68 / 101
第二章 本部編
67 帰ってきた4人
しおりを挟む
3人とそれを追いかけて行ったパスカルが戻ってきたのだ。パスカルはともかくとして、この格好を純粋無垢な子どもたちに見せるわけにはいかない。
「どうしよ! どうしよ!」
俺は男の腕の中で情けなく慌て始めた。男はそんな俺の言動に表情は変わらないものの首を傾げている。
「どうかした?」
「子ども達が戻ってくるの! こんな格好みせらんない!」
とりあえず地面に落ちているズボンを履こうと男に下ろしてくれとお願いすると、すんなり下ろしてくれた。
俺は急いでズボンの元へ行くが一旦脱いだ汚れたパンツ履く気にはなかなかなれずパンツは履くのを諦めてズボンだけ履くことにした。前にもこんなことがあったのでスムーズだ。
あとは上だ。あのツル上手いこと溶かしやがって、上半身裸よりも恥ずかしい格好になっている。もうこれ脱いで裸になったほうがいいんじゃないのかとさえ思う。
でも、上半身裸なのも変だよな。と、色々考えている間もあいつらの声はどんどん大きくなっていき、こちらに近づいていることがわかる。
「ゔぅーー、どうしたものか」
「困りごと……?」
「あ、その、ここだけ溶かされて、どうしようかと」
黙って俺の姿を見ていた男が話しかけてきた。この男に話してもどうすることもできないだろうが、とりあえず話してみる。
「じっとしてて……」
すると男は俺の溶けた服の近くに手をかざした。かざした手から光が溢れてあら不思議あっという間に溶けたワイシャツが元通りになっていた。
おそらく魔法だと思われる。ぼーっとしてるがさっきの剣術といい魔法といいすごい人なのかもしれない。
「おぉ! すごい、ありがとう!」
俺は男の手を取り、必死にお礼を言った。
それとほぼ同時にタイミングよくパスカルたちが帰ってきた。
「サタローにぃちゃん、たくさん薬草採れたよー!」
「あれー! なんでクロム隊長がいるの!」
「ほ、ほんとだ……」
カゴいっぱいに薬草を詰め込んだマオとシュリとソウヤが男を見つけて驚いている。
「えっ、隊長……!?」
「うん……隊長です」
俺は急いで握っていた手を離す。なんて醜態を軍のお偉いさんに見せてしまったのだろうか。まぁ、今更な気もするが……
「なんで、クロムがサタローと一緒にいるんだ?」
3人に遅れて現れたパスカルがクロムと呼ばれる鬼に質問をする。
確かになんで隊長さんがこんな深い森の中にいるんだろうか。
「今日は非番だったから、森のジメジメした場所で日陰ぼっこしてた」
──日陰ぼっこって……
なんか暗いなとは思ってたけど、行動まで暗いな。こんな人が軍の隊長なのか。やっぱり変な人多いなこの国の軍は……
「ええー! 日向ぼっこのほうが楽しいよ!」
「ジメジメした場所はよくないです!」
「僕たちと日向ぼっこしよーよ、クロにぃ」
純粋な子どもたちが暗いクロムさんに満面の笑みで話しかけている。
「……え、やだ。お前らといると疲れる」
めちゃくちゃ辛辣な言葉を子どもたちに掛けてたクロム隊長さん。それも今まで無表情だったのに眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌だと拒否している顔だ。
ツノが生えているので普通の子どもだったら泣いていそうなのに、さすがは子どもでも軍の兵士、頬を膨らませて文句を言っているだけだった。「遊ぼうよー」と嫌がるクロムさんを無視して服を引っ張っている。
「やめろまじで、おいパスカルどうにかしろ」
「はっ、暇そうだし遊んでやったらどうだ?聖水を採ってきてくれるならこいつらを黙らせてやらんこともない」
「……聖水を採ってくるから、こいつらを黙らせろ」
「はいはい」
