんな脆い? いや、単なる想定の問題。個人で抑えるのか、止められそうもないのならもっと声を掛けるか、選択肢から最適なものを取り出す訓練を常にしておかないと。身体は休ませないと育たないけれど、頭はいつも働かせておくこと。それじゃあ、このチームはこれで終了。交代」

 それほど大きくはないがよく通る声で、部員への指示を出した。

「ああ、そうそう、いまの話ムクチは別。考えなくていいから、もっと個人技を高めること。体力は無駄に余っているんだから、とにかく練習。ない頭であれこれ考えないでいいから、とにかく運動能力を上げること。俊敏な選手に振り切られる傾向があるからね」
「……はい」

 ボロボロにいわれて、武朽恵美子は肩を縮めて小さくなってしまった。

「ははっ、これ見物やで良子」

 あの横暴で乱暴で顔がゴリラな武朽先輩が、ない頭などといわれても反論出来ずにしゅんとしている。そんな姿に、高木双葉は鼻で笑った。

 しかし、しんどうりようからはなんの反応もなかった。床に体育座りをして膝に顎を埋めており、なんだか視線うつろであった。

「良子、良子……良子ってば! なあにぼけっとしとるんや。おい、良子! シャク!」

 双葉が何度も呼び掛けているうち、ようやく良子の目が少しだけ大きく開かれた。
 そーっと首を動かし、双葉の顔を見ると唇を薄く歪め、にんまりと笑った。

「今日も双葉ちゃんの漫才面白かったあ」

 それだけいうと、またどんより沈んだような表情に逆戻り、膝に顎を埋めた。

 誰も漫才なんか、しとらへんのに……
 双葉は困ったような表情で、頭をがりがり掻いた。

     2
「シャクから、なにも聞いてない?」

 脚のガタついた椅子に座って腕組みをしているのは、三年生のはなさきつぼみ主将である。

「はあ。特にはなにも」

 たかふたはドアの前に立って、人差し指で鼻の頭を掻いた。
 シャクというのは、しんどうりようの部活でのコートネームである。先輩たちは、普段から後輩をコートネームで呼ぶことが多いのだ。

 ここは女子フットサル部の部室である。
 現在ここにいるのは、花咲蕾主将と高木双葉の二人だけだ。

 いつもは狭くてカビ臭い部室であるが、二人きりだと広くてカビ臭い。

 双葉がどうしてこんなところで鼻の頭などを掻いているかというと、新堂良子について聞きたいことがあるからと主将に声を掛けられたのだ。

「なら、小中学生の頃のこととか、なにか自分の過去を話していたことはないかな?」

 花咲主将は眼鏡レンズの奥にある切れ長の目を、双葉へと向けた。

「いやあ、どうなんでしょう。中学ではよく下手なのを先輩に怒鳴られたり後輩にからかわれたりしていたゆうのは何度も聞きましたけど、それ以外は特になにも聞かされた記憶はないです」
「そうか」

 花咲主将は腕組みを解いて、眼鏡のフレームを摘んでくいと持ち上げると、また腕組み体勢に戻った。

 そうか、主将も良子の様子がおかしいことに気づいているんやな。あの明るい良子が、なんだかどんより沈んでしまっているということに。

 双葉はちょっとだけ感心していた。

 単なる冷たいだけの先輩かと思っておったけど違うんやな。
 ほなら同級生の彼氏がおるって噂も、絶対に嘘やろ思っとったけどほんまかも知れへんな。
 ほなら、いつも無表情で笑うことない主将やけどもいざ笑うと崩れた妙な顔でなかなか止まらず腹をかかえてゴロゴロ転がり回るいう噂もほんまなんかもなあ。

