異世界では総受けになりました。

西胡瓜

文字の大きさ
上 下
70 / 101
第二章 本部編

69 駆けつけた3人

しおりを挟む
「? どうしたんだよサタロー、まさかお前そのモンスターに襲われたんじゃ……俺魔力感知下手くそだからよくわかんねーけど、お前から強い魔力を感じるような……」
「!? な、な、なに言ってんだ! そんなわけないだろ!いやー、俺モンスターに襲われたの初めてだからなんか今更怖くなってきて……」
「? そうか……なら休んでろよ。どうせ今日はポーションづくりできねーから」
「う、うんそうさせてもらうね」

 本当に体調が悪くなってきたので、お言葉に甘えて俺は実験室の隣の部屋の仮眠室で休むことにした。そんな俺の姿をパスカルがじーっと見ていることはわかっていたが、関わってはダメだとスルーして部屋を出た。

 ベッドに潜り込み大きな溜息を吐く。

「はー、なんで俺ばっかこんな目に遭うんだよ……一回お祓いとかしてもらった方がいいのかな」
「やっぱり、お前モンスターに襲われたな」

 いつのまにかパスカルが仮眠室に入ってきていた。俺の愚痴を聞かれてしまったらしい。俺は慌てて起き上がり誤魔化しはじめる。

「襲われたよ、くすぐったかったなーほんと死ぬかと思った!」
「……」

 俺の必死なごまかしを真顔で聞いているパスカル。これは絶対にバレている。もう言い逃れはできないと素直に白状したほうが良さそうな雰囲気である。

「はぁ、襲われましたよ。エロいことされた……」
「ふっ、やっぱり」
「笑うなー!!!」

 俺がため息を吐きながら白状すると鼻で笑ってきた。俺は恥ずかしさで真っ赤な顔になっているだろう。

「いや~まさか本当に襲われるなんて思ってもいなかったぞ。連れていったかいがあっ……おっと口が滑った」
「……おい、今のどういう意味だ!?」

 聞き捨てならないパスカルの言葉に抱えていた頭を上げる。パスカルは目を逸らして口笛を吹いている。鳴ってないし、口笛吹けないのかよ……って! そんなことはどうでもいい。

「おまえ! 襲われることわかってて俺を森へ行かせたな!!」

 俺はパスカルの胸ぐらを掴みこちらを向かせると激しく揺さぶった。流石に俺へのイタズラも今回ばかりは度が過ぎる。クロムさんが助けてくれなかったら俺は今頃メンタルぼろぼろで立ち直れていないいぞ! 
 もしかしたらあのおちびーずに俺の痴態を見られていたかもしれないんだ。

 俺の本気の怒りもパスカルには伝わっていないらしく、へらへらと笑って謝ってきた。

「はは、すまんすまん。わしも百年以上生きているがあのモンスターだけには会ったことがなくてな。サタローがあまりにも条件にピッタリだったから研究者の好奇心ってやつでつい……」
「ついじゃねぇぇ!!」
「いや、でもこれであの森には変態モンスターがいることがわかったわけだし、軍のためにもなったぞー」

 「軍のためになった」という言葉で一瞬怒りが収まったが、そもそも俺以外にその条件に当てはまるものなんていないだろう。絶対ただのパスカルの好奇心だけで、俺は生贄になったんだ。騙されんぞ!

「なにが軍のためだ……今回ばかりは騙されないぞ!」
「えー、でもアルやギルも気になってたみたいだぞ」
「嘘をつくな! 彼らがそんなの気になってるわけないだろ! パスカルみたいに変態じゃあるまいし「サタロー!! 大丈夫かい!」……えっ」

 俺がパスカルに言いくるめられまいと反論していると、仮眠室の扉が勢いよく開いた。
 俺は驚いて扉の方へ顔を向けると立っていたのはまさかの人物、今ちょうど話に出てきたアルだった。
 アルだけかと思いきやアルの後ろからギルとレオも部屋の中に入ってきた。

 パスカルが呼び出したのかと未だに胸ぐらを掴んでいるパスカルの方を向くが、彼も驚いた顔をしているのでどうやら違うらしい。
 あまりにも勢いよく慌てた様子で入ってきた3人に先程までの怒りがどこかへ吹き飛んでいっていた。

「ど、どうしたの3人とも……」

 俺が恐る恐る3人に声をかけるとアルが俺の方に近づき、肩を掴み正面を向かされた。
 とても焦っている顔に俺は唾を飲み込む緊張が走る。何かやらかしてしまっただろうかと不安になる。

「サタローあの森には入ったんだって!? 大丈夫だったかい?!」
「ねーねー、あのモンスターにあった? 俺、気になっちゃって」
「怪我はないようだな」

 アルに続いてギルとレオも俺に近づき、質問攻めにあう。
 さっきパスカルの言ったことは本当だったようで、どこから俺が森に入ったことを聞いたかは知らないが(まぁ多分マオやシュリに聞いたのだろう)変態モンスターは彼らの中ではとても話題性のある話だったようだ。

 俺は聖徳太子ではないので三人いっぺんに話されてもあいにく答えられない。あまりの迫力に黙り込んだ俺は、横に追いやられているパスカルに助けを求める目を向ける。
 しかし、さっきパスカルの言ったことを嘘だと否定したことを根に持っているのかそっぽを向いて自分でどうにかしろという素振りをした。

「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
「これが落ち着いていられるか! 森に入るなら私もついて行ったのに」
「なーなー、変態モンスターにあったのかよー」
「あまり無理をするなよ、お前は兵士ではないのだから」

 俺の言葉に全く耳を貸さない彼らに困り果てる。気にかけてくれているのはありがたいのだが、これでは答えようがない。あと若干一名心配してくれていない奴がいる。

「あーー!!! 静粛に! 順番に話して、ちゃんと答えるから!!」

 俺の叫びに騒がしかった仮眠室が一気に静まり返る。静粛になんて人生で初めて使ったぞまったく。
 俺の言葉に冷静さを取り戻した三人は謝りながらアルから順番に俺に話しかけてきた。
 

 
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾
BL
『ラウ…かわいい僕のラウル…この身体の事は絶対に知られてはいけない僕とラウル二人だけの秘密』 『は、い…誰にも――』    この国には魔力を持つ男が通うことを義務付けられた全寮制魔法学校が存在する。そこに新入生として入学したラウルは離れ離れになっていた大好きで尊敬する義兄リカルドと再び一緒の空間で生活できることだけを楽しみにドキドキワクワク胸を膨らませていた。そんなラウルに待つ、新たな出会いと自分の身体そして出生の秘密とは――  圧倒的光の元気っ子ラウルに、性格真反対のイケメン二人が溺愛執着する青春魔法学園ファンタジー物語 (受)ラウル・ラポワント《1年生》 リカ様大好き元気っ子、圧倒的光 (攻)リカルド・ラポワント《3年生》 優しいお義兄様、溺愛隠れ執着系、策略家 (攻)アルフレッド・プルースト《3年生》 ツンデレ俺様、素行不良な学年1位 (友)レオンハルト・プルースト《1年生》 爽やかイケメン、ラウルの初友達、アルの従兄弟

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

処理中です...