ちゃっかり聖水を採りに行く役目をクロムさんに押し付けるパスカル。
そういうとパスカルは地面に置かれていた俺のリュックをクロムさんに渡し、3人を引っぺがした。
「じゃ、頼んだぞ」
「はぁ、めんどくさ……」
クロムさんはさっきよりもさらにどんよりした空気を纏い、森の奥に歩いて行った。
怖いのか優しいのかよくわからない人だった。
「なぁ、クロムさんって……」
「クロム隊長はあたしたちの隊の隊長だよ!」
得意げに俺の質問に答えたシュリ。つまり第二連隊の隊長ということだ。ツノがあったので同じ鬼族なのは間違いない。
「暗いけどすっごく強いんだよ!」
「えー! レオにぃの方が強いよ!!」
「ぶー! クロム隊長のほうが強いもんね!」
「僕もクロム隊長のほうが強いと思います!」
「……そうですか」
ぶっちゃけどっちが強いかなんて俺にはどうでもよかった。でもまぁ、シュリとソウヤの様子からして無愛想だが、兵士たちに信頼、尊敬されいることがよくわかる。レオは好かれていると思うが尊敬はされていなさそうだ。
「さて、帰るか」
「いいのかよ」
「クロムが採りにいってくれたしな」
行ってくれたというか無理やり行かせたに等しい気がするが、もう疲れたし帰れるのならそれでいいかとパスカルの言葉に従って俺たちは森を後にした。
「どうしよ! どうしよ!」
俺は男の腕の中で情けなく慌て始めた。男はそんな俺の言動に表情は変わらないものの首を傾げている。
「どうかした?」
「子ども達が戻ってくるの! こんな格好みせらんない!」
とりあえず地面に落ちているズボンを履こうと男に下ろしてくれとお願いすると、すんなり下ろしてくれた。
俺は急いでズボンの元へ行くが一旦脱いだ汚れたパンツ履く気にはなかなかなれずパンツは履くのを諦めてズボンだけ履くことにした。前にもこんなことがあったのでスムーズだ。
あとは上だ。あのツル上手いこと溶かしやがって、上半身裸よりも恥ずかしい格好になっている。もうこれ脱いで裸になったほうがいいんじゃないのかとさえ思う。
でも、上半身裸なのも変だよな。と、色々考えている間もあいつらの声はどんどん大きくなっていき、こちらに近づいていることがわかる。
「ゔぅーー、どうしたものか」
「困りごと……?」
「あ、その、ここだけ溶かされて、どうしようかと」
黙って俺の姿を見ていた男が話しかけてきた。この男に話してもどうすることもできないだろうが、とりあえず話してみる。
「じっとしてて……」
すると男は俺の溶けた服の近くに手をかざした。かざした手から光が溢れてあら不思議あっという間に溶けたワイシャツが元通りになっていた。
おそらく魔法だと思われる。ぼーっとしてるがさっきの剣術といい魔法といいすごい人なのかもしれない。
「おぉ! すごい、ありがとう!」
俺は男の手を取り、必死にお礼を言った。
それとほぼ同時にタイミングよくパスカルたちが帰ってきた。
「サタローにぃちゃん、たくさん薬草採れたよー!」
「あれー! なんでクロム隊長がいるの!」
「ほ、ほんとだ……」
カゴいっぱいに薬草を詰め込んだマオとシュリとソウヤが男を見つけて驚いている。
「えっ、隊長……!?」
「うん……隊長です」
俺は急いで握っていた手を離す。なんて醜態を軍のお偉いさんに見せてしまったのだろうか。まぁ、今更な気もするが……
「なんで、クロムがサタローと一緒にいるんだ?」
3人に遅れて現れたパスカルがクロムと呼ばれる鬼に質問をする。
確かになんで隊長さんがこんな深い森の中にいるんだろうか。
「今日は非番だったから、森のジメジメした場所で日陰ぼっこしてた」
──日陰ぼっこって……
なんか暗いなとは思ってたけど、行動まで暗いな。こんな人が軍の隊長なのか。やっぱり変な人多いなこの国の軍は……
