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第二章 本部編
77 月見酒
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「まさかお前があの3人の中に入るとは驚いたぞ」
「いやはや自分でもびっくりだよ。しかし面白いね異世界からの人間って言うのは、"奴ら"が狙うのもわからなく無い」
月が綺麗に空に浮かぶ真夜中、二つのシルエットが椅子に座りながら酒を嗜んでいる。
一人は幼い顔をした耳の尖った少年パスカル。もう一人は頭からツノの生えた和服に身を包んだ男クロム。
「そういうことには興味がないと思っていたが、まだまだ若いな」
「そりゃまぁ、君より500歳以上若いからねぇ、まだまだ若いものには負けないさ。でも彼らの邪魔をする気はないよ、長い人生だ楽しませてもらう程度にはするつもりさ」
クロムは盃に入った酒を揺らす。その表情は何だか楽しそうである。パスカルもまた機嫌良く酒を飲んでいる。幼い少年のような見た目だがエルフ族である彼は、こう見えても800歳を超える長寿である。ただ、周りには500歳と300歳ほどサバを読んでいたりする。意味は特になくただ若く見られたいだけらしい。
そんな年齢偽装をしているパスカルの本当の年齢を知っている男の一人がクロムである。鬼人である彼もエルフほどではないが長寿である。とは言え2人が知り合ったのはかれこれ30年ほど前と年齢にしては短い。
しかし軍の人間のほとんどは20代前後の若者ばかりである。100歳を超える長寿仲間として偶に酒を酌み交わす中であった。
「長く生きていると色んな事に対して新鮮味がなくなるからな。わしも楽しませてもらっているよ」
「サタローには言ったのかい、この世界へ来た原因を?」
「いいや、言っても仕方ないだろう。この国にいたのが不幸中の幸い。少しでもこの国で幸せになってほしいからな」
どうやら二人の会話の話題はつい最近別の世界からコチラの世界へやってきた少年尾瀬佐太郎であった。二人は彼がこの世界に来た原因を知っているかのように会話をしている。
「……そうだね。あんな体質で苦労も多いだろうし余計なことは言わないほうがいい。真実を知るのは大人である私たちだけでいいだろう」
「とはいえ、厄介なイベントが直ぐ控えているのだけどな」
「あぁ、そうだったね……"奴ら"も毎年招待しているのだったね。全くいつの時代も行事っていうのは変わらずあるものだねえ」
「まあ、何とかなるだろう」
二人は同時に酒を一口飲む。彼らの月見酒はその後も続いた。
「いやはや自分でもびっくりだよ。しかし面白いね異世界からの人間って言うのは、"奴ら"が狙うのもわからなく無い」
月が綺麗に空に浮かぶ真夜中、二つのシルエットが椅子に座りながら酒を嗜んでいる。
一人は幼い顔をした耳の尖った少年パスカル。もう一人は頭からツノの生えた和服に身を包んだ男クロム。
「そういうことには興味がないと思っていたが、まだまだ若いな」
「そりゃまぁ、君より500歳以上若いからねぇ、まだまだ若いものには負けないさ。でも彼らの邪魔をする気はないよ、長い人生だ楽しませてもらう程度にはするつもりさ」
クロムは盃に入った酒を揺らす。その表情は何だか楽しそうである。パスカルもまた機嫌良く酒を飲んでいる。幼い少年のような見た目だがエルフ族である彼は、こう見えても800歳を超える長寿である。ただ、周りには500歳と300歳ほどサバを読んでいたりする。意味は特になくただ若く見られたいだけらしい。
そんな年齢偽装をしているパスカルの本当の年齢を知っている男の一人がクロムである。鬼人である彼もエルフほどではないが長寿である。とは言え2人が知り合ったのはかれこれ30年ほど前と年齢にしては短い。
しかし軍の人間のほとんどは20代前後の若者ばかりである。100歳を超える長寿仲間として偶に酒を酌み交わす中であった。
「長く生きていると色んな事に対して新鮮味がなくなるからな。わしも楽しませてもらっているよ」
「サタローには言ったのかい、この世界へ来た原因を?」
「いいや、言っても仕方ないだろう。この国にいたのが不幸中の幸い。少しでもこの国で幸せになってほしいからな」
どうやら二人の会話の話題はつい最近別の世界からコチラの世界へやってきた少年尾瀬佐太郎であった。二人は彼がこの世界に来た原因を知っているかのように会話をしている。
「……そうだね。あんな体質で苦労も多いだろうし余計なことは言わないほうがいい。真実を知るのは大人である私たちだけでいいだろう」
「とはいえ、厄介なイベントが直ぐ控えているのだけどな」
「あぁ、そうだったね……"奴ら"も毎年招待しているのだったね。全くいつの時代も行事っていうのは変わらずあるものだねえ」
「まあ、何とかなるだろう」
二人は同時に酒を一口飲む。彼らの月見酒はその後も続いた。
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