「ほんまじゃない!」
「うわ。すみませんっ!」

 双葉は飛び上がるように肩をびくり大きく震わせると、ふうとため息をついた。

 また、独り言いうてしもうた。
 くそオカンめ、いらんこと遺伝させおって。

 花咲主将は、珍しく声を荒らげてしまったことが恥ずかしかったのかこほんと咳払い。

「ただし、同級生の彼氏がいるというのは噂ではなく本当だ。いたらおかしいか?」
「あ、うちそんな前の部分から口に出してしまってました? いやいや、全然おかしくないです。きっと素敵な彼氏さんなんやろなって思います。だって主将が選んだ人ですもん、誰だってそう思いますやん」
「練習量を減らしてもらおうとしているんなら、無駄だからな」
「ああ、ばれました? それはそうと、主将も気づいとったんですね、良子の様子がおかしいって」
「まあな。これまで下手なりに集中はしていたけれど、最近その集中力がさっぱりだったからな。ことごとくが上の空で。でも、あいつの過去になにがあったのかを知りたいというのは、前々から思っていたことだ」
「ひょっとして、あれですか? おか中学出身のくせに全然上手やないってことですか?」
「そう。あの下手さは不自然だからな。いや、わざとやっているとは思わないけれど、とにかく腑に落ちない」
「だから中学校で、もしくは小学校でなにかあったんやないかってことですよね? 実はうちも、まったく同じこと考えてました」
「そうだと思って、なら親友のお前なら色々と聞き出せているかなということで、こうして呼び出したんだけどな」
「……すみません。親友や思うとりますけど、でもなにも相談は受けてません」

 双葉は、ちょっと傷ついていた。
 友情レベルを低く見られているような気がして。
 それと、確かに良子がなにも話してくれないということに。

 でも、人間なんて話したくないことなんかいくらでもあるやろ。
 根掘り葉掘り聞き出そうとすることが友情やないで。

「いや、別に友情レベルが低いとか、強引に聞き出せなどとはいってないし思ってもいない。気に障ったのなら謝る」
「あ、ああっ、こっちこそ、すす、すみません!」

 まったくもう。また思っていることを口に出してしまった。もう嫌だ、この癖。へんなの遺伝させるな、アホおかん!

「特に相談を受けてないなら、それでいい。暖かく見守っていて欲しい」
「はい」

 主将、目の前で人が死んでも動じなさそうな感じに見えるけど、結構あったかい人やねんなあ。

 と、改めて花咲主将を見直す双葉であった。

 まあとにかく主将のいう通りや。
 良子はきっと、ゆっくりと時間をかけて、自らのあの明るさで問題を解決させて立ち直っていくはずや。
 心配あらへん。
 いずれにしても、いまはただ見守るしかない。

 しかし後日、二年生の暴走によって良子の秘密が強引に暴かれることになるのであるが、この時点では主将も双葉も当然知るはずのないことであった。

     3
 成層圏同盟第三回秘密特訓!

 は、特段なにをすることもないままコート使用時間が終了した。

「双葉ちゃん、留美ちゃん、ごめん!」

 田畑の間の未舗装路を通って潮来いたこ駅への帰路の最中、一番後ろを歩いていた新堂良子は不意に立ち止まると、申し訳なさそうに深く頭を下げた。

「なあに、急に」

 留美も立ち止まり、振り返った。

「だって、あたしのせいでせっかくの練習が……」
「そんなん気にしない。はよ歩かんと電車のうなるで」

 双葉は振り返ることなく、歩き続けた。
 一見さばさばとしている双葉の言動。しかしこれは単なる演技であり、心の中ではうじうじ考えてため息をつきまくるような状態であった。

 秘密特訓のために茨城まで来たはいいが特訓どころかごくごく普通の練習にすらならなかったのであるが、確かにすべての原因は良子にあるといって過言ではなかった。

 集中力の欠如なら可愛いものであるが、今日の良子はそんなレベルでは語れない酷いものであった。
 パスがきても受けようとしない。というか、そもそもボールを見てもいない。
 声を掛けた瞬間だけは走るが、すぐに止まってしまう。ゼンマイ仕掛けの幼児のおもちゃの方が、遥かに走るだろう。
 さらには、なにもないのに転ぶ。
 たまにゼンマイ自動車より長く走るかと思えば、まったく関係ない方へと向かってしまう。フェンスに激突してようやく気づいたことも一度や二度でなかった。

 双葉と留美の二人は、良子の状態が悪いことなど充分承知の上で、むしろそうであればこそ友達だけでボールを蹴れば気も晴れるのではと強引に連れてきているわけで、面と向かって文句をいうことも出来なかったのであるが。

 とはゆうもののなあ、まさかこうまで沈没を続けるなどとは思わへんしなあ。別に、せっかくここまで来たのにとか、そんなんどうでもええけど、こうずっとどんよりとされているとこっちまで引っ張られるわあ。
 ハイテンションでどっかーんやのうて、ローテンションでずどどーんや。

 双葉は、心の中でそんな愚痴を呟いていた。
 ふさぎ込んでいる良子に歯痒さを感じ、それが蓄積されてなんともいえない不満がいつしか内面に生じていたのである。
 心の中とはいえなるべく考えまいとしていたことであるが、一度胸に呟いてしまうとなかなか止まらなかった。

 悩んでいるんなら、相談してくれればええのに。
 誰かに話せば楽になるかも知れへんやん。
 水臭いなんてもんじゃないわ。
 なにに意地になってフットサルにしがみついとんのか知らんけど、でもこんなんじゃあフットサルやってないも同じやん。
 こんなん続くんやったら、さっさとやめた方がええわ。時間の無駄や無駄。

「双葉!」

 留美が小声で、しかし強く叱咤するような声で双葉の名を呼んだ。

「あ」

 双葉は立ち止まった。
 振り返り、恐る恐る良子の顔へと視線を向けた。
 良子も立ち止まって、呆然とした表情で双葉の顔を見つめていた。

 あかん。
 双葉は心の中で、自分の頭をぽかんと殴った。
 どうやら、また思っていることを口に出してしまったらしい。どこまで喋ってしまったのか分からないが、とにかく良子への愚痴を。

「あ、あんな、良子、これは……」

 別に本心やないで。フットサルやめればいいとか、別にそんなこと思ってないで。うちは、うちはただ……

 口に出すまいとしていることはすぐ口に出すくせに、出そうと思う言葉がなかなか出ずに、頭の中だけで一生懸命弁明の言葉を吐き続けていると、

「そうだよね」

 良子はうつむいたまま、ぼそりと弱々しく震える声を出した。

「フットサルをやめたって、おんなじことだよね。……もともと、いないもおんなじだったんだし」

 寂しそうな微笑。
 その目には、うっすらと涙が溜まっていた。

「同盟は……同盟はどうなるん?」

 自分で良子の買い言葉を引き出しておきながら、双葉は語気強く詰め寄っていた。

「フットサルが飯より好きってのが同日同じ教室に集まった奇跡から生まれた同盟やで。奇跡は大袈裟や思うけど、でも良子そういっとったやん。奇跡や、運命やってゆうとったやん。うちら、そうした奇跡の出会いで繋がった仲間やん。そんな勝手にやめるいわれて、うちらはどうなるん? というか、うちらのことなんや思うとるん? これまで、なんや思うとったん?」

 良子の両肩に手を置くと、思わずぎゅっと強く掴んでいた。
 痛みに顔を歪める良子に気づき、慌てて手を離した。

「……ごめん」

 良子は消え入りそうな声を出し、双葉へと小さく頭を下げた。

「あ、ああ、うちかてごめんな。痛かったやろ。でも、辞めるなんて簡単にいわんといてや」
「そうだよ良子。仮にフットサルから離れたとして、それで友情がどうこうなるわけじゃないけれど。でも良子、フットサルが好きなことなら誰にも負けないっていってたじゃないか」

 留美が続いた。

「せや、あの言葉は嘘か? なんか悩んどるんなら、話してみたらええやん。相談に乗るから。な? 友達やろ、同盟の仲間やろ」
「……別にさっき話したこと以外に悩みなんかないよ。下手だから、上達しないから、だからやってても仕方ないかなって思っているだけ。前々から思っていたことなんだ。双葉ちゃんにはっきりいわれて、なんかすっきりしたよ」

 そういうと、また良子は寂しそうに笑った。

 嘘をついている。
 双葉はそう確信していた。

 フットサルが大好きで大好きで、下手だろうが笑ってとことん頑張るのが本当の良子だ。

 ふと、双葉は激しい後悔の感情に襲われていた。
 そっと見守る。花咲主将とそう約束したはずなのに。自分の無責任な言葉のせいで、良子が余計自分の殻に閉じこもってしまったのだから。

 もしかしたら放っておけば自分から復活して、あの無邪気で明るいこっちまで元気のもらえるような魅力的な笑顔を見せてくれたかも知れないのに。

「ごめんな……」

 双葉はずっと鼻をすすった。

「良子、ほんまごめんな……」

 滲み出る涙を、袖でごしごしと拭った。

 良子はそうした親友の態度に返せるものがなにもなく、ただうつむいて唇をきゅっと結んで立ち尽くすのみだった。

     4
 たかふたの住む家は、佐原南高校と佐原駅との中間地点にある。
 学校がぐねぐねと坂を上りきったところにあるため、いわば山の中腹だ。
 遅くまでの部活練習後に遊びに出掛ける気力もないため普段は山頂と中腹を往復するだけの日々であるが、今日は久しぶりに麓への下山をしていた。

 今日は日曜日。
 これからしんどうりようの家に遊びに行くのである。
 遊びに行って、フットサルと関係のない話をたくさんするのだ。

 それくらいしか、すっかりフットサルに対して心を閉ざしてしまった新堂良子を慰める方法を知らないから。

 一体なにに悩んでいるのかを少しでもいいから教えてくれれば、もっと他にやりようがあるのかも知れないけれど、本人が頑なまでに話すことを拒んでいるのだから是非もない。

 双葉はデニムのショートパンツにTシャツ、ボーダーの靴下、頭には野球帽というラフな姿で、俗に小江戸と呼ばれる佐原駅南口近辺の町並みの中を歩いていた。

 お城の壁のような、白塗りの古風な建物が林立するところである。
 カメラを持った外国人や老夫婦の姿がちらほら。
 川沿いには蔵のような建物が並び、水面を見れば船頭の案内で川を遊覧する小舟が行き交っている。
 佐原は人でごった返すようなことこそ稀であるものの、れっきとした観光地なのである。

 そんなささやかな観光地の、赤レンガの洋館を通り過ぎようとした時であった。

「お、すげえドンちゃん! 神! あたしアイスの当たり棒なんて初めてみたあ!」

 双葉のよおく知っている、わざわざ日曜日にまで聞きたくもない声が耳に飛び込んできた。

 ゆずであった。
 川沿いのベンチにどんだいようと、私服姿で座っている。

「最悪や。いやあなもんを見かけてしもた。気づかん振りしてとっとと通り過ぎよっと」

 双葉は帽子を目深に被り直して足の回転を速めたところ、今度は鈍台洋子のほがらかな大声が聞こえてきた。

「ええ、あたし小学生の頃に何回か当てたことあるよお。今度行った時に交換しよって思って、いつも忘れてなくしてしまって一回も交換したことないんだけどお。……って、あれ……双葉ちゃんだ! おーーーーい! 双葉ちゃん! どこいくのお! ふったばちゃーーーん!」

 その地球の裏にまで突き抜けそうな大声に、双葉は肩をすくめてびくうっと飛び上がった。

 なんで見つけるんや!
 帽子だってこんな深く被っとるのに!
 つうか、そもそもなんで声を掛ける? こっちが足早なことに気づけや! ったくドンちゃんは名前の通り鈍いなあ。もう無視や、無視。他人他人。

 と、さらに足の回転速度をアップさせようとするものの、こう何度も名前を呼ばれぶんぶんと手を振られたからには無視するわけにいかなかった。

「お、おう、ドンちゃん、と余計なの」

 まったくの不本意ではあったが、双葉は歩いていた通りから川沿いの細道に入り、二人の座っているベンチへと近寄って行った。

「余計なのは余計だよ」

 九頭柚葉は腕を組み足を組み、双葉の顔をねめつけた。

 鈍台洋子はオーバーオールで中はTシャツ、柚葉はノースリーブのニットに黒いナイロンのミニスカートという服装だ。

 双葉は柚葉の姿をじろり下から上へと怪訝そうな表情で見回しながら、

「お前、そんな格好するんやな」
「ま、足が長いからねえ」

 柚葉はふふんとすました表情ですっと立ち上がり、右足をベンチに乗っけると、

「羨ましいか。見よこの美脚!」

 ミニスカートの裾をずらして、大きく太ももを露出させた。

「うわあ、アホウっ、パンツ見えとる見えとる! 通行人おる! めくりすぎや。変なもん見せんな!」

 双葉は柚葉の姿を観光客たちから隠すよう、立ちふさがった。

「変なもんとはなんだこの関西弁! ピチピチ女子高生のありがたーい素足だぞ」
「擦り傷だらけやないかい!」
「そんなことないよ! ほらあ!」

 柚葉はまた自分のスカートをめくり上げようとした。

「だから、めくんなボケ! それにピチピチ女子高生いうんやったら、うちかて同じや」
「同じじゃありませーん」
「同じですー、つうかもっとレベル上ですー」
「ぷっ」
「笑うな! お前、足が長いというより単に背が高いだけやないか。誰が羨ましいか、このド貧乳」
「あああっ、いってはならぬ一言をお。地獄見るぞてめえええ」
「おお、見せてみい見せてみい。はあ、なんにも考えんアホは気楽でええなあ。そんなことで悩んだり怒ったり出来たりして」
「ね、なんかあったの? 双葉ちゃん」

 ベンチに座っている鈍台洋子が、ようやく会話に割り込むタイミングを見つけた。

「あれだろ、良子ちゃんの件だろ」

 柚葉もベンチにどっかと腰を下ろした。
 片足高く持ち上げ、乱暴に片あぐらを組んだ。

「まあな。お前どう思う? ゴレイロとして、良子を後ろから見とって」

 双葉は、はすに構えたままちらり柚葉へと視線を向けた。正面から堂々と視線を合わせてこのような真面目な話をするのもなんだか恥ずかしくて。

「聞くまでもない。酷いね、最近。以前はとりあえずフットサルはやっていたけど、いまはやってないもんな」
「やっぱり貧乳もそう思うか」

 双葉は、ふうと小さく呼気の声を漏らした。

「あたし初めはね、フットサルの伸び悩みに落ち込んでいるのかなと思ってたんだ。でもそれは以前からなわけで、あんな突然にふさぎ込むのもおかしな話だよな。だからきっとさ、プライベートでなにかあったことフットサルとの相乗作用じゃないかな。タコ焼き屋は、なにも聞いてないの? 同盟結んでいる親友なんだろ」
「あいつな、どんだけ尋ねても、なんでもないの一点張りで口を割ろうとせんのや」
「そうか。ま、そこでどうするべきかはお前らが解決すべき問題だよな。あったしはあ、なあんにも考えないアッホだからあ♪ じゃあな、去れ去れ」

 柚葉は頭の後ろで腕を組んで踏ん反り返ると、長い足を片方伸ばして双葉に対して犬猫を追い払うような仕草で振った。

「くそ、むっかつくな」

 でも構っていても仕方ない、と双葉が去りかけたところ、

「双葉ちゃん、あたしもそれとなく良子ちゃんのこと注意しとくようにするから」

 鈍台洋子がニコニコ笑顔のまま、あるのかないのか分からないような首をぐりりと動かし双葉へと向けた。

「ああ、ありがとなドンちゃん。ええ子やなあ、どっかのアホと違うて」

 時間食った、さあ、はよ良子のとこへ行かな。
 双葉は踵を返し、歩き出した。
 その瞬間、背後からの意外な言葉にその足をぴたり止めた。

「なにがあっても、絶対に見捨てんなよ」

 九頭柚葉の言葉であった。
 双葉はゆっくりと振り返っていた。意外な台詞を吐いた彼女がいったいどんな表情をしているのか、思わず確かめたくなったのだ。
 柚葉は、洋子の身体を使って無理矢理体制で頬杖ついて、とぼけるように明後日の方を向いていた。

「見捨てるわけ、ないやろ」

 双葉はぼそりというと再びくるり向きを変え、今度こそこの場を去った。

 見捨てるわけ、ないやろ。
 外国人観光客の集団を避けながら、今度は心の中にその言葉を呟いていた。

 そもそも良子がフットサルを続けようが続けまいが、もう自分たちは親友だ。同盟だ。見捨てるも見捨てないもない。もう縁は繋がっているのだ。
 良子がなにかに困り、まいってしまっているのであれば、笑わせて元気づけてやるだけだ。

     5
 と、決意あらたに新堂家を訪れた双葉であるが、
 良子のあまりの手応えのなさ覇気のなさに、さすがに虚しさを覚えずにはいられなかった。

「なにごとも継続や継続。一番辛いのは良子なんやからな。なにがあったか知らんけれども、まずは元気をつけさせることからや」

 すっかり日の暮れた時間、良子の家を出た双葉は独り言を小声でしきりに繰り返しながら家路へとついた。

 そんな双葉の親友への気持ちを、根本から無茶苦茶に破壊されるような事件が起こるのであるが、まさかこの時点でそんなこと想定しうるはずもなかった。

     6
 しんどうりようは、双葉たちの前で相変わらずの新堂良子であり続けた。ゆずいうところの「下手だけどフットサルを頑張る良子」ではなく、「フットサルをやっていないも同然」の最近の良子である。

 良子が一学期一杯でフットサル部を退部する予定であること、たかふたあしは本人から聞かされている。他にこのことを知っているのは、主将のはなさきつぼみだけだ。

 理由は不明なままであるが、とにかくあれだけフットサルを大好きだった良子が、いまやその正反対にここまで恐れる対象になってしまっているのだ。退部も仕方ないのだろう。

 双葉としては、なんともやるせない気持ちであるが。
 親友だと思っているのになにも聞かされず、親友だと思っているからこそただ黙って見ているしかないのだから。
 きっと、留美も同じ気持ちでいることだろう。

 以前は練習でミスをするたびに先輩から容赦ない罵倒の言葉を浴びせられていた良子であるが、最近はほどんど怒られることがなくなっていた。

 みんなもう見放しているから?
 いや、きっと主将命令によるものだろう。

 双葉はそう思っていた。
 フットサル部に残ってくれることを信じてかどうかは分からないが、とにかく主将は良子の技術が伸びない理由を精神的な問題と捉え、弱った状態を叩くことでさらに落ち込むことのないよう気を使っているのではないか。

 ただし、ミスしてもきつく叱るなとか、その程度にしか二年生三年生に話していなかったのだろう。
 でもそれは一部の人間に「何故?」という興味を与えてしまうことになった。

 そうとしか考えられない。
 だって……

 それはある日のこと、練習開始直前に体育館で一年生が用具室とコートを往復して練習の準備をしていた時であった。
 高木双葉は、新堂良子と一緒にラダートレーニング用のハシゴを運んでいた。

「一日大雨やいうてたけど、佐原は降っとらんなあ。って、ここ屋根の下やねん」

 などと双葉が下らない冗談をいい、良子が暗い表情を引きつらせてなんとか笑みを浮かべるという、ここ最近よく見られるやりとりを二人がしていると、二年生のくちが体育館に入ってくるや二人の方へと足音荒く近づいてきた。

「おい、シャクレ。これ、どういうことだよ?」

 良子へと、鼻息荒く尋ねた。
 シャクレとは、新堂良子のコートネームであり、先輩たちが普段の呼び名としても利用しているものである。

「なにが……ですか」

 きょとんとしている良子の眼前へ、武朽恵美子は一枚のコピー用紙を突きつけた。

 それがなんであるのか認識した瞬間、良子の目は大きく見開かれていた。
 ひっと息を飲んでいた。

 ぶるぶるっと身体を震わせると、無意識か否か自身に突きつけられた紙を武朽美恵子の手ごと激しく払いのけていた。

 コピー用紙は、はらりはらりと印刷面が上になって床に落ちた。
 新聞記事の抜粋であろうか。
 運動競技のユニフォームを着た幼い女の子たちが、抱き合って喜びを爆発させている写真。
 輪の中心で揉みくちゃにされ荒い祝福を受けているのは、いまよりずっと幼いとはいえ、果たして誰が見間違うであろうか。
 それは、新堂良子であった。

 見出しは長文で、次のように書かれている。

 新堂? 神童? 開始三秒弾、全試合複数得点、全試合アシスト、FKゴール数、大会個人記録を次々と塗り替え優勝に大きく貢献!

 双葉は、はっとしたように顔を上げて良子へと視線を向けた。
 良子は辛そうな悲しそうな表情で、どこを見ることもなくただ息荒く胸を押さえて立ち尽くしているばかりであった。

     7
「なあに、これ?」

 二年生のが、床に落ちているコピーを拾い上げた。
 彼女だけでなくここにいる部員の全員が、この騒動に良子たちのところへ集まってきていた。

「新聞の地方版を、仙台にいる知り合いから送ってもらったんだよ。こいつのさ、このフットサルの神童様のさ、輝かしい功績を讃えた記事だよ」

 武朽美恵子は、いかつい顔をしかめ新堂良子を指差した。

「記事によると、とんでもない実力らしいねえ。その神懸かったドリブルは誰にも止められないとか、三人を相手にしても余裕のボールキープとかさあ。小五にして既におかの監督がラブコールを送り続けているとかさあ。凄いんだねえ、君い」

 武朽美恵子は怒ったような表情のまま、唇の両端を釣り上げてなんとも不自然な笑みを作った。

 ざわついていた周囲であるが、いつしかしんと静まり返っていた。
 わけが分からないながらも状況は飲み込めたので、次に新堂良子がなにをいうのかが気になっているのだろう。
 しかし、良子が発したのは次の一言のみであった。