「ええー! 日向ぼっこのほうが楽しいよ!」
「ジメジメした場所はよくないです!」
「僕たちと日向ぼっこしよーよ、クロにぃ」
純粋な子どもたちが暗いクロムさんに満面の笑みで話しかけている。
「……え、やだ。お前らといると疲れる」
めちゃくちゃ辛辣な言葉を子どもたちに掛けてたクロム隊長さん。それも今まで無表情だったのに眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌だと拒否している顔だ。
ツノが生えているので普通の子どもだったら泣いていそうなのに、さすがは子どもでも軍の兵士、頬を膨らませて文句を言っているだけだった。「遊ぼうよー」と嫌がるクロムさんを無視して服を引っ張っている。
「やめろまじで、おいパスカルどうにかしろ」
「はっ、暇そうだし遊んでやったらどうだ?聖水を採ってきてくれるならこいつらを黙らせてやらんこともない」
「……聖水を採ってくるから、こいつらを黙らせろ」
「はいはい」
ちゃっかり聖水を採りに行く役目をクロムさんに押し付けるパスカル。
そういうとパスカルは地面に置かれていた俺のリュックをクロムさんに渡し、3人を引っぺがした。
「じゃ、頼んだぞ」
「はぁ、めんどくさ……」
クロムさんはさっきよりもさらにどんよりした空気を纏い、森の奥に歩いて行った。
怖いのか優しいのかよくわからない人だった。
「なぁ、クロムさんって……」
「クロム隊長はあたしたちの隊の隊長だよ!」
得意げに俺の質問に答えたシュリ。つまり第二連隊の隊長ということだ。ツノがあったので同じ鬼族なのは間違いない。
「暗いけどすっごく強いんだよ!」
「えー! レオにぃの方が強いよ!!」
「ぶー! クロム隊長のほうが強いもんね!」
「僕もクロム隊長のほうが強いと思います!」
「……そうですか」
ぶっちゃけどっちが強いかなんて俺にはどうでもよかった。でもまぁ、シュリとソウヤの様子からして無愛想だが、兵士たちに信頼、尊敬されいることがよくわかる。レオは好かれていると思うが尊敬はされていなさそうだ。
「さて、帰るか」
「いいのかよ」
「クロムが採りにいってくれたしな」
行ってくれたというか無理やり行かせたに等しい気がするが、もう疲れたし帰れるのならそれでいいかとパスカルの言葉に従って俺たちは森を後にした。
42
お気に入りに追加
2,494
あなたにおすすめの小説

セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~
カニ蒲鉾
BL
『ラウ…かわいい僕のラウル…この身体の事は絶対に知られてはいけない僕とラウル二人だけの秘密』
『は、い…誰にも――』
この国には魔力を持つ男が通うことを義務付けられた全寮制魔法学校が存在する。そこに新入生として入学したラウルは離れ離れになっていた大好きで尊敬する義兄リカルドと再び一緒の空間で生活できることだけを楽しみにドキドキワクワク胸を膨らませていた。そんなラウルに待つ、新たな出会いと自分の身体そして出生の秘密とは――
圧倒的光の元気っ子ラウルに、性格真反対のイケメン二人が溺愛執着する青春魔法学園ファンタジー物語
(受)ラウル・ラポワント《1年生》
リカ様大好き元気っ子、圧倒的光
(攻)リカルド・ラポワント《3年生》
優しいお義兄様、溺愛隠れ執着系、策略家
(攻)アルフレッド・プルースト《3年生》
ツンデレ俺様、素行不良な学年1位
(友)レオンハルト・プルースト《1年生》
爽やかイケメン、ラウルの初友達、アルの従兄弟


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる