異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第三章 建国祭編

78 建国祭

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「建国祭? 何それ」
「知らねーのかよ。ったくオマエは本当何も知らねーのな」
「ロキくんそんな言い方ダメですよ! サタローくんはこの国に来たばかりなんですから」

 俺がみんなから愛されている(弟のように)という事実に気付いてから5日が経った。毎日のように研究所に通った俺は、ラケルさんとロキからポーション作りを教わった。
 俺は自分で魔力を作れないクセに魔力操作が上手らしく魔力の節約に大成功した。ここ数日で俺の寿命は5日から10日に延ばしたのだ。5日も寿命が伸びるのは正直俺もびっくりである。
 パスカル曰くこんなに寿命が伸びることはとてもすごいことらしく、長い時間を生きてきたエルフの彼でさえ驚くほどのことらしい。魔力が作れないのに魔力操作が上手いなんて皮肉以外の何ものでもない。

 研究所に入り浸る日々を送り続けロキとラケルさんとはとても親しくなっていた。今は3人でお茶を飲みながらおしゃべりをしているところである。

「建国祭ってのは、我が国クロノス王国の建国を祝うイベントですよ。他国のお偉いさんも来る一大行事で王都には沢山の出店が並んでそれはもうとっても楽しい行事何です!」

 ラケルさんが建国祭について説明してくれる。転移前の世界でいう建国記念日というやつと類似するものだろう。しかし前の世界ではただ祝日になり学校に行かなくてもいい日という認識でしかなかった。
 この国の建国祭は聞いているだけでも楽しそうなイベントであり俺の心は少し躍る。

「その建国祭っていつやるんだ?」
「明日ですよ」
「明日なのかよ!」

 そんな一大イベントがまさか明日だとは思わず大きな声を出してしまった。二人はそんな俺を見てびっくりしている。何故そんな大事なイベントを誰も教えてくれなかったのだろうか。

———俺、もしかして嫌われてる?

 と一瞬考えたが、あんな事があって数日後にこの考え方は少し無理があるだろうか。だって俺みんなに(弟のように)愛されているからだ。
 でもあれから5日経ったというのに、一度も4人に会っていなかった。ついでにパスカルにも一度俺のポーション作りと魔力操作を見にきて寿命の確認をして以来会っていない。
 二人にパスカルはどのくらいの頻度で、研究所に来るのかを聞いたところで、建国祭の話題になったのだ。
 因みにパスカルは一日一回は研究所に顔を出していたようだ。2人によればおそらく、建国祭の準備に追われているのだろうとのことである。

「アルやギルなんかもその式典に出るんだよなあ?」
「当たり前だろ。隊長クラスまでは強制出席だったはずだ。他の隊員も警備役に回るだろうから大忙しってわけだ」
「暇なのは非戦闘員の私たちぐらいですね」

 そんな忙しかったのか。ギルが演習から帰ってきて忙しなく動いていた理由もこれなのかもしれない。
 式典自体に興味があるわけではない。
 どちらかと言うと王都の出店に興味がある。演習の帰りにちらりと見た王都の街並みは転移前の住んでいた街並みとは全くと言って良いほど違っていた。

 いつかゆっくり行ってみたいと思っていたのでちょうど良い機会だと思ったのだが、一人では流石に出歩くのは怖い。誰でも良いので誘おうと思ったのだが、みんな忙しいようなので諦めるしか無さそうだ。

「二人は明日はどうするんだ?」
「二人で王都に行こうと思っていますよ。ロキくんが誘ってくれたので……あっ、もしよかったらサタローくんも一緒に行きますか?」

 優しいラケルさんに誘いの言葉を受ける。隣のロキの顔を見ると何ともいえない表情をしていた。

———頑張って誘ったんだろうなぁ……

 あの意地っ張りで打切棒なロキが勇気を出して誘った、所謂デートってやつだ。残念ながら誘われたラケルさんにそんなつもりは無いだろうけど。他人の恋路を邪魔する空気の読めない男ではない。

「ごめんラケルさん。俺、別の人と行くつもりだから今回はロキと2人で行ってきてください」
「そうですかぁ? なら今回はロキくんと二人で楽しみますね」

 無論、誰かと行く予定などない。そもそも建国祭があることを知ったのはついさっきのことである。
 幸いなことにラケルさんは全く疑うことなく素直に受け取ってくれたようだ。
 
 誰にも誘われず、建国祭があることすら誰にも教えてくれなかったのにせっかくの誘いを断ってしまい勿体無いという気持ちも無いわけではない。

———まぁ、ロキのこんな顔見たらそんなことどうでも良くなるよな。

 隣のロキはホッとしたあとラケルさんの言葉に顔を赤くし明らかに照れている。
 嘘をついてしまったが、何だかいいことをした気分である。


 
 

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