「その話、やめてもらえませんか?」

 消え入りそうな声。
 これだけ静まり返っていなかったら、例え耳元からであっても聞こえるはずもないような、はかない声であった。

「嫌だね」

 武朽は鼻で笑った。

「つうかやめて欲しいんなら、まずは隠していることを正直に洗いざらいぶちまけろよ。お前さあ、自分がここでなにをしたか分かってんのか? あたしたち全員をな、バカにし続けてたんだぞ! え? 分かってんのかよ、てめえ! 佐原南の実力なんてお前にいわせりゃクソみたいなもんだ、って、ずっとからかってたんだろ? まともに練習する価値もないって思ってたんだろ? それであんな気の抜けたへったくそなプレーをしてたんだ」
「違う!」
「違わないね! 違うってんなら、説明しろよ。さあ、早く! 早く!」

 武朽恵美子はぐいと良子へ詰め寄った。
 良子の全身がぶるぶると震えたかと思うと、膝ががくりと崩れた。

「……あたしは……」

 その場に座り込むと、両手で頭を抱え、なにかから逃れようとするかのようにぐしゃぐしゃと髪の毛を掻き回した。
 いつの間にか、床にはぽたりぽたりと涙の粒が落ちていた。

 それでも武朽美恵子は追撃の手を緩めなかった。

「それで、超名門の日和ケ丘中学ではどうだったんだ? やっぱりそこでも神童様か? 大活躍か? よく怒鳴られてたっていってたけどそれが本当なら、そこでも手を抜いていてバカにすんなって先輩に怒鳴られてたってことか?」
「違う! 違う! あたしは、ただ……」

 いやいやをする幼児のように、良子は首を振った。

「ムクチ先輩、もうやめて下さい! 良子が怯えとるやないですか! 嫌がっとるやないですか!」

 高木双葉が、良子を庇うように武朽美恵子の前に立ち塞がった。そして、きっと顔を睨みつけた。

「知るかよ! こっちはずーっと小バカにされていたんだからな。下手だと思ってあれこれ教えてやっていたのに、こいつの方がなんだか遥かに上みたいじゃんかよ。小学生の時は神童で、中学はあの超名門でさあ。こっちとしたら、恥の上塗りもいいところだ。別にこいつ、怯えても嫌がってもいないんじゃないか? ああ失敗、こんな早くにバレちゃった、って程度でさあ。そうなんだろ、シャクレ。……おい。黙ってないで、なんとかいってみろよ! おい!」
「嫌がっているかどうか……」

 双葉は己の拳をぎゅっと握りしめた。

「良子の態度を見て分からへんのか! このボケエ!」

 びちっ、と鋭いような鈍いような音が周囲に響いていた。

 武朽美恵子は、右手で鼻を押さえた。
 押さえているその隙間から、つっと赤いものが垂れた。
 頬への不意打ちを避けそこなって、むしろ正面から鼻に食らってしまったのである。

「あ……」

 双葉はゆっくりと手を下ろしながら、自分のしてしまった行為に明らかな動揺を浮かべていた。

「なにすんだ、てめえ!」

 武朽美恵子の振り回した拳を側頭部に受けて、双葉の身体は吹き飛ぶような勢いで床に叩きつけられていた。
 双葉は、くうと痛みに呻き声を発したと同時に背中を蹴られていた。そして、馬乗りされて胸倉を掴まれた。

 武朽美恵子は自らの拳を振り上げると振り下ろし、双葉の顔面の中心へと叩きつけた。

「ふざけんなよこら! 謝れ! てめえ謝れ! 殺すぞ!」

 一言ごとに振り下ろされる武朽美恵子の拳。

「いやや、絶対に謝らへん!」

 がすがすと打ち込まれる拳の隙間から、双葉の必死の抵抗が聞こえた。

「もうやめましょうよ、先輩」

 芦野留美が割って入ろうとしたが、すっかり興奮してしまっている武朽美恵子の野獣のごとき怪力をどうにも止めることが出来ない。なおも頑張って、なんとか双葉の腹の上にどっかと乗っかるその巨体を引き剥がそうとしたが、

