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過去編2・フジサカ・シアン
しおりを挟む僕はミサキの事が好きだ。ミサキは綺麗で綺麗で綺麗で、あと優しい。
今日もミサキは僕の部屋で、僕の渡したお菓子を食べてくれている。
星のような形の砂糖菓子を、小さな口に運ぶ。時折のぞく舌と、長い指が色っぽい。
「どうしたの、シアンは食べないの?」
僕の視線に気づいてミサキが聞く。
「うん、僕はお菓子食べてるミサキを見るだけで、お腹がいっぱいになるから良いよ」
「面白いよね、シアンは。僕を見ても、お腹いっぱいにはならないと思うのに」
「なるよ。というか、胸がいっぱいが正しいのかな」
ミサキは僕のベッドの端に座り、優雅にお菓子をつまんでいる。
今、口に入れたのは黄色い金平糖。僕はそれになりたい位だ。
「ねえ、ミサキ、その口のヤツを僕にくれる?」
「え?」
顔を向けたので、頬に手を添えて口づける。
「ん……」
ミサキの口から、僕の口へと金平糖が移動する。
僕は彼の口の中を味わったあとで、唇をはなし、金平糖を齧る。
「ん、美味しいね」
「もう、突然なんだから、君は」
「じゃあ、突然じゃなかったらキスしても良いの?」
「それは……」
ミサキの顔が赤くなっている。
「ねぇ、キスしても良いの?」
甘えた声でミサキの首にしがみついた。
「じょうがないな、シアンは」
ミサキは僕の唇にキスをした。体が溶けそうな位気持ちが良かった。
優しくて綺麗なミサキ。早く僕のモノになっちゃえば良いのに。
「ね、ミサキ、エッチしようよ」
「……」
ミサキは黙り込んだ。
「僕、ミサキになら、何されても良いよ。ミサキにだったら、遊びで抱かれるんだって良いと思ってるんだから」
懇願するように言ったら、肩を押されてしまった。
「……そういう自分を大事にしない発言はダメだよ。僕はそういうのは好きじゃない」
ミサキの顔は曇っていた。僕は後悔する。
「ごめん、その、そういうつもりじゃないんだ。ただ僕はミサキの事が大好きで……」
「うん、良いよ。君が本当はすごく真面目な子だって知っているからね。だから自分の事は大事にするんだよ」
優しく頭を撫でられてしまった。子供扱いが悔しいような嬉しいような。
いっそミサキがもうちょっと嫌な奴で、ケンカみたいに何でも言い合えるような関係であったら、僕達の仲はもっと進展したんじゃないだろうかと思う。
言いあいの途中で、ミサキが興奮して僕を押し倒したりなんかしてさ。
ってそんな妄想はまぁ、良いか。
とりあえず、今日もミサキは美しく、僕のお菓子を美味しそうに食べてくれる。
それだけで僕の学校生活は充実した素晴らしい物になる。
きっとこんな日がずっと続くのだろう。
ずっと……。
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