記憶は未だ戻らない(創作BL)

りよ

文字の大きさ
上 下
5 / 5

過去編2・フジサカ・シアン 

しおりを挟む

僕はミサキの事が好きだ。ミサキは綺麗で綺麗で綺麗で、あと優しい。
今日もミサキは僕の部屋で、僕の渡したお菓子を食べてくれている。
星のような形の砂糖菓子を、小さな口に運ぶ。時折のぞく舌と、長い指が色っぽい。

「どうしたの、シアンは食べないの?」
僕の視線に気づいてミサキが聞く。
「うん、僕はお菓子食べてるミサキを見るだけで、お腹がいっぱいになるから良いよ」
「面白いよね、シアンは。僕を見ても、お腹いっぱいにはならないと思うのに」
「なるよ。というか、胸がいっぱいが正しいのかな」

ミサキは僕のベッドの端に座り、優雅にお菓子をつまんでいる。
今、口に入れたのは黄色い金平糖。僕はそれになりたい位だ。

「ねえ、ミサキ、その口のヤツを僕にくれる?」
「え?」
顔を向けたので、頬に手を添えて口づける。
「ん……」
ミサキの口から、僕の口へと金平糖が移動する。
僕は彼の口の中を味わったあとで、唇をはなし、金平糖を齧る。
「ん、美味しいね」
「もう、突然なんだから、君は」
「じゃあ、突然じゃなかったらキスしても良いの?」
「それは……」
ミサキの顔が赤くなっている。

「ねぇ、キスしても良いの?」
甘えた声でミサキの首にしがみついた。
「じょうがないな、シアンは」
ミサキは僕の唇にキスをした。体が溶けそうな位気持ちが良かった。
優しくて綺麗なミサキ。早く僕のモノになっちゃえば良いのに。

「ね、ミサキ、エッチしようよ」
「……」
ミサキは黙り込んだ。
「僕、ミサキになら、何されても良いよ。ミサキにだったら、遊びで抱かれるんだって良いと思ってるんだから」
懇願するように言ったら、肩を押されてしまった。
「……そういう自分を大事にしない発言はダメだよ。僕はそういうのは好きじゃない」
ミサキの顔は曇っていた。僕は後悔する。

「ごめん、その、そういうつもりじゃないんだ。ただ僕はミサキの事が大好きで……」
「うん、良いよ。君が本当はすごく真面目な子だって知っているからね。だから自分の事は大事にするんだよ」
優しく頭を撫でられてしまった。子供扱いが悔しいような嬉しいような。
いっそミサキがもうちょっと嫌な奴で、ケンカみたいに何でも言い合えるような関係であったら、僕達の仲はもっと進展したんじゃないだろうかと思う。
言いあいの途中で、ミサキが興奮して僕を押し倒したりなんかしてさ。
ってそんな妄想はまぁ、良いか。

とりあえず、今日もミサキは美しく、僕のお菓子を美味しそうに食べてくれる。
それだけで僕の学校生活は充実した素晴らしい物になる。
きっとこんな日がずっと続くのだろう。
ずっと……。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...