「邪魔すんな!」

 胸倉を掴まれ引っ張られ、床に押し倒されてしまった。芦野留美も腕力は強い方であるが、武朽美恵子の前では赤子も同然であった。

 武朽美恵子の興奮はおさまることを知らず、自分が跨がっている高木双葉の襟首を掴んで、がくがくと揺らした。

「謝れよ!」
「……いややって、なんべんいわすねん。……間違うとるんは、そっちや」

 双葉は、半ば意識を失いかけながらも、気力を振り絞ってなんとか耐えていた。

 ここで簡単に気など失っていたら負けだ。
 腕力ではとてもかなわないけれど、少しでも抵抗してやらないと。
 良子のためにも。

 そう思い、必死に耐えていたのである。

「また殴るぞ!」

 野獣は右腕を高く振り上げた。

 と、その時である。
 誰かがその巨体、背中をぐっと踏み付けていた。

「おう、いい加減にしろよ、このクソゴリラ」

 九頭柚葉であった。

「誰がゴリラだあ!」

 怒気満面に立ち上がった武朽美恵子は、自分の背を踏み付けたのが一年生であることを知ると、怒気を顔だけでなく全身から蒸気のごとく噴出させて柚葉へと殴り掛かった。

 柚葉は冷静であった。
 迫る拳を紙一重でかわすと、一瞬にして腕を捻り上げていた。

「いててて。くそ、離せ!」

 腕力自慢の武朽美恵子が力任せに身体を捻って押さえ込まれているのを振りほどこうとするが、どうあがいても逃れることが出来なかった。柚葉はさして力を込めているようにも見えないというのに。

「離してもいいですよ。背中を踏んだことも、後でぶっ飛ばしてくれても構いません。でもその前に先輩、こいつらに謝ってもらえます? 踏み込まれたくないとこにずけずけ踏み入ろうとしたことと、それを守ろうとした者をここまで殴って傷つけたことを」

 いつもふざけた表情の九頭柚葉からは想像つかないほど、その顔は不満、怒りに満ちていた。

「ふざけんな! なんであたしが謝らなきゃならないんだよ!」
「ふざけてんのはてめえの態度とその顔だよ、このゴリラ。いざって時に下級生を守れない先輩なんて必要ねえんだよ! このまま腕へし折ってやろうか? ああ?」

 柚葉は掴んでいる腕を、ますます力を込めてぎりぎりと締め上げた。

「いてててて、くそ!」

 武朽恵美子は激痛に顔を歪めながらも、腰を捻ってなんとか逃れようとするが、生じたスペースの分だけ柚葉が詰めてきて蜘蛛の糸に絡まった昆虫のようにどうしても逃れることが出来なかった。

「なんの騒ぎだ!」

 体育館に入ってきた主将のはなさきつぼみが、早足でこちらへと歩み寄りながら一喝、部員たちのざわめきがぴたりと止まった。

 柚葉は、押さえ付けていた武朽恵美子の手を離し、どんと背中を突き飛ばした。

 花咲主将は、頭を抱えてぶるぶると震えている新堂良子、倒れて苦悶の表情で呻き声を発している高木双葉をちらりと見ると、続いて床に落ちているコピー用紙に顔を向けた。

「これは……誰が?」

 静まり返った中、ぼそりと小さな声で質問した。

「ムクチ先輩が、それを持ってきて、良子ちゃんに突き付けて……」

 一年生のしげみつが答えた。普段は迷惑なほどに大きな声の香奈美であるというのに、この雰囲気にすっかり飲まれてしまって消え入りそうなほどに小さな声であった。

 主将は、眼鏡の奥の冷たい眼光を武朽恵美子へと向けた。
 びくりと肩をすくめる武朽恵美子へと静かに近づいて、その前に立った。

 ぱん
 と大きな音が響いていた。

 武朽恵美子は信じられないといった表情で、自分の顔へゆっくりと手を持っていき、そっと頬を押さえた。
 そのまましばし呆然としていたが、突然花咲蕾を睨みつけ、激しく足を踏み鳴らした。

「部のためを思ってやったことなのに。佐原南を舐められちゃいけないと思ったから。だから……」

 もう一度激しく床を踏み鳴らすと、突然走り出した。
 ののしるような汚い言葉を吐きながら、体育館から飛び出してしまった。
 残るは静寂ばかりであった。

 その静寂の中、

「さ、練習!」

 花咲蕾主将は外観のイメージ通り、どこまでも冷静であった。
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